手の平がくすぐったい

路地裏の整体術 第791号 2015年4月10日
▼ 手の平がくすぐったい

珍しい現象なので、忘れないうちに書いておきます。昨日こられた女性です。
色々と現在かかえている症状についてのお話を伺って、最後に出たのが、手の
平がくすぐったい(関西弁でこそばい)と言われる。言われてみれば、私自身
も、そんなことがあったような気がします。

しかし記憶を辿ってみても、最近そういうことを訴えて来られた方はなかった
はずです。

で、これを聞いて私はどう思ったか。こういう症状に対応したことがない、ど
うすればいいか、と考えた。考えても、いいアイデアが出てくるわけではあり
ません。でも、この時は、足の類推で行きました。足の裏に違和感を覚えると
いう訴えは時々あります。そんな時、どうしたかを辿ってみました。

足の裏がくすぐったい、という訴えに遭遇したら、多分、足の中足骨が落ちて
いると考える。だから、これに反動をかければ解決するはずだ。手も同様にし
て解決するはずです。

そこで、咄嗟に私は、

──それは、手の骨が歪んでいるんですよ。

と答えた。自信があったわけではありません。でも思いつきでそう答えた。
判断が外れていれば面目丸つぶれになるところですが、私の場合、こういう咄嗟
の判断がものを言うことが多い。

40代の女性の手をとって、両手で相手の手をサンドイッチにし、甲側からぐっと
押さえ、パッと放す操法を試しにやってみました。

──どうですか。
──何もありません。
(何もありません、て、こそばいのが取れたという意味だろうか)
──こそばくありません。と彼女。
(やれやれ、良かった)

反対側の手も同じようにします。

──はい、何もありません。
──それは良かった。
──ありがとうございます。

ということで、この件は落着です。手に歪みがあると、肩に影響があるはずです。
から、これを先にやっておくのが正解です。

足の裏がこそばいというのも、同じ操法で、甲側からぐっと押さえてパッと放す
ということを繰り返せばよろしい。

何にせよ、人が言ってくる症状はさまざまで、予想外の症状も、色々有ります。
こんなのテキストになかったと嘆く前に、よく似た症状を頭の中で探してみて、
その類推でやっていけば、案外、案ずるより産むがやすし、となるものです。

ただし、どんな症状でも、どんな操法でも、そうですが、カチカチに硬くなって
いる人の場合は、うまく行くとは限らない。その部分を柔らかくする算段を前に
やっておくことが必要です。そうでないと、操法がうまく効かないかもしれない。
この操法はうまく効きません、と弱音を吐く前に、カチカチを緩めてかかること
が必要かもしれない。このことをお忘れなく。

盆の窪

路地裏の整体術 第796号 2015年4月25日 + 797号
▼ 盆の窪(ぼんのくぼ)ぼんのくぼとは、頸の後ろ中央のスジ状に凹んだ部分の真ん中です。ネットの『語源辞典』の記述によれば、「ぼん」とは「坊主頭」の意味で、坊主頭
を見ると、ここがぽっこり凹んでみえるので、このように呼ばれているようです。この説が正しいとすれば、「坊の凹」と書くべきかもしれません。この場所は、池波正太郎の小説『仕掛人・藤枝梅安』の鍼医者・梅安が一鍼お見舞いする場所で、ぼんのくぼの奥に延髄があり、ここに鍼を刺されると、一発で命を落とすという設定でした。

そんな命を落とすほど重要な場所ですから、ここの状態は、人の身体全体に大きな影響があります。例えば野口整体の祖・野口晴哉(はるちか、1911-76)は、人の身体を見る時、頸椎2番から始めると著書(『体運動の構造』)に書いています。頸椎2番は、ぼんのくぼのすぐ下にあります。

ぼんのくぼそのものは、頸椎1番が奥にある場所(この奥に延髄がある)で、私は、ここも重要個所の一つと考えています。頸椎1番は、背骨の一番上の骨で、環椎(かんつい)とも呼ばれ、この骨の上に頭蓋骨が乗っかって、左右に回転する構造になっています。ですからここに歪みがあれば、全身に歪みがある証拠と考えられます。

ついでながら、梅安の「技」について触れておきますと、盆の窪の奥に頸椎1番があるため、鍼をぴったり延髄に届かせるためには、斜め下から斜め上の方向に狙わないと届きません。実際映像を見ると、確かにその方向に狙っているようで、まさにリアルな映像です。

さて閑話休題。誰でも身近の人をつかまえて、盆の窪を押えてみて下さい。押えると書くと、本当に押えてしまう人があるといけませんので、念のために書いておきますが、押えるのでなく、そっと触れる程度にしてください。両手の親指を揃えて盆の窪に当ててみます。、両方の親指の感触が同じならいいのですけれど、どちらか一方が手前に出ている感じがするなら、骨盤のねじれがあることを示しています。

骨盤のねじれがあって、そのために背骨がねじれ、盆の窪にまで影響が及んでいるわけですから、骨盤のねじれを解決すれば、盆の窪も正常になるはずです。その方法は『共鳴法教本』の [26] ~ [28] を参照してくださればわかります。ここに書かないのは、図がないと言葉だけでは分かりにくいからです。
(『共鳴法教本』の購読方法については、ご希望があれば朱鯨亭までお尋ねください)図の説明には、⇒の方向に皮膚を少し引いて持続するとありますが、⇒の方向にさっと擦って、しばらく置くという方法でも可能です。変化の起きやすい人ではこの方法がよいかもしれません。
この操法を数回繰り返して、盆の窪を調べてみます。左右の拇指の感覚差がなくなっていれば、それでOKです。左右の差が消えるだけでなく、盆の窪の周辺が軟らかになっているはずです。

前回に書いたように、盆の窪の奥には頭部全体を支える頸椎1番がありますし、さらにその奥に延髄など脳幹の部分があります。視床下部には自律神経の中枢があり、身体の働きの中でも最も重要な働きをしている中枢部分になっているわけで、ここが軟らかな状態にあり、左右差がない状態にあるのは全身の働きにとって重要な要因であると思われます。

それだけでなく、盆の窪が軟らかになれば、その周辺、つまり後頭部も軟らかになります。それによって、血圧が下がるとか、不眠が治るという望ましい効果も出てきます。

首がしんどいと訴える人が、PC作業で激増している時代です。自分自身の首を健全な状態に保つのは、誰にとっても重要課題のはずですから、操法家の方々も一般の方々にも、この操法を身につけていただきたいと思います。

さらに、頸椎1番の状態を整えておくため、骨盤の操法の後に、盆の窪に愉気をしておくと完璧でしょう。これによって頸椎1番のねじれが完全に解消されます。目の異常・耳の異常と頸椎1番がつながっているケースがありますから、目や耳も、よくなるというわけです。【続く】

意識のマップとしての手

路地裏の整体術 第793号 2015年4月18日
▼ 意識のマップとしての手

マップ(地図)とは何か。例えば東大寺に行きたいとします。東大寺までどう
して行けばたどり着けるかは地図に表現してあります。新幹線に乗って京都に
降りる、次は近鉄に乗って奈良にたどり着く。近鉄の奈良駅から市内循環バス
に乗ればバス停3つ目ほどで東大寺・春日大社前のバス停に着きます。(これ
から奈良の観光案内をしようというわけではないので、慌てず落ち着いて読ん
でくさだい。)

