対角線上の釣り合い

第1061号 2018年11月8日
▼  対角線上の釣り合い

からだほぐし教室の常連Wさんから、メールを頂戴しました。先日の教室でWさんの股関節を操法させてもらったその後の経過報告です。

ーー 右股関節の不具合 その後の報告をさせていただきます

 結論から言いますと、左の前肩をケアしたら、すっと楽になりました。骨盤のネジレは なか なかうまくいかなかったのですが、左の前肩を修正すると すっと楽になりました。

 そういえば、木曜日の教室で先生はまず 私の左前肩の修正をなさっていましたっけ(^^; 当たり前ですが 今更ながら先生の慧眼に恐れ入っております。

といわれて私の方も恐れ入っているのです。右股関節の不調に対して、左肩を操法したのは、たまたま左肩に緊張があるな、と気づいたからであって、それが右股関節に効果があるだろうと予想したからではなかったのです。

教室の時、Wさんが股関節の不調を訴えられたので、じゃあやってみましょう、と気軽に引き受けたんですけれど、「左前肩」が股関節の原因であるとは思っていませんでした。

しかし、いまとなって、落ち着いて考えてみれば、左肩に緊張があり、前に亜脱臼の状態になっていれば、釣り合い上、右の股関節が緊張し、前に寄っていても、おかしくないですね。

ははあ、対角線療法というのは、こういうバランス療法なのか、と気づいたわけです。

結論をいいましょう。《どちらか一方の肩が前に寄っているとき、逆側の股関節に異常が出ている可能性がある》、ということになります。逆もまた真なりで、どちらかの股関節に異常があるとき、逆側の肩にも緊張がある可能性がある、ともいえます。

こういう原則をわきまえておれば、肩や股関節の異常がある時にずいぶん参考になる、ということになります。

この応用として、膝と肘の関係も同じようなことが言えるかもしれません。あるいは、手首と足首の関係も同様です。Wさん、ありがとうございました。

朱鯨亭 shugeitei.com

1041 対症療法

第1041号  ’18年6月15日
▼ 対症療法

以下にご紹介するのは、根本療法ではありません。いわば対症療法です。

それにしても、世の中に氾濫するのは、対症療法ばかり、といえば言い過ぎでしょうか。ようするに、痛みがあれば、それを軽減する方法、痺れがあれば、それを軽減する方法です。

その問題があれば、それを根本的に解決する方法よりも、軽減する方法ばかりがもてはやされる。

「ダイエット」しかり。なぜ体重が増えるのか、その根本には手をつけず、まずは体重が減ればいいんでしょう、とばかり、に色々な方法が案出される。根本治療は厄介だと敬遠される。

もちろん、言うまでもなく、西洋医学の方法は、殆どが対症療法ですね。薬を与えて、症状が消えればいいんでしょう、というわけでしょうか。あるいは手術をして症状のあるところを切り取ってしまえば、解決するでしょう、というわけでしょう。

以前にも、卵巣の除去手術をするのに、子宮もついでに取っておきましょう、と言われた、という話を聞きました。悲しいことに、世の中の実情はそんなものです。

これに対して、根本療法をするには、原因を突き止めなければなりません。ところが、物事の根本原因などは、そんなに簡単には探し出せません。

ここで、本当は根本原因をどうして探り出すか、という話しをしなければならないのですけれど、これがまことに難しい。症状によってまったく違うことが多いので、一律にこうだ、とは言えないわけです。

そこで、私も対症療法を一つ紹介して、お茶を濁すことにしましょう。

歩いている時に外反母趾が痛むという人は多いようです。少しでも簡単に軽くする方法はないものか。

ここで、対角線療法を使ってみようと考えました。

となると、例えば左足の外反母趾が痛むとすれば、右手の親指を使えばよいことになります。

昨日のからだほぐし教室でのこと。京都府城陽市に住む女性Yさんが、歩いている時に足の親指が痛むと言われるので、試してみました。Yさんに中央の敷物のところに出てもらって、その右手の親指をジッと握っていること数分。

 ── じーっと足の親指に来てます。とのこと。

やがて立ち上がって、

 ── あ、大部よくなっています。

これなら歩きながらでも出来るでしょう。対角線の指をジッと握っているとよい。Yさんは、

 ── この小指、曲がってるんですけど。

おそらく、母指の対角線なら、同じ母指ではなく、小指に当たるのではないか、と思われたのでしょう。しかし、それは考え過ぎです。

考えすぎかどうか、は、どこで判断するのか。それはやって見れば一目瞭然。効果がある方が正解ということです。

こういう遠回りな対症療法もあるという例でした。

1039 足が攣る

路地裏の整体術 第1039号  ’18年6月3日
▼ 足が攣る

夜中に足が攣(つ)るという訴えをたびたび聞きます。以前にも、これについて書いています。それに関して幾つかの投稿をいただいて、それはそれで興味深かったのですけれど、肝心の簡単に足が攣るのを直す方法が焦点ぼけになってしまっていました。

そこで今回は足が攣るという現象を速攻で直す方法について。

その原因については、色々有るのでしょうが、一番多いのが腓骨(ひこつ)の下がりです。

骨が下がるって、どういうこと、と疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。また寝ている時に骨が下がるというのも、よくわからんな、とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

正確にいうと、下がるだけでなく、左右に開いています。下腿には腓骨と脛骨(けいこつ)という二本の骨があって、上からの負荷が強すぎると、自然に開いて、下腿が太くなる現象が見られます。

足が攣るという人の下腿を見てみますと、必ずと言っていいほど、腓骨の両端が出っ張って来ています。

言い換えると腓骨の上端=腓骨頭、および下端=外果、の二箇所が出っ張っているはずです。もちろんどんな人でも少しは出っ張っているわけで、その程度が強くなっているという意味です。

程度が強くなっている、その程度とはどの程度だ、と訊かれたら、何人かの人に上記の二箇所を触らせて貰えばよろしい、と答えればOKでしょう。普通はそんなに出っ張って来ているものではないので、自分の腓骨両端が普通より出っ張っていれば足が攣る可能性がある、ということです。

で、足が攣るのを速攻で直す方法はどうするのだ、とお尋ねでしょうか。次のようにします。

足が攣っている状態にあるとしましょう。攣っている側と同じ側の手の小指を用意してください。そして、小指の外側を第1関節から第2関節へと、そっと反対側の手指で撫で上げます。これを攣る状態が消えるまでくりかえす。

以上です。お試しください。速攻で楽になるはずです。でも、この簡単なことが覚えられない人も多いようですね。

そういう人は図を書いて、寝室の壁にでも貼っておいてください。

1034 足の指が痛む

第1034号  ’18年5月14日
▼ 足の指が痛む

60歳代の男性、フローリングのところを靴下で歩いたところ、強い痛みが第2趾(あしゆび)に走ったと言われます。何か落ちているのかと探ってみても、何もなかった。

さっそく拝見しました。第2趾というのですから、わかりやすく言えば足の人差し指ということですね。触ってみると、特別に腫れているなどの症状はありません。私の指先の感覚では何も異常なし。

爪の裏あたりをぐっと押さえてみても、少し違和感がなくはないが、痛みはないのだそうです。なぜわざわざ来られたのですか、と尋ねてみると、足の指は大切なところだと聞いているので、こんなところに痛みが出るのは変だ、何かあるのか、と思って心配になったと言われます。

普通はこういう時は、ここでおしまいにするのですけれど、この時は何かひっかかるものを感じ、方法がないかと考えてみました。

そうだ。こういう時は「対角線療法」があるではないか。つまり症状のある場所から、対角線上にあたる場所に何かあるのではないか、そこに手当をすれば改善するのではないか、という方法です。

