997 首が凝る、あるいは首こり

第997号 2017年10月26日
▼ 首が凝る、あるいは首こり

ちかごろ「肩が凝る」といわず、「首が凝る」と表現する人が増えているように、私は感じています。

肩が凝るというより、首のきわが凝っていて、首を左右に回旋させようとしたり、首を横に傾けようとすると、突っ張るという症状を「首が凝る」と表現しているのでしょう。

これも肩こりの一種には違いないが、わざわざ首が凝ると表現するには、それなりの理由もありそうです。このことを少し考え、解決法を提示してみたいと思います。

原因の主なものは、やはりPCとスマホでしょう。私自身も少し首凝りの気味があって、PCの作業を続けていると、症状が強く出ます。

このような症状を福富章さんという方が「パソコン・スマホ症候群」と呼んでいます。

福富章 『指ではじくだけで肩の痛みが治る!』
自由国民社、2015年、1300円+税

この本は、筋肉の筋腹(太いところ)ではなく、腱(*注1)の重要性を強調している点で、参考になる内容を備えていますが、論点が十分に整理されておらず分かりにくい点があるのが残念。

この本の表現を使えば、「等尺性収縮」(*注2)が問題だということになります。

ここでは、この福富さんの方法ではない別の方法で、首こりを解決してみたい。

首こりの症状をかかえている人を観察してみると、左右の腕が硬くなって、頚椎7番(*注3)、胸椎1番あたりが左右どちらかに引っ張られていることが多い。このあたりの椎骨は、左右の腕からの張力のバランスの上に成り立っているからです。

左右両腕のバランスが崩れていると、このあたりの骨がどちらかにずれてしまうわけで、野口晴哉のような名人さえ、自分の背骨もこの辺りが崩れているとどこかに書いています。

たいていの人は、左右どちらかの腕を逆側より頻繁に使いますから、頻繁に使う方の腕が硬くなっているとしても不思議ではありません。

ということは、左右両腕のバランスを回復させたら、頚椎7番あたりのバランスが回復して、この辺りの違和感が消失するのではないか。そう考えると、解決策が見えてくるでしょう。

腕の張力(*注4)でおそらく一番強いのは、前腕部の二本の骨(橈骨と尺骨)(*注5)の開きのために生まれている張力です。ですから、この前腕の開きを締めさせたら、左右バランスが回復するのではないだろうか。

そこで、よく使う方の腕を前に突き出して、寝床体操の5番(*注6)をすればよいことになります。

事実、やってみますと、確かに楽になる。よく使う方だけでなく、反対側もやってみると、更に楽になりますね。

(*注1)腱 筋肉の両端は骨に付着しているが、そのため両端は細くなっている。この細くなった両端のやや硬い部分を「腱(けん)」と呼ぶ。

(*注2)等尺性緊張 関節を動かさず、筋肉の長さを変えずに筋肉の張力を高めるような収縮。マウスを持って同じ角度を保持している時のような筋肉の働き。

(*注3)頚椎7番 第7頚椎と呼んでもよい。7個ある頚椎(首の骨)の一番下の骨。このすぐ下に「大椎(だいつい)」というツボがある。その下の椎骨が胸椎1番。

(*注4)張力 人間の身体には、重力が働いている。腕には腕の重みが掛かっているし、
脚には脚の重みが掛かっている。従って、何か痛みなどがある時、その原因は、こうした下からの重みが一役かっているのではないか、と考えるのが筋道である。しかしこのようなことを指摘している人は少ないようである。人体の状態を観察する時の要点の一つは、この原則を考えること。

(*注5)橈骨と尺骨 ひじから手首までの前腕部には、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という二本の骨がある。この二本の骨は前腕部の作業が続くと、次第にその間隔を開いて行く。その結果、この部分が硬くなっている人が多い。これも張力の一つの原因となっている。

(*注6)寝床体操の5番 goo.gl/9N8Mgr にやり方の説明がある。

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