1057 迷惑な誤診

第1057号  ’18年10月8日
▼ 迷惑な誤診

30代後半の女性Yさん。左の膝が悪くてうまく歩けないということです。整形外科にかかって、「膝蓋骨脱臼」という診断を受けたとか。

さっそく見せていただくと、膝をみたところ、どこも悪くない。関節が緩い印象はありますが、脱臼というような状態になっていません。

 ── これまで行かれたのは、整形外科だけですか。と私。

  ── いいえ、カイロとか、整体とか、整骨院とか、鍼灸院とか、いろいろ行きました。ずいぶん若いころから悪くて、昔からあちこちで見てもらっています。

  ── どこへいってもよくならないのですか。

  ── 歩いている時に、筋肉に力が入らなくなるので、安心して歩けないんです。

左膝を触ってみながら、そんなやりとりをしました。

私はふと思いついて、「遠隔シート」を使って調べてみました。これは昨日、上級の受講生の方々にお配りしたもので、これで調べると、どこが悪いというのが誰にでも分かります。

調べてみると、やはり膝は悪くない。問題があるのは股関節だと思われました。

股関節そのものは、直接触るわけに行きませんので、左右の腸骨を触ってみました。

私は、本当に飛び上がるほどに驚いた。

腸骨が大きく傾いているのです。30度以上は傾いていたでしょうか。

つまり、腸骨の位置が左右で大きく違うのです。こんなことは、普通はありません。

腸骨が大きく傾いているために、片側の股関節が脱臼状態になっていると思われます。
正確に言えば、完全に脱臼してしまっているわけでなく、亜脱臼の状態でしょう。

つまり、初めの整形外科の医師が「膝蓋骨脱臼」という診断をくだしたために、その後の治療院の人たちも、「膝」という固定観念にとらわれ、真相が見抜けなかったということです。

こういうことは、よくあることで、初動の診断が間違っていたために、後の人がみんな間違ってしまうのですね。まことに迷惑な話ですが、これが現代の整形外科学の限界なのでしょう。患部を触診することさえ、しませんからね。レントゲンが絶対と信じ切っていますから。

この点が明らかになると、あとは共鳴法で腸骨を水平にするだけのことです。少しあちこち触りましたが、結局、腸骨を水平に直しただけで、朱鯨亭の急な階段を上がり降りしてもらいました。何とか、少し脚に力が入る感じだといわれる。

ここまでが一日目の状況です。これ以上、急に変化させても、からだがついて行かないと思ったので、「一週間は、この状態で、股関節を慣れさせてください」と申し上げて、帰っていただきました。

それで、昨日が二回目。どんな状態か聞いてみると、左脚がだるくてだるくて。ということです。これまで股関節がうまく嵌っていなかったわけですから、左脚の筋肉もうまく使えていなかったわけで、急に変化したため、筋肉が追随できない状態なのだと思われました。

腸骨はもとに戻ってはいませんでした。よかった。

 ── これでよくなって行きますよ。

 ── (半信半疑で)そうでしょうかね。

 ── この先、だんだんよくなっていく他ありませんから。ただ、まだ筋肉がついて行けていないのだと思います。

誤診の一番の被害者は、もちろんご本人です。

この後、よく調べてみると、左ではなく、右脚の足首が捻挫を起こした跡があったので、そこを少し調整しました。からだの不調は、どこか一か所だけの不調なのではなく、あちこちが関与していることを施術者は心にしっかり留めていなければなりません。

 ── もう一度、念のため来てください。

 ── もう一度くらいで、よくなるのでしょうか。

 ── よくなっていますよ。安心してください。

誤診のために、不要な心配を続けている人が多いことを、施術者は理解していることが必要です。

1030 腰椎の弯曲が直る

第1030号  2018年4月28日
▼ 腰椎の弯曲が直る

坐骨結節(坐った時に座布団や台座に当たっているお尻の骨) を使って腰椎の弯曲を正す方法について書きます。

坐骨結節は、大腿二頭筋の腱のうち一本が付着していて、下肢のエネルギーの流れの、それこそ「結節」点になっているところと思われます。

「結節」という名称が付けられている場所は、一般に骨の尖っているところで、恥骨結節、オトガイ結節などと呼ばれているのは、解剖図をご覧になれば一目瞭然です。

そこで、次のようなことを考えてみました。

腰椎は、仙骨が傾斜した時に、弯曲してしまいます。逆に言えば、腰椎が弯曲している人は、仙骨が傾斜しているとも言えます。そうすると、脚長が違って(脚長が違うことを鬼の首をとったように強調する人がいますが、それは疑問)きたり、脊柱起立筋(背骨の両側に上下に通っている太いスジ)の緊張に左右差が出てきたり、さまざまな不調の原因になります。

