928 金星丘が痛い 16/11/6

昨日の集中初級講座が終わってさて帰ろうとすると、参加者のTさんが質問してこられた。私の講座では、質問のある人は、即座にその場で尋ねるように言っています。

答えにくい質問や、答えようのない質問も出てくる可能性があるので、過去に参加したあるセミナーでは質問用紙を配って質問を制限するようなことをしている主催者もありました。

しかし質問を制限すると、その場で抱いた疑問を解消できないまま帰ることになって、不満が残ります。それで私は何でも質問してください、と呼びかけています。すると、驚いたことに、「奥さんと知り合ったのは、どんな時ですか」という質問が出てきて、これには参りました。

でも、これくらい自由な雰囲気がないと、セミナーや講座というものはつまらないものになりがちです。で、すべて終わってからTさんが質問をして来られた。

自分はマッサージの仕事をしているので、親指を使いすぎる傾向がある。右手親指の付け根の膨らみのところが腫れて痛みが出ている、何とかならないか、というお尋ねでした。手相学で 「金星丘」 と呼ぶところです。

──ここが痛いのですけれど。

──これは肝臓ですよ。

──え。ここは肝臓なんですか。

──肝臓が下垂しているんです。

──はあ。

というようなやりとりの後、手の平を肝臓のあるあたりに当てて、そっと上の方向へ皮だけ持ち上げるようにしてみてください、と言いました。

Tさんは右の肋骨の下に手の平を当ててじっと上の方へ軽く押し上げています。1分ばかりたったので、頃はよしと、止めてもらって、Tさんの右手の金星丘を押さえてみると、痛くない。これにはTさん、驚いた様子でした。

もう一度、自分でも押してみてTさんは痛みが消えたことを確認された。いまも、Tさんのびっくりされたお顔が思い出されます。この操法は、前回の上級講座の時に参加者のMさんが紹介してくださったもので、このような珍しい操法を互いに交換できるチャンスは得難いものです。Mさん、ありがとうございました。

 

917 肩で坐骨神経痛に対応する

肩で坐骨神経痛に対応する

さる12日、近鉄奈良駅前の啓林堂書店で「トークセッション+サイン会」。来られた方にモデルになってもらって、カンタン操法をやろうと最初から思っていました。

話を事前に準備するなどというやり方は、私にはできませんし、そんな柄にもないことをすると、失敗するに決まっています。

操法というものは即興でやるもので、一定の道筋がありません。大体の順序のようなものはあっても、いつもその順序通りというわけにはまいりません。

いろいろな方が出て下さって、ありがたとうございました。肩・腰・頸などに問題を抱えている方が前の机の上の臨時施術台の上に上ってくださいました。

例えば、登場してくださったのは、坐骨神経痛があると言われる。どちらの脚ですかとお尋ねすると、両脚だと言われる。これは厄介な人が現れた、と思ったものの、公開の席上ですから、逃げるわけにはまいりません。

さて、どんな方法でアプローチしたものか。思案するうちに、肩の高さが違うことに気づきました。これは立ったままでも大丈夫だろう。

右肩が高い。ということは、右腕に緊張があるわけです。であれば、腕が変化すれば、坐骨神経痛が改善するのではないか、というインスピレーションが下りてきました。

こういうやり方をこれまでにしたことがありません。ですから自信があったわけではありませんが、多分、右腕を変化させれば両脚にかかる体重の比が変化するはずだから、左脚の症状が変化するのではないか、という読みです。

特に肩の緊張と深い関係にあるのは、上腕三頭筋です。この筋肉が緊張していれば、たいてい肩が高くなっています。

この筋肉を緩めるのに普段オルゴン・リングを使っているのですが、この時は、持参していませんから、手で上腕三頭筋のあたりをしごいてみるということをしてみました。

これでも緩むだろうという読みはありました。しばらくこの操法を続けるうちに緊張で上がっていた右肩がしだいに下がってきました。「下がってきましたね」と解説を付け加えて。

さて、左脚はどうですかと尋ねてみると、「いまはしびれていません」というお答え。

なぜ、こんなことで解決するのか、解説を付け加えます。鞄をいつも同じ右肩にかけていると、永い間には、そちら側の腕が緊張して、右肩が高くなる。すると、体幹部が左に傾くことになるので、左脚に負担がかかる。その結果、左脚に坐骨神経痛のような症状が出てくる、というわけです。

