首が重い奇病

第1105号 2019年7月16日
▼  首が重い奇病(2)

昨日の続きです。首が重いと言われる症状で、何がなんだか分からず、私が困り果てたという状況でした。

少し楽になったと言われるところからは、一つの操法をする度に確認しながら慎重に進めて行きました。

両脚の腓骨を上げて、確認すると、大変楽だと言われる。

もう一度、腰椎を整えて、どうですか、と聞いてみると、動きが軽快になりました。

という具合。

こんな調子で続けて、最後の仕上げは体軸操法。
https://shugeitei.wordpress.com/2018/12/27/1050%E3%80%80%E4%BD%93%E8%BB%B8%E6%93%8D%E6%B3%95-2-0/
(グーグルで  “体軸操法” と引用符付きで入れて検索すると出て来ます)

普通は体軸操法で、あらかた整えてから、細かいことに進むというようにしているのですけれど、今回は逆にやってみたわけです。

全部終わってから、Oさんに確認してみると、首が自由に動く、こんなのは初めてです、と嬉しそう。

Oさんが帰られて、その晩のこと、Oさんを紹介して来られた方から電話があり、帰り道、調子がいいので、朱鯨亭からJR奈良駅まで、歩いたというから飛び上がりそうに驚きました。

しばらく立っているだけでも、しんどい、と漏していたOさんが、この道のりを歩くとは尋常の出来事ではありません。何しろ、早足で歩いても20分はかかる行程ですから。

このあと、私はすっかり考え込んでしまいました。どう考えても、これは私が直したのではない。Oさんのからだに治る力があったから治ったと考える人もいるでしょうが、それでも筋が通らない。

わけのわからない症状に対して、私が色々と判断する力を持っていたわけではないですから。

何が起きたのか。さあ、この続きは、読者の皆さんに考えていただきたい、と思っています。

朱鯨亭 http://shugeitei.com/

背骨の捻れ

第1063号 2018年11月22日
▼  背骨の捻れ

少しばかりぼんやり過ごしていますと、たちまち時間が経って、このメルマガの発行が遅れてしまい、読者諸氏のご期待に添えなくなっていると気づき、愕然とすることがあります。

少し言い訳めいたことを申し上げると、本当はぼんやり過ごしているわけでなく、あれこれと工夫を重ねたり、どこかへ行って発想の転換をはかったりしているんですが。

先日などは、「大和三山」の一つ香具山(かぐやま)に登ってみました。頂上から眺めると、西北西に二上山が望まれ、真西に畝傍山がくっきりと見えました。香具山の付近には、興味深い史跡も数多く、その話も面白いのですけれど、それはまたの機会にとっておくことにいたします。

さて朱鯨亭では、背骨の捻れている方が続いています。というより、私自身がそのことに注目しているために、背骨の捻れというテーマが気になっているということです。

一般的にいえば、右利きの人が圧倒的に多いですから、右肩を前に出して、左側が後ろに来ている人が多いことになります。言い換えれば、左回り(時計と逆回り)の捻れが多いことになります。(もちろん左利きの人の場合はすべて逆になります)

すると、椅子に座っていただいて背中から見ると、左側が後ろに来て、右側が前に行っている人が多いことでしょう。

床にうつ伏せになってもらうと、左側が盛り上がって高くなっており、右側が下がって低くなっていることでしょう。

中には、このような捻れがほとんど見られない人もいますが、それでもよくよく見ると、どちらかに少し捻れている。

大正・昭和初期に活躍した操法家の高橋迪雄(みちお)なら、打ち込み法を使って、一発でうまく直してしまうのでしょうけれど、私たちがまねをしてみても、そううまくはいきません。

なんとかうまく一回で直す方法はないものか。いろいろと工夫を重ねて、たどり着いたのは、コロンブスの卵というような方法です。自分でも大真面目にこんなことをしている姿がおかしい。

