1005 動悸に新ムドラー

第1005号  2017年11月30日
▼ 動悸に新ムドラー

以前、[971号](17年5月14日発行)に「不整脈(注*1)に井形ムドラー(注*2)」という記事を書きました。

それはそれでいいのですけれど、形が複雑で理解しがたい難点がありました。そこで、その改訂版を。

動悸・不整脈といっても、どれにもこれにも効くというわけには、もちろん参りませんが、少なくとも「期外収縮」という種類にはよく効くようです。

ところが、この「期外収縮」という種類の不整脈は、病院では相手にしてもらえない。「これは治療の対象外です」などと冷たくスルーされてしまうのです。

私自身も、これが気になって病院に行ってみたことがありましたが、誰でもこの種のものは、出ていますよ、という説明でいなされてしまいました。

普通に脈を打っている時に、突然トーンと強い脈が混じったり、トトーンと脈が跳んだりするのが「期外収縮」です。

言われるように別段心配のないものなのかもしれませんが、本人にとっては気持ちの悪いこと夥しい。何とかならないかと思うのが自然です。

ましてトトーン、トトーン・・・と連続して出たりすると、自分の心臓はどうなっているのかと心配になってくるのは自然のなりゆきでしょう。

ところが現代医学では解決策がない、となると、自分で対応策を考案するしかない。「動悸がする」という人は多いですから、ぜひともカンタンな誰でもできる方法を提案したいと前から思っていました。

分かっていたことは、不整脈は胸椎4番(注*3)と関係があるという事実です。もちろんパートナー・家族に胸椎4番を整えてもらえばいいわけですが、これがカンタンではありません。胸椎4番を具体的にどうするのか、一から順に説明しなければなりませんから。

そこで、どうするか。胸椎4番の代わりに、胸椎4番の対応点に愉気すればいいはずです。胸椎上部の対応箇所は、手の中指の基節骨(注*4)です。

中指を掌側にぐっと折り曲げて、その基節骨のところを親指で押える。したがって、人差し指は上に突き上げるような形になります。この形のまま、不整脈が止まってくるまで続ければいいわけです。

結論は、これだけ。カンタンですから、ときどき動悸がするという人は、お試しください。特に寝ている時に動悸がするなどという人にはお薦めです。

注*1 不整脈──脈が正確に規則正しくリズミカルに打たず、リズムが乱れたり、その波形が乱れたり、速くなったり遅くなったりするものをいう。

注*2 ムドラー ──手で結ぶ印のこと。インド等で、手の印を健康法とする考え方がある。

注*3 胸椎4番──背骨を上から順に、くびの頚椎、むねの胸椎、こしの腰椎などと呼ぶ。胸椎は、首の下後ろから始まり、肋骨の下の端あたりまで。上から順に1番・2番と番号をふる。12番まで。

注*4 基節骨──指の骨には、指先から順に、末節骨・中節骨・基節骨となづける。基節骨は、したがって指の付け根の骨という意味。ここでいう場合は、中指の基節骨。

971 不整脈に井形ムドラー

2017年5月14日  不整脈に井形ムドラー

仏像好きの方は、仏の手が結ぶ印にも関心をお持ちでしょう。色々な形があり、この形をムドラーと呼びます。仏像といえば奈良・興福寺の阿修羅像が超有名で、人気がありますが、三面六臂の手の形が(左右はほぼ対称のようですが)少しずつ違っていることにお気づきでしょうか。

もちろん仏像でなくても、生きた人間がやってもいいわけで、かつてスリー・チャクラバルティというインドの女性ヒーラーの本 『永遠の旅路』 を紹介したことがありました。そこに各種のムドラーが載っていて、たいへん役に立つことを指摘しました。

そこで、私も一つムドラーを追加してみようというわけでもありませんが、こういうのもムドラーと呼んでもよかろうと思うので、一つ付け加えておくことにします。

最近、動悸がするとか、不整脈がある、という訴えをよく聞きます。西洋医学的に言えば、心臓の洞房結節というところから発する電気信号が乱れている状態です。骨格の面から言えば、胸椎3番(とその周辺)の異常があるものと思われます。

もちろんここだけが異常だというのではなく、仙骨の歪み、尾骨の歪みに始まって、腰椎・胸椎下部のあちこちにも歪みがあるわけですから、背骨全体を整える必要があります。そのためには、「体幹操法」 が有効です。(これについて知りたい方は教室にお越しください)

共鳴法からいうと、胸椎3番は、中指の基節骨の中ほど甲側に相応します。そこで、そこを左右両手の指で互いに愉気すればどうか、と考えたわけです。

まず左手中指の基節骨の甲側まん中へんに、右手の示指の先を当てます。次に左手の示指の先を右手中指の基節骨の甲側まん中へんに当てます。

下から順にどの指かを書きますと、まず左手中指、次に右手示指、次に左手示指、という順で、右手の中指が右手示指と並んでいます。

全体の形をおおまかに言えば、右手の示指と中指の二本を並べて、左手の中指と示指とで下と上から挟んでいるということになるでしょうか。上から見れば、左右の二本ずつの指で 「井」 の字が出来ているでしょう。大阪風に言えば、四ツ橋の形になっているというところかもしれません。