右足の第2趾と対角線にあたるのは、左手の示指(人さし指)なので、そこで、左手の示指の先を持って、ジッと愉気すること、3分。反対側の右手の示指ももって、気のループを作り愉気しました。

それで硬いところを歩いてもらうと、まったく違和感もない、とのこと。第2趾を持って、ぐっと押さえてみても、何も感じません、という返事です。

時間が短かったので、いただいたお金の一部をお返しして、「喫茶店にでも寄って帰ってください」と申し上げました。

足に異常がある時、手を使った方がやりやすいし、簡単です。操者が変な気を受ける心配もない。

趾の(第2関節が膨れている)ブシャール結節がある時も、足そのものに愉気するより、手の第2関節に愉気する方が簡単でいいかもしれません。

1029 正坐ができない人は

第1029号  2018年4月26日
▼ 正坐ができない人は

正坐ができないで悩んでいる女性が多いですね。もちろん、そういう人は膝の痛みもあって、さぞかし苦しいことでしょう。

で、正坐ができない人に、どこが痛いですか、と問いかけてみると、ほとんど例外なく、膝の裏側と答えます。

正坐ができない人は、ほとんどお皿が硬くなっていますので、その辺りが突っ張ると答えるかと思えば、そういう人は少なく、ほとんど裏側です。

太ももの裏側からふくら脛にかけてが痛いと訴える人が多い。これは何なのだろうか。というのが永年の疑問でした。

もちろん筋肉の問題とみれば、太ももの大腿二頭筋と、ふくらはぎの腓腹筋との問題だと思われます。つまり、これらの筋肉がつっぱる。でも、どうすれば解決できるのかが分かりませんでした。

というのが、私の発想法は、もっぱら骨の歪みをたどるという原則で動いているので、筋肉の歪みは苦手です。筋肉を揉んだりしたくない。

この二本の筋肉を一群の筋肉と見れば、その両端はどこにあるのだろうか。

上は、坐骨結節(つまり大腿二頭筋の片方が付着しているところです)。坐骨結節とは坐っている時にお尻が座布団にあたっているところの骨の出っ張り。

下はアキレス腱の付着部(アキレス腱が踵骨に付着しているところです)。これは、アキレス腱とかかとの境目といえば分かりやすいでしょうか。

この二つが両端ということになる。

そこで、この2点に愉気をしてみようと、考えました。で、うつ伏せになってもらって、やってみると、正坐できないと嘆いていた女性が、見事に正坐できるようになりました。もちろん、筋肉が硬化している程度の違いがあるので、誰でもこれで正坐できるようになるとは言いません。

膝の歪みを改善しないことには、正坐できるようになるわけはありません。

でも正坐できない人ができるようになるメドが立ったのは大きいと思います。それと、もう一つ、この両端の2点の重要性が分かったこと、これが大きい。

例えば、腰椎が弯曲している人がいます。というより、誰でも少々は腰椎が弯曲していると言った方がいいかもしれません。この弯曲を直そうとすると、普通には、ややこしいことをするわけですが、坐骨結節を使えば簡単にできます(これに関しては別に書きます)。

つまりこの坐骨結節は、腕の場合の烏口突起のような役割を持っているようです。

それから下肢の裏側に異常がある時は、アキレス腱の付着部を使えば簡単です。

で、何よりも高齢の女性が正坐できることの精神的な影響は計り知れないと思います。

正坐できないことが原因となって、落ち込んでしまっている人が多いですから、ぜひとも元気を出してほしいと思っております。

1025 緩めたらアカン

第1025号  2018年4月4日
▼ 緩めたらアカン

Kさん、60代の女性、大阪府の遠方からしばしば朱鯨亭に足を運んでいただいている方。「しばしば」というのは、その時々で色々な症状が出て、すっきりしない方でもあることになります。

Kさんが何度も来てくださるのは、ありがたいのですけれど、できれば早く症状の出ない体になってほしいというのが本音です。

今回は、どうやら「坐骨神経痛もどき」(*注1)の症状。右脚に痛みやだるさがあちこちにあります。これまで、Kさんは体が柔らかいからか、強い症状がなく、比較的早く回復するものの、どうも、すっきりといかない。申しわけない、といつも密かに思っています。

「坐骨神経痛もどき」の場合に、私が定石としているのは、異状のある脚と対角にある腕を緩めることです。

両腕を緩めて、左右のバランスを取った後、前向きに立っていただくと、首が少しばかり右に偏り、右に重心があることが伺えます。つまり腕だけでは左右バランスがとれなかったということです。

まず考えられるのは、こういう方には、何か事故にあった経験があるのではないか、ということ。つまり【強い打撲痕のようなものがどこかに残っている】のではないか。

──何か事故にあったようなことはありませんか? 交通事故でなくても、階段からころげ落ちたとか、跳び箱に失敗したとか、そういうのでもいいんですが。もちろん古い傷でもかまいません。

──右足を捻挫したことがあります。こういうように内側にひねって、えらく腫れました。

(右足の外側面を触ってみて)──なるほど。ここの骨がカチカチになったままですね。

右足の立方骨やら、小指の中足骨(*注2)やらが固まっています。捻挫の直後から固まり、そのままになったと思われます。

そこで、小指の中足骨に裏側から指を添え、ジッとしていること数分。まだ甲の全体が硬い感じがするので、甲側・足裏側から両手でサンドイッチにして、また数分。

これで少しはよくなったに違いない、と思って立っていただきました。

ところが。重心が右に寄ったままです。これではダメじゃないか。

なぜ、こういうことになったのか。こういう時は、じっくりと考えることを迫られます。

右足の外側が硬くなっていたわけですから、硬くなる必要性があって硬くなったと考えられます。右に傾いていたので、あまり右に傾きすぎると不安定になって困る。そこで、右足の外側を硬くして、右に傾きすぎるのを防いでいたわけでしょう。

ところが、その硬くなって傾きすぎるのを防いでいた箇所を、考えの足りない私は緩めてしまった。そのため右に傾くことになってしまったのでしょう。

つまり、どこかが硬くなっているからといって、無闇に緩めると、全体のバランスがおかしくなる、ということです。直すのも、場合によりけりで、直したらアカン場合もある。

一般的には、硬いところを緩めるのは正しいでしょうが、場合によって正しくないこともある、と知っておかないと困ったことになる。法則として言えば、【真理というものは、すべて条件付きであって、いつも正しいとは限らない。条件をはずして、いつも正しいとしてしまうと、真理も誤謬になってしまう】。ということになりますね。

これは整体に限りません。世の中には、条件付きで一つの場合にだけ成り立つ原理を無闇に拡大して、何にでも当てはまるとしてしまう誤りがどれだけ多いことか

*注1 「坐骨神経痛もどき」 普通に坐骨神経痛と呼ばれているが、必ずしも神経痛とは限らず、一方の脚に体重がかかりすぎているにすぎないことの方が多い。だから私は、神経痛とは呼ばず、「坐骨神経痛もどき」と呼んでいる。

*注2 中足骨 足の甲を触ってみると、それぞれの指ごとに細長い骨があって、足首の先まで続いている。この長い骨を中足骨と呼ぶ。区別したい時は、親指から順に、第1中足骨、第2中足骨、という風に第5中足骨まで。

