第1108号 2019年7月19日
▼ 傷だらけの人生
これまで怪我が多い人は、それ以降も、怪我が多い。Nさんも、その例に漏れない。
右足の捻挫は、若いころ、バスケをやっていて、やってしまったそうですし、スキーに行った時に、お尻を打って、尾骨も折れていました。こういうことが色々と続くことが多い。
すると、あちこちにそのしこりや、靱帯の伸び、などが残ることになります。
まずは足首の故障から始めてみよう。足を色々と探っているうちに足裏の長趾屈筋の腱が張っていることに気づきました。
左の長趾屈筋を緩めると、背中の脊柱起立筋が緩むはずです。そこで、伏臥になってもらって、起立筋を確認しました。
腰椎のところで起立筋がピンピンに張っていて、腰椎が沈んでいるように感じる人が多いですが、特に老人ほど、その傾向があります。Nさんの場合、老人という年齢ではないけれど、腰椎が深く沈んでいました。
そこが緩んで、深く溝になっている感じがなくなっていました。
ただ、左の肋骨が下がっているので、エーーイッと一声。これで左の肋骨が上に上がりました。
次に母趾操法をしようと考えました。これは下腿を安定させるための方法です(足の母趾を誰かに押さえてもらい、ぐっと押し合った後、ぱっと勢いよく離す)。左の下腿が安定せず、腰を引っ張っていると感じたからです。
ところが、母趾操法をしようとすると、左足に力が入らないと感じます。足に力が入らない場合は、側頭骨と頭頂骨の境にある鱗状縫合のところに愉気すると力が入るようになる。
2分ほどもそうしていて、再び母趾操法に戻ると、確かに力が入るようになっています。
その後、頭のことを思い出したので、頭を打ったことはないか、と聞いてみました。すると、後頭部を打ったことがあると。そこで、日本とブラジルの関係にある対蹠点の前頭部を探ってみると、そこにも出っ張りがあります。
この二点を愉気していると、耳のこもっている感覚が少しずつ緩んでくるらしい。こういう効果は、これまで確認していませんでしたが、そういうこともあるらしい。
次はどこを狙うか。やはり左側ですね。左眼がしんどいということだったので、左手の「蝶形骨共鳴ポイント=小指の中節骨の外側」をそっと指先方向に撫でてみると、左眼が動く感覚があると言われる。
もうこうなってくると、一つ一つ考えながら次のポイントを探る必要はありません。ジャズの即興演奏の要領というか、一つのポイントを触ると、そこから次のポイントを触るヒントが次々現れてきます。
インプロビゼーションを楽しんでいるような調子で、次々と進んでいきます。Nさんは、過去にどこを打ったか、次々と思い出されるらしく、事故やら、スポーツの怪我やらが次々と出てきます。どんな順序だったか思い出せないほどです。
でも最後は骨盤の捻れを扱った操法だったと思います。頸の周りにかゆみがあって、恥骨操法をやったのだと思います。これがほとんど最後。腸の動きが悪いという話をされたので、それなら骨盤のゆがみが直ったので、大丈夫だと申し上げたと思います。
こんなに難しい症状の方を相手に、鼻歌の一つも出て来そうな勢いで即興演奏ができたのは、ラッキーとしかいいようがない。
天の神様も、しゃれた遊びをなさるようです。傷だらけの人生も、まんざらではない。