1020 頭骨の上下運動

第1020号  2018年3月8日
▼ 頭骨の上下運動

耳の後ろのグリグリと言えばよいか、ともかく、耳たぶの後ろ側に骨が出ているところがありますね。「乳様突起」と呼ぶ箇所です。これは側頭骨の下の端です。(⇒乳様突起の画像検索を)

ここの出っぱり方が人によって異なります。ずいぶん飛び出していると感じられる人と、奥まっていて触れないなと感じられる人とがあるはずです。もちろん中間の人もいて、人さまざまでしょうが。

自分の骨を触るだけでは、よく分からないという人は、他人のを触らせてもらってください。

とは言え、頭の骨はどの骨と言えども、そっと触ること、強く押したりすると、おかしくなって頭痛を起こしたりしますから、厳重な注意が必要です。

先日も、他所の整体で頭に強い力を加えられて、頭の形が変わり、顔の表情もおかしくなってしまった人がいました。お気の毒といって済ませるわけにいきません。施術家の皆さん、どうか強い力を頭部にかけるような野蛮なことはやめていただきたいと思います。

この乳様突起が出たり入ったりという運動をしている(側頭骨が上下している)ことは、簡単な操法で解りますが、今回はそのことではなく、実際にこの動きを私が体験した話です。

昨年の秋ごろから、私は禅宗の寺で行われている坐禅会に参加しています。その会に参加している人から、奈良市の西に連なる生駒連山にある山荘で坐禅会しているので、参加しませんか、というお誘いを受けたと思ってください。

山荘で坐禅というのが気に入って、二つ返事でこの誘いに乗った次第です。バブルの頃にこの辺り、生駒山の中腹に別荘を建てるのがブームになって、たくさん建てられた山荘の一つを借り受けて、そこで坐禅をやっているという。

参加して坐禅を組んでいると、二つの大きな身体の変化に気づきました。一つは、寒いところで靴下を脱いで坐っているのですが、足に汗をかいてくること。普通は、足が冷えてくるところですが、それが熱をもって汗ばんでいます。

もう一つは、座禅から帰って翌朝、起きた時に自分の頭を触ってみて、驚いた。頭の恰好がまったく違っていて、頭頂部のとんがりが消え、乳様突起が上がってへっこんでいます。

この山荘にいると、山林の中に建っているので、植物のエネルギーをたっぷり受けるのでしょう。それでこんな不思議な変化を起こしたに違いない、と考えました。

乳様突起が引っ込んだのは、側頭骨が上がったことを表していると、考えられます。

頭頂部のとんがりが消えたのは、頭頂部は変化せず、側頭部だけが上がったことを表しているでしょう。この頭頂部のとんがりは、鬼のツノにあたるもので、交感神経の緊張を表しています。簡単にいえば、あたまにツノが生えているわけです。

という次第で、全体としては頭頂骨を除いて頭が上に上がったと捉えて間違いあるまい、と思います。

だいぶ以前の話ですが、体の全体がすべて下がってしまったと訴えて来た女性がいました。全部が下がっている、と言われても。一部が下がっているというのなら、話しが解りますが、ある整体に行ったところが頭を触られて、体全体が下がってしまったというのです。

これは恐らく交感神経の緊張が高まったことを表しているでしょう。ツノが生えるのは、頭頂部が持ち上がり、側頭骨が下がったことを表しています。

なぜこんな現象が起きるのか。私の推測です。よく引き合いに出すルドルフ・シュタイナー(1861-1925)の言い方を借りると、地球の上にいる人間には、地球の中心から引っ張られる引力も受けているけれど、同時に惑星や恒星や、月、星座からも引っ張られている。一言でいえば、天体からの力を受けている、とシュタイナーはそのように表現しています。

すると、天体からの力が優位になっている時は、側頭骨が上がる。逆に地球からの力が優位にたつと、側頭骨が下がる。つまりそのような人間に働く力の違いがあるに違いありません。そして、側頭骨が下がっている人が多いということは、天体からの力を受けることが少なく、地球の力を受けすぎているということではないか。

そんなことを夢想してみたわけです。事実かどうかは分かりません。でも私自身の頭の変化をみると、そうとしか思えない。

昨日こられた女性も、乳様突起が下がっていたので、私はそのようなことを考えてしまいました。彼女は緊張すると、いろいろ具合が悪くなるらしい。そこで、あなたは天体から遠ざかっているのではないか、と申し上げました。すると、その女性は、納得するところがあったらしく、アッと声を上げられた。

というような次第で、夢ものがたりのような話ですが、案外こういうことがあるのではないか、と感じさせられたわけです。

さて、われわれ多くの都会生活者は、天体から遠ざかっているのではないか。というより、天体のことを思い出すのは夕方西の空をみる時だけかもしれません。皆さん方は天体と人体のつながりについて何かを感じられることがおありかどうか?