1022 腕だけやればよい

第1022号  2018年3月13日
▼ 腕だけやればよい

このところ、たびたび腕の重要性を確認しています。脚が悪い人に腕で対応するなんてことがしばしばです。

右脚の痛みに左腕で対応する。あるいはその逆。

こういう話をすると、それは対角線療法(*後述)ですか、というご質問が出てきそうですが、そうではありません。

例えば、右の「坐骨神経痛もどき」の人がいるとしましょう。そういう痛みが出るのは、重心が右に寄っているわけです。右脚の「膝痛」という人がいる場合でも、同じような事情が
あると考えます。

なぜこの人の重心が右に寄っているのか。腕の重さが左右で違い、肩の高さも違っていることが大きな要因になっているのです。

つまり、このような場合は、左肩が高くなっていて、右肩が低い。すると、体重が右にどうしてもかかってきます。左肩が高い場合、通常は左腕に緊張があります(そうでない例外的な場合もありますが)。

先日は、50年ほど前からの友人Kさんが訪ねてきました。Kさんは、右のお尻の辺りが痛く、それから下へずっと引っ張っている感じだといいます。つまりいわゆる「坐骨神経痛もどき」です。

(もどき)とつけるのは、本当に神経痛というケースは少なく、たいていは重心の偏りによるものだからです。

彼の場合は、痛みそのものは酷くなく、しびれも感じず、引っ張っている感じが嫌で、坐りにくい。仕事の関係で正坐することが多く、その時に嫌なようでした。

上のようなケース、つまり坐骨神経痛もどきを最近何度も経験していますから、さっと見ただけで、これは脚を触っても意味がない、腕だと直感しました。

ですから、通常の仰臥姿勢ではなく、椅子に坐ってもらう姿勢で、私が彼の左腕をつかむという恰好で操法をしました。

操法といっても、前にどこかで書いたように、手首の金星丘の付け根あたりと、烏口突起の2点に愉気を続けるスタイルです。だから私は側に正坐してじっとしているだけです。

彼は何も言いませんでしたが(要するに任せているということ)、内心、これは何をしているのか、といぶかしく思っていたことでしょう。それで、こういう症状は腕で解決するのだ、とか何とか私は呟いていたと思います。

このスタイルで、およそ数十分。時間を測っていたわけではないので、正確に何分だったかは不明ですが、要するに私の腕に気が流れている感じが途絶えるまで続けました。ここのところが大事で、途中でやめると、いい結果になりません。

あと足首に問題が残っていたので、少し触ったと思いますが、足の引っ張っているというスジ状のところには、何も手を触れていません。

さて、すべて終わって、立ってもらった。歩いたり、体を捻ったり。少し残像が残ってるかな、と。

翌日Kさんからメールが入り、

──今朝起きて全く痛みなし。昨日のことがうそのようです。

実は私自身は、少し何かが残るだろうな、と考えていたのですが、何もないとなると、これまでああでもない、こうでもないと、ゴチャゴチャやっていたのは何だったのか、と反省すること頻り。

というわけで、左腕の気のめぐりが滞っていると、それだけで重心が右に偏ってしまうことがわかります。それが解決した途端、左右のバランスが回復して、痛みが跡形もなく出なくなる。そういうものなんでしょう。

結論。どちらか片脚の「坐骨神経痛もどき」があると、反対側(対角線)の腕に操法するとよい。

ですから、最初に症状について聞く時に、左右のバランスについて考えなければなりません。

*対角線療法――ある場所に症状があると、それとは対角線の位置に操法するという方法。例えば、右脚の外側・ふくらはぎに症状があれば、左腕の前腕に操法することになる。

 

1019 第2関節操法

第1019号  2018年2月26日
▼ 第2関節操法

大抵の人の足の第2関節(PIP関節)は硬くなっています。これが柔らかいのは赤ちゃんだけではないかと思うほど。

第2関節が硬くなると、ハンマー・トウであったり、浮き指であったり、と趾の変形に繋がってきます。

これは恐らく、靴が合わない・靴の履き方が悪い・スリッパ状のものを履いている、などの原因によるものでしょう。

今日は、靴の履き方の話ではなく、硬くなっている第2関節をどうすればいいか、という話。

といっても第2関節のところをじっとつまんでいるだけです。

(そういう姿勢が苦しくてできない人には、また別の問題がありますが、それは別の機会に)

これを続けると、やがて第2関節が柔らかくなってくる。そうすると、体のあちこちが楽になってくる。

手の指では、共鳴法の対応関係で考えると、第2関節は、膝・肘・胸椎1番または頸椎7番、と対応しますから、もちろん、そういうところも柔らかくなってきます。

しかし、それよりもここの関節が柔らかになることで、体の捻れがとれていきます。そういう点からすれば手の第2関節も重要ですが、それに関しては、すでに触れています。

ここのところ私の課題としているところは、体の捻れはどうすれば解決するか、という点です。体の捻れに最も関係しているのは、足ではないか、というのが結論です。

あなたが仰臥した時、両足の角度が揃っていますか。左右で角度が大きく違っている人は、捻れがきついと思われます。だからゴルフのようなスポーツには問題があります。

普段、人の体に触れている方なら、足が捻れに関わっているという話に同感されることでしょう。今回は、短い文章で終わりますが、内容の重要性は格別です。

1017 蝶形骨のゆがみ

第1017号  2018年2月10日
▼ 蝶形骨のゆがみ

「ゆがみ」って、どういうことですか、というご質問を時々いただきます。具体的に説明してみたいと思います。

Yさんという女性。年齢不詳(ということにしておきます)。症状は色々あったのですが、特に注目に値するのは、目の周りが痛いという珍しい症状です。

初めにお断りしておかなければならないのは、人の体に絶対的な座標などないことです。高校数学の空間座標なら、X軸・Y軸・Z軸という座標があって、そこからの変位を「ゆがみ」ということができますが、そんなものは人体にはありません。

あえて座標を設定するなら、正中線が基準になるかと思われますが、人体は精密に言えば左右対称ではありませんから、おおよその基準として、左右対称を基準にするしかありません。前後については、個人差が大きく、相対的に考えるしかないでしょう。

さて、目の周りが痛いという症状。目の周りには、多くのツボがあって、そのポイントは誰でも若干の痛みがあるでしょう。ですが、そういうツボが痛いというのではなく、非対称にある痛みでした。

右の眉の上が痛い、左のこめかみが痛い、このこめかみで気づいたのです。こめかみに痛みがあると、たいてい舟状骨(*1)がゆがんでいます。つまり舟状骨が通常より盛り上がっている。

「ゆがみ」とは何か、と難しいことを言わなくても、ゆがんでいると、そこに痛みが出るわけです。この舟状骨にかぎらず、どこかに痛み(圧痛)があると、そこいらの骨にゆがみがある。

例えば、手の指が痛いという人をよく見掛けますが、そういう人は、手の指の関節がゆがんでいることが多い。関節のあるべき位置に骨がきっちり嵌っていない。こういうのが典型的なゆがみと言っていいでしょう。

ですから、目の周りが痛いという症状があるなら、その辺りに何かのゆがみがあることになります。目頭の上あたりですと、鼻の上にある篩骨(*注2)という骨がゆがんでいる場合がありますが、Yさんの場合は篩骨に痛みはなく、どこか別のところのようです。

そこで舟状骨を触ってみると、「痛い」という。すれば、舟状骨と密接な関係にある蝶形骨(*注3)がゆがんでいるのだろう、と思ってこめかみを触ってみると、盛り上がり感があり、しかも押えると違和感があるという。