それで、この形を 「井形ムドラー」 と呼んでおくことにします。井形ムドラーをすると、不整脈が改善する可能性がある、と言っておきたいと思います。永久に改善するというわけではありませんが、ともかく、一時的であっても不整脈が改善する。

ひょっとすると、汗の異常がある人がやってみてもよい。汗の異常も改善する可能性があります。

不整脈がある人は、いつ起こるか、と不安な気持ちを抱えているもので、一時的にでも改善する方法があれば、不安が消えて楽になるかもしれません。不安ほど体に悪いものはありませんので、このムドラーで助かる人が多いのではないかと考えます。どうぞ、お試しください。

965 掌・内臓・手のしびれ

2017年3月21日

三題噺(さんだいばなし)のようなタイトルで、何のことかと訝しく思う人が多いかもしれません。

え、三題噺って何か分かりません? まったく関係のない3つの題を出してもらって即興でお話を作るということです。

ここで三題噺の練習をしようというわけではなく、こんな題が付くような操法をすることになった経緯をお話しようという次第です。

以前、毎回のように教室に通っておられたFさんに梅林でばったり出会ったんです。

以前ちかしくしていた人と、どこかでばったり出会うということがあるものですが、それは単なる偶然ではない。自分自身が、この人を引き寄せているのではないか、そんな風に私は感じます。

案の定、それから数日して、このFさんからメールが来た。手が痺れて鉛筆が持てない。何とかならないか、というご依頼でした。

してみるとFさんの方からも、私を引き寄せていたのかもしれません。

さて、Fさんが奥様づれで、いらっしゃいました。さっそく手を拝見するのですけれど、どこが悪いのか、よく分からない。手がしびれるという人には、胸鎖関節やら、肘やらを探ってみるものですけれど、そんなところを調べてみても、一向によくなりません。

時間がかなり経って、こちらにも焦りが出て参ります。

こういう時は操法を止めて、じっくり考えるに越したことはありません。トイレに行くのもよし。お茶を飲むのもよし。別にサボっているわけではなく、気分転換を図るわけです。

そうすると、いままで自分を縛り付けていた発想から離れることができます。

しびれの原因が掌側にあるのか、甲側にあるのかを確かめてみよう、という発想が沸いてきました。

── 掌を広げる時と、閉じる時と、どちらが痺れを強く感じますか。
── 広げる時ですね。
── そうですか。屈筋側に問題があるわけですね。

という答えが出たということは、掌側に問題が潜んでいるということになります。肩から肘、手首とたどる道筋は主に甲側に発想しているでしょう。これは逆のことをしていたに違いない。

屈筋側に問題が潜んでいるとすると、手首から先の屈筋は掌の「浅指屈筋」が代表的ですから、その辺りに何か原因があるのではないか。

とすると、最近よく取り上げている、金星丘と内臓の関係が、どこか知ら繋がっている気がします。

内臓の下垂があって、そのために浅指屈筋に拘縮が発生している。それが痺れの根本原因になっているのではないか。

今まで、こういう発想で操法をしたことはないのですけれど、こういう発想を採用しなさい、と「天からの声」が届いているのだと考えてみたんです。場合によって、このような飛び離れた発想を採用することも必要です。

自分の発想が何かに固定してしまうほど怖いことはない。

固定してしまうと、にっちもさっちも行かなくなって、苦し紛れにおかしな操法をしてしまって失敗したことが、これまでにも何度もありました。力づくで何かをしようとしてしまう。これは完全に失敗のパターンです。

発想の転換をすることが、ぜひとも必要な場面がときどきあります。特に従来の操法で、いかんともしがたい場合。

そういう訳で、Fさんの掌をあちこち押さえてみました。すると、案の定、あちこちに圧痛があります。圧痛の位置に応じて、内臓を軽く押さえて押し上げてみると、圧痛が消えて行きます。

手の痺れを取る操法としては、何重にも迂回して手に戻っているという奇妙な操法に違いない。

けれど、やっていて、これだ、という感触を感じました。圧痛が次々を消失していくからです。

── これでどうですか。痺れは?
── 大部らくになりました。これなら鉛筆が使えそうです。
── それは良かった── といいながら私は、本当かな、と疑っています。