両脚がぐあい悪いということだったので、もう片脚はどうするのか。それは一気には行かないので、朱鯨亭にお越しください、と言って終わりました。

というような次第で、操法に必要なのは、インスピレーションではないか、と改めて思いました。どうすればインスピレーションが下りてくるようになるのか。

まあ、これは難しい問で、同じような場合を繰り返すこと、繰り返し見学することでしょうね。見学がいかに重要であるか、を知らない人が多い。見学をしたからと言って、インスピレーションが湧くようになるわけではありませんが、その時、私の中でどのようなことが起きているのかをひそかに伺うことはできるはずです。

ただ、こう答えてしまうと、単なる経験主義になってしまうので、ここの認識と行動の構造を明らかにすることは、これからの私の課題だろうと思っています。

ですから、今年のこれからの集中講座・実習では、このあたりの話を大幅に充実させて、皆さんの期待に応えたいと思っています。

最後になりますが、参加くださった大勢の方々にお礼を申し上げます。

中でも、マイクを持ってくださったり、いろいろとサポートをしてくださったTさん。古くからの教室の参加者で、参加者中の最長老というべきFさん。同じく教室にながく参加してくださっているF夫妻、遠方から夫婦あい携えて来られたS夫妻、長らく通ってくださったお客様のMさん、Tさん、Tさん、教室の古くからの常連のYさん、以前に朱鯨亭に行ったことがあるという方もありました。大勢の未知の方々が来てくださいました、まことにありがとうございました。

啓林堂のスタッフの方々も、サクラとして待機してくださっていたようで、これもまた感謝にたえません。総勢30名ほどの皆さんが集まってくださったおかげで、場所を提供してくださった啓林堂に恩返しをすることもできたかな、と思っております。

サインをさせていただいた方々は、17人だそうです。下手な字で我慢してくださって、ありがとうございました。

915 孫の夜泣き

孫の夜泣き  

今年の夏は、1か月近くのお休みを頂戴しましたが、ゆったりと休みがとれたとはいいがたい。

まずは新刊のこともありましたが、二人の孫(母親は別々)が同時にやってきて、保育園状態になったからです。

そのうちの一人Sちゃんが夜中に目を覚まして、ぐずぐずいう。Sちゃんから「かーか」と呼ばれる私の上の娘がさっそくだっこして、あやそうとするが、なかなかいうことを聞きません。

私の寝ているところまで、騒動が聞こえてくるので、仕方なく、私は母子が寝ている部屋へ行って、何かをしてやりたいと思いました。

夜中にぐずぐずいうのは、結局のところ、おとなのいびきと同じで呼吸の問題なんだろうと見当をつけました。

そこで、背中の胸椎に愉気(手当)をしてみたらどうだろう、と思ったわけです。母親がだっこしている背中(左右の肩甲骨のあいだ)に掌を当ててみました。直接さわると、いやがるかもしれません。手を直接当てる必要はありません。手を離してかざすだけでいいです。

すると、不思議なことに、ぐずぐずいうのがピタッと止まった。すぐに私は自分の部屋に戻ったけれど、静かになったままです。

これほど、よく効くとは予想外でした。ネットで探ってみると、○○イリーなどという製品も出ているようですが、そんな面倒なことをしなくても、背中に手を当てるだけなら、誰でもできるし、簡単ですね。効果が100%あるか、と聞かれると、やってみてください、と答えることになります。

でも、赤ちゃんがいるお宅では、ぜひお試しを。

914 シートベルトをしていたら(2)

【承前】まず、どこがどうなっていたかを書いておきましょう。痛みのある胸椎は、強く右へ捻れていました。そのため、操体法を使ってみても、一向に効果が出ないほどでした。一つずつ椎骨を修正するという面倒な作業をしなければ、どうにもならないほど硬く捻れていました。

これは前後に押す力よりも、腰をはじめとして捻じる力が強く働いたことを示しています。

この点は、今度の私の新刊『ねじれとゆがみ』の中で、特に詳しく取り上げた点ですので、そちらを参照していただきたいと思っております。

次に腰椎。ここには左へ捻れる力が働いています。なぜ、ねじれの方向が腰椎と胸椎とで反対に出るのか。これは交通事故という強い力が働く場面でなくとも、通常の生活の中でも、腰椎と胸椎とは、逆方向へ弯曲していることが多いことでも分かります。

脊柱には、「自然弯曲」と呼ばれる前後の弯曲があります。ここに強い力や、繰り返しの力が働くことで、前後の弯曲が左右の弯曲に変わっていくメカニズムがあると思います。

骨盤はどうなっていたか。Oさんの普段の骨盤を見せてもらったのは、2年半前ですから、どうなっていたか、はっきり覚えているわけではありませんが、普段の状態が強調されて出ているのではないか、と思われました。仙骨は右前・左後ろの方向に回旋していました。仙骨の左側が硬くなっていました。