そこで、舟状骨を正常な位置(*注4)に戻してやると、こめかみの違和感が消え、もりあがりもなくなりました。

それだけではなく、目の周りの痛みも消失したというわけです。

ところで、まだおまけがあります。この女性Yさんには、他にも違和感のある場所があった。それは左足の第3趾の中足骨(*注5)です。ここに違和感があれば、顎関節症が疑われます。「顎はおかしくないですか」と尋ねてみると、「おかしいです」という返事。

ということは、第3趾→舟状骨→蝶形骨というつながりがあったと考えられます。言い換えると、ここの線上に歪みの連鎖があったわけです。こういう線を無視すると、改善できないゆがみが残るということになります。

この線状の連鎖は経絡とは異なりますし、筋膜トレインなどというものとも違います。こういう線が身体のあちこちに巡っているのではないか。そういうものに注目していたのは、ひょっとするとチベット医学ではないかと今は思っています。

*注1 舟状骨 ここでは足の付け根あたりにある横長の骨。間違って「せんじょうこつ」と読む人があるが、「舟」は「せん」ではなく、「しゅう」がただしい。手にも同名の骨があるので、区別する時は、「足の舟状骨」、「手の舟状骨」といわなければ、混乱する。

*注2 篩骨 鼻の付け根あたりに存在する複雑な形状の骨。詳しくは画像検索をかけて、調べてみてほしい。

*注3 蝶形骨 左右のこめかみを貫いて、目の奥に存在している。これも複雑な形状なので、詳しくは画像検索で。これがゆがむと、目の周りに痛みが出るばかりでなく、こめかみにも違和感が出る。脳とも関係の深い位置にあるため、全身への影響も無視できない。

*注4 舟状骨を正常に戻す これについては 『共鳴法教本』 に詳しく書いてあるので、そちらを参照。

*注5 中足骨 足の指の手前にある長い骨。ここは、足の捻れと関係し、複雑な捻れ方をするので、放置すると全身に影響がある。逆にいえば、ここで全身のゆがみを直すこともできるかもしれない。

1006 踵は最大の着眼点

第1006号  2017年12月5日
▼ 踵は最大の着眼点

よくどこを観察すればいいのかが分からないという声を実習生の方々から聞きます。皆さんが分からなくて悩んでいるのは、その点なのですね。先日も「鎖骨」という着眼点を取り上げました。今回は踵(かかと)を取り上げます。

「かかと」というポイントは、おそらく人体の中でも最重要のポイントの一つです。なぜそんなところが、と首をかしげる人もいらっしゃるでしょうか。

考えてみてください。踵に全身の体重がかかります。いわば人間の土台。

特に踵に左右差があると、両脚の長さが違っていなくても、まっすぐに立てず、どちらかに重心が偏るために、色々な問題が発生します。

「かかと」を見て、どうすればいいのか、というお尋ねでしょうか。踵の後ろを見るんです。見るというより、触ってみるのがいいかもしれません。

踵に問題が潜んでいる人は、どこがどうなっているかといえば、踵の上にある距骨が後ろに出ています。後ろに出るという意味がわかりにくければ、踵骨が前にずれて、逆に距骨が後ろにずれている、といえばわかりやすいでしょう。

アキレス腱の前に距骨がありますから、距骨に後ろから触れようとすると、アキレス腱の横から距骨を触ってみればよいでしょう。その辺りに圧痛があれば、距骨が後ろに出ていることが分かります。

この辺りに圧痛があれば、距骨が後ろに出ている、逆にいえば踵骨が前にすべっている。こういう状態になっていれば、重心が後ろに寄ってしまっているわけです。

そのため、靴に踵(ヒール)をつけざるを得なくなる。男性の靴でもヒールがあるのは、そのためでしょう。

というわけで、何かよく原因の分からない症状がある場合、踵に問題があると考えてみると問題が解決する可能性があるというわけです。例えば坐骨神経痛もどき、正坐できない人、などがこれに相当するのではないか、と考えています。

その瞬間、あなたの取り組んでいる相手の人生が一変する可能性があると言っておきましょう。【かかとが変わると全身が変わる】といっても過言ではない。

距骨の位置を変えるには、踵に愉気する方法も考えられるでしょうし、距骨と踵骨を誇張法で処理するのも一方法です。ですが、こういう言い方では非常に分かりにくいかもしれません。難しく考えず、距骨を前へ押すのも一つの方法です。

踵が重要と書きましたが、正確に言えば足首にある「距骨」(*注)が重要ということです。ほんのわずか距骨がズレていると全身の不調を呼ぶということになります。靴の重要性も、これで納得していただけるでしょうか。

操法を受けに来られる方々をみていると、ほとんどの人が足首の調整を必要としています。履物がどれだけ身体に影響を与えているかを毎日、実感しています。

靴(履物)をけちったら医療費がかかるから、履物にお金をかけるのが得ということです。変な健康サプリや健康グッズにお金を掛けるらいなら、履物にお金をかけよう。

それとともに、かかりつけのいい靴屋さんを探そう。病院ショッピングをする前に、靴屋ショッピングを。

*注 「距骨」──スネの骨(脛骨)の下、踵の骨(踵骨)の上にある独立した小さい骨。これの位置のわずかの変位で、人は体のバラスをとっている。もちろん、バランスに関係した骨は他にもあって、距骨だけではないが。

990 踵の重要性と間接法

第990号 2017年9月23日
▼ 踵の重要性と間接法

膝痛で通って来られている70代の女性が、急に痛くなったのでみてほしい、と言って来られました。

さっそく来られたので、どこが痛いのか、と尋ねてみますと、膝の裏側が突っ張る感じがするというお答えでした。

通常、こういう症状であれば、まず疑うのは、脛骨の前方転位(前にズレている)です。ところが、どうもそうではないらしい。

膝裏(膕、ひかがみ)からふくらはぎの方向に引っ張られる感じだという。となれば、私は踵を疑います。「末端に原因あり」という原則どおりです。

距踵関節(かかととその上にある距骨のつなぎ目あたり)の後ろを押さえて見ると、痛みが出ると言われる。

こういう場合、踵骨の方に痛みが出るよりも、むしろ距骨側に痛みが出ます。ということは、距骨が後ろにズレていることになります。

しかし距骨という骨は、筋肉の繋がらないベアリングの役割を持っている骨なので、これが後ろにズレているとなると、重心が後ろに寄っていることを示していると考えられます。

この場合、どうやって修正したらよいか。色々方法は考えられます。いままでこういうことをしたことがないとして、の話しですが、もちろん。

操法の時に、これまでやったことのない方法を採用しなければならないという場面に遭遇することは珍しくありません。その時に即興で案出しなければならない。

「即興で案出」などというと、不安を覚える人がいるかもしれませんが、操法というものは、本質的にそういうものだと思っておかなければなりません。出来合いの方法があって、それを適用すれば問題が解決するというほど甘くはない。

むしろ、相手の身体の状況は無限に変化のあるものですから、対応も当然、無限のバリエーションがあって当然です。一言でいえば、「諸行無常」。

というより、正確に言えば「諸法無我」でしょうか。世界のどんなものにも実体がない。どんなものにも「実体がない」というのは、操法の上でも重要な原則の一つだと思います。

で、どんな方法を採用するのか。

直接法(微圧法)なら、踵骨を動かないように固定しておいて、距骨を少しずつ前に押す方法が考えられます。

間接法(操体法)なら、距骨を後ろに引っ張っておいて、そっと離す方法でしょうか。

同じく間接法(共鳴法)なら、小指の第1関節掌側のところから、少し爪先方向に擦る方法。

こういう場面でどれを選択するか、という時に、その操者のセンスが問われます。つまり直接法が好きな人、間接法が好きな人、という違いがあるように思います。

ここで、「直接法」というのは、いわば車体のへっこみを叩いて直すような方法です。これは発想法としては一番わかりやすいでしょうが、安易にすぎ、事故を起こしやすい。特に力を直接歪みの箇所にかけてゴリっとやる方法。