地図といってもいろんな種類があって、道路地図というものもある。いうまで
もなく、車を使って道路を走って行きたいという人のためのものです。一方で
鉄道地図というものもあって、鉄道を使って目的地に行きたい人のためのもの
です。

つまり、そこへ行きたい人が、どのように意識を働かせると目的地に辿り着く
ことができるかを描いたものがマップですね。

身体についても同じようなものが作られていて、解剖図がマップに該当するで
しょう。あるいは骨格図とか筋肉図というものもあります。

共鳴法では、手と全身の対応関係を使って、色いろと操作します。例えば手首
の近くにある有頭骨が仙骨に該当します。仙骨は背骨の状態に影響する、全身
中でも最も重要な個所です。これが、有頭骨を操作することで変化する。もう
お分かりのように、手が全身のマップの意味をなしていることがわかります。

なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか。ある人は、手と全身の各部との
あいだに何かのつながりを発見しようとするかもしれません。昔、経絡の構造
に興味をもった人が、経絡の走っている場所を調べて「ボンハン管」を発見し
たと伝えられたことがありました。しかし今では、この学説は否定されている
ようです。

直感的に考えてみても、手の各部と、全身の各部との間に物質的なつながりが
あると考えるのは無理がありそうですね。それに代わって唱えられるのはホロ
グラム仮説です。身体のあちこちがホログラムとして、つまり像として同じに
なっていると考えるわけですが、全身も手も、像ではないので、これも無理か
もしれません。

私は、操法をする人が手を全身のマップとして使っていると考えます。言い換
えると、操者が意識のマップとして手を使うと言ってもいいでしょう。手を手
がかりとして、全身を操作すると考えるわけです。それは無理筋だという意見
が出るのは承知の上です。

共鳴を始めた頃は、私もホログラムの考えを採っていました。しかし掌を顔の
マップとして使えることがわかり、小指の付け根の下の膨らんでいるあたりを
示す「月丘」と呼ばれる部分を撫でたり押さえたりすることで視力を改善する
ことができるようになり、従来の手全体を全身のマップとする見方だけでなく、
これとは別に掌は顔面のマップとして使えると分かって来ました。物質の関連
があると考えると、手全体とも、掌だけとも関連があることになり、手は意識
を操作するためのマップである、と考えるようになりました。

手と全身とが物質的に結びついているのではなく、操者が自分の意識を操作す
るためのマップと考えて初めて、そういうことだったのか、と納得が行きまし
た。これは、意識が物質を動かすという事実を示しており、意識を物質の像で
あると考える現代的な考え方とはまっこうから対立する考えです。

操法をすると身体が変化するのは、操者が身体という物質を手という物質的な
手段を使って変えてゆくからだ、というのは正しくない。「手」という物質的
なマップを使って、実は自分の意識を動かし、それでもって全身を変化させて
いるのだ、と解釈する以外に道はありません。

論理をたどるかぎりそうなるはずです。意識が物質を動かす、という考え方は
一時代前には「観念論」として排斥された考え方ですが、そう考えるより他に
道がないとすれば、こう考えるのが科学的だ、ということになります。

納得のいかない人は、ラリー・ドッシー『祈る心は治る力』をお読みください。

身体はどう捻れるか

路地裏の整体術 第792号 2015年4月15日
▼ 身体はどう捻れるか

よく身体が「捻れる」と論じている人がいます。かく言う私も「捻れ」について
何度も書いて来たわけです。ところが、不思議なことに身体のどこがどのように
捻れるかを明確に書いている人が少ない印象があります。

皆、漠然と「身体が捻れる」と観念的に論じるけれど、実際にどのように捻れて
いるかが分からない、または実際に具体的にどう捻れているかを書くのが難しい
のではないだろうか。だから書き方が観念的になるのではないだろうか。

ある人は、捻れについて具体的に書いてはいるものの、肝心のポイントを書くと
読者が下手な真似をしておかしなことになると困るという「おかしな」理由で、
書いていない人もいます。みんな身体に捻れがあって、それが身体の歪む理由だ
と漠然と感じているものの、では具体的にどこがどのように捻れているかを書く
ことを躊躇しているようです。

膝を取り上げてみましょう。

膝は外へ向けて捻れて行きます。膝のお皿の下には、溝状になった凹みがあり、
そこに指先を当ててみると、内側と外側と二つの凹みがあり、これは「膝眼」と
呼ばれています。この膝眼(しつがん)の位置を較べてみると、お皿の中央辺り
にある場合と、思いっ切り外寄りになっている場合とがあることがわかります。
もちろん通常は、その両極端の中庸にあるわけです。

この膝眼とは何かと考えてみると、脛骨(けいこつ、すねぼね)の骨頭の中央が
やや盛り上がっているために両側が凹みになっている場所です。ですから、これ
が外寄りになるのは、脛骨が太ももの大腿骨(だいたいこつ、ふとももぼね)に
対して外へ捻れて来ていることを表していることがわかります。(厳密に考える
と、皿が中央にあることを確認することが必要ですが、これには大腿骨の捻れを
考えに入れなければなりません。これを言い出すと話しが複雑になるので、次の
機会に譲ります)

事実、現場で操法に取り組んでいる人なら、両脚の外側がカチカチになっている
人を毎日のように見ているはずです。体重が外に外に寄ってしまい、両脚の外側
が必死に支えている有り様ですね。膝が外側へ捻れて来ていることになります。
もっと正確に言えば、大腿骨に対して脛骨が外へ捻れていると言えます。骨と骨
とが捻れの関係になるだけでなく、骨に着いている筋肉の位置も捻れてきている
はずです。

これに対して膝と対極の位置にある肘はどうでしょうか。肘関節の横に圧痛を感
じる人は多い。肘頭の両側の凹みを押すと、どちらかに痛みを感じる場合です。
特に、肘頭の外側に圧痛を感じる人が多いでしょう。ということは、捻れという
観点から考えれば、上腕骨(じょうわんこつ、にのうでぼね)に対して、肘関節
をなしている他方の骨である尺骨(しゃっこつ)が内側へ捻れて来ているという
ことになります。逆になっている例も少数ありますが、たいていは内側へ捻れて
くると言うことができます。

これは人のする大抵の作業が手を内側へ捻ってする作業であることを考えれば、
頷(うなず)けるでしょう。これを読んでいるあなたも、マウスを持つために、
腕を内側へ捻っているに違いない。スマホで読んでいる人は、左手を外側へ捻っ
ているかもしれませんが。

こういう次第で概ね、膝は外へ、肘は内へ捻れています。身体全体の捻れはこの
2個所に端を発するのではないだろうか。事実、下腿の捻れを解いてやると全身
が楽になる人が多い。前腕の捻れを解いてやると、上半身の捻れが楽になります。
「くび」と名のつく場所は、身体の中でも重要箇所であると言われますが、手首
と足首とが重要なのは、捻れに関係しています。

したがって、手首の捻れを解く時は、外回り、足首の捻れを解く時は、内回りに
するのがいい、という結論に至ります。その具体的なやり方については、すでに
何度も書いていますので、それ(HPの記事、テキストの記事)を探して下さい。