ですから、仙骨の傾斜は、なるべくなら避けたい。以前からお話ししているように、仙骨の傾斜は、両手首の茎状突起に愉気することで、簡単に正常化することが可能です。

仙骨の傾斜を正しておいて、次に弯曲の対策にかかります。弯曲がきつすぎる人の場合は、逆にした方がいいかもしれません。そこのところは、研究課題です。

どうやって弯曲に取り組むのか。

まず、腰椎がどちら側に弯曲しているのかを確かめます。左に弯曲していると仮定しましょう。事実、左に弯曲している人の方が多いでしょう。側弯には逆S字タイプが多いということ
です。

左に弯曲があるとして、操者は受者の伏臥した左側に坐ります。操者は自分の左手の親指の内側を弯曲部の外側にあてがいます。そうして少しばかり押し加減にする。

次に操者は右手を受者の坐骨結節のところにあてがいます。どの指でも結構です。そのままその両手で愉気を続けます。

これだけです。坐骨結節には、エネルギーの結節という意味があるらしく、これで弯曲が改善してきます。背骨を一本ずつ愉気する必要はありません。

(胸椎上部の弯曲はどうすればよいのか)。それは烏口突起を使って同様にします。つまり、胸椎上部の弯曲側に親指をあてがい、反対側の指を烏口突起にあてがうようにします。

今回は少しばかり詳しく書きすぎました。解剖用語に慣れていらっしゃらない読者には、却って分かりにくくなってしまったかもしれません。解剖図を広げてお考えになってみてください。

1027 失敗は成功のもと

第1027号  2018年4月9日
▼ 失敗は成功のもと

先日のことです。ダブル・ブッキングをやってしまいました。記憶が曖昧になったからなのか、日付に疎くなっていたからなのか、ともかく年寄りの大失敗です。

ともかく、大きなミスをやってしまったわけです。どうにもならないので、片方のAさんにしばらく待っていただき、もう片方のBさんにとりかかったと思ってください。Bさんは”坐骨神経痛もどき”の症状です。

Aさんは待ってもらっているので、たいへん気の毒です。Bさんに今度は交代で、少し待ってください、と言って、Aさんに入ってもらいました。

驚いたことに、Aさんの症状も、Bさんと同じような”坐骨神経痛もどき”です。フシギなめぐり合わせですが、ともかく、ありがたい。

何がありがたい、と言って、Bさんの症状は少し複雑だったのですが、Aさんの症状は、割合に単純というか、対角線上の腕を緩めてしまえば、症状が消えるタイプです。

こっそりと申しますと、Aさんの症状に取り組めば、Bさんの症状に取り組むための練習になるわけです。ですから、複雑なBさんの方は複雑なことをしないで、スラスラと解決してしまいました。結局、お二人と取り組んで、1枠より短い時間で終わってしまった。

ダブル・ブッキングで、どうしようと焦っていたのが、簡単に終わってしまいました。こんなにありがたいことはない。

つまり失敗は成功のもと、という諺を地でいったわけです。別の言い方をすれば、【ピンチはチャンス】ということ。皆さんも、これがピンチというところに陥った時は、ピンチはチャンスという言葉を思い出してください。どこかにチャンスの種がころがっているはずです。

ついでに言っておきますが、HPに成功話だとか、自慢話ばかり羅列して書いてあるところは、警戒した方がいい。失敗と成功は常にセットになって現れるもので、成功が100回あるなら、失敗も100回あると考えるのが自然です。

1025 緩めたらアカン

第1025号  2018年4月4日
▼ 緩めたらアカン

Kさん、60代の女性、大阪府の遠方からしばしば朱鯨亭に足を運んでいただいている方。「しばしば」というのは、その時々で色々な症状が出て、すっきりしない方でもあることになります。

Kさんが何度も来てくださるのは、ありがたいのですけれど、できれば早く症状の出ない体になってほしいというのが本音です。

今回は、どうやら「坐骨神経痛もどき」(*注1)の症状。右脚に痛みやだるさがあちこちにあります。これまで、Kさんは体が柔らかいからか、強い症状がなく、比較的早く回復するものの、どうも、すっきりといかない。申しわけない、といつも密かに思っています。

「坐骨神経痛もどき」の場合に、私が定石としているのは、異状のある脚と対角にある腕を緩めることです。

両腕を緩めて、左右のバランスを取った後、前向きに立っていただくと、首が少しばかり右に偏り、右に重心があることが伺えます。つまり腕だけでは左右バランスがとれなかったということです。

まず考えられるのは、こういう方には、何か事故にあった経験があるのではないか、ということ。つまり【強い打撲痕のようなものがどこかに残っている】のではないか。

──何か事故にあったようなことはありませんか? 交通事故でなくても、階段からころげ落ちたとか、跳び箱に失敗したとか、そういうのでもいいんですが。もちろん古い傷でもかまいません。

