901 肘のカンタン自己操法

第901号 2016年6月8日
▼  肘のカンタン自己操法

肘に問題を抱えている人が多いですねえ。というと、私は何ともない、という反論が返って来そうです。

ところが、肘の先の肘鉄(肘頭)の周辺をぐっと押さえられると、あいた、となる人が多い。自分では痛みがないつもりでも、押さえられると痛い。こういう人は肩や膝にも問題を抱えていることが多いものです。

肘鉄の周辺をあちこち押さえてみてください。どこも痛いところはありませんか。

もし痛ければ、どうして治すか。カンタンな方法があって、抜群によく効きますから試してみてください。

まず、痛みがあった肘頭を反対の掌で包む。次に痛くない方の肘頭も痛みのある側の掌で同様にします。つまり腕組みを、肘と掌でするわけです。

後はこのまま数分の間じっとしている。それだけです。

またまた「数分」とは、どれくらいですか、などと初歩的な質問をする人がいるといけないので、言っておきますが、数分というのは目安で、当然、人により、体の状況により、違います。2分で止めて痛みが取れていなければ、もっと続ければいいだけのことです。

あまりカンタンすぎて、信じられない。そうでしょう。でも、やってみればわかります。

肩が悪い人、膝が悪い人にお勧めです。

ただし、この操法をいくら続けても痛みが取れない人は、症状が深刻化しているわけで、そういう人は、ただちに朱鯨亭に駆け込んでください。

「肘のカンタン自己操法」について、その効果を知らせてくれた方が複数あり、ご紹介しておきます。

●大阪府在住のMさん

先日、腰痛で来られた時に、「友人に教えたら、1分もしないうちに効果があったみたいですよ」と。そして、もう一人の人に勧めたら、肘だけでなく、腰まで治ったようです」とのことでした。

●静岡県在住のOさん

丁度良いタイミングで、妻が肩と膝と腰が痛いと言ってきましたので、早速、肘の操法を試してみましたところ、おっ!肩も膝も腰も良くなった! とお褒めの言葉を頂きました。

というわけで、この操法(具体的には、前号を参照してください)は、膝や腰にも効果があるようです。

肘を治すと膝が治るのは、昔から言い習わされていることで、特に珍しくありません。ですから、膝が痛くて困っている人は、この操法を繰り返し行なって肘周辺の痛みを治しておくと、膝にもよい効果があるに違いありません。

ですが、腰が治るのは、どのような理由からでしょうか。肘を治すと、肩の動きが改善します。ということは、肩から背中にかけての影響も変化するということです。背中の状態が変われば腰が変わるというのは、操法をしている人なら、いつも経験している現象でしょう。

こんなふうに、肘が変わると腰も変わります。人体には、このような連動性があちこちに観察できますから、連動制の体系をとらえることは、操法に取り組む人の大きな課題であると思います。

900 ファッションに学ぶ

第900号 2016年6月3日
▼  ファッションに学ぶ

私は時々、まるで畑違いの本を読みます。歴史や天文学の本を手にとってみることがあります。今回は、Kさんという女性から本を送っていただきました。それも畑違いも甚だしい、ファッションの本です。絶対に私が手に取りそうもない本を送りますというようなメッセージがついていましたから、Kさんは、このあたりの私の習性をよくつかんでいらっしゃったのでしょう。慧眼に驚きます。

というわけで、今回取り上げる本は、お勧めの本というわけではなく、たまたま手に取ってみた本という位置づけです。

豊川月乃
『あっ、モデルかな?と思ったら 私だった』
ダイヤモンド社(2016年3月、1400円)

まずは、気になる項目名を列挙してみましょう。

前髪を見ると姿勢が意識できる
高いヒールは誰でもラクラク履きこなせる
歩けば歩くほど美しくなる
残念な人は「開いている」
顔への思い込みを外す
バッグを持ち替えたくなる持ち方

例えば、少し引用してみましょう。

──意外なことに、前髪は体の歪みの原因になります。前髪を斜めに流している女性は、前髪を触るタイミングが多く、その場合は顔や体を傾けながら触っているため、たいてい前髪を流している方向に体が傾いています。

──モデルがウォーキングレッスンをするのは、週に1回、1時間半~2時間程度です。鏡張りの部屋でずっと自分の姿を見つめて歩き、その時間中は先生に 「首が前に出ている」「姿勢が崩れた」 などと言われ続けます。・・・

ですからみなさんも、「毎日がウォーキングレッスン」 というつもりで過ごしてください。歩けば歩くほど、360度どの方向から見ても美しいモデルに近づけるのですから、たくさん歩きましょう。

──ハイヒールを履くときは、まるで履いているように感じさせないのがいい歩き方。雲の上を歩いているようなイメージで歩いてください。

私が若い女性だったら、いえいえ若くなくても、ぜったいこの本をじっくり読んで見たいと思うでしょうね。

899 粒子状物質がいたずらをしている?