1017 蝶形骨のゆがみ

第1017号  2018年2月10日
▼ 蝶形骨のゆがみ

「ゆがみ」って、どういうことですか、というご質問を時々いただきます。具体的に説明してみたいと思います。

Yさんという女性。年齢不詳(ということにしておきます)。症状は色々あったのですが、特に注目に値するのは、目の周りが痛いという珍しい症状です。

初めにお断りしておかなければならないのは、人の体に絶対的な座標などないことです。高校数学の空間座標なら、X軸・Y軸・Z軸という座標があって、そこからの変位を「ゆがみ」ということができますが、そんなものは人体にはありません。

あえて座標を設定するなら、正中線が基準になるかと思われますが、人体は精密に言えば左右対称ではありませんから、おおよその基準として、左右対称を基準にするしかありません。前後については、個人差が大きく、相対的に考えるしかないでしょう。

さて、目の周りが痛いという症状。目の周りには、多くのツボがあって、そのポイントは誰でも若干の痛みがあるでしょう。ですが、そういうツボが痛いというのではなく、非対称にある痛みでした。

右の眉の上が痛い、左のこめかみが痛い、このこめかみで気づいたのです。こめかみに痛みがあると、たいてい舟状骨(*1)がゆがんでいます。つまり舟状骨が通常より盛り上がっている。

「ゆがみ」とは何か、と難しいことを言わなくても、ゆがんでいると、そこに痛みが出るわけです。この舟状骨にかぎらず、どこかに痛み(圧痛)があると、そこいらの骨にゆがみがある。

例えば、手の指が痛いという人をよく見掛けますが、そういう人は、手の指の関節がゆがんでいることが多い。関節のあるべき位置に骨がきっちり嵌っていない。こういうのが典型的なゆがみと言っていいでしょう。

ですから、目の周りが痛いという症状があるなら、その辺りに何かのゆがみがあることになります。目頭の上あたりですと、鼻の上にある篩骨(*注2)という骨がゆがんでいる場合がありますが、Yさんの場合は篩骨に痛みはなく、どこか別のところのようです。

そこで舟状骨を触ってみると、「痛い」という。すれば、舟状骨と密接な関係にある蝶形骨(*注3)がゆがんでいるのだろう、と思ってこめかみを触ってみると、盛り上がり感があり、しかも押えると違和感があるという。

そこで、舟状骨を正常な位置(*注4)に戻してやると、こめかみの違和感が消え、もりあがりもなくなりました。

それだけではなく、目の周りの痛みも消失したというわけです。

ところで、まだおまけがあります。この女性Yさんには、他にも違和感のある場所があった。それは左足の第3趾の中足骨(*注5)です。ここに違和感があれば、顎関節症が疑われます。「顎はおかしくないですか」と尋ねてみると、「おかしいです」という返事。

ということは、第3趾→舟状骨→蝶形骨というつながりがあったと考えられます。言い換えると、ここの線上に歪みの連鎖があったわけです。こういう線を無視すると、改善できないゆがみが残るということになります。

この線状の連鎖は経絡とは異なりますし、筋膜トレインなどというものとも違います。こういう線が身体のあちこちに巡っているのではないか。そういうものに注目していたのは、ひょっとするとチベット医学ではないかと今は思っています。

*注1 舟状骨 ここでは足の付け根あたりにある横長の骨。間違って「せんじょうこつ」と読む人があるが、「舟」は「せん」ではなく、「しゅう」がただしい。手にも同名の骨があるので、区別する時は、「足の舟状骨」、「手の舟状骨」といわなければ、混乱する。

*注2 篩骨 鼻の付け根あたりに存在する複雑な形状の骨。詳しくは画像検索をかけて、調べてみてほしい。

*注3 蝶形骨 左右のこめかみを貫いて、目の奥に存在している。これも複雑な形状なので、詳しくは画像検索で。これがゆがむと、目の周りに痛みが出るばかりでなく、こめかみにも違和感が出る。脳とも関係の深い位置にあるため、全身への影響も無視できない。

*注4 舟状骨を正常に戻す これについては 『共鳴法教本』 に詳しく書いてあるので、そちらを参照。

*注5 中足骨 足の指の手前にある長い骨。ここは、足の捻れと関係し、複雑な捻れ方をするので、放置すると全身に影響がある。逆にいえば、ここで全身のゆがみを直すこともできるかもしれない。

980 側頭骨と肩こりの親密な関係

第980号 2017年7月11日
▼ 側頭骨と肩こりの意外に親密な関係

肩こりの原因は、背中にあると思われていますし、現に足首をさわれば肩こりが解消するという考えもあります。ところが、どうもそれだけではない。側頭骨・後頭骨といった頭の骨の位置が肩こりに無関係ではありません。

特に最近のお客様の訴えを聞いていますと、肩こりというか、首こりというか、ともかく肩だけでなく、首が苦しくなっている方が多い。これが何に由来するのかは分かりませんが、PC作業やスマホと関係があるのかもしれない、と思われます。

先日来られた方は、「それ、首が凝っているのでしょう」とお聞きしても、「首ではなくて、肩が凝るんです」と言われる。肩か首か、という領域あらそいは、さておいて、どうもこれは首、しかも頭の骨が関係していそうだ、と思われたので、側頭骨をそっと上げてみました。すると、「楽になりました」と言われる。やはり。

側頭骨をそっと上げるとは、どうすればいいのか。側頭骨の位置を明確に表しているのは、耳たぶの後ろの「乳様突起」(にゅうようとっき)の位置です。「乳様突起」とは、耳たぶの後ろにあるぐりぐりの骨のでっぱり。これを左右さわって見て、大きさ(出っ張り具合)が違えば、大きい方の側頭骨が下がっていることになります。おおよその見当でいうと、右が下がっている人が多いという印象です。

この乳様突起を上げるには、どうすればいいか。手の小指側の側面、小指の付け根と、手首の中点が乳様突起の対応点、これを「乳様突起点」と呼んでおくと。この乳様突起点を指先方向に1センチばかりなでればよろしい。その後すぐに乳様突起を触ってみると、みごとに凹んでいるはずです。つまり側頭骨はこれだけの操法でカンタンに上がるということです。