──右足を捻挫したことがあります。こういうように内側にひねって、えらく腫れました。

(右足の外側面を触ってみて)──なるほど。ここの骨がカチカチになったままですね。

右足の立方骨やら、小指の中足骨(*注2)やらが固まっています。捻挫の直後から固まり、そのままになったと思われます。

そこで、小指の中足骨に裏側から指を添え、ジッとしていること数分。まだ甲の全体が硬い感じがするので、甲側・足裏側から両手でサンドイッチにして、また数分。

これで少しはよくなったに違いない、と思って立っていただきました。

ところが。重心が右に寄ったままです。これではダメじゃないか。

なぜ、こういうことになったのか。こういう時は、じっくりと考えることを迫られます。

右足の外側が硬くなっていたわけですから、硬くなる必要性があって硬くなったと考えられます。右に傾いていたので、あまり右に傾きすぎると不安定になって困る。そこで、右足の外側を硬くして、右に傾きすぎるのを防いでいたわけでしょう。

ところが、その硬くなって傾きすぎるのを防いでいた箇所を、考えの足りない私は緩めてしまった。そのため右に傾くことになってしまったのでしょう。

つまり、どこかが硬くなっているからといって、無闇に緩めると、全体のバランスがおかしくなる、ということです。直すのも、場合によりけりで、直したらアカン場合もある。

一般的には、硬いところを緩めるのは正しいでしょうが、場合によって正しくないこともある、と知っておかないと困ったことになる。法則として言えば、【真理というものは、すべて条件付きであって、いつも正しいとは限らない。条件をはずして、いつも正しいとしてしまうと、真理も誤謬になってしまう】。ということになりますね。

これは整体に限りません。世の中には、条件付きで一つの場合にだけ成り立つ原理を無闇に拡大して、何にでも当てはまるとしてしまう誤りがどれだけ多いことか

*注1 「坐骨神経痛もどき」 普通に坐骨神経痛と呼ばれているが、必ずしも神経痛とは限らず、一方の脚に体重がかかりすぎているにすぎないことの方が多い。だから私は、神経痛とは呼ばず、「坐骨神経痛もどき」と呼んでいる。

*注2 中足骨 足の甲を触ってみると、それぞれの指ごとに細長い骨があって、足首の先まで続いている。この長い骨を中足骨と呼ぶ。区別したい時は、親指から順に、第1中足骨、第2中足骨、という風に第5中足骨まで。

1022 腕だけやればよい

第1022号  2018年3月13日
▼ 腕だけやればよい

このところ、たびたび腕の重要性を確認しています。脚が悪い人に腕で対応するなんてことがしばしばです。

右脚の痛みに左腕で対応する。あるいはその逆。

こういう話をすると、それは対角線療法(*後述)ですか、というご質問が出てきそうですが、そうではありません。

例えば、右の「坐骨神経痛もどき」の人がいるとしましょう。そういう痛みが出るのは、重心が右に寄っているわけです。右脚の「膝痛」という人がいる場合でも、同じような事情が
あると考えます。

なぜこの人の重心が右に寄っているのか。腕の重さが左右で違い、肩の高さも違っていることが大きな要因になっているのです。

つまり、このような場合は、左肩が高くなっていて、右肩が低い。すると、体重が右にどうしてもかかってきます。左肩が高い場合、通常は左腕に緊張があります(そうでない例外的な場合もありますが)。

先日は、50年ほど前からの友人Kさんが訪ねてきました。Kさんは、右のお尻の辺りが痛く、それから下へずっと引っ張っている感じだといいます。つまりいわゆる「坐骨神経痛もどき」です。

(もどき)とつけるのは、本当に神経痛というケースは少なく、たいていは重心の偏りによるものだからです。

彼の場合は、痛みそのものは酷くなく、しびれも感じず、引っ張っている感じが嫌で、坐りにくい。仕事の関係で正坐することが多く、その時に嫌なようでした。

上のようなケース、つまり坐骨神経痛もどきを最近何度も経験していますから、さっと見ただけで、これは脚を触っても意味がない、腕だと直感しました。

ですから、通常の仰臥姿勢ではなく、椅子に坐ってもらう姿勢で、私が彼の左腕をつかむという恰好で操法をしました。

操法といっても、前にどこかで書いたように、手首の金星丘の付け根あたりと、烏口突起の2点に愉気を続けるスタイルです。だから私は側に正坐してじっとしているだけです。

彼は何も言いませんでしたが(要するに任せているということ)、内心、これは何をしているのか、といぶかしく思っていたことでしょう。それで、こういう症状は腕で解決するのだ、とか何とか私は呟いていたと思います。