頸椎や後頭骨にも異常がありましたが、これは通常の範囲ではないか、と思われました。交通事故でよく言われるのはむち打ち症です。しかし、むち打ち症が強く出ていたか、と言えば、そうではありませんでした。むしろ腰椎を正常化すると、頸椎も正常化するという範囲の歪みでした。

事故の後、すぐに今回のOさんのように、全身の歪みをチェックして修正しておけば、むち打ちが出ないで済むかもしれません。

こういう各部の歪みを正常化して行くと、Oさんの表情は明るく変わっていき、呼吸もしやすくなったといわれます。呼吸がきびしい感じになっていたのは、胸椎の捻れによるものでしょう。

最後に距骨を整え、歩いてもらうと、どこも何ともない、という状況になりましたが、まだ胸椎には捻れが残っていて、楽観を許しません。今週末に再度、来ていただくことにしました。

シートベルトの状態についてお聞きしてみたところ、緩めにしていた、運転していた人は、きつめにしていたので、体にベルトの跡が残っているほどだけれど、異常はでていない、とのことでしたとすると、シートベルトは、お添え物どころではなく、大きな効果があるから、しっかりしなければならない。

そして事故にあってしまったら、信頼できるところで操法を受けるのが望ましい。というか、そのままにしておくと、たいへん厄介なことになるでしょう。

でも、そういうチャンスのない人は、事故のあと、どうしているのでしょうか。痛みやむちうちに苦しんでいるのでしょうか。

913 シートベルトをきっちりしておけば(1)


シートベルトさえしっかりしてあれば避けられたかもしれない問題があるのではないか、と感じさせられた事故体験の後を見せていただきましたので、その貴重な報告。

東京都中野区の女性さんから、休業中で申し訳ないけれど操法を受けたい、という趣旨のお申込みをいただきました。

Oさんは奈良市内に実家があり、お盆で帰省中という状況。昨日、車で川に沿って走っている時に、川に気を取られたのか、センター・ラインを少し越えてしまって、衝突。Oさんは助手席。

エアバッグが出て、Oさんはエアバッグと座席に挟まれる格好になり、朱鯨亭に来られた時は、右胸に打撲の痛みがあった。

座席から押さえつけられたのは胸椎で、私が見た時は、胸椎がひどく歪んでいるらしく、左右の肩甲骨の間に痛みがあると訴えられていた。

朱鯨亭は休業中ですが、そんなことも言っておられないので、本日朝すぐに来ていただいた。

救急車で運ばれた病院では、骨には異常がありません、という決まり文句で終わりだったそうです。

さて。どこから取り掛かるか。何しろ寝返りを打つだけでも痛む状況なので、簡単に動いてくださいともいえない状態です。

胸に問題があるのは分かっているけれど、右胸だけが痛むとすれば、胸が捻れているだろうから、骨盤の捻れから調べようと考え、仰向けになっていただきました。しかし、

仰向けになるだけで、大変な苦痛らしく、顔をしかめながら。操体法の動診を使ってみようと考えました。仰向けになって両膝を立て、左右にゆっくり倒してみる、というあの方法です。

すると、左はあまり問題なく動くけれど、右側はあちこち突っ張って動きにくい。ということは、腰椎が右へ捻れているわけです。

どうなっているのか、想像力を働かせるところです。

そこで、操体法の操法をやってみましたが、ビクともするものではなく、ほとんど改善が見られません。

どんな優れた操法でも、苦手なものはありますから、何でも万能と考えない方がよい、というのは私の意見。

何が引っかかっているのか。うつぶせになってもらいました。

この調子で実況中継風に書いていくと、たいへん複雑なことになるので、(本当は、操法をする人たちは、詳しく書かれているものを読んでみたいと思うかもしれないけれど、一般の読者にとっては読みづらいものになるので)少しまとめてお話しすることにします。


(続きは次号)

897 手の指が痛い

第897号 2016年5月22日
▼  手の指が痛い

Sさんは、県内の某研究施設で、研究活動をされている中年男性。手を使ってけっこう力をかけることがあるそうです。

そのためか、時々あちこち痛くなって、いらっしゃいます。今回は、手の指が痛いという訴えでした。

ところが普通の指の痛みとは様子が違います。たいていは関節のズレで痛くなるのですが、関節ではなく、関節と関節のあいだの甲側が痛いという。

初めどこから取り組めばいいかと思案をしました。甲側が痛いとすれば、小さいながらも伸筋(しんきん)があるはずです。

筋肉には伸筋(しんきん)と屈筋(くっきん)の区別があり、上腕の力こぶは屈筋の代表選手です。つまり肘を曲げる(屈曲する)時に働きますね。一方、上腕の後ろにある上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)は伸筋で、肘を伸ばす(伸展する)時にはたらきます。