逆にいうと、側頭骨が下がっていると、それが肩を引っ張って、肩こり・首こりを起こすということです。首を左右に回してみて、どちらかに引っかかりを感じる人は、このポイントを操作してみてください。ぐっと楽になること請け合いです。

ついでながら、このポイントはタッピングのツボとして使われているポイントでもあります。両手のこのポイントを軽く打ち合わせると、リラックス感が出て来る。ということは、側頭骨はリラックスの急所であるということもできるでしょう。足に力の入らない人は、側頭骨の上にある鱗状縫合のあたりにしばらく愉気をしてもらうと、力が入るようになるのと、何かの関係があるのかもしれません。ですから、手のこのポイント「乳様突起点」に「リラックス・ポイント」という名前を与えてもいいかもしれません。

973 食いしばりと重心

第973号 2017年5月16日
▼ 食いしばりと重心

食いしばりのきつい人がいます。強く噛み過ぎて、虫歯が出来たのかと思うほど、歯の根元が痛む人もいるようです。なぜ食いしばるのか、という疑問は措くとして、食いしばりによって歯の根本が傷む。歯茎がぐらぐらになって来ます。とすれば食いしばりは避けられるものなら、避けたいですね。

歯の寿命は、通常そのご当人の寿命よりかなり短く、70歳を過ぎれば歯の賞味期限は切れてしまうそうです。歯の賞味期限というのもおかしいですが、、 http://www.dentallife.info/ に70歳の人に平均何本の歯が残っているか、その答えがあります。

というわけで、食いしばりは感心できません。できれば避けたい。では食いしばりを改善する方法があるか。

先日の集中初級講座の席上、「食いしばりで困っている人はいますか」という私の問いかけに対し、Tさんが名乗りを上げられた。そこで登場したTさんに対し、手の小指を使って重心を変更する操法を行いました。(この操法については、過去の号で紹介したはず)

(後日、初級で、こういうことまでやってしまうのは、サービスが良すぎる、と言われましたが・・・。朱鯨亭はいつもサービス満点が身上です。)

そして、

── どうですか。と聞くと、

── うん、噛めなくなりました。という答え。

これで、重心を変更すると、食いしばりが改善することがわかります。

つまり、こういうことです。下顎は、耳のところの関節で上からぶら下がっています。ですから、下顎は重心の位置がどこにあるかを正確に察知しているわけです。こんなところにも感覚器官があったとは驚きですが、そうとしか考えられません。下顎は身体の重心をしっかりと感じている。

そして、その重心は小指で距骨を動かしただけなんですから、身体の精妙さにつくづく感じ入ってしまいます。

972 鼻の周りの腫れ物

972号 2017年5月15日 鼻の周りの腫れ物

鼻の周りというか、鼻の穴の周りというか、ともかくその辺りに化膿を起こして、押すと痛むという人がいます。このあたりは脂肪を分泌しやすい場所なので、その脂肪がうまく分泌されずに溜まって、化膿するのでしょう。

そう言われるとなるほど、そういうこともある、と頷く人もいるに違いありません。

そんな時にどうするか。耳鼻咽喉科あたりに駆け込みますか。慌てなくても、簡単に楽になる方法があります。

まず、よく手を石鹸をつけてよく洗って。どの指でもよいから、指先を圧痛のあるところに当てます。当てるだけで押してはダメです。指先で愉気をするだけです。これで2~3分も愉気すれば、しばらくしてから押してみて、痛みが消えているはずです。

この原理は、鼻の周りだけでなく、顔面の色々な腫れ物にも応用できますから、試してみてください。

「めばちこ」(ものもらい)に愉気がよく効くことは、周知の事実だと思います。ただし、この場合は直接手を当てず、離して掌をかざすだけでOKです。

「にきび」にも効くかもしれません。私自身には、もう「にきび」がないので、試してみるわけに行きませんが。ともかく簡単に痛みがとれるのは不思議です。

口の周りや顎にできる腫れ物にも試してみてください。

929 鼻の穴と腸骨の捻れ  16/11/14

奇妙な題名ですので、果たして何の話だろうと訝しく思われた方も多いと推察します。からだほぐし教室での話題。

いつもの参加者Mさんが両目の見え方が違うとおっしゃる。そこで、ちょっとやってみましょう、と目の調整にかかったのですが、片方が近視、片方が老眼だったか遠視だったか、とかという珍しい状態で、うまく行きません。目の問題は、足指に目のツボがあることからしても、足に原因があるのではないか、と考えました。そこで操法をしているところを枕元から、足元に変更しました。

そこから見ると、両方の鼻の穴の大きさが違います。鼻の穴の大きさを指摘されると、恥ずかしいという人が多いですが、これはなぜなのでしょう。顔の真ん中についていて、皆が人前にさらしているものなのに。

「鼻の穴の大きさが違うので、揃えてみます」と言ったものの、さて、どこから取り掛かるのか。足元から見ると、からだのあちこちの左右差がよく見えます。骨盤のところを見ると左右の上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく、ASIS、腰骨の前の出っ張り)の高さ(床からの高さ)が違います。腸骨がねじれている。

他に大きな歪みは見当たらず、どうやらこれが原因らしい。Mさんは「何か恥ずかしいな」とか呟いていらっしゃるようですが、構わず、腸骨ねじれの調整に取り掛かります。と言っても難しいことをするわけではありません。両手の甲の有鉤骨(ゆうこうこつ、薬指の中手骨の付け根あたりにある小さな骨)の前後に指を当ててじっとしているだけです(詳しい操法は共鳴法教本 http://shugeitei.com/stext.html などを参照してください)。