このスタイルで、およそ数十分。時間を測っていたわけではないので、正確に何分だったかは不明ですが、要するに私の腕に気が流れている感じが途絶えるまで続けました。ここのところが大事で、途中でやめると、いい結果になりません。

あと足首に問題が残っていたので、少し触ったと思いますが、足の引っ張っているというスジ状のところには、何も手を触れていません。

さて、すべて終わって、立ってもらった。歩いたり、体を捻ったり。少し残像が残ってるかな、と。

翌日Kさんからメールが入り、

──今朝起きて全く痛みなし。昨日のことがうそのようです。

実は私自身は、少し何かが残るだろうな、と考えていたのですが、何もないとなると、これまでああでもない、こうでもないと、ゴチャゴチャやっていたのは何だったのか、と反省すること頻り。

というわけで、左腕の気のめぐりが滞っていると、それだけで重心が右に偏ってしまうことがわかります。それが解決した途端、左右のバランスが回復して、痛みが跡形もなく出なくなる。そういうものなんでしょう。

結論。どちらか片脚の「坐骨神経痛もどき」があると、反対側(対角線)の腕に操法するとよい。

ですから、最初に症状について聞く時に、左右のバランスについて考えなければなりません。

*対角線療法――ある場所に症状があると、それとは対角線の位置に操法するという方法。例えば、右脚の外側・ふくらはぎに症状があれば、左腕の前腕に操法することになる。

 

979 仙骨の超カンタン調整

第979号 2017年7月10日
▼ 仙骨の超カンタン調整

仙骨の調整は、昔から難しいものでした。特に仙骨全体の横への傾きは難しい。ところが、、

カンタンなやり方で改善できることが明らかになりました。セミナーなどで、これとは違った方法を聞いたという方も、この方法を試してみてください。その効果のすさまじさに驚かれると思います。ともかく、この方法だけで腰痛から開放される人が続出するのは確かですから、多くの整体院が潰れるような事態にならなければいいが、と変な杞憂に苛まれながら、これを書いています。逆にこれを使いこなせた整体院は大繁盛まちがいなし。

まず準備段階から。と言ってもこれも難しいことではありません。受け手に伏臥(うつむき)になってもらって、足の内くるぶしの左右の位置を確かめます。足先に坐り、人差し指を両方の内くるぶしに当て、左右の脚長(脚の長さ)が同じになっているかどうかを見るだけです。仙骨の左右への傾斜があると、脚長が違っているはずです。中には、左右の脚長が同じに見える人もいるでしょうが、それならそれでもかまいません。脚長が同じに見えるからといって、仙骨に傾きがないとは言い切れないのが微妙なところです。

次は手の甲を表にしてもらう。言い換えると、掌を床に当ててもらう。共鳴法を使うためです。読者の皆さんは、すでにご承知のとおり、中指の中手骨の手前、手首の少し指先側に「有頭骨」という小さな骨があり、これが仙骨に対応しています。ですから仙骨の調整は、有頭骨を操作すればいいわけです。

有頭骨のどこを操作するのか。有頭骨の外側、小指の中手骨の付け根あたりから始めます。ここらあたりからこすり始めます。いつもの通り、強くこすってはいけません。そおっとです。そおっと、有頭骨のあたりまでこすったら、有頭骨のところで、少しだけ戻します。つまりJターンします。Jの字の先のように、カーブを描いて曲げる。5ミリか1センチか、その程度で結構です。これを左右同時にやってください。(自分でする場合は、同時には出来ませんから、左右別々にやってもらってもよろしい)。

仙骨がどっちに傾いているから、どちらかを長くするなどという配慮は不要です。左右とも、
同じようにやればよろしい。これが不思議なところで、これで何でもかんでもよくなってしまうとは私も予想しませんでしたが、結果は上々。仙骨はこれだけでまっすぐになります。

もしも、これで結果が出ない時は、仙骨の周辺が硬くなっているわけで、尾骨を調整するなり、仙結節靭帯を緩めるなりしてください。(この辺りは皆さんの工夫のしどころだろうと思います)。 (仙結節靭帯の緩め方についてはテキストを参照してください。)

その次に必要なこと。実は、仙骨がまっすぐになるのは、この後かもしれません。仙骨の上には腰椎5番が載っていますから、この腰椎5番(L5)を整えないと、仙骨を調整した甲斐がありません。L5の調整というのも厄介なものですが、これは手首の茎状突起を使います。

手首には、橈骨茎状突起と尺骨茎状突起という二つのぐりぐりが手首にあります。この突起の上の皮膚、これをそっと内外へ捻ってみます。ひねりやすい方向と捻りにくい方向とがありますから、捻りやすい方向へ捻って30秒ほど、そのままジッとしているとL5が整います。この時、お尻の辺りをじっとみていると、密かに動いているのがわかるはずです。ですからこの時に仙骨が整うのかもしれません。この点は、まだ確かめていません。どなたか確かめてくださる方がいらっしゃれば、お教えください。