頚椎と腰椎の対応

路地裏の整体術 第789号 2015年4月7日
▼ 頸椎と腰椎の対応

頸椎(けいつい、頸の背骨)と腰椎(ようつい、腰の背骨)とが対応している
という趣旨の記述や図表などを本でみかけることがあります。この意味を気に
も止めていなかったのですが、事実として、腰椎を調整すると頸椎が整うので、
皆さんに確かめていただこうと、からだほぐし教室で試すことにしました。

頸椎がおかしいとか、どこかの整体で頸椎を整えてもらったら、逆におかしく
なってしまったとか、頸椎の故障を訴える人をたびたび見かけます。頸椎には
横に肋骨のような骨が付属していないために、変に力がかかると、大きな変化
を起こしやすいのは事実です。そのため頸の骨を急激に動かして調整する方法
は危険だとして厚生労働省が禁止の通達を出して(しかし事実上、この操法を
やって頸椎をおかしくしている不慣れな操者が多数)います。頸椎の横を徒に
ゆるめるのも感心できません。頸椎の横が硬くなっているのは、頸椎がぐら付
くのを防ぐという自然の智慧が働いているというべきです。

そこで、どうするか。伏臥(ふくが、下向き)に寝てもらって、腰椎の棘突起
(きょくとっき、背骨の一つ一つの骨の突起)の上に指先をおいて、静止させ
ておく。正確に言えば、歪みのある方向にわずかの圧をかける、ということに
なりますが、棘突起の上に2分ほど指をおいておれば、自然に調整できます。

腰椎を下から順に、腰椎1番まで調整し、最後に頸椎1番の後ろに愉気(ゆき)
をして終わりにしました。これで、坐って頸椎を動かしてみると、概ね動きが
改善していました。もちろん中にはこれだけで改善しない個所があるかもしれ
ません。そこには別の操法が必要ですが、まずは頸の動きがよくなります。

私は教室参加が初めての方と組んで、上の操法をやってもらいましたが、終っ
て頸を確かめてみると、見事に動きがよくなっていました。つまり初めての人
でも頸椎を改善できると実証されたことになります。

もちろん、詳しく言えば、仙骨を整えた方がよいとか、尾骨の調整も忘れずに
やった方がよいとか、色々な条件がありますけれど、大まかに痛みが消えれば
よい、という程度であれば、誰でもできます。

特に、頸椎2番は頭痛と関係していますし、腰椎2番は膝痛と関係しています。
ですから、膝痛と頭痛は2番同士の対応を通して関係していると思われます。
分かりやすくいえば、頭痛のある人は脊柱の左右バランスに問題があり、膝痛
の人も脚の左右バランスに問題がある。頸椎の左右バランスは頸椎2番の位置
にあり、腰椎の左右バランスも腰椎2番の位置にあるという結論になります。
そして、その根源に左右の足の距骨のバランスがあります。

「坐骨神経痛」という症状

路地裏の整体術 第785号 2015年3月24日
▼ 「坐骨神経痛」という症状

「坐骨神経痛」 だ、と言って来られる人がこのところ多いように思います。ウィキ
ペディアによれば、

──坐骨神経の走行に沿い、一側の大腿後面から足まで放散する痛みが
特徴的である。low back pain より強い一側の下肢痛、足かつま先に放散する
痛み、痛みと同領域の異常感覚、ラセーグ徴候で陽性、1つの神経に由来する
神経症状によって坐骨神経痛と診断される、 その日の健康状態や体調によって
痛さや箇所が変わることもある。

ここで 「ラセーグ徴候」 とは何か。左右どちらか一方の脚をまっすぐに伸ばしたまま
挙げた時に、脚の裏側から膝にかけて痛みが出て、それ以上は脚を挙上することが
できない状態になることを指しています。原因についてウィキペディアには次のように
書かれています。

──原因はさまざまであり、坐骨神経の圧迫、脊椎神経根の圧迫、梨状筋症候群、
腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などが原因とされている。
最も多い原因は腰椎椎間板ヘルニアであり、約90%の坐骨神経痛はこれが原因と
されている。

この記述が正しいとすると、ヘルニアや狭窄症・すべり症などが治癒しなければ
消えないことになります。しかし、そうだろうか。

先日の男性は、坐骨神経痛の症状を訴えて来られましたが、左脚をみると、腓骨が
異常に下がり、脛骨がたわんでいる状態でした。つまり体重が異常に左脚にかかって
しまっている状態で、どう考えてみても、この脚の状態で痛みが出ているのは当然
と思われました。「坐骨神経痛」 と言って来られた時、私は常に脚に注目します。
定説によれば腰も関係していることになるのでしょうが、どうもそうとは思えない。

腓骨が極端に下がって外果が大きく出っ張っています。足首が内側へ曲がって
しまっていますし、異常な脚という印象です。そこで、腓骨を上げ、腓骨と脛骨の
間隔を締める方法を施しました。言葉だけで説明するのは大変ですが、次のように
します。

左脚の場合。操者は左側に位置する。腓骨頭を右手の親指で下方から押さえ、残りの
4本指は膝の皿に引っ掛けます。左手の親指を使って受け手の足母趾をつかみ、
本人の足首を外回りに(足の外側から内側へ向けて)回す。この動作を繰り返して
いると、腓骨が少しずつ上がり、脛骨のたわみが消えて行きます。時々母趾操法を
して、脛骨・腓骨間の開きを詰めて行く。

これを続けて行くと、外果の飛び出しが少しずつマイルドになり、足首周辺の
形の尖った印象が薄らいで行きます。腓骨が下がってくると、体重が外寄りになって
O脚もひどくなりますが、腓骨の下がりが改善するに連れて、O脚も改善して
きます。一見原始的な方法ですが、これがよく奏功する。

最後に腰椎の歪みを、操者のやりやすい方法で改善させる。そうして立ってもらい
ます。ご本人は、これで不思議そうな表情になって「痛くないです」と言うことに
なりました。腰椎の歪みは、骨盤が左に傾いて、体重が左に余分にかかる状態に
なっているために、左に捻れる状態になっているわけで、腰椎への操法は、その
状態を改善するだけでよい。狭窄症だとかすべり症だとかは気にしなくても、
そんなにひどい症状でない限り大丈夫です。

こんな説明でお分かりになったでしょうか。分かりにくいとおっしゃる方は、
朱鯨亭においでください。

いずれにせよ、「坐骨神経痛」 という怖そうな名前がついていますが、さほど
恐ろしい状態ではないということ。自分の症状に恐ろしげな名前を付けられて、
凹んでいる人がどれだけ多いことか。下手な名前は人を救うことになりません。
「ヘルニア」 とか 「狭窄症」 とかも同じです。手術しかないと覚悟を決めている
人は、名前の脅しに乗らないでほしいと、いつも思うことです。

論理のレベルについて

路地裏の整体術 第786号 2015年4月2日
▼ 論理のレベルについて

──私が、かくかくしかじかの操法をしてみたら、こうなりました。
なぜでしょう?

とか、

──私が、かくかくしかじかの操法をしてみたら、うまく行きません
でした。どこかが間違っているのでしょうか?