やがて腸骨の両端が揃ってきました。鼻の穴を見ると、左右の大きさが揃ってきています。なぜかは分かりません。確かなことは、腸骨のねじれが解消すると、からだのあちこちに繋がって存在している歪みやねじれが解消していくことです。

 

911 中足骨の捻れ

30代の女性Nさん。はじめは腰が痛いという話だったのですが、、、

他に痛いところはありませんか、と聞くと、顎が悪いんだそうです。ついでに不整脈まであるという。

顎が悪いという人、多いですね。口がうまく開かないとか、顎関節が痛い、顎ががくがく鳴る、などという話をよく聞きます。

そういう人に共通してみられるのは、足の中指(第3趾)の付け根に痛みがあることです。そのあたりをぐっとつかむと、人によっては激しい痛みがあるかもしれません。

で、中指の付け根を持ってじっとしていると、顎の様子が変わってきます。普通なら、それだけでOKなのですが、Nさんの場合は少し違っていました。

何が違うのか。中指の付け根だけでなく、中指の中足骨まで痛いと言われる。中足骨(ちゅうそくこつ)とは、趾(あしゆび)と足根部(そっこんぶ)をつないでいる比較的長い骨です。

で、中指の中足骨(第3中足骨)の内側(親指側)を強めに押してみるとかなり痛いらしい。どういう現象かといえば、中足骨が内側へ捻れているわけです。

「捻れ」という言葉を使いましたが、それは「捻れ」でなく「回旋」でしょう、などと突っ込みをいれたくなる人がいても困るので、お断りをしておきますが、骨が回旋しています。しかしそれだけではなく、周辺の組織が捻れています。ですから、ここでは「捻れ」という言葉を使いたい。周辺の組織が捻れることによって中足骨の横に痛みが出ている。

さて、こういった中足骨の捻れは、そこに誇張法に従ってそっと手を当てていると、やがて緩んでくるものですが、Nさんの場合は、簡単に緩みません。やっているうちに「いやな痛みが出て来た」とおっしゃる。

そこで、何か足を踏み抜いた事故はなかったか、と尋ねると、「中学生の時に陸上をしていました、走り幅跳びです」という話です。それなら、着地点に小石でも落ちていて、踏み抜いたことは十分考えられます。

なるほど、と頷いて、さらに続けました。大分痛みが収まってきたようすです。顎を動かしてもらうと、大分調子がよいとのことです。指3本が口に入ります。

この場合、顎が悪いという訴えから、別の箇所に操法していたら、こういう結果にならなかったかもしれません。つくづく足は重要だと思わせられた例でした。

というわけで、中足骨は重要なので、一昨日お知らせした秋の講座などでその扱いについて積極的にとりあげたいと考えています。



902 熱中症

路地裏の整体術 第902号 2016年6月22日
▼  熱中症熱中症は、梅雨の頃に多いそうですね。湿度が高くて、身体の熱が発散しにくいからだそうです。

とはいえ、なってしまったら、どうすればよいか。特に若くても汗をかきにくい人や老人は注意が必要です。

次の本に簡単な「熱中症」対策が載っていたので、ご紹介しておきます。

うえだまゆみ
『体にやさしい整体術』
(PARCO出版、1600円+税)

タオルを体温くらいのぬるま湯につけて、軽くしぼる。これを頭の上に載せて、じっとしている。頭の熱でタオルが熱くなってきたら、タオルを裏返す。これをしばらく繰り返す。時々体温計で体温を測って、下がってきたらOK。

私自身が熱中症になったわけではありませんが、頭に熱がこもる感じになったので、この方法を試してみたという次第。なぜ「冷水」ではなく「ぬるま湯」なのか、というところが分かりにくいところかもしれません。

じっさい冷水でやってみると、その時は気持ちがいいでしょうが、終わった後、また温度が上昇してきます。反動が起きるのでしょう。だからぬるま湯がいい。ぬるま湯でやってみると、体温が下がり始めると、そのまま下がっていきます。

私も、まもなく70歳ですから、立派な老人です。汗をかきにくく、体温調節が下手になってきているのでしょう。この時期は、頭に熱がこもって気分がいいとはいえません。

体温を測るというのは、この本には書かれていません。しかし、目安を知るために体温を測るのは有効です。またタオルを裏返すのでなく、新たにタオルをぬるま湯につけて絞るように書かれていますが、実際にやってみると、面倒です。頭の熱が抜けて、タオルの温度が上がって来るので、裏返すだけで十分だというのが私のやった方法。

熱中症だけでなく、頭がかっかとして寝苦しいような時にも試してみられたらいかがでしょうか。ただし、高熱が続いて危険を感じるような場合は医療機関へどうぞ。

なお、この本には「いびき」の改善法も書かれています。「いびき」は無呼吸にもつながりますから、「いびき」くらいと軽くみるのはよくありません。これもカンタンな方法で改善するようですから、「いびき」でお困りの方は試してみる価値がありそうです。

著者は野口整体系の方。いろいろと自分で治す方法が満載でお勧めです。

899 粒子状物質がいたずらをしている?

第899号 2016年5月29日
▼  粒子状物質がいたずらをしている?