さて、以上で仙骨の調整は終わりです。この方法で、これまで多数の方の腰痛がカンタンに治って、拍子抜けしました。効果は腰痛だけではありません。背骨の調整にも威力を発揮します。それは仙骨の上に背骨が載っているんですから。それから股関節。股関節が痛いという人の大半は、仙骨の異常であることを確かめました。股関節が痛いという人に福音が訪れることでしょう。

昨日のお客様は、股関節が痛い、腰が痛い、膝が痛いという人でしたけれど、仙骨の操法だけで、すべて解決してしまいました。何よりも、ご本人がびっくりされたのは言うまでもありませんが、やっている私自身も、驚いてしまいました。あとは、皆さん方の工夫しだいで色々な効果が期待できるはずです。

901 肘のカンタン自己操法

第901号 2016年6月8日
▼  肘のカンタン自己操法

肘に問題を抱えている人が多いですねえ。というと、私は何ともない、という反論が返って来そうです。

ところが、肘の先の肘鉄(肘頭)の周辺をぐっと押さえられると、あいた、となる人が多い。自分では痛みがないつもりでも、押さえられると痛い。こういう人は肩や膝にも問題を抱えていることが多いものです。

肘鉄の周辺をあちこち押さえてみてください。どこも痛いところはありませんか。

もし痛ければ、どうして治すか。カンタンな方法があって、抜群によく効きますから試してみてください。

まず、痛みがあった肘頭を反対の掌で包む。次に痛くない方の肘頭も痛みのある側の掌で同様にします。つまり腕組みを、肘と掌でするわけです。

後はこのまま数分の間じっとしている。それだけです。

またまた「数分」とは、どれくらいですか、などと初歩的な質問をする人がいるといけないので、言っておきますが、数分というのは目安で、当然、人により、体の状況により、違います。2分で止めて痛みが取れていなければ、もっと続ければいいだけのことです。

あまりカンタンすぎて、信じられない。そうでしょう。でも、やってみればわかります。

肩が悪い人、膝が悪い人にお勧めです。

ただし、この操法をいくら続けても痛みが取れない人は、症状が深刻化しているわけで、そういう人は、ただちに朱鯨亭に駆け込んでください。

「肘のカンタン自己操法」について、その効果を知らせてくれた方が複数あり、ご紹介しておきます。

●大阪府在住のMさん

先日、腰痛で来られた時に、「友人に教えたら、1分もしないうちに効果があったみたいですよ」と。そして、もう一人の人に勧めたら、肘だけでなく、腰まで治ったようです」とのことでした。

●静岡県在住のOさん

丁度良いタイミングで、妻が肩と膝と腰が痛いと言ってきましたので、早速、肘の操法を試してみましたところ、おっ!肩も膝も腰も良くなった! とお褒めの言葉を頂きました。

というわけで、この操法(具体的には、前号を参照してください)は、膝や腰にも効果があるようです。

肘を治すと膝が治るのは、昔から言い習わされていることで、特に珍しくありません。ですから、膝が痛くて困っている人は、この操法を繰り返し行なって肘周辺の痛みを治しておくと、膝にもよい効果があるに違いありません。

ですが、腰が治るのは、どのような理由からでしょうか。肘を治すと、肩の動きが改善します。ということは、肩から背中にかけての影響も変化するということです。背中の状態が変われば腰が変わるというのは、操法をしている人なら、いつも経験している現象でしょう。

こんなふうに、肘が変わると腰も変わります。人体には、このような連動性があちこちに観察できますから、連動制の体系をとらえることは、操法に取り組む人の大きな課題であると思います。

861 立ったままで

路地裏の整体術 第861号 2015年12月17日
▼ 立ったままで

立ったままで操法できるのだろうか。

ところで、奈良の中心街には古書店が多い。街の面積からすれば多いといっていいように思います。さして長くもない餅飯殿(もちいどの)商店街に4軒あります。周辺を含めると6軒になる。大阪天神橋に比べれば少ないですが、街の規模がぜんぜん違いますから。

その中でF堂という書店が私のお馴染みです。ともかく安い。販売価格がこれほどの店は他所で見たことがない。高橋迪雄の『正体術矯正法』もここで買いました。私に必要な本が怖くなるほど安い値で見つかるのですから、F堂通いが止められません。