「間接法」とは、へっこみを叩いて直すのではなく、へっこんでいるところを裏から余計にへこませる方法にそっと押すと、身体が反発して次第に直ってくる方法です。

こちらは事故の可能性が低いだけでなく、身体の自然性に従っていますから戻りにくい。同じく間接法でも共鳴法なら、患部に触ることもありませんから、もっとも安全性が高い。いわばリモート・コントロールですから。

さて話がもとに戻りまして、この時は、この女性の踵を正常にするのに共鳴法を使って行いました。これはテキストにも載せていませんし、講座でも話していません。いわば、即興で案出した方法ですが、それが奏功したことになります。

このようにして距骨の位置が改善しますと、膝の裏側のつっぱりが消失しました。ひざ痛を
踵で直したということになります。こういう場合もあるという例として、取り上げてみました。こういう意味でも、このような操法は「間接法」になっています。

つまり「間接法」という名称は、患部を直接さわらない、という意味と、患部とは別の場所に根本原因を発見して離れた場所から攻める方法、という意味も持っています。もちろん、さきほど書いたように、反対側から少し歪ませると直るという意味も含まれています。

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986 しゃがめない人

第986号 2017年9月1日
▼ しゃがめない人

絶対にしゃがめない、という人がいます。このごろは和式トイレが減ったからいいようなものの、用を足すのに行くのに困りますね。

そういう人は今少しでしゃがめるのだけれど、と言いつつ、両腕を前に出して、しゃがもうと頑張りますね。あれは、どうしてなのか、というところから、考えていくことにします。

両腕を前に出して、何をしているのか。何をしているわけでもない。腕を前に出さないと、後ろに倒れるから、腕を前に出しているわけです。つまり、こういう人は、重心が後ろに偏っていることが分かりますね。腕を前に出すと、わずかでも、重心が前に寄りますから、ひっくり返らずに済む

そうやって頑張っているわけです。ちなみに、おれはしゃがめるぞ、とか、私は簡単にしゃがめるわよ、と威張っている人でも、腕を後ろで組んでしゃがんでみてください。

そうすると、隠れ「しゃがめない人」が結構いることが分かるかもしれません。

しゃがめる、と言っても、踵がピタっとお尻についている、くらいでなくては、本当にしゃがめるとは、いえませんので、念のため。

「クソッ」と悔しがっても、しゃがめないものはしゃがめない。

踵がお尻につくというのは無理でも、せめてふくらはぎとふとももの後ろが密着しているのでなければ、ねえ。

982 末端に注目(1)

第982号 2017年7月23日
▼ 末端に注目(1)

70代女性Hさん。膝の状態がよくないと来られました。ところが、その症状が普通の膝痛とは違っています。膝が痛いというと、膝の内側とか、お皿の下とかが痛いと言われることが多い。

Hさんは、膝の裏がつっぱって痛いという。特に、椅子に坐った状態から立ち上がる時に膝の裏が突っ張って痛いのだそうです。

裏が痛いという場合は、脛骨が大腿骨に大して前に出ていることが多いものですが、Hさんの膝を調べて見ても、脛骨が前に出ている様子はありません。

どんな症状でも、このように標準的なパターンからずれている場合は、原因の解明が難しいものです。私の場合、最初に徹底的に原因を究明する作業をします。そうでないと、無闇に「症状を追いかけ」て、結果がでないという情けないことになってしまうからです。

「徹底的に原因を究明する」といっても、いつもうまくいくとは限りません。最後の最後まで、何が原因か分からずじまいということもあります。こういう時に、「症状だけを追いかけて」みてもうまく行きません。

よくどこかの整体へ行って具合が悪くなった、どこそこの整骨院へ行ったけれど、よくならなかった、と言って来られる人がいらっしゃいますが、施術の様子を聞いてみると、大抵は「症状だけを追いかけ」て失敗していることがわかります。

ということは、施術者にとって、「症状を追いかける」誘惑から逃れるのが難しいということを意味しているでしょう。この人の症状は、どこがどうなっているのか難しいという場合、つい症状を追いかけたら何とかなると思ってしまうのですね。

「症状を追いかける」といえば、操法のプロは、どういうことか経験があるので、よく分かると思いますが、施術経験のない人には想像するのが難しいかもしれません。

そこで少し説明しておきましょう。例えば腰が痛いという。

これは仙腸関節が緩んでいるのだろうと見当をつけて、骨法などで仙腸関節を締めてみます。ところがまだ真ん中のこの辺りが痛いという。そうすると仙骨が歪んでいるのか、と考えて仙骨の歪みを正そうとしてみる。すると、真ん中の痛みは引いてきたけれど、今度は腰骨の右上が痛いという。・・・

という具合で、その時その時で、痛みのあるところを次々施術して行く。これが「症状を追いかける」と私がいう意味です。

こうなると、とどのつまりあちこち触りまくって、どうにもならない。これでもか、これでもか、という最悪のパターンに嵌ってしまうわけです。

さて、話を戻して。Hさんの膝のことでした。おっと、今は夏休みで操法はしていないはずじゃないんですか。と訊いて来られた方がいたので、釈明しておきますが、原則は夏休みなんです。けれど、腰が痛くて動けません、どんな時間でも行きますので、何とか、などと言って来られる人があるので、そうも言っておられません。時々開けています。

でHさんの膝。いつもの膝痛のパターンに従って最初やっていたのですが、どうも感覚的に違う感じがする。これではダメだ。じゃあどうする。一つの定石は「末端に注目」。これです。うまく行かないときは定石に戻るというのは、碁や将棋だけではありません。

膝が痛い、しかも裏が突っ張るという場合、末端はどこか。脚の裏側の末端で問題を起こしやすいのは、どこかを考えればいいわけです。答えは踵。

踵の骨つまり踵骨はよくズレを起こしやすい場所で、起きた時に踵が痛いという症状を経験している人は多いでしょう。踵のところの踵骨と、その上に乗っかっている距骨との関節、つまり距踵関節(距骨下関節)が前後にズレている人は多い。踵骨が後ろにズレ、距骨が前にズレている状態になっています。

この状態になると、踵の後ろを押すと痛い。場所を詳しくいうと、アキレス腱の下(付着部)です。この辺りが痛む。Hさんのこの場所をぐっと押してみますと、予想通り、「痛い」そうです。

この状態を改善する方法について。仰臥してもらい、操者は受け手の足首を上からぐっと押さえ、足の中足骨の辺りをつかんで、足首を前後に動かす。すると、上から押さえているので、床からの力が踵骨を上に押し返す格好になっています。

この状態で足首を前後に動かすと、踵骨は下から押し返されて正しい位置に戻っていく。直接法ですが、これが威力を発揮します。しばらくゴキゴキという動きを続けて、先ほどの痛みがどうなっているかを確かめますと、かなり痛みがとれたという。そこで、もう少し同じことを続けて、痛みが完全になくなるようにします。

そうして朱鯨亭の傾いた階段(階段は傾いているのが当たり前だ、などと余計な半畳を入れないでもらいたい。朱鯨亭の階段はおんぼろで横に傾いているんですから)をそろそろ上がり降りしてもらった。「痛くない」。よし。