第899号 2016年5月29日
▼  粒子状物質がいたずらをしている?

一昨日の金曜日は、西日本で粒子状物質(以下 PM と略称)の濃度が高かったようです。私も外出から帰って初めて、のどや鼻、目の様子がおかしいことに気づきました。

その日の夜中に目覚めて、寝苦しいな、と感じ、いろいろ考えていると、ひょっとしてこれは、PM の影響ではないか、と思いました。PM の影響で交感神経が緊張しているのではないか、そう思ったわけです。

なぜ、こんなことを考えたか、と理由を聞かれても、的確に答えることはできません。ただ、こういう考えが生まれて来た時は、素直に従うことにしています。

アイデアが下りてくる時間として、昔から厠上、床上、馬上と言われますね。私の場合は、圧倒的に 「床上」 です。つまり布団の中。夜明け前に目が覚めて、布団の中でもぞもぞしている時に、いろんなことを思いつく時があります。

ちなみに「厠上」 はトイレの中。「馬上」 は現代ではさしずめ車や電車の中。

交感神経が緊張しているかどうか、どこで判断するか。耳の後ろの乳様突起です。乳様突起が大きく張り出している時は、交感神経が緊張型になっています。

そういう研究結果を出している誰かがいるのではなく、私が経験的にそう思っているわけです。逆に乳様突起が出っ張っていないときは、自律神経が副交感神経優位の側になっていて、安定している状態と考えられます。もちろんこの状態は個人差が大きいので、一般化すると、問題があるかもしれません。

私の骨格(側頭骨)が過敏になっていて、そういう動きをするだけかもしれません。

で、夜中に目覚めた私は、自分の乳様突起に手を触れてみた。なるほどね。かなりデカくなっています。いつもはここまで出っ張っていないから、これはPM の仕業に違いない。

昨日の日中は花盛りの植物園でゆっくり花の色と香りを楽しんできましたから、交感神経が立っているわけはない。なのに、乳様突起が出っ張って来ているのだから、心は寛いでいるのに、身体は緊張していることになります。

近頃は 「PM2.5」 などと気軽に呼ばれていますが、もちろん PM2.5 だけが問題というわけではないことを肝に銘じておくことが必要です。

PM は Particulate matter の略、つまり 「粒子状物質」。詳しくはウィキペディアを読んでみましょう。

──粒子状物質(りゅうしじょうぶっしつ、英: Particulate matter, Particulates)とは、マイクロメートル (μm) の大きさの固体や液体の微粒子のことをいう。主に、燃焼で生じた煤、風で舞い上がった土壌粒子(黄砂など)、工場や建設現場で生じる粉塵のほか、燃焼による排出ガスや、石油からの揮発成分が大気中で変質してできる粒子などからなる。粒子状物質という呼び方は、これらを大気汚染物質として扱うときに用いる。

黄砂とともにやってくるというので、中国を悪者にする言説が多いようです。確かに分布図を見ると、中国に大きな汚染源があるのは間違いないでしょうが、それだけだろうかという疑問が浮かびます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%92%E5%AD%90%E7%8A%B6%E7%89%A9%E8%B3%AA#/media/File:Modis_aerosol_optical_depth.png

この図から考えて、黄砂がもっとも大きな汚染源かもしれませんが、その他、ウィキの説明にも、「燃焼による排出ガス」とあることから、自動車の排気ガスも原因の一部をなしているはずです。そのほか、火力発電所であるとか、工場や建設現場からの粉塵なども原因の一部をなしているでしょう。

要するに、人間が出しているものが人間に降りかかって来ているということです。

具体的に、どのような被害があるのか、どんな時期に PM が増えるのか、など、有用な情報をまとめて掲載してくれている次のようなサイトがあったので、ご紹介しておきます。
http://marthanew.com/archives/2667.html