で、餅飯殿商店街にあるF堂へ朱鯨亭からの帰り道に寄ったと思ってください。振るい付いて読みたいと思う本を今日は2冊みつけた。ほくほくしてカウンターに出した。女性の店員さんが、「ちょっと待ってくださいよ」と言いながら、椅子からゆっくり立ち上がるんです。その動きは腰が痛い人の動きです。支払いを済ませてから

── 腰が痛いんですか。
── はい、昨日ぎっくりとやってしまって。
── ほんなら直しましょう。
── え。直すって?
── 私、整体屋ですから。
── そうなんですか。どうしたらええのでしょう。
── そのままで結構ですよ。手を出してください。
── 手?
── たいてい手を使って直してるんです。
── はあ。

というようなわけで仙骨操法をやりました。第854号「仙骨と背中(下)」に書いた操法です。この店員さんは、普通とは逆の捻れ方で、右側が後ろ、左側が前に大きく捻れていましたから、854号に書いた方法とは左右が逆になります。

── 何か、楽になって来たような。
── ひょっとして左利きですか。
── いいえ、右利きです。
── そうですか。多分少し時間がたつと楽になってくると思います。

と言って店を出ました。

翌々日に同じF堂に行ってみました。

── こんにちは。
── ああ、先日はどうもありがとうございました。
── いえいえ、お安い御用で。どんな具合ですか。
── いまは普通に動けます。
── それは良かった。
── ただ、翌日、きのうですね。ここの前がとても痛くなって困りました。

と言って左の鼠径部を指さされる。

──ああ、なるほど。行き過ぎたわけや。

と言ってもこの店員さんには、何を言っているのか通じなかったでしょうが。仙骨の回旋が修正されすぎて、前が痛くなったと思われます。

この仙骨操法は、効き過ぎるのが欠点です。ともかくよく効きます。たったままでも効果のあることが確認できました。ただし、その人に応じて、加減する必要があります。ここのところが難しいといえば難しい。

この方の場合、捻れ方がきつかったので、少し効くように2度操法したのですが、それが効きすぎた原因です。まことに操法の加減は難しい。

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849 大転子操法

路地裏の整体術 第849号 2015年11月1日
▼ 大転子操法

「だいてんし」 と聞くと、私は 「大天使」 を思い浮かべますね。ミカエル・ガブリエル・ラファエル・ウリエルという4大天使が有名です。ある時セミナーで大転子を説明するのに、洒落をいうつもりで、「大天使ウリエルではありません」 と言ったところ、参加者の一人から、「うちのネコの名前はウリエルなんです」 と即座に反応があって驚いたことがありました。

ウリエルは大天使たちの中でも末位で、さほど有名ではありません。歴史的には、大天使から外されていた時代もあるそうです。その時、私がなぜわざわざ 「ウリエル」 を挙げたのか自分でも不思議ですが、それがネコの名前と一致していたというのは共時性というものでしょうか。

閑話休題。さて身体の 「大転子」 の話しでした。股関節の横にある出っ張りを大転子と呼んでいます。骨盤の下にある寛骨臼という窪みに大腿骨が嵌っていますが、その大腿骨が途中で曲がった形になっています。その曲がり角のところが出っ張っていて、それが大転子です。

股関節の横を押さえると、左右の大転子に触れるはずです。そこを強めに押さえてみると、どちらかに圧痛を感じる時があります。そういう人は、左右のバランスがいい位置に来ていなくて、大転子の位置がどちらかに偏っている人です。ところが、こんな人が意外に多い。あなたは、いかがでしょう。左右両方の大転子を少し強めに押してみてください。

腰痛・坐骨神経痛などの症状がある人には、大転子の左右バランスが悪くなっている人が多いのではなかろうか。そして大転子に圧痛を感じる人が多いのではなかろうか。例えば、右の大転子が突出していて、左の大転子がやや窪みがちになっているとすると、右の大転子のところに圧痛が出ます。

操者は、仰臥しているこの人の左側に来て、左手で圧痛のある大転子を手前に押える。そして右手の親指で左の大転子をぐっと強く押してパッと放す操作をします。つまり反動をかけるわけです。これだけの操作で、右側の大転子にあった圧痛が消える場合があります。

一度で消えない場合は、消えるまで何度か同じことを繰り返せばよろしい。そうして立ってもらうと、それだけで、腰痛やら坐骨神経痛が消えていることが珍しくない。お試しください。自分でもできます。

このことから分かるのは、腰痛や坐骨神経痛は、骨盤の左右バランスが崩れただけであるということなのかもしれません。少なくとも、そういう場合の多いことが分かると思います。腰痛で来られた人が、これだけの操法で痛みが消えて、不思議そうな顔をしておられたことがありました。

