第1057号 ’18年10月8日
▼ 迷惑な誤診
30代後半の女性Yさん。左の膝が悪くてうまく歩けないということです。整形外科にかかって、「膝蓋骨脱臼」という診断を受けたとか。
さっそく見せていただくと、膝をみたところ、どこも悪くない。関節が緩い印象はありますが、脱臼というような状態になっていません。
── これまで行かれたのは、整形外科だけですか。と私。
── いいえ、カイロとか、整体とか、整骨院とか、鍼灸院とか、いろいろ行きました。ずいぶん若いころから悪くて、昔からあちこちで見てもらっています。
── どこへいってもよくならないのですか。
── 歩いている時に、筋肉に力が入らなくなるので、安心して歩けないんです。
左膝を触ってみながら、そんなやりとりをしました。
私はふと思いついて、「遠隔シート」を使って調べてみました。これは昨日、上級の受講生の方々にお配りしたもので、これで調べると、どこが悪いというのが誰にでも分かります。
調べてみると、やはり膝は悪くない。問題があるのは股関節だと思われました。
股関節そのものは、直接触るわけに行きませんので、左右の腸骨を触ってみました。
私は、本当に飛び上がるほどに驚いた。
腸骨が大きく傾いているのです。30度以上は傾いていたでしょうか。
つまり、腸骨の位置が左右で大きく違うのです。こんなことは、普通はありません。
腸骨が大きく傾いているために、片側の股関節が脱臼状態になっていると思われます。
正確に言えば、完全に脱臼してしまっているわけでなく、亜脱臼の状態でしょう。
つまり、初めの整形外科の医師が「膝蓋骨脱臼」という診断をくだしたために、その後の治療院の人たちも、「膝」という固定観念にとらわれ、真相が見抜けなかったということです。
こういうことは、よくあることで、初動の診断が間違っていたために、後の人がみんな間違ってしまうのですね。まことに迷惑な話ですが、これが現代の整形外科学の限界なのでしょう。患部を触診することさえ、しませんからね。レントゲンが絶対と信じ切っていますから。
この点が明らかになると、あとは共鳴法で腸骨を水平にするだけのことです。少しあちこち触りましたが、結局、腸骨を水平に直しただけで、朱鯨亭の急な階段を上がり降りしてもらいました。何とか、少し脚に力が入る感じだといわれる。
ここまでが一日目の状況です。これ以上、急に変化させても、からだがついて行かないと思ったので、「一週間は、この状態で、股関節を慣れさせてください」と申し上げて、帰っていただきました。
それで、昨日が二回目。どんな状態か聞いてみると、左脚がだるくてだるくて。ということです。これまで股関節がうまく嵌っていなかったわけですから、左脚の筋肉もうまく使えていなかったわけで、急に変化したため、筋肉が追随できない状態なのだと思われました。
腸骨はもとに戻ってはいませんでした。よかった。
── これでよくなって行きますよ。
── (半信半疑で)そうでしょうかね。
── この先、だんだんよくなっていく他ありませんから。ただ、まだ筋肉がついて行けていないのだと思います。
誤診の一番の被害者は、もちろんご本人です。
この後、よく調べてみると、左ではなく、右脚の足首が捻挫を起こした跡があったので、そこを少し調整しました。からだの不調は、どこか一か所だけの不調なのではなく、あちこちが関与していることを施術者は心にしっかり留めていなければなりません。
── もう一度、念のため来てください。
── もう一度くらいで、よくなるのでしょうか。
── よくなっていますよ。安心してください。
誤診のために、不要な心配を続けている人が多いことを、施術者は理解していることが必要です。