ただし専門家が作成したサイトではない、と断ってありますので、その内容の信ぴょう性については、読者それぞれで検討してください。

乳様突起の状態についても、あくまで私の個人的見解(感受性)ですので、その前提でお読みくださればさいわい。まあ、こういうこともあるかもしれない、という程度に読んでいただければ、いいと思います。

【結論】 乳様突起が飛び出している状態になっている時に、交感神経を鎮める方法はあるのか。手の平の小指側、知能線の終わり付近と感情線の起点とのあいだあたりを、知能線の終わりから始め、感情線の起点に向けて、指先方向にさっと、手の側面をなでればよろしい。すると、あらら不思議、乳様突起がへっこみますよ(下がっていた側頭骨が上がるといってもいいでしょう)。

なぜ。こんなところが、と不思議に思う人は、『共鳴法教本』 で顔の操法を研究してください。

898 カフェの風景

第898号 2016年5月26日
▼  カフェの風景

奈良市内のとあるカフェで、壁際に一列にならぶ座席に坐ってジュースを飲んでいると、二つ開けて隣に30歳代の男性が坐っています。ノートPCに向かって、懸命に作業中の様子です。

彼は私が横から見ているのに気づいていません。机の上に置かれたPCの画面に目を近づけているため、横から見ると、顎を突き出した猫背、という形になっています。典型的な姿なので、参考のため写真を撮っておこうか、と考えたほどに、見事な形でした。

人の頭部の重さは体重の1割あるそうで、彼の体形から見て、体重は平均並みの60キロ程度として、6キロの重さを支えていることになります。

このごろは仕事場でもノートPCという人が多いそうですから、こんな姿は、いまでは、ごく当たり前の光景なのでしょう。なるほど疲れるだろうなあ、と思わずにいられません。

そのせいかどうか、近頃、首が痛いと訴える人が多い。くだんの彼も、作業が一段落したのか、傍らのコーヒーを啜る。その後、首を捻じって 「コキッ」 と言わせた。首にストレスが溜まって来ているのでしょう。

首のストレスというか、首が凝る、首がつっぱるという症状が出てきたら、どうするか。

おそらく、この男性のようなことをするか、凝っている方をぐっと伸ばそうとするか ── そんなところでしょう。

けれど、ここでは逆のことをお勧めしておきたいと思います。

例えば首の右側が凝っているとしましょう。右側がつっぱって痛みがある。右側の筋肉などが突っ張っているわけです。突っ張っているというのは、そちら側の筋肉が縮んでいるのですから、縮んでいるところは、さらに縮めてやる、というのが原則です。

それなら、突っ張り感のある右側を縮めてやればよいわけですね。つまり、右側に首を倒してやればよい。普通に人がやろうとする方向の逆に動かすのがよい。そうして、しばらくじっとしています。すると少し楽になるのではありませんか。縮んでいるものを伸ばそうとするから、うまく行かない。

897 手の指が痛い

第897号 2016年5月22日
▼  手の指が痛い

Sさんは、県内の某研究施設で、研究活動をされている中年男性。手を使ってけっこう力をかけることがあるそうです。

そのためか、時々あちこち痛くなって、いらっしゃいます。今回は、手の指が痛いという訴えでした。

ところが普通の指の痛みとは様子が違います。たいていは関節のズレで痛くなるのですが、関節ではなく、関節と関節のあいだの甲側が痛いという。

初めどこから取り組めばいいかと思案をしました。甲側が痛いとすれば、小さいながらも伸筋(しんきん)があるはずです。

筋肉には伸筋(しんきん)と屈筋(くっきん)の区別があり、上腕の力こぶは屈筋の代表選手です。つまり肘を曲げる(屈曲する)時に働きますね。一方、上腕の後ろにある上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)は伸筋で、肘を伸ばす(伸展する)時にはたらきます。

指の甲側(爪側)に存在している伸筋は、指の関節を伸展する時に働きます。Sさんの手の指でも、とくに拇指(ぼし)つまり親指が痛いと言われる。痛いだけでなく、拇指の動きがおかしいとも。確かにカクカクとぎこちない動きです。

そこで、伸筋のあるところに愉気をしてみることにしました。

その前に腕の異常を治すときの鉄則を。それは橈骨の下がりを修正すること。これを忘れてはなりません。橈骨の上端と下端に指をあてて、そっと微圧をかけます。これで橈骨がいくぶん上がり、拇指の付け根の圧迫が除去されたはずです。手や肩も含め、腕のどこかに異常がある時は、必ず、この操法を最初に行います。