843 梨状筋操法

路地裏の整体術 第843号 2015年10月13日
▼ 梨状筋操法

「梨状筋症候群」と呼ばれる症状がありますね。例によって、ウィキペディアを見ると、

───梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)は、梨状筋の中を走る坐骨神経が外傷やスポーツ活動などで圧迫されて引き起こされる疾患群のこと。これにより坐骨神経痛を引き起こす要因にもなる。
臀部痛と坐骨神経痛が特徴である。座位で増悪し、歩行、起立で改善する傾向がある。

とあります。「痛み」 が出るとは限らず、「痺(しび)れ」 が出ることもあるようです。脚全体に「痺れ」 がでる場合もあり、趾に痺れが出たり、足裏に痺れが出る場合もあると思われます。

「痛み」 まで至らない 「痺れ」 の症状にどう対応したらよいか。「梨状筋」 という筋肉は、仙骨と大転子とを結ぶ筋肉ですので、まずその位置を確認します。仙骨はお分かりでしょうか。「大転子」 とは、大腿骨の上の方、腰の左右を押さえると、出っ張っている骨があるでしょう。それが大転子です。大天使ガブリエル等とは字が違うので、お間違えのないように。

本人に伏臥(うつむき)になってもらいます。お尻の辺りに梨状筋の位置を確認し、左右どちらでも、片方ずつとりかかります。梨状筋の辺りに操者は掌を当て、ブルブルと震わせます。揺らすといってもいいでしょう。

ただし自分の意思で揺らそうとすると、腕がすぐに疲れてしまうので、活元を出すことができる人は、活元を腕に出して揺すると、疲れずに続けられます。腕の活元が簡単にできる人は少ないでしょうから、練習が必要ですが。昔々、大正時代から昭和初期にかけて、岐阜県の恵那市にあった 「太霊道」 では、このようなやり方を「顕動法」 と呼んでいたようです。

もちろん 「活元」 がうまくでない人は意識で揺すってもかまいません。ただ腕がダルくなってくるでしょうから、休憩をとりながらやっていいでしょう。

さて、本人に立って確認してもらいますと、痺れが消えています。どんな人でも、簡単に消えるというわけではないでしょう。その人によって体全体の状況が違いますし、症状の強弱もありますから、一度で消えない人もいるかもしれません。

そんな場合は、時間をおいて、再度取り組んでみてください。器用な人なら、自分でやることもできるはずです。

梨状筋症候群といえば、ゴルフボールを当ててグリグリやる方法とか、親指を使ってぐっと押さえてパッと放す方法などが知られていますが、何れもかなりの努力を必要としますし、すべてが解決するわけではありません。上記の揺らす方法だと、簡単で効果が上がりやすい。

脚や足が痺れて困っていらっしゃる方は多いようです。お試しください。

826 坐骨神経痛と手首の深い関係

路地裏の整体術 第826号 2015年8月2日
▼ 坐骨神経痛と手首の深い関係

古い友人からの紹介で来られたFさん。「坐骨神経痛」というありがたくない診断名を頂戴しているそうです。この病名の人は厄介なことが多い。医学界の正式見解では、この病気は、坐骨神経の障害ということになっているわけです。

しかしながら、実のところは脚に問題があることが多い。それだけではなく、臀部の筋肉の状態などもからんでいるので、どこの操法家も迷う症状ではないかと思います。

このメルマガでも、最近これに関連した記事を何度か書いています。例えば、第785号「坐骨神経痛という症状」、第792号「身体はどう捻れるか」、第803号「手をついた」などです。

Fさんが初めて来られた時は、脚を主に操法しました。それで痛くないという状態に辿り着いたのですけれど、2回めに来られた時には、完全に戻っているらしい状態でした。

そこで、この日は違った操法と取り組んでみようと思いました。そのヒントになるのは、第803号「手をついた」。この記事にある状況では、腰椎5番が手首の操法で変化したという不思議なといっていいほど、離れた関係でした。早速Fさんに尋ねてみると、手をついたことがあるらしい。そこで、手首を操法すれば腰が変化するはずだ、すると「坐骨神経痛」の症状も変化するかもしれない、とこんな推論だったわけです。

私は、時々こういう大胆な推論に基いて操法することがあります。言ってみると、ある種の賭けともいえますが、平凡な操法をしていたのでは、変化しないとなれば、ある種の賭けも必要になります。ダメ元でやってみる。まあされる方は、えらい災難ですが、うまく行くかもしれないので、災難だとも限らない。

手首の操法は、第803号に書いておきましたので、そちらを参照してください。要するに一言でいえば、手首の捻れを取る操法を行ったことになります。

ただ、この操法は自分ではやりにくい、だれかにやってもらわないと難しい。ですから、ここでは自分でやるやり方を書いておきます。

手首のところにグリグリが二つありますね。親指側の「橈骨茎状突起」と小指側の「尺骨茎状突起」です。それぞれの突起の一番飛び出しているところに、反対側の手の親指と人差指をそっと当てて、二つの突起の頂上の皮膚を内側へ(親指側へ)捻る方向にわずかに捻じります。そのまま数分間、じっとしているだけでよろしい。これで、手首の内ねじれが改善してくれます。