こんな質問を頂戴することがよくあります。講座の席上でも、メールでも。
でも、ちょっと待っていただきたい。

人の身体は、一人ひとり違っています。身体を取り巻いている状況も、その
時々でさまざまです。大げさに言えば、この世界で起きていることがらは、
すべて一回かぎりの【個別性】のレベルにあるからです。Aさんが操法する
のと、Bさんが操法するのとでは、当然違った結果が出ます。操者の違い
だけでなく、受け手の違いもあります。Cさんの身体の反応と、Dさんの
身体の反応とは当然ながら違いがあります。

テキストにこう書いてあったけれど、やって見たらうまく行かなかったと
いうようなことは、私自身がたびたび経験していることで、言わばそんな
ことは「当たり前」のレベルの話です。そういうことは前提としてテキスト
に含まれていると考えてもらわないと、無数の質問を受けて、私は身体が
いくつあっても足りないことになります。

また同じCさんの身体でも、全力疾走をした直後の身体の状態と、寝室で
熟睡した後の身体の状態では、まったく違うと言っていいでしょう。また
同じ人でも、心の状態によって身体の状態が変わることも珍しくありません。

ですが、そこに共通することがらも当然ながらあります。骨盤が右前に
捻れている人であれば、右前に捻れている人に共通の特性があるに違い
ありません。左前の捻れの人には、左前に特有の性格が見られるかも
知れません。右前の人に共通する【特殊性】とか左前の人に共通する
【特殊性】とかがあるわけです。

ですから操者として私は一回一回の【個別性】のなかに見られる【特殊性】
を意識して、この場合は、こう、その場合は、そう、と【特殊性】を整理
しながら操法をして行くことになりますし、講座で話をしたり、メルマガに
何かを書いたりしています。

お分かりでしょうか。一回一回の【個別】のレベルで体験したことを、その
まま「こうだった」と放り投げても、それは一回一回違うとしか言えません。
そういう質問は、質問にもならないし、時間の無駄にしかなりません。質問を
投げかけるなら、せめて、この【個別】の出来事の中にどんな【特殊性】が
隠れていたかを明らかにして、「こういう条件の時に、こうこうでした」と
問いかけるのでなければ意味がありません。

つまり操者がこういう条件にあって、受け手がこういう条件にあり、その
結果こうなった、なぜか、と問いかけるなら、問われた方も、その条件なら
こうこうです、と答えやすい、ということです。

論理のレベルということで言えば、さらに【一般性】のレベルもあります。
この場合はこうだ、という【特殊】な場合と(たとえば右前の人ではこうだっ
たというような)、別の【特殊】な場合(たとえば左前の人ではこうだった
という)とをつなげると、右前であろうと、左前であろうと、こういう操法
を施すと、こういう結果になるという【一般性】(普遍性といってもよい)
にたどり着きます。ここまで来ていれば、質問にも大いに意味があります。
(いうまでもないことですが、うまくいかない場合もここに含まれています)。

質問するというのは、実は【個別】から【特殊】を経て【一般】のレベルまで
を含んでいるので、生易しいことではないと言えます。質問をする時は、
自分が【何を尋ねたいのか】を自覚して、頭の中をしっかり整理してからに
していただきたいと思います。

これは時間を無駄にしないための、私からのお願いです。

毒出し法、その後の後

路地裏の整体術 第780号 2015年3月6日
▼ 毒出し法、その後の後

昨日のからだほぐし教室で、毒出し法の効果について報告がありましたので、
ご紹介します。今朝、Mさんがメールで詳しく送ってくださったので、それを
以下に転載します。これは参考になります。

──やり方は第四指と第五指の間に、足指パッドをはさんで靴下を履き、寝る
だけです。

効果は

▼朝目覚めた時、ドライマウスで口のなかが、カラカラになるのがマシだった。

▼目覚めた時の背中・首の違和感が軽減されている。

▼日中も肩甲骨周り・首の違和感が軽減されている。

▼仰向けに横になる時 めまいがでない。(普段Mさんには、この症状がある)

▼睡眠が深くなった。

以上です。私にはありがたい技です。今夜は手の指にも挟んで寝ます。

手当て【続】

路地裏の整体術 第782号 2015年3月16日
▼ 手当て【続】

前号の「手当て」について、Oさんから次のようなお便りをいただきました。
とても興味を唆られましたので、ご紹介します。

──整体の仕事をしているわけではないのですが、記事がいつも面白いので拝
読しています。「手当て」のメルマガを読んで、お伝えしたいことがあった
のでメールしています。

実は私のパートナーが、この手当てができる人なんです。

専門があるらしく、彼は火傷を治すことができます。患部の広さにもよりま
すが、手のひらもしくは指先を、近距離でありながら触らない距離に当てて、
動かすのです。魔法をかけられているようにも見えるのですが、こうして火
傷による熱を取り除いているそうです。

ある日、湯たんぽのお湯がこぼれて私の太ももに熱湯がこぼれ落ちて、3度
の火傷を負ったことがありました。皮膚がめくれ上がって、とても痛くて、
泣き出しそうでした。いえいえ、しっかり泣きました。パートナーが手当て
を40分ぐらいしてくれたのですが、その後は痛みがなくなって、通常通りと
変わらず眠ることもできました。子供の頃から火傷は何度かしていますが、
大抵、痛みが続くものです。とても不思議でした。

あとで、パートナーが言っていましたが、実はこの夜ビールを飲んでいて、
ちょっと酔い気味だったので、効くかどうか分からなかったとのこと。しか
も、この手当てをするには、エネルギーも消費するので、疲れているときに
は効果が、 元気な時と比べて低いこともあるということも触れていました。

パートナーがどのようにこの手当ての方法を得たかというと、母親から譲り
受けたのだそうです。決まりはひとつ。お金を取らないこと、と言われたと
言っていました。世の中には、このような手当てができる人が沢山いるよう
ですが、暗黙の了解で本来なら経済的な利益を得てはいけない、ということ
があるようです。

★私も同じような経験がありました。妻は肩が凝っていると、肩にカイロを貼っ
ていたのですが、そのうちにうたた寝をしてしまい、起きてみると、肩の皮膚
が赤くなったと騒ぎ出したのです。低温やけどをして病院に駆け込むと、大変
な「治療」をされるようで、私も少し焦ったのですけれど、気をとりなおして、
長時間手当てをしてみることにしました。手当ての時間は通常は数分程度です
が、この時は1時間やりました。すると赤変していた皮膚が普通の色に戻って
おり、痛みもありませんでした。やれやれ。

Oさんは「近距離でありながら触らない距離に当てて、動かす」とお書きです
が、私の場合は、衣服に直接当ててやりました。動かしていません。「経済的
な利益」はもちろんありません。

手当て

路地裏の整体術 第781号 2015年3月9日
▼ 手当て

──痛いとき、自分で何かやるとして、どうしたらいいですか?