一昨日の金曜日は、西日本で粒子状物質(以下 PM と略称)の濃度が高かったようです。私も外出から帰って初めて、のどや鼻、目の様子がおかしいことに気づきました。

その日の夜中に目覚めて、寝苦しいな、と感じ、いろいろ考えていると、ひょっとしてこれは、PM の影響ではないか、と思いました。PM の影響で交感神経が緊張しているのではないか、そう思ったわけです。

なぜ、こんなことを考えたか、と理由を聞かれても、的確に答えることはできません。ただ、こういう考えが生まれて来た時は、素直に従うことにしています。

アイデアが下りてくる時間として、昔から厠上、床上、馬上と言われますね。私の場合は、圧倒的に 「床上」 です。つまり布団の中。夜明け前に目が覚めて、布団の中でもぞもぞしている時に、いろんなことを思いつく時があります。

ちなみに「厠上」 はトイレの中。「馬上」 は現代ではさしずめ車や電車の中。

交感神経が緊張しているかどうか、どこで判断するか。耳の後ろの乳様突起です。乳様突起が大きく張り出している時は、交感神経が緊張型になっています。

そういう研究結果を出している誰かがいるのではなく、私が経験的にそう思っているわけです。逆に乳様突起が出っ張っていないときは、自律神経が副交感神経優位の側になっていて、安定している状態と考えられます。もちろんこの状態は個人差が大きいので、一般化すると、問題があるかもしれません。

私の骨格(側頭骨)が過敏になっていて、そういう動きをするだけかもしれません。

で、夜中に目覚めた私は、自分の乳様突起に手を触れてみた。なるほどね。かなりデカくなっています。いつもはここまで出っ張っていないから、これはPM の仕業に違いない。

昨日の日中は花盛りの植物園でゆっくり花の色と香りを楽しんできましたから、交感神経が立っているわけはない。なのに、乳様突起が出っ張って来ているのだから、心は寛いでいるのに、身体は緊張していることになります。

近頃は 「PM2.5」 などと気軽に呼ばれていますが、もちろん PM2.5 だけが問題というわけではないことを肝に銘じておくことが必要です。

PM は Particulate matter の略、つまり 「粒子状物質」。詳しくはウィキペディアを読んでみましょう。

──粒子状物質(りゅうしじょうぶっしつ、英: Particulate matter, Particulates)とは、マイクロメートル (μm) の大きさの固体や液体の微粒子のことをいう。主に、燃焼で生じた煤、風で舞い上がった土壌粒子(黄砂など)、工場や建設現場で生じる粉塵のほか、燃焼による排出ガスや、石油からの揮発成分が大気中で変質してできる粒子などからなる。粒子状物質という呼び方は、これらを大気汚染物質として扱うときに用いる。

黄砂とともにやってくるというので、中国を悪者にする言説が多いようです。確かに分布図を見ると、中国に大きな汚染源があるのは間違いないでしょうが、それだけだろうかという疑問が浮かびます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%92%E5%AD%90%E7%8A%B6%E7%89%A9%E8%B3%AA#/media/File:Modis_aerosol_optical_depth.png

この図から考えて、黄砂がもっとも大きな汚染源かもしれませんが、その他、ウィキの説明にも、「燃焼による排出ガス」とあることから、自動車の排気ガスも原因の一部をなしているはずです。そのほか、火力発電所であるとか、工場や建設現場からの粉塵なども原因の一部をなしているでしょう。

要するに、人間が出しているものが人間に降りかかって来ているということです。

具体的に、どのような被害があるのか、どんな時期に PM が増えるのか、など、有用な情報をまとめて掲載してくれている次のようなサイトがあったので、ご紹介しておきます。
http://marthanew.com/archives/2667.html

ただし専門家が作成したサイトではない、と断ってありますので、その内容の信ぴょう性については、読者それぞれで検討してください。

乳様突起の状態についても、あくまで私の個人的見解(感受性)ですので、その前提でお読みくださればさいわい。まあ、こういうこともあるかもしれない、という程度に読んでいただければ、いいと思います。

【結論】 乳様突起が飛び出している状態になっている時に、交感神経を鎮める方法はあるのか。手の平の小指側、知能線の終わり付近と感情線の起点とのあいだあたりを、知能線の終わりから始め、感情線の起点に向けて、指先方向にさっと、手の側面をなでればよろしい。すると、あらら不思議、乳様突起がへっこみますよ(下がっていた側頭骨が上がるといってもいいでしょう)。

なぜ。こんなところが、と不思議に思う人は、『共鳴法教本』 で顔の操法を研究してください。

895 斜頸とは何か

第895号 2016年5月7日
▼  斜頸とは何か

首がいつも左に傾いている。心配だというメールをいただきました。7歳の女子です。仮にRさんとしておきます。

こういう症状には 「斜頸」 という病名が付けられるのでしょうが、でもちょっと待ってもらいたい。本当にこれは 「斜頸」 という病気なのかどうか。

このメールを頂戴した時に、それは背骨が曲がっているだけでしょう、という意味の返信をしました。

そして操法の当日。Rさんが入室して来られたのを見ると、なるほど首が左に傾いています。お母さんとしては、大丈夫なのかと心配なのは無理もありません。まして整形外科で、将来 「顔が歪んできます」 と言われたとなれば、なおさら。

これは背骨が曲がっているに違いないと目星をつけていましたから、さっそく椅子に坐ってもらうと、案の定、腰椎が左に曲がっています。胸椎の歪みはほとんどない様子なので、整形外科では 「側弯」 とは言われなかったらしい。

うつぶせになってもらいました。「うつぶせ」 というと今は 「死語」 になっているのか、「あおむけ」 と 「うつぶせ」 が、どちらがどちらかと迷う人が多い。でもいじわるなので、私は常にこの言葉を使い続けています。ところがRさんは、即座に 「うつぶせ」 に寝てくれました。うんうん、あなたは頭のいい子だ。