それから異常箇所の対処にかかると、うまく行きやすい。

というわけで、指の伸筋の愉気にかかりました。確かに触りごこちが硬い。ふわっとした感触ではありません。その硬いところに愉気を続けます。数分も続けたでしょうか。様子をみてもらうと、かなり痛みがとれたらしい。

── 「かなり」 というのは、まだ 「少し痛い」 という意味ですか。
──もうほとんど痛くありません。
── 「ほとんど」 というのは、まだ 「痛みがうっすら残っている」 という意味ですか。

われながら 「しつこい」 と思われるほど質問します。こうしないと曖昧な状態で終わると、再発してしまうことがありますから、確認の作業は 「しつこい」 くらいでちょうどいいと、いつも思います。「痛くないでしょ」 と誘導尋問をする操者はあまり感心できません。

両手とも同じところが痛いそうなので、反対側の手も同じようにします。

これで両手の指の痛みが改善しました。ここで、感想。

親指を反らせると、ぐっと思い切り反る人がいますが、あれは、拇指の伸筋が縮んでいるか、硬くなっているのだと思います。反るのが嫌だという人は、拇指の伸筋に愉気をしてみれば、反りが弱くなるのではないでしょうか。

896 元気なおばさん

第896号 2016年5月8日
▼  元気なおばさん

昨日は、はるばる兵庫県から来られたNさんという女性。正坐ができません、と言いながら、足を横に出して、私の前に坐られます。

お名前や、ご住所やを伺って、お歳は、とお聞きすると、今年80歳になります。え? どう見たって79には見えません。とまどいながら、80にしておきます。

時々坐骨神経痛が出るらしく、それが出ると、鎮痛剤のロキソニンを飲まないと激痛でのた打ちまわる、とても耐えられない、とのことでした。あと膝痛が少々。

まず、椅子に坐っていただいて背中を拝見します。背骨は曲がっていませんし、骨盤が歪んでいる様子もありません。背中の左右に厚みの差があるということもない。「きれいですね」 と私。「80って、嘘でしょう」 と尋ねると、「嘘を言ってどうなるものでもないですから」 という答え。そりゃあそうですが。

スポーツはなさっていますか、と尋ねると、「テニスを少々」。「ゴルフも」と。しかしテニスをしている人は、たいてい右後ろ、左前の捻れが入っているものですが、それがまったくと言っていいほど、ありません。「うーん」 と唸っているしかない。

たまに、こういう元から丈夫な人がいるんですね。

あちこち調べてみて、坐骨神経痛の原因らしいのは、大転子の位置が左右で違うことくらい。坐骨神経痛のある右側に大転子が少し出ています。

圧痛のない左側から、大転子をぐっと押さえて、反動法で、さっと抜くと、左右差が消失しました。これで、立っていただいて、どうですか。と訊くと、いいえ、普段は何もないのです。時々突然痛くなるだけです。

「それじゃあ、痛くなった時にロキソニンを飲まずに来ていただかないと、分かりませんね」 というと、「ロキソニンを飲まないと、とてもここまで来られたものではありません」 という返事です。

というようなわけで、ともかく膝を整えて、終わりました。膝もお皿がよく動いて、固まっている様子は少しもない。不思議なおばさんです。感嘆している他ない。

確かに皮膚に少し衰えがあるかな、とは思いますが、それ以外どこを調べても、おかしなところがない。テニスとゴルフのせいで元気なのだとすると、テニスはからだに悪いなどと冗談を言うわけにも行きません。

正坐ができないとおっしゃったけれど、これなら座布団を挟めば正坐ができるでしょう。と座布団を差し出すと、坐れます。正坐したのは何年ぶりなんだろう、とひとりごつ。正坐ができないという人は、坐れないんだ、という思い込みで、坐れなくなっていることが多いので、思い込みを打ち破ることがまず第一です。

Nさんが元気いっぱいなのは、意識が明晰であることじゃないかな、というのが終わってからの私の感想です。ともかく、しゃべり方がはっきりしていて、どこにも淀みがありません。耳が少し遠いらしく、時々聞き直される他は、とても80歳の声ではない。