共鳴法でいえば、背骨は手の中指と対応しています。それがどちらかに捻れているわけですから、それを修正する方向に捻り返せばいいのではないか、と考えました。

上記の例でいうと、腰椎のところが逆時計回りに捻れているとしましょう。つまり伏臥してもらった時に左側が床に向かって高く、床からみて右側が低くなっているとします。

その時、右手の中指を用意します。共鳴法の原則からすれば、腰椎は中指の中手骨ですけれど、そこは大まけに負けてもらって、中指の全体を背骨と考えます。

すると、中指の基節骨あたりが腰椎ということです。そのあたりを左手で握り、指先から見て時計回りの方向にぐるりと回してみます。もちろん力をかけてやるわけでなく、いつもの通り、皮膚だけをそっと持って回す感じにしてください。

そのままじっとしているのではなく、ぐるりと回す格好をしてパッと離すだけです。

そんな漫画のようなことをして、何が変わるものか、と思う人が多いでしょうが、それが不思議や不思議、人によっては、そのまま放置していると、あっというまに変化していることがあります。もちろん、反応の速さは人さまざまで、遅い人もあり、ほとんど変わらない人もあり、あっという間に変わる人もあります。

変化の遅い時は、何度か繰り返し、しばらく待つことが必要です。じっと待たなくても、その間にほかのことをして、すっと元の座り位置に戻ると、いつのまにか変わっているということがしばしばです。

これをしておくと、ほかの症状が簡単に解決しやすい。例えば膝痛などは、この操法をやっておくと、効果的です。

どうぞ、お試しください。このごろは、あらゆる症状はこれで解決するのではないか、と妄想をたくましくしています。

朱鯨亭 shugeitei.com

1008 バスタオル枕

第1008号  2017年12月15日
▼ バスタオル枕

どんな枕がいいかと迷っている人が多いように見受けられます。デパートや寝具専門店で枕を探すと、高値がついていて買うのを躊躇する人が多いかもしれません。私もその一人でした。

私自身はこれまで枕をしないのがいいと考えて、それを実践してきましたけれど、枕で困っている人を見るにつけ、そうも言っておれなくなってきました。

どんな枕がいいか、これが決定版という提案はありませんが、私自身が試してみて、これなら「まずまず」というものをご紹介しようと思います。

ただし、これは万人向きの枕というわけではないので、お間違えのないように願います。仰向け寝がよいという人向きです。

ちかごろ、「最高の枕」などと宣伝するものを何種か、見掛けました。それらに共通するのは何か。中心部が凹んでいることです。

つまり、中心部では仰向けに寝る。両側の盛り上がり部分では、横向けに寝る、という機能分化が考えられています。

これを試してみようと考えたわけです。といっても、高い材料を使って高いお金がかかるものは避けたい。収入の格差が議論される時代ですから、誰でも使えるものにしたい。

そこで、次のようにしてみました。

バスタオルを1枚用意してください。材料はこれだけです。

まずバスタオルを縦に(縦方向の中心線に沿って)二つ折りにします。細長い帯状のものになりますね。

次に、その両端を中心部に向かってクルクルと巻いて行く。中心部は巻かないでそのままにしておきます。

これを裏返しにすると、両側の渦巻き状の部分と、中央の帯で繋がった部分から成る左右対称の形になります。これを裏返すと出来上がりです。

この中心部分に自分の頭を載せると枕になります。タオルそのものですから、汚れればすぐに洗濯できます。こんな便利な枕は他にありません。

ただし、これは仰向け寝の人専用ですから、横向きでないと寝れないという人には向きません。

寝返りが打てないわけではありませんが、仰向けが主になるのは間違いないので、寝返りを打たないと身体に悪いと信じている人は使わないように。

私は横向けで寝るのが苦手で、横向けになると、何だか苦しくてたまりません。ですから、この枕がぴったりというわけ。これは何々の体癖だという詮索は好きな人に任せておきます。