結局Fさんは、逆立ちをして、内臓の下垂を直してみます、とおっしゃる。確かFさんは、80歳が近いはずです。この元気に私は唖然とするしかありません。

私は今年70になりますが、負けてはいられないとFさんの元気をいただきました。何かと勉強になった一日でした。やはり偶然にFさんに会ったのではないと今でも思います。

内臓の下垂→掌の屈筋の拘縮→手の痺れ、という三題噺のような関係ですが、こういう関係が明らかになるというのも、共鳴法のメリットでしょう。

959 胃下垂と浅指屈筋

第959号 2017年3月2日
▼ 胃下垂と浅指屈筋

前回、心臓と肝臓の下垂について調べました。今回は、胃下垂についてです。

といっても、内臓の下垂は繋がっているらしく、胃だけ下垂しているわけはなく、隣接する内臓も同時に下垂していると考えた方がよさそうです。

これに気づいたのは、肝臓の下垂を調べている時でした。肝臓が下垂しているというようなことが有りうるのであれば、それに隣あった膵臓とか十二指腸とかも下垂しているのではないか、いや、そういう意味では胃も下垂しているのではないか、と思ったわけでした。

どこで、前回、圧痛の有無を調べた右手の金星丘の隣はどうか。と思って周辺を調べると、
金星丘の上に示指につながる浅指屈筋(せんしくっきん)の腱があります。金星丘から上に辿って行くと、つっぱったスジが触るでしょう。(浅指屈筋については、筋肉の解剖図などで確認してください)

ここに少し圧痛を感じました。そこで、これは胃下垂ではないか、と考えました。

そこで、胃と、その下の下腹部を両手で押さえ、少しばかり上に押し上げるようにしていると、確かに浅指屈筋の腱が緩んできました。

ですから、肝臓や心臓だけでなく、胃など、その外の内臓も調べるようにしようと考えました。ですから、短指屈筋の腱を調べて、その圧痛を除去すると、胃下垂だけでなく、その周辺の下垂を修正できるのではないだろうか、というのが結論です。

特に女性の場合には子宮や卵巣を切除している人がかなりいます。そういう方々は、あるべきところにあるものがないのですから、下垂し易いことでしょう。

もう一つの教訓は、掌は内臓と深い関係があること。高麗手指鍼でも掌に内臓のツボが多く確認されています。

さて、以上の操法から引き出せるもう一つの教訓は、ある操法を施した後で、その周辺にも似たものがないかどうかよく考えてみるということ。これは私がものを考える時に、よく使っている一般原則の一つです。【類縁の原則】とでも名付けておきましょうか。

959 心臓の下垂

2017年2月27日

── くっきりした素晴らしい運命線ですね。

操法の最中にお客様の掌が上向きになっている時、手相をちらっと見てそんな風にいうと、嫌な顔をする人はいません。手相の話は皆さん関心が高いと見えて、しっかり聞いてくださいます。

手相というと、生命線だとか感情線だとか、「線」が関心の中心になることが多いけれど、周りにある「丘」にも重要な意味があるようです。

親指の付け根の「金星丘」、薬指の付け根の「太陽丘」、その他いろいろ名前が付けられていますから、興味のある方は、こちらでどうぞ。http://syunneta.com/fuusuieki/2tesou/

さて、その「金星丘」のお話です。親指の付け根のふっくらとした丘。ここを押さえてみると、という話は以前に書きましたね。右手の金星丘を押さえて痛みを感じる時は、肝臓が下垂しているという話を書きました。[928号] です。

では左手の金星丘が痛い時は、どうなのか、という疑問が出て当然ですが、実際にメールで尋ねて来られたのは、お一人だけでした。

答えは「心臓の下垂」です。こういう話は聞いたことがないという人が大部分で、大抵の方が怪訝な表情をされるのですが、内臓下垂は珍しいことではなく、重力の自然法則から言っても、当然ありうることのようです。

心臓が下垂すると、どうなるか。不整脈が出ることが多いように感じます。逆にいうと、不整脈で困っている人は、左手の金星丘を押さえて圧痛を感じるかどうか試してみるのがよい、ということです。

不整脈と言われてもピンと来ないなら、動悸を時々感じるということです。時々、何もしていないのに心臓がドキドキするという人がいますが、そういう人は不整脈を起こしているわけです。(不整脈にもいろいろ種類がある、というような医学的な話は、いまは割愛します)。

左手の金星丘を押さえて圧痛があった人は、自分の心臓に掌を当てて、少し上向きに押し上げるつもりで、じっとしていてください。時間にして数分。心臓の位置は、左寄りと思われていますが、押さえるのは胸の中央でよろしい。

その後で、左手の金星丘を押さえてみる。見事に圧痛が消えていることでしょう。まだ残っているようであれば、もうしばらく同じことを続けてみればよい。

これで動悸がおさまる人もいるのではないか、と思います。

右手の金星丘に圧痛がある人は、肝臓に問題がある可能性がある、と言うのは [928号] に書いたことです。

じゃあ、胃下垂はどうなのか、という質問が出ても不思議ではありません。私にもそういう疑問が浮かびました。

以上の心臓と肝臓の件は教えてもらったことでしたが、ここから先は私が見つけたことです。
(次号につづく)