これはよく頂く質問です。もちろん場所によって色々な方法はあるわけです。
でも操法家が使う方法は、たいていが複雑であるか、またはそれなりのコツが
あって、一朝一夕で身につくものではありません。

その証拠に書店の店頭には、健康本が山ほど積まれていて、あきることなく、
次から次へと同じようなことを書いた本が出てきます。そういう本が成り立つ
のは、簡単に身につくようなことが書いてあるけれど、現実にはそう行かない
という証拠かな、と思っています。

そこでどう答えるのがいいか。私は断然「手当て」がいいですよ。と答えます。
痛いところがあれば、そこに手を当てる、不都合なところがあればジッと手を
当て続ける。「手当て」というのが一番だれにでも理解してもらえる言い方で
しょう。

昨日もそんなやりとりをしましたので、これは何度でも書いておいた方がいい
と思って書いています。もちろんHPには野口晴哉の「愉気」について書いて
いますし、「松本道別」の項目には「輸気」について書いていると思います。

しかし、「愉気」とか「輸気」とか言っても、一般の人たちに簡単に分かって
もらえるわけではありません。やはり「手当て」といった方がわかりやすい。

世の中には「手当て」専門の操法家もいて、それぞれの流派によって一家言が
あり、そのやり方を教えるだけでウン十万円などというところもあるようです。
難しく説明しだすと方法が色々あり、それなりの修行をしないことには、使え
ない、という考え方もあるのは、分かりますが、そんな難しいことはともかく、
痛いところに手を当ててみることから始めればどうでしょう。痛みが消えると
納得できて、次回から、こういう風にやってみようと考えるようになっている。
それが出発点です。

注意事項があるとすれば、手当て、といっても初めての人は力をかけてしまい
やすい。ぐっと押してはダメです。そっと触れている程度がいい。具合の悪い
ところにそっと指先を当てている、あるいは面積が広いところであれば手の平
をそっと当てている。それだけ。初めは家族にやって上げる。

色々試してやっているうちにやりかたも上達して行くかもしれません。腰痛が
直せるようになるかもしれない。皆さんのご精進を期待します。

毒出し法【その後】

路地裏の整体術 第778号 2015年2月28日
▼ 毒出し法・その後

先日、本誌で取り上げた「毒出し法」について三名の方からご意見を伺いまし
たので、ご紹介します。

【1】Mさん(東京都在住)この前の「小指と薬指の間にペンを挟む」という
方法を読みまして、以前お世話になった京都の先生のことを久しぶりに思い出
しました。http://yasuda-iin.jp/feature/#book
凝っている側の小指を丸めてティッシュ等を握っているとコリが取れる、また
歩きながら行うのも良い、とのことで歩きながら小指と薬指の間に(ペンでは
痛いので)ハンカチを折ったものを持っているとバランスが良くなる感覚があ
ります。(その時々で左右を変えます)

▼なるほど、ペンのような硬いものでなく、ティッシュやハンカチのような
柔らかいものを挟むとよい、というご意見ですね。これは試してみましょう。
ついでにこの安田先生のやり方は面白い。「ホムンクルス」という小人を身体
のあちこちに見つけて、それを使おうという「共鳴法」と同じ発想法です。
これも参考にさせていただきたいと思います。

【2】Nさん(山口県在住)(電話で)クルクル回す代わりに、毒出し点を
ぐっと指で押えると、上の方まで効いてくる。足の毒出しをすると、股関節の
辺りまで効いてきます。こんなポイントをよく見つけたものだ。

▼これは上記Mさんが「軟」派とすれば「硬」派というべきでしょうか。経穴
もそうですね。古代中国の人たちは、よくあれだけ(361穴 とかいいますね)
のものを組織的に発見したものだ、と感心します。「奇穴」という登録されて
いる経穴以外のポイントも色々とあるみたいで、これからも色々な新穴が出て
来るのかもしれません。

【3】Kさん(奈良県在住)(からだほぐし教室の発言から)教室で前回、
肩の高さが揃ったという方から──一週間後に、今でも効き目があるようで、
肩が揃ったままでした

▼このように、色々な方面からご意見をいただくと、非常に参考になります。
自分ひとりで試してみるのには限界がありますから。自分の身体だけで試して
結論づけてしまうのは、危険でもあります。これからも、小さな気付きも歓迎
しますので、何なりとご意見を送っていただけると、ありがたい。

毒出し法【続】

路地裏の整体術 第775号 2015年2月21日
▼ 毒出し法【続】

先日のペンを指の間に挟んでおくという操法の続きです。一昨日の「からだ
ほぐし教室」で試してもらいました。肩の高さを較べて、明らかに左右差の
ある男性二人に白板マーカーを指の間に挟んでじっとしていてもらいました。
しばらくそのままにして、少し時間が経ってから肩をみると、お二人とも、
肩の高さが揃っていました。

肩の左右差があるのは高いほうの肩に緊張がある証拠です。そちらの指に細
工を施したわけです。その結果、肩の緊張が緩み、肩の付近に滞留していた
疲労物質が流れ去ったのでしょう。なぜ、そんな効果が出るのかは不明です。
また、この操法で肩の高さが必ず揃うと保障できるものでもありませんが、
ダメ元で試してみる価値はあります。

毒出し法

路地裏の整体術 第774号 2015年2月19日
▼ 毒出し法

「毒出し法」というものが、色々な人によって唱えられています。でも面倒な
ものが多い、というのが正直なところです。例えば、エドガー・ケーシーさん
というアメリカ人のヒーラー(といえばいいのか見者といえば正確なのか)が
ヒマシ油の湿布を使うことを繰り返し提唱しています。絶大な効果ということ
です。

昔わたしもやってみようとしたことがあるのですが、温熱器を使うとか、ネル
に油を塗りつけるとか、慣れればどうということもなく、絶大な効果があるの
でしょうが、どうも面倒で止めてしまいました。(これはケーシー療法を実施
している方々を批判しているのではなく、ただものぐさな自分を批判している
だけです)

「毒出し」という考え方は分かりやすい。身体のあちこちに、特に関節の周り
にいろいろな疲労物質がたまりやすい。それが簡単に出ていってくれるのなら、
そんなありがたいことはありません。この前に書いたのは、中川式の毒出し法
でした。薬指と小指のあいだを指圧棒でグルグルと刺激するだけですから、さ
ほど面倒だとは思いませんが、からだほぐし教室の参加者Tさんには面倒だと
感じられたのでしょう。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/nakagawa/ に毒出し法の写真があります。

グルグルやらなくても、薬指と小指をもって、日本の指(趾)を開いておれば、
効果があるのではないか、と質問された。そういわれても私は、そんなことを
したことがありませんから、なんとも答えようがなかったのです。でも試して
みようと思いました。私は根がものぐさですので、日本の指を開いているのも
面倒くさい。代わりに二本の手指の間に、太めのマジックペンを挟んでジッと
することにしました。違和感のあるところを指圧棒でゴシゴシ擦ることも不要
です。

この前から、右肩に少々違和感があるので、これが何とかなるかもしれない、
と思ったわけです。

やってみると、

効果満点。数分間ペンを挟んでいるだけで違和感は消失し、ごりごりいう音も
消えました。何とも不思議な操法ですが、確かに効果があります。肩が痛い、
肩が動かない、と悩んでいる方、お試し下さい。効果があれば、メールで教え
て下さるとありがたい。ぜひよろしくお願いいたします。まったく効果がない
という方も、お知らせくださるとありがたいです。

膝ががくがく

路地裏の整体術 第777号 2015年2月22日
▼ 膝ががくがく

武道の世界に「見取り稽古」という言葉があるそうです。
「日本事典」というサイトに「見取り稽古」の項目があり、次のように書かれ
ています。http://www.nihonjiten.com/data/42044.html