横向けになると、夜中に腕や肩が痛くて、という人にも使っていただけるはずです。

枕はある程度の高さがないと物足りない、という人は、大判のバスタオルを使うなり、4ツ折から始めるなり、3ツ折りから始めるなり、自分に合ったものを工夫してください。

何しろ、バスタオルを折り曲げただけのものですから、どんな形にでもできます。お好みに合わせて、あなたの枕を作ってみてください。

枕で困っている人が多いので、考えてみた次第です。別にこれが枕の決定版と主張するつもりはありませんので、念のため。

試してみられた方は、この枕は良かった、とか、この枕はアカンとか、何か感想をいただけると幸いです。

1001 首こりからの逃走

第1001号 2017年11月16日
▼ 首こりからの逃走

[第997号] で書いたように、首こり状態の人が大幅に増えています。

色々な要因があると想像できますが、何が原因でそうなっているかはともかく、それから逃走する簡単な方法を書いておかないと、苦しむ人が増えてくることでしょう。

大方の人がPCやタブレットなどに一日向かっているような異常状態の中では、今後も増え続けると考えて置かなければ、なりません。

あなたの首の右側が凝っていると仮定しましょう。

あなたの右手の中指を見てください。これはあなたの首の右側と対応しています。そこで、右手中指の第2関節の外側(薬指側)をさっと指先方向に撫でます。1センチほどの長さでOK。

さて、首を回してみてください。右をみると、いままであった、痛みや違和感が大幅に軽減しているはずです。

(首を回すというと、首を色んな方向にランダムに回す人が多いですが、そうではなく、痛みや違和感のある側へ水平に回す、あるいは反対側へ水平に回すという意味)です。

これなら、PC作業中に痛くなってきたような時にも、自分でさっと対応できるでしょう。もちろん、これは「根本療法」ではなく、「対症療法」に過ぎませんが、とりあえず、膏薬をはるようなことをするよりは、ずっとマシでしょう。

この程度では満足できないという向きは、朱鯨亭にお越しください。他にも色々な方法がありますので、お教えします。

997 首が凝る、あるいは首こり

第997号 2017年10月26日
▼ 首が凝る、あるいは首こり

ちかごろ「肩が凝る」といわず、「首が凝る」と表現する人が増えているように、私は感じています。

肩が凝るというより、首のきわが凝っていて、首を左右に回旋させようとしたり、首を横に傾けようとすると、突っ張るという症状を「首が凝る」と表現しているのでしょう。

これも肩こりの一種には違いないが、わざわざ首が凝ると表現するには、それなりの理由もありそうです。このことを少し考え、解決法を提示してみたいと思います。

原因の主なものは、やはりPCとスマホでしょう。私自身も少し首凝りの気味があって、PCの作業を続けていると、症状が強く出ます。

このような症状を福富章さんという方が「パソコン・スマホ症候群」と呼んでいます。

福富章 『指ではじくだけで肩の痛みが治る!』
自由国民社、2015年、1300円+税

この本は、筋肉の筋腹(太いところ)ではなく、腱(*注1)の重要性を強調している点で、参考になる内容を備えていますが、論点が十分に整理されておらず分かりにくい点があるのが残念。

この本の表現を使えば、「等尺性収縮」(*注2)が問題だということになります。

ここでは、この福富さんの方法ではない別の方法で、首こりを解決してみたい。

首こりの症状をかかえている人を観察してみると、左右の腕が硬くなって、頚椎7番(*注3)、胸椎1番あたりが左右どちらかに引っ張られていることが多い。このあたりの椎骨は、左右の腕からの張力のバランスの上に成り立っているからです。

左右両腕のバランスが崩れていると、このあたりの骨がどちらかにずれてしまうわけで、野口晴哉のような名人さえ、自分の背骨もこの辺りが崩れているとどこかに書いています。

たいていの人は、左右どちらかの腕を逆側より頻繁に使いますから、頻繁に使う方の腕が硬くなっているとしても不思議ではありません。

ということは、左右両腕のバランスを回復させたら、頚椎7番あたりのバランスが回復して、この辺りの違和感が消失するのではないか。そう考えると、解決策が見えてくるでしょう。

