路地裏の整体術 第831号 2015年8月20日
▼ ナンバ歩き(四)
ナンバ歩きに関して、いくつかのご意見をいただいております。それぞれ、参考になる点がありますので、まとめてご紹介いたします。
■Kさん(北海道)という方から、驚くべきご報告をいただきました。
──以前、ギックリ腰になりネット検索したことから、路地裏の整体術を読んでいます。難しくてわからないことも多いのですが、今回のナンバ歩きは実践してびっくりしたのでメールさせていただきます。
私は心疾患により、少しの坂道や階段を上る時でも途中で休まなければなりません。先日高低差約30m、距離約250mの上り坂をナンバ歩きで上ってみました。
何と一度も休憩することなく上り切ってしまいました。本当に自分が信じられませんでした。いつもならゆっくり上って途中で3回は休んで息を整えていましたので。
この時の嬉しさと言ったらなかったです。自分に自信が持てました。これからはできるだけナンバ歩きで歩こうと思っています。
ありがとうございました。
■Mさん(住居地不明)から次のような参考になるご意見もありました。やり方によって、深みのあるやり方にもなりうると思われます。
──私は、いわゆる、ナンバ歩きを二十年弱続けております。最初は、ナンバ歩きを練習しようと思ったのではなくて、身体の使い方について、色々、やっていたら偶然にそうなったのです。
「そういえば、最近、ナンバ歩きというのが話題だが、これがそうなのか?」
と興味をそそられ、そのまま続けて、二十年弱になります。
つまり、身体のバランスで、偶然にそうなったのですから 、現代人の身体使い(バランス)のまま、訓練でナンバ歩きを作るのは、少し違う気がしております。
その偶然の経過を書かせて頂こうと思いますが、その前に・・・
歩き始めて間もないころの赤ちゃんを思い浮かべて頂きたいです。手は振ってません。手を振る筋肉がまだついておりません。
全身の筋肉が弱いのに、立って歩くのですから、非常に効率の良い歩き方だと思います。
つまり、人はみな、いわゆるナンバ歩きの時代があったことになります。そのまま成長したのが、手を振らずに歩いた昔の日本人かもしれないですね?
人間の歩き方は、先天的ではなく、周りを見て覚えるのだそうです。甲野さんの本に書かれてますが、オオカミに育てられた人間は、一生四足をやめなかったそうです。
さて・・・私が、いわゆるナンバ歩きに偶然になった経過です。当時、武道をやっていた関係で、とにかく力を抜くことを研究しておりました。
あ・・・前提条件として、骨盤の角度が前傾しすぎていてはダメです。手を振る現代人は、前傾過ぎの人が多いように感じます。「仙骨姿勢」という本がありますが、なかなか参考になると思います。(太極拳の骨盤の角度なども参考になります)
まず、壁のそばで、背中を壁に着けずに立ち、頭皮・顔の力を抜き、首の力を抜く。気持ちをほっとさせるのがコツでした。
それができたら、背中の筋肉が重力で地面に落ちるくらいのイメージで、力を抜きました。
ここまでは、骨盤の角度に問題なければ、意外と簡単だと思います。
コツがいるのが、肋骨のすぐ下(周囲全部ですが特に胸椎12番下)~骨盤のすぐ上・・・方形筋などの特定の筋肉を考えると間違うような気がいたします。肋骨のすぐ下は、リラックスして横隔膜が下がるくらいのイメージで抜きます。そのイメージを骨盤の上(腸骨稜辺り)まで広げて、力を抜き続けます。
これが上手くいくと、突然、後ろに倒れ始めます。(だから、壁のそばに立ってやります)驚くほど、明確に倒れ始めます! つまり、現代人の多くは、背中の筋肉をぐっと力を入れ、締めて、それをバランスして立っているわけです。
ここまでできれば、あとは、簡単です。後ろに倒れるくらい力抜けたら、それを維持して、まっすぐ立ちます。
要は、倒れないように、身体を前に傾けて、バランスとって立つわけです。
さて、その状態のまま、何も考えずに歩くと、手を振ってないです。手を振る必要が無くなります!! ここまでで、いわゆるナンバ歩きはできますが、その後、背中側だけでなく、胸、お腹はもちろん、全身の力を抜いていくと、さらに発展していきます。
因みに、この状態の身体は、研究すると驚くことがいっぱいあって、楽しいです。気持ちの操作なども楽になってくるようです。また、相撲なども、 こういう状態の身体でやれば、決して、外国人には負けないと思いますし、スポーツでもかなり有益だと思います。私自身は、腰椎分離症ですが、かなり助かっています。
ナンバ歩きを、一般の方にまで広めるのは、なかなか難しい気がいたします。一つには、もし、私の説明通りできたとしても、それを日常の身体として定着させるには、やはり、それなりの期間が必要です。
毎日毎日、一日中意識して、2週間以上はかかると思います。その間、非常に興味深い身体の変化を体験できるのですが・・・私も、これまで、何人かに伝えてきましたが、身につけることができたのは一人だけです。
ただ、伝える過程の部分部分については、一般の方にも役に立つ部分はあるように思います。いくつかあげれば・・・特に、力の抜き方・・・特定の筋肉に注目し、観察しながらでは、力は抜けず、抜きたい場所を意識しながら、ホッとする気持ちで力が抜ける事。
頭部、首の力を抜いて、それを維持しながら何かの作業にかかれば、不意の腰痛予防効果があること。
そして、骨盤の角度は、現実には、ヘルニアの方などには、かなり役に立つことがあるように感じました。
■Sさん(愛媛県)からは、踊りとの類似を指摘していただきました。
──今回のナンバ歩きの記事で、夏のお盆時期ならではの「ある動き」に似ているとふと思いました。
「四国、お盆」と言えば・・・徳島の夏祭り「阿波踊り」の動きは、手と足を同時に出し、体幹は捻らせず、「女踊り」は特に、頭から足まで、キリっと真っ直ぐに踊ります。
それから、それぞれ地方ならではの踊り方はあるとは思いますが・・・盆踊りも手と足が同時に出しながら踊ります。どちらも、長い時間を踊ります。
身体を捻らないからこそ長い時間踊り続けられるのでとても理にかなっているのではないかと思いました。