実際に私がFさんに施した操法は、下橈尺関節をそっと捻る方法でした。でも、上に書いた自己操法でも同じ効果が得られるはずです。確認のため腰椎5番を強めに押さえてみました。すると痛くない、とのこと。

これで手首の操法が奏功しているはずです。「どうぞ、立ってみてください。」とFさんに立ってもらった。すると、お尻の痛みが消えているんだそうです。不思議なことに坐骨神経痛の痛みが、手首の簡単操作だけで消えてしまった。

私も、ここまでの効果があるとは思っていませんでした。賭けでしたから。

その後、「これで終わりにすると、不安になるでしょうね」とFさんに尋ねた。そうですね。ということだったので、1週間ほど後で来て貰う予定にしました。それが本日だったのですが、刻限が来ても、Fさんは来られない。電話をかけてみますと、寝過ごしたんだそうです。調子はとお聞きしてみると、良いと言われるので、それなら、しばらく様子を見てください、と言って電話を切った。

具合が悪ければ、人は決して忘れたりしません。だいぶよくなっているのだと思われます。早とちりの癖のある人に言っておきたいのは、この操法がすべての坐骨神経痛に効くと主張しているわけではないことです。「坐骨神経痛」と言われた人の中に、この操法で助かる人もいるんじゃないだろうか、という話です。

坐骨神経痛のある人で、手首を傷めたことがある人は、試してみてください。もし、これで改善したという人がいれば、詳しい状況を知らせてくださると、皆が助かります。

818 仙腸関節の締まり過ぎ

路地裏の整体術 第818号 2015年7月17日
▼ 仙腸関節の締まり過ぎ

昨日のからだほぐし教室でのこと。常連のTさんが腰が痛くて、一向に改善しないと。早速、見せてもらうことにしました。どうやら仙腸関節に痛みが出ているようですので、伏臥になってもらって仙腸関節の辺りを押さえてみます。

といっても正確に言えば、仙腸関節という骨盤の中にある関節は、直接触れることができません。仙骨の外側のラインから斜めに上にあがって行くライン、私が「仙腸ライン」と呼んでいるラインの辺りを押さえてみます。

この辺りには、もちろん腸骨・仙骨という骨がありますが、その表面に筋肉が広がっているので、正常な人の場合は、さほど硬くはないはずです。ところがTさんの仙腸ラインは、かなり硬く感じられます。

「硬く」とは、どのくらいなのかというご質問がありましたが、こういうご質問は、たいへん答えにくいものです。「感覚」ですから、どのくらい「熱い」のかとか、どのくらい「張り」があるのか、とかのご質問と同じく、感覚で感てみるしか捉えようがありません。

こういう時は【仙腸関節が締まり過ぎ】になっていることがあります。というと、仙腸関節は、体重を支えている関節だから、開き過ぎというのは、ありえても、締まり過ぎはないのではないか、というお考えの人もあるかと思います。

しかし、現実に【締まり過ぎ】としか考えられない場合があることを否定できません。締めるのではなく、緩めることによって問題が解決するからです。

共鳴法で仙腸関節を締めようとすると、「仙腸操法」と呼んでいる方法を使えばうまく行きます。→ http://shugeitei.com/bempi.html/ の下の方に図示してある方法です。これは締めるときの方法なので、逆方向に撫でると、仙腸関節が開きます。

私は、Tさんの右の仙腸関節のみ【3回緩め、その後、1回締める】という操作をしました。Tさんが痛みを訴えていたのは右の仙腸ラインだけだったからです。

3回緩めて、1回締めるのなら、2回緩めるだけでいいのではないか、と言う人がいるかも知れませんが、現実はさほど単純ではない。ねじを締める時のように全体に緩めておいてから締めるという操作をしないと、うまく行きません。

さて、この操法をしただけで、Tさんにどんな様子か聞いてみると、痛みはなく、ボカボカした感覚がある、そうです。Tさんは、仙腸関節は締めればいいものだ、と思っていたそうで、一生懸命に毎日締めていたんだ、そうです。締まり過ぎになっていたわけです。

何にしても【過ぎたるは及ばざるがごとし】。過ぎた時は、逆向きの操法が必要であるという、明らかな実例でした。Tさんは、操法を知っているから、こんなことになったのではないか、と考える人もいるでしょうが、操法を受けに来られたお客様で、同じ状態の人が先日ありました。なぜ締り過ぎだったのかは分かりませんが、あるいは他所の整体師にグイグイ締められたのかも。