腕の張力(*注4)でおそらく一番強いのは、前腕部の二本の骨(橈骨と尺骨)(*注5)の開きのために生まれている張力です。ですから、この前腕の開きを締めさせたら、左右バランスが回復するのではないだろうか。

そこで、よく使う方の腕を前に突き出して、寝床体操の5番(*注6)をすればよいことになります。

事実、やってみますと、確かに楽になる。よく使う方だけでなく、反対側もやってみると、更に楽になりますね。

(*注1)腱 筋肉の両端は骨に付着しているが、そのため両端は細くなっている。この細くなった両端のやや硬い部分を「腱(けん)」と呼ぶ。

(*注2)等尺性緊張 関節を動かさず、筋肉の長さを変えずに筋肉の張力を高めるような収縮。マウスを持って同じ角度を保持している時のような筋肉の働き。

(*注3)頚椎7番 第7頚椎と呼んでもよい。7個ある頚椎(首の骨)の一番下の骨。このすぐ下に「大椎(だいつい)」というツボがある。その下の椎骨が胸椎1番。

(*注4)張力 人間の身体には、重力が働いている。腕には腕の重みが掛かっているし、
脚には脚の重みが掛かっている。従って、何か痛みなどがある時、その原因は、こうした下からの重みが一役かっているのではないか、と考えるのが筋道である。しかしこのようなことを指摘している人は少ないようである。人体の状態を観察する時の要点の一つは、この原則を考えること。

(*注5)橈骨と尺骨 ひじから手首までの前腕部には、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という二本の骨がある。この二本の骨は前腕部の作業が続くと、次第にその間隔を開いて行く。その結果、この部分が硬くなっている人が多い。これも張力の一つの原因となっている。

(*注6)寝床体操の5番 goo.gl/9N8Mgr にやり方の説明がある。

980 側頭骨と肩こりの親密な関係

第980号 2017年7月11日
▼ 側頭骨と肩こりの意外に親密な関係

肩こりの原因は、背中にあると思われていますし、現に足首をさわれば肩こりが解消するという考えもあります。ところが、どうもそれだけではない。側頭骨・後頭骨といった頭の骨の位置が肩こりに無関係ではありません。

特に最近のお客様の訴えを聞いていますと、肩こりというか、首こりというか、ともかく肩だけでなく、首が苦しくなっている方が多い。これが何に由来するのかは分かりませんが、PC作業やスマホと関係があるのかもしれない、と思われます。

先日来られた方は、「それ、首が凝っているのでしょう」とお聞きしても、「首ではなくて、肩が凝るんです」と言われる。肩か首か、という領域あらそいは、さておいて、どうもこれは首、しかも頭の骨が関係していそうだ、と思われたので、側頭骨をそっと上げてみました。すると、「楽になりました」と言われる。やはり。

側頭骨をそっと上げるとは、どうすればいいのか。側頭骨の位置を明確に表しているのは、耳たぶの後ろの「乳様突起」(にゅうようとっき)の位置です。「乳様突起」とは、耳たぶの後ろにあるぐりぐりの骨のでっぱり。これを左右さわって見て、大きさ(出っ張り具合)が違えば、大きい方の側頭骨が下がっていることになります。おおよその見当でいうと、右が下がっている人が多いという印象です。

この乳様突起を上げるには、どうすればいいか。手の小指側の側面、小指の付け根と、手首の中点が乳様突起の対応点、これを「乳様突起点」と呼んでおくと。この乳様突起点を指先方向に1センチばかりなでればよろしい。その後すぐに乳様突起を触ってみると、みごとに凹んでいるはずです。つまり側頭骨はこれだけの操法でカンタンに上がるということです。

逆にいうと、側頭骨が下がっていると、それが肩を引っ張って、肩こり・首こりを起こすということです。首を左右に回してみて、どちらかに引っかかりを感じる人は、このポイントを操作してみてください。ぐっと楽になること請け合いです。