指の甲側(爪側)に存在している伸筋は、指の関節を伸展する時に働きます。Sさんの手の指でも、とくに拇指(ぼし)つまり親指が痛いと言われる。痛いだけでなく、拇指の動きがおかしいとも。確かにカクカクとぎこちない動きです。

そこで、伸筋のあるところに愉気をしてみることにしました。

その前に腕の異常を治すときの鉄則を。それは橈骨の下がりを修正すること。これを忘れてはなりません。橈骨の上端と下端に指をあてて、そっと微圧をかけます。これで橈骨がいくぶん上がり、拇指の付け根の圧迫が除去されたはずです。手や肩も含め、腕のどこかに異常がある時は、必ず、この操法を最初に行います。

それから異常箇所の対処にかかると、うまく行きやすい。

というわけで、指の伸筋の愉気にかかりました。確かに触りごこちが硬い。ふわっとした感触ではありません。その硬いところに愉気を続けます。数分も続けたでしょうか。様子をみてもらうと、かなり痛みがとれたらしい。

── 「かなり」 というのは、まだ 「少し痛い」 という意味ですか。
──もうほとんど痛くありません。
── 「ほとんど」 というのは、まだ 「痛みがうっすら残っている」 という意味ですか。

われながら 「しつこい」 と思われるほど質問します。こうしないと曖昧な状態で終わると、再発してしまうことがありますから、確認の作業は 「しつこい」 くらいでちょうどいいと、いつも思います。「痛くないでしょ」 と誘導尋問をする操者はあまり感心できません。

両手とも同じところが痛いそうなので、反対側の手も同じようにします。

これで両手の指の痛みが改善しました。ここで、感想。

親指を反らせると、ぐっと思い切り反る人がいますが、あれは、拇指の伸筋が縮んでいるか、硬くなっているのだと思います。反るのが嫌だという人は、拇指の伸筋に愉気をしてみれば、反りが弱くなるのではないでしょうか。

856 スギナの効用(続)

路地裏の整体術 第856号 2015年12月2日
▼ スギナの効用(続)

昨日の記事にも書いたように、東城百合子とはまったく別の角度からスギナについて考察している人がいます。ルドルフ・シュタイナーです。

──例として、腎臓を取り上げましょう。何らかの症状から、病気の経過の主な原因が腎臓にあると思われるとします。精神科学を診断に用いると、この腎臓が周囲の消化プロセスと分泌プロセスを感覚する器官としてはほとんど働いていない、ということが分かります。腎臓があまりにも代謝器官になりすぎていて、均衡が崩れているのです。そのような場合、私たちはなによりも、「どのようにして、この腎臓をもっと感覚器官にしようか」と考える必要があります。「腎臓が十分に消化プロセスと分泌プロセスのための感覚器官になっていないことを示しているので、珪酸を必要なだけ腎臓に与えねばならない」と、私たちは言うことができます。(60ページ)

シュタイナーのものの言い方には、独特の言い回しがありますので、分かりにくいかもしれません。でも、スギナ茶を飲み続けた現在までに感じるのは、丹田のあたりの内部感覚が以前より鋭くなったことです。

自分にとって好ましくない波動がやってくると、丹田のあたりが冷たく感じるようになりました。その反対の場合には、丹田が暖かく感じます。この感覚は何なのか、と考えていたのですけれど、シュタイナーの上の文章を読むと、なるほど、と納得できます。腎臓の感覚が鋭くなった結果、丹田にそのような感覚が出てくるようになったのでしょう。

次に出てくる文章を引用します。

──特に腎臓において珪酸プロセスを刺激することが必要です。周囲の植物界に薬を探すと、珪酸を多量に含むスギナが見出されます。単に珪酸を摂取しても腎臓に達しません。スギナはその他に硫酸塩を含んでいます。硫酸塩を用いると、リズム系・分泌器官、特に腎臓に作用します。スギナの硫酸塩は、珪酸が腎臓に左右しやすくします。(62ページ)

以上、出典は次の本からです。

『シュタイナー<からだの不思議>を語る』(西川隆範・訳、イザラ書房)

(この本を読んでみようと思われる人は、シュタイナーの他の本をいくつか読んで、その文章の癖に慣れることが必要です)

まったく別の関心から読んだ東城百合子とルドルフ・シュタイナーが、ここでスギナを通して一つにまとまりました。まことに「不思議」を感じます。

それにしても腎臓が感覚器官であるとは、今の今まで知りませんでした。からだの不思議には、本当に限りがありません。