──ほかの人の稽古や試合を見て学ぶこと。優れた技や剣風、あるいは一本
を評価できる「眼」も重要な技能であり、見取り稽古はその意味でも重要で
ある。

この「見取り稽古」ほど役に立つ稽古はないと言っても間違いないでしょう。
順序を踏んだ講習にも、もちろん意味はあるけれど、どこがどう悪いのか見当
もつかない人に操法しながら、どこに根本原因があるかを探りだしていく過程
は、一人ひとりで違うだけに、簡単にマニュアル化して伝えることができません。
具体的な過程の中で立ち現れる操法の順序や、どんな操法を選ぶか、とい
った点を学ぶには「見取り稽古」しかない、と言えるでしょう。

さて、最近、操法を受けに来る人は難しい症状の人がじつに多い。こんな症状
をどう扱えば解決するのか、と頭を抱えそうになる人が多数来られます。簡単
な腰痛の人など骨法で一発というケースも多いのですが、どういうわけか殆ど
そういう人は来られなくなりました。

難しい症状の人では、どこに根本原因があるかを探り当てることが大きな課題
です。場合によっては、何度か操法を繰り返して、やっと根本原因に迫ること
ができる人もいます。今回、タイトルに掲げたNさんという男性も、そのよう
な方の一人でした。

見学する立場からすれば、難しい人ほど見応え(?)があるに違いない。初め
にN氏がおっしゃった症状を上げておきましょう。

──立ち上がる時に立ちくらみのような目まいがする。じっと立っている
と、膝ががくがくして、場合によってはグルグル回る目まいになり、救急
車で運ばれたこともある。そのため通勤電車で立っていることができず、
朝早くの空いている電車で坐って通勤する。歩くには問題がない。

この人の操法にSさんという武道をしている人が見学にこられた。この症例
をどうすれば解決に向かうか。              (続く)

生姜の薬効

路地裏の整体術 第772号 2015年1月30日
▼ 生姜の薬効

この頃「しょうが」が流行らしくて、雑誌の記事なども見かけるようになり
ました。しょうがは身体を温めるという薬効が注目されているからでしょう
が、少し注意が必要です。この話題は「からだほぐし教室」で出たものです。

確かに「しょうが」は漢方薬の成分でもあり、多くの漢方薬に「しょうが」
が含まれているようです。

山下弘『漢方薬全書』(緑樹出版)の一部を引用してみます。

──乾姜(乾生姜)しょうがの根を乾かしたものであるが、乾姜という
場合は、ヒネショウガの根を芋を洗う時のように水の中で洗って表皮を
取り、それからしばらく熱湯で煮た上で日で乾かしたものである。
大体しょうがは漢方薬にとって非常に多方面に使用されているが、そ
の中の乾姜は熱性興奮剤であって、新陳代謝を活発にし、冷え、嘔吐、
せき、めまい、腹痛などに効果がある。

これに対し、ウィキペディアでは次のようになっています。

──表面の皮を取り去り、蒸して乾燥させたものは乾姜(かんきょう)
と呼ばれる。興奮作用、強壮作用、健胃作用があるとされる。生姜より
も熱性が強い辛熱の性質があるとされるので胃腸の冷えによる機能障害
では乾姜を使う場合が多い。

加工方法についての記述が異なっていますが、いずれにせよ、しょうがの
成分に「ジンゲロール」があり、加熱・乾燥加工すると「ショウガオール」
に変わるということのようです。このショウガオールという成分の薬効が
強い。→ 二つの成分について、ウィキペディアに項目があります。

ところで、NHKの「試してガッテン」でしょうがが取り上げられていま
した。→ http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20100825.html
この実験結果が正しければ、しょうがは生で食べず、乾燥させてから食べ
るのがよいということになります。詳しくは、上記の記事を見てください。

『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか』

路地裏の整体術 第771号 2015年1月29日
▼ 『なぜ、健康な人は「運動」をしないのか』

刺激的な名前の本です。『──病気の9割は「運動」が原因』と副題がつい
ています。この題名は出版社が付けたのだと思われ、表紙のどぎつい赤色と
相俟って、刺激だけで売ろうという本のように見えます。新刊書店で見つけ
て興味は持ったものの、買わずに済ましました。ところがこれが古本で出て
いたので、値惚れして、思わず買ってしまいました。

著者は「東京都健康長寿医療センター研究所」に所属する医師・青柳幸利さ
んで、出身地である群馬県中之条町(群馬県の中央部です)で長期にわたる
くわしい調査「中之条研究」をし、その結果に基いて結論をまとめた本だと
いえば、常識に挑戦するだけの怪しげな本ではないと分かるでしょう。でも
わざわざ買う価値があるかとなれば疑問です。僅かの内容を薄く引き伸ばし
一冊にまとめたような感じを受けます。立ち読みで十分だと思いました。

取り敢えず、この本のエッセンスだけを紹介しておきたいと思います。

中之条研究から得られた結果は、運動には量と質とがあって、量ばかり多く
てもいい結果にならない。質も強い運動をすればいいというものではない。
中程度の質の運動を中程度に続けるのが望ましい。老人がマラソンやジョギ
ングなど強い運動を続けると却って悪い結果になる。弱すぎる運動では結果
が得られない。結論をまとめると中程度の動きを20分ほど含む8000歩ほどを
歩くのが一番効果的である。

と、こういう常識的な結論になります。強すぎず、弱すぎずの運動を続ける
ことが、中之条町の人で健康で長生きの人の秘訣である、と言っているわけ
です。中程度の運動とは、どの程度のものか。著者が書いていることを私の
身体で試したかぎりでは、寒い中をうっすら汗ばむ程度に歩くのが中程度に
当たると思います。それをずっと続けるというのではなく、それが20分ほど
含まれていればよい。あとはぶらぶら歩きでもOKということです。頑張り
すぎないこと、という注意もついています。もちろん中程度とはどの程度な
のかは、人それぞれで、その人にとってちょっと強めと感じる程度にどどめ
るのが賢明ということだと思います。

中之条研究の結果から、これを続けることで予防できる病気として、要支援・
要介護、うつ病、骨粗しょう症、骨折、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心
疾患、脳卒中、認知症、がん、が挙がっています。

「運動」をすれば健康になれるという常識に挑戦しているところが、この本
の価値だろうと思います。強すぎず弱すぎず、中程度の運動をすることが健
康につながりますよ、というのがこの本のメッセージのまとめでした。特に
早朝のきつい運動は危険だ、という警鐘も鳴らされています。

操法の効果

路地裏の整体術 第769号 2015年1月26日
▼ 操法の効果

しばしば的確な内容のメールをいただいて、ありがたい思いをする東京都のMさん
から次のような便りがありました。

──尾骨操法で背骨が真っ直ぐになり、肩の位置が整うとご紹介いただきましたが、
やって見ましたら、驚くほど整いました。今までもやっていましたが、意識を
変えて丁寧に行うことで更に効果が出ることに、改めて体は不可思議だと思い
ました。

これは、[第767号] の「ふたたび尾骨の重要性について」に言及したものです。
さて、ここで取り上げたいのは、尾骨の周辺を緩めることによる効果そのものは
さておき、「意識を変えて丁寧に行うことで更に効果が出る」という部分です。

多くの操法は手で行いますから、手の動きが同じなら効果も同じかというと、そう
ではないことが多い。同じ動きをしても、効果が高い時と効果が出ない、あるいは
出にくい時があります。