というわけで、くどい説明に付き合っていただいて、ありがとうございました。これで一件落着ですな。少し解説を付け加えると、Hさんの踵が少しズレていた。そのため、踵周辺に筋肉や靱帯の拘縮が起きて、それが下腿の後ろを経て、膝の裏(ひかがみ)の辺りを引っ張っていたわけです。これが立ち上がる時に痛みを出していた。

という次第で、「末端に注目」という定石が役に立った例でした。次回も、この定石にあたる例をご紹介しようと思っています。お楽しみに。

975 腓骨頭

第975号 2017年6月11日
▼ 腓骨頭

両脚の側面にある腓骨の上端にある膨らみを「腓骨頭」(ひこつとう、またはひこっとう)と呼びます。ご自分の膝の少し下、両側の外側面を押さえてみてください。小さな骨のでっぱりがありますね。お灸を据える人なら「足三里」として知っている点の少し外側です。

この腓骨頭が左右バランスを取る上で大切なポイントであると十分に認識されていないように感じますので、それについて書いておきたいと思います。

例えば、「坐骨神経痛」(と呼ばれる症状)の人を考えてみましょう。その人の腓骨頭を触ってみますと、必ず、患側(症状のある側)の脚の腓骨頭が飛び出しています。(両方とも悪いという人もたまにはいますから、そういう場合は、両方が同じように飛び出しているかもしれません)。

仮に左側が飛び出していたとしましょう。その場合、左の腓骨頭が飛び出しているのは、左側の腓骨と脛骨が離れていると考えられます。まとめて言えば、下腿の脛腓間が開いているわけです。

ですから、これを拇指操法で締めることは可能です。ただ、「坐骨神経痛もどき」(「坐骨神経痛」という病名そのものに問題があるので、今後は、この呼び方にします)の人を拇指操法で対処しようとすると、症状が悪化することがあります。ですから、こういう場合には拇指操法は避けた方が賢明です。ではどうすればよいか。

腓骨頭を微圧で、締めたらいいんです。具体的には、片手を腓骨頭の外側に当てがい、もう片方の手を大腿の内側に当てます。そうして微圧を掛け続けます。

こうして腓骨頭が締まってきますと、全身の左右バランスが変ってきます。例えば左の腓骨頭を締めていくと、左右バランスが右に移動します。別の言い方をすれば重心が右に移動します。

操法というものは、色々ありますが、その優劣を問うなら、一つの操法で全身のバランスが整うような操法が優れているといえるでしょう。

これでもか、これでもか、と色々やって初めてバランスが取れる操法より、さっとやるだけで簡単に全身が変化する操法の方が、受け手の身体の負担が少ないことには、だれしも納得されるはずです。操者の手間も少なくて済む。

その意味で、受け手の左右バランスがどちらに偏っているかをよく調べ、それを変化させることができれば、一つの操法で、色々な症状がさっと消えることも十分にありえます。

こんな観点から考えれば、腓骨頭を内に入れる操法は、簡単で効果の高い操法であるということができると考えられます。もちろん自分で(セルフで)やることも可能です。

970 こむらがえり

第970号 2017年4月28日

「足が攣る」という表現は、関西では「こぶら返り」ということが多いようです。「こぶら」と言ってももちろん蛇の名前ではなく、「こむら」つまり「ふくらはぎ」の別名です。

これに関連して、教室参加のTさんから資料をいただきました。

増永静人『指圧療法』(創元医学新書)より引用。

「足三里と腓腹筋起始部を指圧しながら、足先を背側に曲げる。」

「腓腹筋起始部」とは、膕(ひかがみ、膝裏)の両側に大腿二頭筋・半腱様筋の太い腱がありますが、その内側、膝窩中央と腱の中間の部分です。

続いて、もう一つの情報。

橋本行生『家庭医療事典』(農文協)からの引用。

「水泳中にこむらがえりを起こして、おぼれ死ぬ人がけっこういる。こむらがえりは、急激 な筋肉のひきつれで、その原因は過換気症候群(無理な深呼吸や過呼吸をしたため、 酸素をとりすぎ、血中の炭酸ガスが少なくなり、血液がアルカリ性に傾き、不安、興奮状  態で呼吸困難となり、筋肉が興奮しけいれんするもの)が主役である。

寝ていてこむらがえりを起こすのは、悪い夢やおそろしい夢をみて、深呼吸した時に起  こることが多い。

また、冷たい水に急に入ったり、明け方に冷気にあたることが引き金となって起こることも ある。
過換気症候群が原因となっているこむら返りの治療法は、紙袋再呼吸法を行う。これは、 紙袋を鼻と口にあてて、その中で呼吸を繰り返す。紙袋がなければ、ちょっと息をとめて
も、血中の炭酸ガスが増えるので、治療となる。・・・(以下略)」

というのですが、こむらがえりをよく起こす人は、「過呼吸」という原因に思い当たるものでしょうか。私は一向に思い当たりません。でも気づかない間におそろしい夢を見ていたのでしょう。

どんなことにしても、情報が数多く集まると、知らなかったことが色々浮かび上がって面白いものですが、寄り道をしてしまった気もします。こむらがえりについての話は、一応、以上で終わりとします。

969 腓骨が下がると

第969号 2017年4月25日

腓骨(ひこつ)という骨は、厄介な骨で、同時に便利な骨でもあります。何が厄介かといえば、下がりやすいのが厄介です。何が便利かといえば、下がっているか、外へ出てきているか、という点が解りやすい、施術者にとってはわかりやすく便利な骨ですね。

しかし、下がっているのが簡単に直せるか、となれば、難しいと言わざるを得ない。よほど柔らかさが保たれている場合を除いて、非常に硬くなっている人が多く、下がっているのを上げるのは、やはり簡単とはいえません。

それと同時に、上下に影響を与える。一つは下。趾(あしゆび)が硬くなっている人が多い。これは腓骨が趾に影響を与えるというより、逆に趾が腓骨に影響しているのでしょう。それと上。腸脛靭帯(ちょうけいじんたい、太ももの外側のベルト状の靭帯)が硬くなっている人が多い。

先日も復習会の席上、靴屋のKさんが言われるのに──趾が硬くなっているのが困る。とくに小指がカチカチですね、皆さん。──そう言われてみると、私の足の小指も確かにカチカチです。なぜか。答えを出しにくい疑問ですが、考えてみれば、腓骨が下がってくることと関係しているのではないだろうか。

腓骨が下がってきて、体重がそとにかかるようになる。すると勢い、小指に負担がかかりますから、カチカチになる。そういうことではないでしょうか。以前に小指の関節が少ない人が増えているという話題を載せましたが、こういうことと関係しているのかもしれません。腓骨が下がるという現象が、人間の退化と関係しているのでしょうか。

そうすると、O脚という現象も、腓骨と関係していることが見えてきますし、その他、坐骨神経痛なども、関連する現象であることが見えてきます。

★前号(足が攣る)へのご感想
(1) 群馬県在住 Aさん
「私は、夜中に足がつるのは、冷えからじゃないかと思います。特に夏場は冷たいものを飲んだり食べたり内蔵が冷えています。そうでなくても、冷房で冷えています。冬と違い湯船で温まることもなくシャワーでさっと済ませてしまう。私も以前はふくらはぎがつりましたが、夏場でも寝る時にレッグウォーマーをつけて寝るようにしたところ、つることはなくなりました。」

(2) ベルギー在住 Kさん
「こむら返り(足が攣る)だけでなく、私の場合は太ももから背中もずっと攣ってしまい、今までに相当苦しみました。・・・確かに寝ている時だと、気温が数日後に落ち込むだろう時とか、日中冷え込んだ時に発作の様に起こります。その痛さは経験していない人にはわかりません。