まず、背骨の弯曲があれば、尾骨の歪みがあると見ていいでしょう。ですから尾骨を触って歪みを確認し、「お尻を打ったことはありませんか」 とお母さんに訊いてみるのですが、記憶にない、とのことでした。

(いま中学生の時から側弯を修正するのに通ってくれている高校生女子がいますが、その人の場合は、はっきりと尾骨を打つ事故に会っています。側弯のきつい例では尾骨の異常があると睨んだ方がよさそうに思えます。)

尾骨に対しては黒川操法(尾骨の歪んでいない方を3回、3呼吸間隔でなで上げる操法)を使いました。これで、背骨全体の緊張が少し緩んだはずです。

その次は仙骨、腰椎、胸椎と背骨全体の歪みを少しずつ修正して行きました。それから、両腕。数日前のことで、いまとなっては、どのような順序で操法したか、正確には覚えていませんが、足首にも問題があり、右足首、特に距骨を触りました。

そうして椅子に坐ってもらうと、心なしか首の傾きが改善しているように見えます。「どうですか。少しまっすぐになって来たのではありませんか」 というと、付き添って来られていたおばあちゃんが、「そうですね。少し傾きがましになっていますね」 と言われる。

こう言われたことの暗示効果もあったと思いますが、Rさんは首の動きがよくなっているのを感じたのでしょう。さらに一層、首がまっすぐになってきました。

大人の斜頸の場合は、こう簡単に行かないでしょうが、Rさんの場合は背骨の硬化が進んでいなかったと思われます。

腰椎が左に弯曲する理由は、骨盤が右向きに傾いていることです。お母さんは、なぜこんなことになったのか、その原因を尋ねられたが、Rさんが小さい頃から横すわりの癖があったのではないでしょうか。1回横すわりしたからといって、腰椎が弯曲してくるというわけではありませんが、横すわりの癖が何度も続くとやがて背骨の周辺組織が硬くなって、弯曲を起こします。これは子ども限らず大人でも同じことです。

ですから横すわりの癖が強い人、つまり、右横座りと、左横座りとで、座りやすさが異なる人は、腰椎が歪んでしまっています。腰椎が弯曲を起こしている側に首を傾ける癖があることでしょう。いつも傾けているわけでなければ、斜頸とは言われないので、本人も気づきませんし、周囲の人たちも気づきません。

というわけで、斜頸という病気、異状な状態があるわけではなく、骨盤の傾き、腰椎の弯曲が首の傾きという状態を生んでいるだけのことです。

病名を与えられると不安になってしまう。という心理が確かにありますから、病名を付けるというのは、罪作りなのではないでしょうか。まして 「将来顔が歪んできます」 などと言われるのは。

このケースも、腰椎が歪んでいるだけだから、姿勢をよくすれば簡単に治りますよ、と言ってもらえれば不安になることもなかったでしょうね。

寝床体操の1番をするといいですよ、とお話して帰っていただきました。ずっと表情の硬かったRさんが、帰りには 「ニコっ」 と笑ってくれたのがうれしい。

891 臨床家の条件

第891号 2016年4月15日
▼ 臨床家の条件

医学の世界が、方向を見定める哲学を失っているのではないか、と正面から批判している歯科医がいらっしゃいます。丸橋賢さんという群馬県の方。

丸橋賢(まさる)
『全人的治癒への道』
(デンタル フォーラム、2004年、3500円)

少し前の本ですが、例によって奈良のF堂という古本屋で見つけたものです。

歯医者さんの中に、極めて優れた人がごく少数ながらいて、突っ込んだ深い思想を持っている。そういう人の一人ですね。色んな方面に目がいきとどいていて、思わず引き込まれます。

冒頭に、こんな風に書いてあります。

「歯科医師は、全人的治癒像という素晴らしい成果を、容易に達成できる立場にいる。歯周病やウ蝕を根本的に治し、予防するという限局された仕事に止まらず、体力が向上し、疲れにくくなり、風邪も引かず、アレルギーや不妊症まで治り、気力充実して生きられるようになる健康状態をも実現できるのである。膠原病が治り、精神科の管理から開放され、完全に社会復帰する例もある。」

「私は、歯科医師は素晴らしい可能性を秘めた仕事であると信じている。しかし、歯科医療の現実は、そのような達成可能な目標から、あまりにも遠く離れている。」

そして、本書の最後の方では、鮎川信夫の詩、大岡昇平の小説などが取り上げられています。

丸橋さんの書いていることを操法に取り組む立場から解釈しなおして、まとめてみましょう。第3章 「哲学なき科学を超えて」、第4章 「優れた臨床家の条件」、第5章 「歯科医療の荒廃を越えて」 の3つの章に丸橋さんの言いたいことがまとめられていると感じられます。

まず医学が哲学なき科学になってしまっているのではないか、という疑問。科学は確かに大きな成果を生み出したが、何をどう選択して行くかという価値観=哲学を確立していなければ、方向を見失ってしまうのではないか。いや、すでに方向を見失っているのではないか。

確かな哲学をそなえた人物の例として丸橋さんが上げているのは、ヒポクラテス、ゲーテ、湯川秀樹、です。

例えばゲーテの 『若きウェルテルの悩み』 の一部を引用してあります。

「ぼくは流れ下る小川のほとりの深い草の中にからだを横たえ、大地に身をすり寄せて数限りないろいろの草に目をとめる。草の茎の間の小世界のうごめき、小虫、羽虫のきわめがたい無数の姿を自分の胸近く感ずる。・・・
そんなときぼくは万感胸に満ちて、こう考えるのだ。ああ、こんなにも豊かに、こんなにも暖かく己の中に生きているものを表現することができたらなぁ。」