人によっても効果が違います。Aさんがやったら効果が出たが、同じことをBさん
がやっても効果が出ないということは、しばしばあることです。こんな差を一つの
原因に帰することはできません。効果が出るに当たって、さまざまな条件が取り巻
いているからです。患部の状況が違う、全身の状態が違う、手の触れ方が違う。力
の掛け方が違う、など、さまざまな差があって、一つの条件だけで比較するのは難
しいことが多い。

ところが、これこれの操法をやってみたけれど、効果が出ないと質問してくる人が
います。こういう質問には答えようがないわけです。私としては、色々なケースに
試してみて、この操法は使えると判断しテキストなどに載せています。ですから、
条件が変わると、効果が出ないことも当然あります。逆に、私としては効果を感じ
なかったから削除してしまったとか、テキストに載せていないとかいう操法を試し
てみたら効果があったという人もいるに違いありません。

こんな、人と機会の違いによる差は、常につきまとうことで、これは操法について
語る時の難しさでもあるし、また面白さでもあると私は思っています。操法は本当
は一回限りのもので、普遍化すると、すでに違うものが入り混じってしまうのかも
しれません。そんなことを感じることもあります。

これは操法だけでなく、武術の技などでも同じような事情があるかもしれません。
「論理」として整理しておけば、それぞれの操法に、一回かぎりの【個別性】と、
常になりたつ【普遍性】とがあり(ここで、あり、というのは、ばらばらにあると
いうのでなく、個別性と普遍性とが複合しているという意味)、この2つを明確に
区別し、意識して使えれば操法がうまく使えるようになるのではないかと思います。

特に差を生む大きな違いは、操者の【意識】ではないでしょうか。ある操法に取り
組む時に、操者がどのような思いを持って取り組むのか、その違いが結果に大きな
違いを生むようです。Mさんの指摘されているのも、この点ですね。ところが注釈
がここで必要になります。【意識】だというと、操法の時に、「この骨、動け」と
思いながらするのですか、と尋ねる人が必ずいます。私の使う操法にそういう方法
もありますが、特殊な場合だけで、通常は、そういう意味では、何も【意識】して
いない。

というと、一方で「意識が大切」と言いながら、一方で「意識しない」というので
は、どうすればいいか分かりません、という人がいるでしょう。もう少し解説して
みましょう。「意識が大切」という時の「意識」は、意識の中で「個別性」と「普
遍性」とを意識して区別することを指しています。ですから、操法の時には、その
「意識」は消えて背後に退いているわけです。「意識していない」というのは操法
する時に、変化させようとしている動きを「意識していない」ということで、操法
は淡々と行なう。しかし、その背後に、問題の部分についての「意識的な」分析が
行われている、ということです。

操法にとりかかる前に、問題部分に関する分析が意識して十分に行われている必要
がある(もちろん腕組みして、じっと考えているわけではなく、分析は瞬時に行う)。
その上で、操法する時には、きばらず、淡々と行ないます。

ここで、Mさんのメールに戻ります。同じことをやるにしても、その操法をするの
は、どういう目的であるかが意識されているかどうか、そこのところの違いが操法
の成否を左右するのは、まことに不思議である、とそういう意味に私は読みました。
「骨が動け、とうんうんうなりながら」操法するという意味ではありません。

こういう話は、いわば上級クラスの話しで、単にこうすればいいと手をとって教え
られることでもありません。本人が実際の操法を繰り返す中で、会得する他ないと
思いますが、そのきっかけは提出しておきたいと思って、今回のマガジンを書きま
した。

ふたたび尾骨の重要性について

路地裏の整体術 第767号 2015年1月15日
▼ ふたたび尾骨の重要性について

本誌では、尾骨の重要性について繰り返し書いています。興味のある方はHP
を見ていただくと、その項目が出て来ます。

Aさんとしておきましょう。歳のころは70歳すぎ、たいていは、操法を始める
時に背もたれのない椅子に坐っていただいて、背中の様子を見せてもらいます。

そうするとAさんの背骨は上の方が右へ右へと曲り、右肩が下がっています。
こういう時は、左腕に問題があって、胸椎の上の方が左へ引っ張られている
ことが多いものです。そこで左腕を調べて、できるだけ緩めるようにしてみた
のですが、肩の高さが変わりません。背骨も右へ右へと曲がったままです。

背骨の歪みは、尾骨に原因のあることが多いものですから、尾骨を調べてみま
す。すると、尾骨の先が左へ大きく曲がっています。そして、その付近に拘縮
があります。「拘縮」と書くと、何だか難しそうですが、ようするに凝り固ま
っている硬いところがある。尾骨の左と右を較べてみると、明らかに左右差が
あって、左が圧倒的に硬い。

これまで尾骨は、共鳴法を使うか(これが一番簡単で効果も高い)、黒川メソ
ッドの方法を使うか、どちらかで、拘縮をほぐしてみたことはなかったのです
が、この時は、これをほぐしてみようと思いました。この時使ったのは、指圧
棒(百均で売っています)です。

拘縮を緩めた後は、足の毒出し点(第4趾と第5趾の中間)を指圧棒でぐるぐ
ると刺激します。「毒出し」というと些かの問題があって、顔をしかめる人も
いるかもしれません(どんな問題であるかは敢えて書きません)。しかし、私
が色々やってみたところでは、効果が確かにあります。

何事でもそうですが、レッテルを貼って、それで批判した気持ちになる人が多
い。批判するなら、よく調べてからにしないと勿体ないことがある。よく調べ
試してみて、効果がないとか、逆効果ということになれば、捨てればいいと、
私は思います。

で、指圧棒を使って、拘縮を緩め、毒出しをしてみた。そして再び椅子に坐っ
てもらった。すると、それだけで背骨はまっすぐになっていました。右へ傾い
ていた弯曲が消えたことになります。

尾骨周辺の拘縮が背骨全体にどれほど大きな影響があるか、ということが、
これで実証できたわけです。尻餅くらい、と馬鹿にできません。それも古傷が
何年も後になって影響しているのですから、古傷は怖い。何か深刻な症状を
持っている人は、自分の過去に打撲などがなかったか、よく考えてみると、
思い当たることがあるかもしれません。

尾骨周辺の拘縮を緩める方法は、以上に書いた方法でなくても構わないと思い
ます。あなたが得意な緩め方でいいのではないでしょうか。しかし、緩めた後
「毒出し」をしておくのは、理由はよく分からないものの、効果があると私は
思います。

肘の影響

路地裏の整体術 第763号 2015年1月2日
▼ 肘の影響

肘(ひじ)は上半身の中でも重要な個所です。ちょうど膝が下半身に与える
影響に相当する重要性を持っています。しかし、その重要性が必ずしも認識
されているとは思えません。このことについて、すでに[第751号 ある肘痛]
に書きました。今回は、さらにいくつか重要な点を付け加えます。

肘関節がどのような構造になっているか。これについては骨の写真を検索す
れば多数出てくるでしょうから、あえて触れませんが、肘の重要な構造は、
上腕骨で出来ていること、上腕骨の中に、尺骨が包まれて回転している関節
になっていることを頭に入れておけば、何が重要かは自ずから明らかです。