ついでながら、このポイントはタッピングのツボとして使われているポイントでもあります。両手のこのポイントを軽く打ち合わせると、リラックス感が出て来る。ということは、側頭骨はリラックスの急所であるということもできるでしょう。足に力の入らない人は、側頭骨の上にある鱗状縫合のあたりにしばらく愉気をしてもらうと、力が入るようになるのと、何かの関係があるのかもしれません。ですから、手のこのポイント「乳様突起点」に「リラックス・ポイント」という名前を与えてもいいかもしれません。

926 首の横が痛い 16/11/3

鎌倉・靜照庵の庵主、田沼雅康さんのブログを読んでいると、「右肩上がりと食欲の関係」という記事がありました。何気なしに読んでいたのですが、→ http://www.geocities.jp/josyoan/seitaidayori.html ここに次のような仮説が書いてあった。

──特にこりが右肩に集中するようなら食べすぎも疑ったほうがよいでしょう。 これは胃に関係する胸椎6番から9番の左側が硬直を起こし、左に傾いた椎骨が右側の僧帽筋を引っ 張ることによるものです。

この仮説が正しいかどうか、どうやって確かめればよいか。胸椎の左側に硬直を起こす原因を取り除けば、右肩のこりは解消するはずです。これは講座で私がしばしば強調していることですが、左腕に原因がある。左の前腕の二本の骨が開いてくると、左腕全体を緊張させ、胸椎を左に引っ張るわけです。

事実かどうか、右肩のこりやすい人は、【反対】側、左腕(前腕)の開きを締めてやれば、胸椎左側の硬直が解消して、肩のこりが消えるはずです。どうすればよいか。『ねじれとゆがみ』 の巻末に「寝床体操」の第1~第5が書いてあります。第5をご覧ください。257ページ。

要するに、腕をぐっと伸ばし、手の平を向こうに向けて開き、反対側の手で押さえておいて、互いに押し合い、パッと放す。(詳しくは本書をお読みください) この動作を数回繰り返すわけです。必要なら、十数回繰り返してもよろしい。すると、前腕の頭骨・尺骨という二本の骨が締まってきます。

ここから先は、理屈が一本道で、前腕が締まることで、腕全体の硬直が解消し、それによって胸椎の左側の硬直が解消し、それによって、右側の僧帽筋の拘縮が解消し、右肩のこりが見事に消え去るはずです。

本当かどうか、右肩に凝りがある人は、試してみよう。Go!というわけで、寝床体操は無視できない威力がありますから、何か不都合があって、どうすれば解消するかよくわからないと悩んでいる人は、数日続けてみてください。色々な不調が面白いように解消して、驚かれることでしょう。家庭に一冊、『ねじれとゆがみ』。

905 枕は是か非か

第905号 2016年7月12日
▼ 枕は是か非か

50歳代の男性Tさん。大阪市内にお住まいだそうです。その方の訴えは

──自分は昔から枕なしで寝ていた。それでまったく問題がなかった。ところが先日、目まいを起こした。調べてみると 「良性発作性頭位目まい症」 という種類らしい。ネットで色々と調べてみると、枕をした方がいいという記事をみつけた。

そこで、しばらく低めの枕をして寝ていたが、朝起きるときに、頸椎や胸椎がボキっと鳴って、不気味な感じがする。まして 『首や腰をボキボキ鳴らすと早死にします』 という本を読んで、いっそう怖くなった。何とかならないか。

厄介な話です。私自身も常に枕なしで寝ていて、たまに枕をすると、同じようなことがあるので、他人事だと思えません。そこで、枕を使わずに横になってもらい、十数分ほど寝ていただきました。その間に春風操法をしましたので、その効果があったかもしれませんが、いずれにしても、起き上がってもらうと、ボキボキという音がしませんでした。目まいも起きなかった。

[春風操法とは、寝る前に両手の外側(小指側)を小指の先端から始めて、手首まで、撫でおろす。そうして仰臥する。11分ほど寝てもらうという方法。こうして寝ているだけで全身がかなり整う場合があります]

