路地裏の整体術 第1037号 ’18年5月25日
▼よく分からない症状
有名な病院や治療院を次々と回ってみても、どうにもならないという方がかなりの数いらっしゃると、つねづね感じています。
つまり、どうにも病名が付けられない。病名が付けられないだけでなく、「〇〇症候群」として括ることさえできない。
はやく言えば、どこへ行っても相手にしてもらえない人、そういう人が結構多いと感じます。
さまざまな検査をしても、何も出て来ない、検査結果から判断すると、どこも悪くない、という人々です。
けれど本人からすれば、奇妙な症状があって困っているのだから、「どこも悪くない」などと言われたくないのが本当のところです。
そのような人が来られました。かりに中年男性Qさんとしておきましょう。
(Qという名の主人公が出て来る有名な小説がありましたが、その人とは何の関係もありません)
Qさんは、ゲップが出るので困っている、というのです。ゲップそのものに困っているというより、喉か気管が詰まった感じになって、ゲップが出ればスッキリするけれど、うまく出ない時が困る、苦しい、と言われるのでした。
もちろん私には、このような症状の方を見た経験が、これまでにありません。どうしていいか分からないのは、他所の病院や治療院と変わりません。
最初は、お断りしようかとも思いました。しかしあちこち経巡ったのちに来られたのですから、私がお断りしてしまえば、今後もQさんの苦しみが続くことになるでしょう。
どんなに難しい症状であっても、何とかなるものであれば、何とかしたいという気持ちは持ち続けているつもりです。
具体的に、どうしたらいいか分からない症状を相手に、どうするのか。
私の方針は一つ。
まず、その人のバランスを見ます。何かの症状を持っている人は、かならず何かのねじれやゆがみを抱えています。それを見つけ出します。何か一つ見つかれば、それを修正してみる。
修正した上で、再びバランスを観察します。すると、前とバランスが変化しています。これだけで終わりということもないわけではありません。しかしそんなに簡単に済んでしまうケースは珍しい。
むしろ同じようなプロセスを繰り返すことが多い。そういう場合が大半です。
そうしたプロセスを繰り返して終点に到達するのが多くの場合です。そのプロセスの数が少ない方が結果がよいと言えるでしょう。
つまり手数(てかず)が多いほど、下手ということになります。これでもか、あれでもか、とゴチャゴチャやった挙句に、まだよくならない、と言うのは、下手の極みとしかいいようがない。
といいつつ、私も疲れてくると、そういうことをやって迷惑をかけていることがあります。ゴチャゴチャやって疲れ果ててくる。内心、下手の極みだな、と思いながら、首うなだれることがあります。
そういうことを繰り返して来たのが私の歴史で、お世辞にも褒められたものではありません。
ただ、そういうことに意味がないか、と言われれば 【転んでもただ起きない】 という原則を持ち続ければよいと思います。
言い換えると、【難しい症状ほど学ぶことが多い】、これです。うまく行かなければ、かならずそこにうまくいかない原因が潜んでいる。それを見つけ出せばいいわけです。すぐには思いつかず、後になって、ああそうだったか、と思い当たることもあります。
こうやって私は来られたお客様からいろんなことを学んで来ました。私には師匠がいませんが、数多くのお客様方が師匠であると言って、間違いないと思っています。
さてQさんの話に戻りましょう。
Qさんはゲップが出なくて苦しい時、背中を柱にこすりつけるとゲップが出て楽になるのだそうです。あるいは、孫の手のようなもので背中をこすってもいいという。
これは一つのヒントになりますね。
そのこすり付けている箇所に何か問題が潜んでいるはずです。
Qさんの背中を触ってみると、胸椎上部の左二側(ひだりにそく、1側とか2側というのは、背骨から指何本分の隔たりかを表す言い方です)あたりが硬くなっています。これ自体がゲップや息苦しさの直接の原因でないとしても、何らかの関係があるはずだと思われました。
一週間後。少しましになったと言われるので、やれやれ、一安心。詰まって苦しいということが少なくなったという。
そこで今度も同じような方針で、操法を繰り返しました。
そして昨日、第3回目です。大部楽になってきたそうです。それは良かった。でも、まだまだだ。孫の手がないので、長い靴べらでこすってもらうと、やはりゲップが出ます。
よくよく見ると、骨盤が捻れています。気づかないわけではなかったつもりですが、ちゃんと
修正していませんでした。そこで、いつもの交差共鳴法(手の甲を左右で逆方向に撫でる)でやってみました。すると、左二側の硬いのが少しましになってきました。
長靴べらでもう一度こすると、かなりよくなって来たようです。
あとは、鼻がつまる感じがあると言われるので、足の第3趾の付け根を愉気すると、楽になって来られた様子です。この操法は、身体の中心部に異常がある時に、よく効く操法です。鼻の穴の大きさなども揃って来る。
Qさんの話によると、左二側に硬いところがあるのは子どもの頃から、とのことですから、骨盤の捻れというのは、数十年単位で続くことがあるしつこい捻れだと思っていなければなりません。
骨盤に捻れがあると、背骨そのものも捻れてきます。これが身体各部の捻れを引き起こしていると考えられるので、【骨盤の捻れは、どんな症状であれ、修正して置くことが必要】です。
仙骨の倒れを修正するときにも、骨盤の捻れを先にしておくと、修正が楽です。
というわけで、【骨盤の捻れは、最優先で取り組む必要のある操法だ】と言っておきたいと思います。