肘関節は、尺骨が上腕骨の中で前後に屈伸する動きだけをする。そう思われ
ています。大きく見れば、その通りです。しかし現実の肘をみると、そうは
なっていない。すべて関節には、独自の「あそび」があるのでしょう。独自
という意味は、この関節だけの独特な、という意味もありますし、その人の
肘に特有の、という意味もあります。

膝の場合には、「不等円運動」という「あそび」による運動があって、これ
が膝の自在な動きを確保しています。肘には、そのような「あそび」がない
ので、自在な動きというわけには参りません。膝と肘の動きで決定的に違う
のは、関節のところで捻れるかどうかですね。肘は捻れる構造になっている。

そのために何が必要かと言えば、屈伸の動きだけではなく、内外にあそびが
あることです。これは肘の動きからすると、利点ではありますが、そのこと
がアダになって、肘の故障が起きやすい。つまり肘は屈伸の動きをするだけ
と思っていたら、内外にも少し動いてしまうわけです。

特に前腕を内側へ捻る動きが多いですから、肘が外側に向けて変位すること
が多いようです。すると、肘頭の外側の凹みに圧痛が出る。その辺りを触っ
てみると、何か少し違和感を感じる人が多いことでしょう。人によっては、
さらに外側上顆炎(テニス肘)という状態になっているかもしれません。

こういった異常の直し方については何度も書きましたので、今回は肘の異常
が、どのような影響をおよぼすかについて。

大きな影響は、肩に及ぼすものです。これは肘の内側つまり採血点に現れる
もので、採血点から肩に向けて、上腕二頭筋に沿って引っ張るらしい。する
と、肩の三角筋のところに拘縮が起きて、スジ状の凝りが出てきます。たい
ていの人の肩を触ってみると、三角筋のところに拘縮があるものです。例え
ば五十肩の場合に、この拘縮が肩を固めています。だから五十肩の人を操法
する時は、肘を改善することが必須になります。

この関係は、五十肩に限らず、肩が重いという時にも、肘を改善することが
できれば重さが軽減するはずです。

もうひとつの影響は、同じく肩に及ぼすものですが、橈骨の捻れ・下垂に伴
って、上腕の後ろの上腕三頭筋に沿って引っ張るもので、ここが硬くなって
いない人はいないほどです。いつかも書いたように、ここが硬くなっている
と、両肩のバランスがおかしくなる。肩の高さが違う人は、上腕三頭筋の不
吊り合いを抱えています。

というわけで肘に異常があると、上腕の前後から肩を引っ張って肩の動きを
制限します。簡単に言ってしまえば、肩の運動制限があれば、肘をよく調べ
ること、と言うことができるでしょう。

ただし書きをつけておくと、肘を改善するためには、手首から前腕の開きを
改善することも必要です。どうすればいいかはお考えになってください。

膝痛の直し方

★メールマガジンに掲載した記事をHPに掲載する努力をしているものの、作業に時間がかるので、進んでいません。そこで、当分このブログに掲載することにしました。

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第760号 「膝痛(10)」 14/12/15

左膝が痛くなりました。年齢相応というべきか(来年は数え年68ですから)。電車の中だったので、余り怪しい振る舞いもできない。鞄に金と銀のペンが入っているはずなので、それを使うことにしました。

左足の靴下を脱いで(これだけでもかなり怪しいか)、足首の外側に金色の線と銀色の線と、二本の線を引き(めちゃめちゃ怪しい)、共鳴法を使って下腿を締めます(いよいよ髭面の怪人物に見えたでしょう)。

さて、これで理論的には痛みが消えるはずです。立ち上がって通路を歩いてみると、見事に痛みが消えています。以上の操法は、ひざ痛に対処する基本の操法です。

少しご説明しましょう。

膝の悪い人を観察してみると明らかな共通点があります。患側の下腿が開いていることです。下腿の脛骨と腓骨の間隔が開いてしまっています。結果、膝の半月板の位置が悪くなっている。そのために痛みが出るのだと考えられます。あるいは、半月板の周辺にある組織が伸びたり縮んだりして、緊張が生まれています。これが痛みを引き起こす。

脛骨と腓骨の間隔が開くと、どうなるか。下腿に緊張状態が生じます。言い換えると、下腿の二本の骨が互いに反対側へ突っ張る。そのため、下腿を誰かに強く握られると痛みを感じます。突っ張りの程度が低い場合は、握られると気持ちいいかもしれません。いわゆる「いたきも」というやつです。

江戸時代の旅人は、これを防ぐために下腿に脚絆(きゃはん)を巻いていた。いまでもネットで脚絆を売っているらしく、次のところで「大津脚絆」というのを売っています。

http://store.shopping.yahoo.co.jp/kameya/nm-5145.html 足袋のように「こはぜ」のついた江戸脚絆というのもあるそうです。

ですから、これらは下腿がむやみに開かないように当てているサポーターの役目をしています。ということは、膝が痛い人は、脚絆を当てると少し楽になるかもしれません。私は試したことがないので、これは当て推量ですが。

操法としては、どうすればいいか。下腿に対応するのは、小指の中節骨ですから、中節骨をつまんで、上下にパッと離すようにすれば締まります。この説明では分かりにくいでしょうから、詳しくは共鳴法教本をご覧ください。
http://shugeitei.com/stext.html 教本の「脛腓間を締める」の項目。

さて、脛腓間が開くとどうなるか。その影響で、足首がおかしくなります。足首の内側と外側の緊張関係が正常であれば、足首がおかしくはならないと思いますが、開いてくると、腓骨が開くだけでなく、腓骨が下がってくる。すると外側(外果の側)の緊張状態が強くなります。腓骨が下がることで、下にある距骨が内側へ押し付けられる。すると、距骨は内側へ寄ってくる。その程度がひどいと、内果の下に圧痛が出てきます。足首の「内反」という状態になっているかもしれません。《説明がくどくてすみません》

以上のような考え方が正しいとすると、下腿を締めると、内果の下の圧痛が消えるはずですが、やってみると、確かにそうなります。金・銀二本の線を引く操作は、距骨を引き締める効果がありますから、足首の側から、下腿を引き締めていることになります。ちなみに線の引き方はこちらです。

→ http://shugeitei.com/foot.jpg

足底から1センチほどのところに足底に平行に「銀線」を引く。長さは5センチほど。次に外果の下1センチほどのところに平行に「金線」を引く。長さは同程度。これで、銀を引いた踵骨が距骨の方へ引き締められる。と考えても、距骨が踵骨に引き締められると考えても同じですが、これで、内果の下にある圧痛が消えるはずです。ついでに、踵骨の周辺にある各種の圧痛も消えてしまうことが多い。

以上で踵骨・距骨のがたつきが改善します。次に脛骨・腓骨の開きを共鳴法で締めますと、膝の調子がよくなってくるという順序です。他の方法で締めても構いません。例えば母趾操法。このやり方は操法テキスト基本編にあります。→  http://shugeitei.com/stext.html

要するに、膝が痛いというのは、下腿や足首の骨が開いて緩み、それにより膝もガタついてきているという現象であることが分かります。O脚の人が膝を傷める理由もよく分かるというものです。

で、おれの膝はどうすれば治るんだといま思っている方は、上の説明の要点、線の引き方とか、下腿の締め方とかをやってみてください。