これをどう考えたらいいのか。枕をすると、顎を引いた状態で寝るので、のどが詰まることがない、というのが枕必要論の論拠になっています。しかし、いつもそうだとは限りません。私自身は、枕なしで寝たからといって、呼吸が苦しくなるようなことはありませんし、軽い呼吸音を立てているようですが、ひどい鼾をかくこともありません。

むしろ、枕をすると、枕の高さだけ、背中が猫背状態で寝ているわけで、そのことの方が嫌な感じです。毎日、猫背になる練習をして寝ているようで、気持ちがよくありません。

枕をして寝てみて、そのあと起き上がると、猫背になっている背中が無理に引き伸ばされるような感覚があって、その時にボキっと鳴る感じがします。

ただ、横向きに寝るという人にとっては、横向きになったとき枕がないと困るというのはある気がします。だとすれば、首の後ろを支える程度の枕を、タオルで作ればいい。

具体的に書いてみましょう。まず、一枚のタオル。これはバスタオルでなく、普通のタオル、これを下に敷く。これはシーツが汚れるのを防ぐ意味だけです。その上に、バスタオルを縦に長くグルグル巻いたものを置きます。これを首の後ろにあてがう。

昔、木枕というものがありました。西式医学というグループが使っていたものです。探してみると、今でも販売されているようです。私自身は試していませんので、お勧めというわけではありませんが、試してみてもいいか、とは思います。(時代劇に出てくる、武士がしているような高い枕とはまったく違うものです)

いずれにしても、Tさんにとって、枕をするかどうかは、死活問題になっていた、枕をすると、目まいが起こらないという、あやふやな情報を信じたがために、困っていたわけですが、枕をしなかったというだけで、解決したということです。

目まいはどうすれば、いいのか。YouTube に 「試してがってん」 の動画がありますので、それを試してみてください。BPPV(良性発作性頭位めまい症)の直し方が見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=qPP_m0_FnpA

さまざまな「健康情報」のあり方について、言いたいこともありますが、それに関しては、いずれまた。

898 カフェの風景

第898号 2016年5月26日
▼  カフェの風景

奈良市内のとあるカフェで、壁際に一列にならぶ座席に坐ってジュースを飲んでいると、二つ開けて隣に30歳代の男性が坐っています。ノートPCに向かって、懸命に作業中の様子です。

彼は私が横から見ているのに気づいていません。机の上に置かれたPCの画面に目を近づけているため、横から見ると、顎を突き出した猫背、という形になっています。典型的な姿なので、参考のため写真を撮っておこうか、と考えたほどに、見事な形でした。

人の頭部の重さは体重の1割あるそうで、彼の体形から見て、体重は平均並みの60キロ程度として、6キロの重さを支えていることになります。

このごろは仕事場でもノートPCという人が多いそうですから、こんな姿は、いまでは、ごく当たり前の光景なのでしょう。なるほど疲れるだろうなあ、と思わずにいられません。

そのせいかどうか、近頃、首が痛いと訴える人が多い。くだんの彼も、作業が一段落したのか、傍らのコーヒーを啜る。その後、首を捻じって 「コキッ」 と言わせた。首にストレスが溜まって来ているのでしょう。

首のストレスというか、首が凝る、首がつっぱるという症状が出てきたら、どうするか。

おそらく、この男性のようなことをするか、凝っている方をぐっと伸ばそうとするか ── そんなところでしょう。

けれど、ここでは逆のことをお勧めしておきたいと思います。

例えば首の右側が凝っているとしましょう。右側がつっぱって痛みがある。右側の筋肉などが突っ張っているわけです。突っ張っているというのは、そちら側の筋肉が縮んでいるのですから、縮んでいるところは、さらに縮めてやる、というのが原則です。

それなら、突っ張り感のある右側を縮めてやればよいわけですね。つまり、右側に首を倒してやればよい。普通に人がやろうとする方向の逆に動かすのがよい。そうして、しばらくじっとしています。すると少し楽になるのではありませんか。縮んでいるものを伸ばそうとするから、うまく行かない。