こむら返りは続いても20分です。その間冷えないようにして毛布にくるまってとにかく立ちます。まっすぐに立って待つのです。誰かがいても、どうできるわけではありません。でもそれであとは楽になりぐっすり眠れます。父はこむら返りで他の筋肉の疲れを全部持って行ってくれるからだと言ってました。

マルセル石鹸が[攣りに効きます] ・・・[足にマルセル石鹸をすり込んでおく]。 なぜ効くのかというのは、シーツの間で温まった石鹸が発生するカリウム=ポタシウムのせいです。それが引き攣りをおさえてくれるのです。これ確かに効きます。

[注]マルセル石鹸というのは、地中海マルセイユで作られていた石鹸で、海藻のカリウムを含んでいるという。日本でも、「マルセル石鹸」の名前で売られているものがある。普通の石鹸は、カリウムではなく、ナトリウム。

というわけで、「足が攣る」人は、色々と苦労が絶えないようです。

968 足が攣る

第968号 2017年4月23日
▼ 足が攣る

タイトルを見て、「攣る」とは何と読むのか迷った方がいらっしゃるかもしれません。「つる」と読みます。

これについては、以前に書いたことがあるようにも思いますが、最近、「足が攣る」という話をよく聞きますので、再度書いておきます。

「足が攣る」という現象が世間で、どのように考えられているのか、私は知りません。しかし私は、この現象は、腓骨が下垂し(下がっ)ていることによると考えています。

「足が攣る」というのは、たいていふくら脛が攣るという場合ですが、中には足裏が攣るという人もいます。あるいは趾(あしゆび)が攣るという人もいますね。

でも、どの場合でも、腓骨の下がっているのを修正すれば直りますから、すべてひっくるめて腓骨の下垂が原因といってもいいと思っています。

では、どうやって下垂を直すのか。もちろん大幅な下垂があると、複雑なことも必要になるものの、足が攣るという程度の下垂であれば、ひと擦りで治ります。

足が攣ったら、皆さん、どうしているんでしょうか。収まるまで、じっと堪えている──そういう人が大多数でしょうか。足が攣ったからといって病院に走る人はいない(いるかもしれませんが)でしょうから、自分で直すのに「治す」という字を使って文句を言われるスジはないでしょうから、おおっぴらに使うことにします。

特に夜中に足が攣るという現象が起こりやすいようですが、その原因は不明です。どなたか、ご意見のある人は教えてください。

そんなことはどうでもいいから、「ひと擦り」とはどうするのか、早く聞きたい? そうですか。ではお教えしましょう。

攣った足と同じ側の手の小指(甲側)を見てください。その側面を【第1関節から第2関節に向けて、そっと撫で上げる】、これだけです。これだけで、夜中の苦痛から逃れられます。

どうぞ、ご家族が困っている時、この方法で助けてあげてください。もちろんあなた自身の場合も。

痛みは何かの警告だという話をよく聞きますが、足が攣るのは、何の警告なのでしょう。

それは、あなたの下腿の腓骨が下がって来ているという警告です。これ以上さがると困るから、何とかしてくれ、というあなたの足からの必死の警告だと思ってください。

940 靴はからだに悪い

第940号 2016年12月27日
▼ 靴はからだに悪い

愛知県刈谷市から来られた 50 代の男性 K さん。前回単独でこられた奥様にひっぱられての来訪。

まず、奥様が来られて効果を感じ、続いてご主人が来られるというのは、よくあること。逆は少ない。こういうところにも、女性の積極性が伺えます。

聞いてみると、右手の親指から前腕にかけてひっかかりを感じ、痛むという。触ってみると、手首のあたりが妙に硬い。

硬いというより、ほとんど動いていない感じです。このごろ流行りの表現を使えば、ほぼほぼ動かない。

まずは定石どおり親指から始めます。親指の MP 関節(付け根の関節)が硬く固まっている。ただ、それだけではなく、IP 関節(指先側の関節)も硬く、そのあいだ・指節間の甲側も固まっています。

これはずいぶんひどいことになっているな、と思いながらとりかかります。

と言っても、硬いところをじっと持っているだけですが。これが最近の私の操法スタイル。ごちゃごちゃと色々やらず、じっと持っているだけの方が簡単だし効果もよい、と感じられます。

そうやって数分たち親指は少し緩んで来たものの、動きがあまりない。これ以上続けても、効果はたかが知れています。方向を変えて、手首にかかるとしよう。

手首の操法の対象は下橈尺関節です。つまり、手首の橈側・尺側にある二つのグリグリ、言ってみれば手のくるぶし二つ。茎状突起と呼ばれる二つのグリグリを両手で軽く押さえて、掌側・甲側に動かしてみる。

柔らかな手首であれば、どちらにも動くものですが、固くなっていると一方には動きません。そこで、動く方向に軽く動かして、持続するというのが普通のスタイル、つまり誇張法です。

ところがKさんの手首はまったくどちらにも動かない。重い症状です。動かないものを無理に動かすのは賢くないので、二つのグリグリを軽く持って、そのまま持続することにしました。こんなことはしたことがありません。しかし、この場合やむをえない。

── ずいぶん硬くなっていますが、どうされたんですか。

── 犬と遊んでいる時に引っ張られて。

── ああ、なるほど。

二つの茎状突起を押さえて、じっとしていると、やがて手首がカクッと内側へ捻れて来ました。何度もそういう現象が続きます。何十秒かに一度カクッ、カクッと動く。これは手首が外へ捻れていたのが内へ戻ってくるわけでしょう。

というと、腕はもともと内へ捻れているんじゃないのか。逆ではないのか、と考える人もいるに違いない。からだの関節は、どちら向きに捻れるのか、という問題は難しい点を含んでいます。

機械的に原則通りで何でも考える人は。よく言われるように、この関節はこちら向き、その関節はあちら向きと、原則どおりでいいのかもしれないが、私は、そういう原則どおりに考えることのできない人間で、一から自分で納得できる考え方をしないと満足できません。

そこで、この点の確認は、今後の課題として残しておきたい。私の脳の中の整理箱には、この種の課題がおもちゃ箱のように雑多に詰まっていまして、その中からいつも何かの課題を引き出して考えています。

K さんの手首に話しを戻します。次にどうするかを考えなければなりません。足首にこれと似た現象を見ることはありますが、普通は、このような動きをみることは手首ではありません。K さんの手首には前腕を捻るような力がどこからか働いているに違いない。

どこにそんな力が働いているのか。考えられるのは、足でしょう。足から捻れが腕にまで昇って来ているとは考えられないだろうか。足首、特に距骨周辺には、全身を支配する何かがある。

── 足首がおかしいのではありませんか。

── はい、右足首は、若い時に捻ったことがありました。ハンドボールをしていて、足首を踏みつけられ、足首が直角に回ってしまったんです。直後には、切断しなくてはならないかもしれない、と言われたこともありました。

── なるほど、そんなことがありましたか。それが手首に影響を与えているような気がします。足から引っ張られて上部がおかしくなっていることは、よくあるんですよ。

足首をみると、そんな酷い事故があったことを伺わせる痕跡は残っていませんでした。普通より少し硬い程度。しかし足指を触ってみると、かなり浮き指です。

── 靴に問題がありそうに思いますが、いつもどんな靴を履いていらっしゃいますか。

── 紐のないタイプ、スポッと履ける靴です。

やはり靴に問題がありそうです。そのことを告げると、K さんも、うすうす靴が問題だと感じていたのでしょう。すぐに靴を変えます。とおっしゃる。

というわけで、手首を対象にやっていたのに、足の問題に変ってしまいました。手と足が繋がっているというのは、私が直感的に感じたことですが、K さんも密かに感じておられたらしい。