このような感動が臨床家の資質として必要だといわれます。

「好きこそ物の上手なれ、ということわざの通り、臨床を好きになることが最も大切である。が、現実に現在の歯科医師をみるとき、臨床を愛し患者を愛し、仕事に生きがいを感じている人はごく少数であるように見える。大多数はあまり情熱もなく、惰性的に保険制度に毒され、半ばいやいやながら仕事をしているように見える。」

厳しい見方ですが、さて、操法の世界はどうでしょうか。セミナーや講座に参加して来られる方々の表情をみていると、操法の世界では、多くの人が情熱を失っていないように私には感じられます。

ただ、臨床家としての資質を持つために、幅広くいろんな分野に関心を持ち、いろいろな取組を続けることが求められているでしょう。ゲーテはよく知られているように、文学に親しんだだけでなく、自然科学の本を何冊も書いています。例えば 『色彩論』 が有名です。

ゲーテの天才を真似ることは無理でも、せめて色々な分野に興味を持って接したいものと思っています。

883 首こりをとる方法

第883号 2016年2月21日
▼ 首こりを取る方法

メルマガ [第799号]  で 「マップの効用」 というテーマを取り上げています。首の横にある筋肉 「斜角筋群」 について、その緩め方を取り上げたものです。

斜角筋群と総称される筋肉 「前斜角筋」 「中斜角筋」 「後斜角筋」 は、いずれも頚椎の横突起に始まり、肋骨に終わっています。ですから、ここに異常が出ると、頚椎にも異常があるはずです。

先日のお客様(70代女性)は、ここが引っかかった感じで、痛いと言われます。最近、ここが痛いという人が多いと感じています。多分スマホやPCの影響ではないか、首を前傾したまま、ずっと作業を続けることに原因の一つがあるのではないか、と考えられます。もっともこの女性がスマホにうつつを抜かしているとは考えにくいですけれど。

古い言い方なら 「肩こり」 というところですが、古典的な 「肩こり」 とは少しばかり違う感じです。「首こり」 という言い方もできそうですね。

で、799号で書いた方法は、手の中指の第2関節の手の平側の両サイドを指先へ向けて、「斜角筋、緩め」 と思いながら、さっと撫でるという方法でした。

この方法でもいいのですが、ここでは別の方法を試してみましょう。

(ところが図がないと説明しにくいので、『共鳴法教本』 の35ページの図を見ながら試してみてください。お持ちでない方は注文していただく他ありません。注文については、http://shugeitei.com/stext.html からどうぞ。)

図の頚椎6番から2番の各骨について、各ポイントを手首方向へツメサキで弾くようにすると、それぞれの頚椎が整って、斜角筋も楽になります。特にポイントで痛みがあるような場合は、よく効きます。お試しください。

いままで左右に回りにくかった首がスッとうまく回るようになって、気分がよくなること請け合いです。

ただ、余計な注釈をつけておけば、以上の操法は、いわば対症療法です。根本から痛みの原因を取り除いたことにはなりません。根本から頚椎の歪みを解消しようとすれば、背骨を尾骨から順に上に向けて整えて行くことになります。

863 陥没した頭蓋骨

路地裏の整体術 第863号 2015年12月21日
▼ 陥没した頭蓋骨

頭を打って、頭蓋骨が少し凹んでいるという人が時々います。どうすればいいか。

先月ニューヨークから遠路はるばる来られた女性Uさん。海外在住の方で、里帰りの途上、朱鯨亭を訪れるという方が時々いらっしゃいます。スコットランドやロンドンからという方もいらっしゃいましたが、世界地図を見ると、ニューヨークとスコットランドは直線距離でほぼ同じくらいでしょうか。

そのUさんの訴えは色々ありましたが、頭を打ってから時間・空間の整理がつきにくくなったというのがありました。子どもの頃 「失神遊び」 というのでしょうか、特殊な呼吸をすると気を失うというのがあって、気を失って倒れた。後ろにストーブか何かがあって後頭部を強打した。その後がいまも凹んでいるという。

こういうケースについて、むかし何かの本で読んだことがありました。凹みの裏側を愉気すると、凹みが改善するということが、どこかに書いてあったのを思い出し、それをやってみようと思いました。

凹みのある部位は、後頭部右側ですので、それの裏となれば、前頭部左側です。その辺りを探ってみると、左眉毛のあたりが心なしか凸になっています。そこで、その出っ張り(というほどでもないが)をじっくりと愉気しました。終わってから凹み部分を確認してみると、すこしよくなっているようでした。

そのことを告げるとUさんは、ご自分でも凹みを撫でてみられて、

── え、うそ。

とか何とかおっしゃったと思います。

先日この件で、その後どうなっていますか、とお尋ねしたところ、

── 頭の凹みは毎日触って、あれは何であったのか思いを馳せております。
帰国して以来、普段より陽気で楽観的になっている自分に気付き、それが仕事が
多忙でハイだったのか、休暇明けでまだ余韻があったのか、もしかすると長い間
放置されていた頭の凹みが癒されたからかも知れないという思いを楽しんでおり
ます。