人は、声から老化が始まるという仮説を立ててみたい方でした。

895 斜頸とは何か

第895号 2016年5月7日
▼  斜頸とは何か

首がいつも左に傾いている。心配だというメールをいただきました。7歳の女子です。仮にRさんとしておきます。

こういう症状には 「斜頸」 という病名が付けられるのでしょうが、でもちょっと待ってもらいたい。本当にこれは 「斜頸」 という病気なのかどうか。

このメールを頂戴した時に、それは背骨が曲がっているだけでしょう、という意味の返信をしました。

そして操法の当日。Rさんが入室して来られたのを見ると、なるほど首が左に傾いています。お母さんとしては、大丈夫なのかと心配なのは無理もありません。まして整形外科で、将来 「顔が歪んできます」 と言われたとなれば、なおさら。

これは背骨が曲がっているに違いないと目星をつけていましたから、さっそく椅子に坐ってもらうと、案の定、腰椎が左に曲がっています。胸椎の歪みはほとんどない様子なので、整形外科では 「側弯」 とは言われなかったらしい。

うつぶせになってもらいました。「うつぶせ」 というと今は 「死語」 になっているのか、「あおむけ」 と 「うつぶせ」 が、どちらがどちらかと迷う人が多い。でもいじわるなので、私は常にこの言葉を使い続けています。ところがRさんは、即座に 「うつぶせ」 に寝てくれました。うんうん、あなたは頭のいい子だ。

まず、背骨の弯曲があれば、尾骨の歪みがあると見ていいでしょう。ですから尾骨を触って歪みを確認し、「お尻を打ったことはありませんか」 とお母さんに訊いてみるのですが、記憶にない、とのことでした。

(いま中学生の時から側弯を修正するのに通ってくれている高校生女子がいますが、その人の場合は、はっきりと尾骨を打つ事故に会っています。側弯のきつい例では尾骨の異常があると睨んだ方がよさそうに思えます。)

尾骨に対しては黒川操法(尾骨の歪んでいない方を3回、3呼吸間隔でなで上げる操法)を使いました。これで、背骨全体の緊張が少し緩んだはずです。

その次は仙骨、腰椎、胸椎と背骨全体の歪みを少しずつ修正して行きました。それから、両腕。数日前のことで、いまとなっては、どのような順序で操法したか、正確には覚えていませんが、足首にも問題があり、右足首、特に距骨を触りました。

そうして椅子に坐ってもらうと、心なしか首の傾きが改善しているように見えます。「どうですか。少しまっすぐになって来たのではありませんか」 というと、付き添って来られていたおばあちゃんが、「そうですね。少し傾きがましになっていますね」 と言われる。

こう言われたことの暗示効果もあったと思いますが、Rさんは首の動きがよくなっているのを感じたのでしょう。さらに一層、首がまっすぐになってきました。

大人の斜頸の場合は、こう簡単に行かないでしょうが、Rさんの場合は背骨の硬化が進んでいなかったと思われます。

腰椎が左に弯曲する理由は、骨盤が右向きに傾いていることです。お母さんは、なぜこんなことになったのか、その原因を尋ねられたが、Rさんが小さい頃から横すわりの癖があったのではないでしょうか。1回横すわりしたからといって、腰椎が弯曲してくるというわけではありませんが、横すわりの癖が何度も続くとやがて背骨の周辺組織が硬くなって、弯曲を起こします。これは子ども限らず大人でも同じことです。

ですから横すわりの癖が強い人、つまり、右横座りと、左横座りとで、座りやすさが異なる人は、腰椎が歪んでしまっています。腰椎が弯曲を起こしている側に首を傾ける癖があることでしょう。いつも傾けているわけでなければ、斜頸とは言われないので、本人も気づきませんし、周囲の人たちも気づきません。

というわけで、斜頸という病気、異状な状態があるわけではなく、骨盤の傾き、腰椎の弯曲が首の傾きという状態を生んでいるだけのことです。

病名を与えられると不安になってしまう。という心理が確かにありますから、病名を付けるというのは、罪作りなのではないでしょうか。まして 「将来顔が歪んできます」 などと言われるのは。

このケースも、腰椎が歪んでいるだけだから、姿勢をよくすれば簡単に治りますよ、と言ってもらえれば不安になることもなかったでしょうね。

寝床体操の1番をするといいですよ、とお話して帰っていただきました。ずっと表情の硬かったRさんが、帰りには 「ニコっ」 と笑ってくれたのがうれしい。