K さんの例は、かなり珍しい例ですが、一般論として拡大できるかもしれません。つまり、手首の捻れがある人は、足にも問題があり、靴を再検討する必要がある、と。あるいは、もっと拡大して、【からだのどこかに問題のある人は、足にも問題があり、履物を再検討する必要がある】。

私たちは、手首を傷めると、手の使い方に問題があったと考え、膝を傷めると、足や歩き方に問題があると考えるのに慣れていますが、ひょっとすると、そうではなく、すべて靴に問題があるのかもしれません。

しばらく趾(あしゆび)の一つ一つに愉気をしてみました。すると、手首の動きが出なくなりました。やはり足から何らかの力が働いていたと思われます。

それほど靴の問題は大きい。「靴はからだに悪い」という名言もあります。せめてぐすぐすの靴は止め、紐をしっかり結ぶ努力くらいはしたいものです。

935 靴紐を結ばないと体がゆがむ 16/12/16

靴の紐の結び方一つで、からだの状態が非常に変化することをご存知ですか。

靴というか履物の歴史はずいぶん長いらしく、人類とともに履物があるといってもいいそうです。

そのためかどうか、履物を軽視している人が多いように思えます。ク◯ックスなどというサンダル形式のものを外でも履いている人がいますが、庭をうろうろする程度ならいざしらず、外出時にあれで歩くのは感心できません。

サンダル形式のものに限らず、【踵が固定していない履物】(下駄や草履はまったく別の範疇に属します)は足指を傷めるだけでなく、【からだ全体をゆがめる】結果になっているように思われます。

このメルマガでも一度とりあげたことがある話題として、「浮き指」がありました。

実際、趾(あしゆび)を見せてもらうと、ほとんどの人が「浮き指」になっていると言っても過言ではないでしょう。

第3関節が上方へ曲がり、第2関節が床から浮いてしまっている形の人が非常に多い。

その原因の一つは、つっかけ形式の靴を履いている人が多いこと。それから、重要なのは、靴紐をしっかり縛っていないことです。つっかけ形式とは、長靴(ブーツを含む)、スリッパ、上履き類などです。

例えヒモ靴を履いていても、靴を脱ぐ時に紐はそのままの人が多い。つまり紐を飾りとみなしている人が多い。

靴紐をしっかり結んでいないと、どうなるか。

大抵の靴は踵が高く作ってありますから、足先が靴の奥まで突っ込まれることになる。

すると、指先が奥に当たって押し返される。これが歩いているあいだ中ずっと続きますから、どうしても指先が曲がってしまうことになります。つっかけ形式の履物も同様です。スリッパとか、ブーツとかも同じことでしょう。

ところで、先日のセルフ整体教室でのこと。教室ご参加者の皆さんに、毎回、自己紹介+近況報告をしていただいております。これは参加者の顔ぶれが毎回変化することもありますが、少しずつでも、皆さんに向けて何かのメッセージを出して、互いに情報交換をしてもらいたいということもあります。

その時、参加者の一人Nさんが、整体を受けた時に教わった靴紐の結び方を子どもたちに教えたところ、縄跳びが上手になりました、という話をされたんです。

なるほど、と納得したわけです。やってみると分かりますが、紐の結び方ひとつで、歩き易さが変化します。縄跳びの技が向上したとしても不思議ではありません。

この靴紐の結び方は、YouTube でも見られます。「イアン・ノット」で検索すると、色々出てきますから、どれでもいいでしょう。ただ、この方法は、ちょっと見た目には、難しそうだな、と思った人は次の方法へ。

これとは少し違った結びです。しっかりと結ばれて、決してほどけません。Nさんにお教えしたのは、この方法でした。→

https://www.youtube.com/watch?v=BN4ss4OpXF0

整体を受けに来られて、帰宅してすぐに痛くなったと電話をして来られる人がいますが、こういう人は靴の紐に問題があると思います。

【靴紐の結び方ひとつでからだの状態がころっと変わる】のですから、心したいものです。

靴の影響がこれほど大きいことが意外に知られていないのは残念です。そのため、私は、整体を受けに来る人ごとに靴の履き方を指南しないと行けないという状態に陥っています。次回来られるときまで、おかしな靴で歩いてもらっては操者も困りますし、ご本人もせっかく整体を受けたのに、いつまでも何だかおかしい、というのも具合の悪いものです。

最高の健康法は、靴の結び方だ、と言っても言い過ぎにならないと思います。逆に靴紐を結びっぱなしにしていると、いくら立派な健康法を行っても無駄になるかもしれません。

 

930 脚長が揃う 16/11/18

脚長(脚の長さ)が違うと色々不都合が出て来るかもしれません。ちょっと考えてみただけでも、歩きにくい。まっすぐに絶ちにくいといったことがありそうです。股関節の不都合もあるかもしれません。

脚長をどこからどこまでと考えるか、考え方によって違いがあるでしょうが、とりあえず、大転子のところから始まると考えれば解りやすいと思います。

大転子というのは、股関節の外側、大腿骨の角といえばいいか、骨盤に大腿骨が差し込んである場所といえばいいのか。要するに、股関節の横あたりにぐりぐりの骨の突起が感じられます。と言っても、腸骨(こしぼね)のことではないので、お間違えのないように。

もっと、ずっと下、股関節の横です。。この位置は、手との相応関係でいえば、どこになるのかというと、小指の中手骨骨頭の側面です。わかりやすく言うと、手の小指の手前にある長い骨の付け根の側面。これが大転子に相応します。

この点に軽い刺激を入れると、大転子が変化し、脚長も変化するということです。

さて、それでは始めましょう。

初めに左右の内果(うちくるぶし)の位置で、脚の長さを較べてみます。仮に右が長く、左が短いと仮定しましょう。もちろん逆の人もいます。

こういう場合、小指の中手骨の骨頭側面を、右は手前方向、左は足先方向に撫でて、しばらく、そのまま受け手に寝ておいてもらいます。

すると、受け手の内部感覚で右脚が伸びる感覚があって、数分してから見てみますと、両足の長さが揃っています。そんなばかなことがあるはずがない、と思う人は、実際にご自分の脚で試してご覧になればよいでしょう。

今まで色々な人で試してみましたが、全然動かなかったのは、ご老体のみで、大抵の人は、脚長が揃って、立ち上がった時に、「違いますね」「あっ長くなった」などとおっしゃいます。

もっとも何にでも例外はあるもので、股関節に人工関節が入っている人の場合は、左右の脚長が違う状態でバランスをとっているらしく、脚長が揃うと却ってあるきにくくなった人もいると試してみた人から聞きました。でも、これも慣れの問題かもしれません。

教室で、この実習をしている時に、片方をどんどん伸ばしたら、どうなるかしら、などと奇抜なことを考えていた人もあるようですが、心配しなくても、そういう摩訶不思議なことは起こりません。

多分、関節のアソビの部分で縮んでいたところが伸びるのでしょう。決して必要以上に伸びるような奇妙なことはありませんので、ご心配なく。

また操法を間違えた時とか、逆にしてみたいという時は、操法を逆にすればいいだけのことですから、言ってみれば、脚長を自由に揃えることができるわけです。

脚長が大きく違う人の場合は、うまく行かないでしょうが、少しばかりの足底板で調節するような厄介なことをしなくてもよくなれば、脚の不自由で困っている人にとっては朗報になるかな。色々お試しください。

不都合や、すばらしい成果などありましたら、お知らせくださると、さいわい。