その後のお便りには、

── 今朝起きたら、頭の凹みが更に上がっていました。
いったい何があったのでしょうか・・・

それで、さらに詳しくお聞きしてみると、

── 先生からメールを頂いてお返事を書いていた際に、施術を受けていた時のこと
を思い出しながら自分で左眉のあたりに指を置いて、でも自分では「ピンと糸が
張っているような感覚」が分からないけれどと、思いながら自分でも治せると良い
のにと思っておりました。

まさかそれが効いたのか、それとも先生が私にメールをくださったことで私の頭の
凹みに少し思いを寄せてくださっただけで私の頭蓋骨が反応したのか? そのよう
なことがあるのか、とにかく驚いて・・・

どうやら、ご自分でも私がやったように愉気をしてみられたようです。それで、さら
に凹みが改善しつつあるのでしょう。

この先、この凹みがどんな道筋を辿っていくのか楽しみです。

結論として、頭蓋骨の凹みがあれば、それと対蹠点にある出っ張りを探して、そこ
に愉気をすると改善する可能性がある ということです。

842 浮き指(4)頸こりと食いしばり

路地裏の整体術 第841号 2015年10月1日
▼ 浮き指(4)頸こりと食いしばり

前回の 「浮き指専門サイト」 の説明では、親指を甲側に曲げて、直角を超えて曲がるようであれば 「浮き指」 であるとなっていましたが、このように概念を決めると、ほとんどの人が 「浮き指」 であることになってしまうようです。見かけ上、指が浮いていると見えない人も、曲げてみると直角に曲がる。

このサイトの笠原さんは、こういう 「浮き指」 概念が正しいとしています。概念は現実の認識に従って人間が決めるものですから、これはこれでいいので、別に文句をいう必要はない。しかし、次のような概念規定をしている人もいることを知っておいた方がいいでしょう。

──親指の下に名刺のような小さな紙片を置いて親指でグッと押えつけるようにしながら、手で引っ張ってみるだけだ。
このテストをして、紙が簡単に抜けるようならば、親指が十分に機能していないことになる。つまり浮き指である。
松藤文男『「足の指」まっすぐ健康法』(KAWADE夢新書、2009年)

となると、どちらが概念として適当かは各人が研究して決めればよい。私は、松藤説を採りたい。笠原説では、あまりに対象が広がり過ぎて、何でもかでも悪いことになってしまうと考えます。

松藤さんは別に「足の健康度を知る簡単テスト」も提案していて、「台の上に足をのせて、親指をこぶしで叩いてみる」。軽く叩いただけでも痛みを感じる人は、「間違いなく親指が傷んでいる」と書いています。(原文は「痛んでいる」となっていますが、意味の上から「傷んでいる」が正しいでしょう)

笠原説に関して、次のようなメールも頂戴しました。

──でも、それ[笠原さんのいう治療]を続けているうちに本当の意味での治療がなされるかというと、個人的には懐疑的です。
変形の順序としては確かに足や足指からスタートしているのかもしれませんが、足首、膝、股関節、骨盤・・・と捻じれなどのアンバランスが全身を浸蝕してしまっている状態では、足のみの観察、施術では効果はさほど期待できない気がしています。

さて、どちらの説が正しいかはさて措いて、浮き指にどう対処すればよいかという観点からみれば、別の見方もできることが分かってきます。

浮き指になっていると、趾(あしゆび)の付け根に圧痛が出ることが多いです。趾の付け根を押えるなり、強くつまんだりすると痛む人が多いのではないでしょうか。ここで付け根というのは、必ずしも第3関節のことではなく、基節骨(趾の付け根の骨)の周辺というほどの意味です。その辺りに圧痛が出ないかどうか、試してみてください。すると、指によって圧痛に多少の差があることが分かってきます。

笠原説でも、松藤説でも、親指のテストだけで「浮き指」の判断をしていますけれど、趾の付け根の圧痛を調べる方法ですと、一本ずつ「浮き指」かどうかの判断ができます。こうやって調べてみると、中指の「浮き指」が一番多いということが分かってきます。中指はたいていの人が「痛い」といいますから。

こんな時、圧痛の出る趾の中指の付け根を揉んでみる。中指の付け根を揉んでやると、次第に付け根の痛みが弱くなって、消えてゆきます。揉むのが嫌な人は、付け根をじっとつかんで、愉気をしてやるのでもよい。

不思議なことに、この操作によって下顎がまともになる。逆に言えば、下顎に歪みがあれば趾の中指を操法してやればよい。

面白いことに下顎が整うと、頸の痛みが消えることもあります。事実を確認したければ、頸が痛いと言っている人の、痛みと同側の足中指の付け根を揉んでやればよい。頸の痛みが消えて行くはずです。

こういうことが事実として成り立つのは、下顎の緊張が頸を引っ張っているという現象が起きているからでしょう。「頸凝り」という症状は、顎にも原因がある。まとめると、趾→下顎→頸という凝りの連鎖がある、ということです。

だから頸が凝っているからと言って、頸を揉んでやってもダメで、根本にある趾の凝りを解決すれば、頸が正常になるわけです。頸の凝りがさまざまな病気の原因になっていると主張している人がいますが、それが正しいとすると、趾に凝りがあるというところまで遡らないと根本解決にならないと思います。

付け加えると、「喰いしばり」とか「歯ぎしり」と呼ぶ現象も、趾と関係しています。こういった現象が下顎の状態と関係があるからで、「頸凝り」だけでなく、こういった現象も、足の中指の付け根を揉んでやると、改善する可能性があります。心当たりのある方は左右の中指の付け根を試しに操法してみて下さい。