首が重い奇病

第1105号 2019年7月16日
▼  首が重い奇病(2)

昨日の続きです。首が重いと言われる症状で、何がなんだか分からず、私が困り果てたという状況でした。

少し楽になったと言われるところからは、一つの操法をする度に確認しながら慎重に進めて行きました。

両脚の腓骨を上げて、確認すると、大変楽だと言われる。

もう一度、腰椎を整えて、どうですか、と聞いてみると、動きが軽快になりました。

という具合。

こんな調子で続けて、最後の仕上げは体軸操法。
https://shugeitei.wordpress.com/2018/12/27/1050%E3%80%80%E4%BD%93%E8%BB%B8%E6%93%8D%E6%B3%95-2-0/
(グーグルで  “体軸操法” と引用符付きで入れて検索すると出て来ます)

普通は体軸操法で、あらかた整えてから、細かいことに進むというようにしているのですけれど、今回は逆にやってみたわけです。

全部終わってから、Oさんに確認してみると、首が自由に動く、こんなのは初めてです、と嬉しそう。

Oさんが帰られて、その晩のこと、Oさんを紹介して来られた方から電話があり、帰り道、調子がいいので、朱鯨亭からJR奈良駅まで、歩いたというから飛び上がりそうに驚きました。

しばらく立っているだけでも、しんどい、と漏していたOさんが、この道のりを歩くとは尋常の出来事ではありません。何しろ、早足で歩いても20分はかかる行程ですから。

このあと、私はすっかり考え込んでしまいました。どう考えても、これは私が直したのではない。Oさんのからだに治る力があったから治ったと考える人もいるでしょうが、それでも筋が通らない。

わけのわからない症状に対して、私が色々と判断する力を持っていたわけではないですから。

何が起きたのか。さあ、この続きは、読者の皆さんに考えていただきたい、と思っています。

朱鯨亭 http://shugeitei.com/

対角線上の釣り合い

第1061号 2018年11月8日
▼  対角線上の釣り合い

からだほぐし教室の常連Wさんから、メールを頂戴しました。先日の教室でWさんの股関節を操法させてもらったその後の経過報告です。

ーー 右股関節の不具合 その後の報告をさせていただきます

 結論から言いますと、左の前肩をケアしたら、すっと楽になりました。骨盤のネジレは なか なかうまくいかなかったのですが、左の前肩を修正すると すっと楽になりました。

 そういえば、木曜日の教室で先生はまず 私の左前肩の修正をなさっていましたっけ(^^; 当たり前ですが 今更ながら先生の慧眼に恐れ入っております。

といわれて私の方も恐れ入っているのです。右股関節の不調に対して、左肩を操法したのは、たまたま左肩に緊張があるな、と気づいたからであって、それが右股関節に効果があるだろうと予想したからではなかったのです。

教室の時、Wさんが股関節の不調を訴えられたので、じゃあやってみましょう、と気軽に引き受けたんですけれど、「左前肩」が股関節の原因であるとは思っていませんでした。

しかし、いまとなって、落ち着いて考えてみれば、左肩に緊張があり、前に亜脱臼の状態になっていれば、釣り合い上、右の股関節が緊張し、前に寄っていても、おかしくないですね。

ははあ、対角線療法というのは、こういうバランス療法なのか、と気づいたわけです。

結論をいいましょう。《どちらか一方の肩が前に寄っているとき、逆側の股関節に異常が出ている可能性がある》、ということになります。逆もまた真なりで、どちらかの股関節に異常があるとき、逆側の肩にも緊張がある可能性がある、ともいえます。

こういう原則をわきまえておれば、肩や股関節の異常がある時にずいぶん参考になる、ということになります。

この応用として、膝と肘の関係も同じようなことが言えるかもしれません。あるいは、手首と足首の関係も同様です。Wさん、ありがとうございました。

朱鯨亭 shugeitei.com

五十肩

第1061号 2018年11月15日
▼  五十肩

五十肩の男性が来られました。70歳代なので、七十肩ということになるかもしれません。右肩を上げてもらおうとすると、痛くてここまでしか上がりません。とおっしゃって、腕は水平までもあがりませんでした。

右肩は右腕の緊張のためかかなり高くなっています。その全体を緩める目的で、手の舟状骨のあたりと、肩の烏口突起(うこうとっき、肩関節の前から5センチばかり内側にある突起)の二点に愉気します。

いよいよ1060号に登場した外川治美(とがわ・はるみ)さんの考案になる五十肩の操法を試してみる番です。こういう時は、少しうれしいような緊張するような、舞台に上がった俳優のような気分です。

もちろんこれまでにも五十肩の操法はしているわけですが、たった1回という訳にはいかなかった。随分あちこちさまよった挙げ句に、目的地にたどり着くような感じでした。

とことが今回は、たった1回でいいというのですから、やはり緊張します。薬指と人差し指を同時に反らせました。あとの手順は、1060号に書いた通りです。それを3回繰り返して、さて腕をあげていただくと、何の抵抗もなく、かなり上まですっと上がりました。

あまり簡単だったので、私の方がひょうし抜けしてしまった、というのが本当のところです。念のため、方法を再掲しておきましょう。

── 五十肩がびっくりするほど変化します。右の五十肩は、右手の人差し指か、薬指のどちらか、または(症状の重い人は)両方の指を強く反らします。

右の腕が上がりにくい場合は、右手の薬指をきつめに反らし、反らしたまま、小指側と中指側に倒し、どちらに倒した方が痛いかを聞いて、痛い側にキープします。15秒くらい。

中指側に倒しても痛い場合は、そちらに倒し15秒位キープ。できれば、3回位ずつ。

薬指は痛くないけど、人差し指が痛いという場合は、人差し指を。

敏感な方の場合、”始めは右腕が重かったのに、右をやったら左腕が重く感じる”ということがありますから、そんな場合ば左も行った方が良いですね。(以上引用)

五十肩でお困りの方は、ぜひこの方法を試してみてください。きつい症状がある場合は、2度繰り返すことも必要でしょうが、ともかく、1回で随分楽になって、この先の人生が変わるかもしれません。

朱鯨亭 shugeitei.com

1052 肩と上部胸椎の密接な関係

第1052号  ’18年9月24日
▼ 肩と上部胸椎の密接な関係

上部胸椎とは、胸椎のうちでも、肋骨の反対側が胸骨に繋がっている部分、つまり肩甲骨の間に背骨が存在している部分です。胸椎上部といっても同じことです。

ちかごろ、この辺りが硬くなっている人が多い。先日、肩が痛いといってこられた男性Aさんもそうでした。肩が痛いというケースは腕を緩めることから始めるのが常道ですが、この方の場合、腕を緩めてみても、効果がない。

こういう場合はどこかに方向転換しなければならないわけですが、肩というのは、色々な要素が絡んできて、どこを選ぶかが必ずしも簡単ではありません。時には、足が絡んでいたりしますから。

さて、 Aさんの場合は、初めに背中を観察していたので、上部胸椎が気になっていました。
そこで、上部胸椎に左手の親指の側面を添え木のように当てがって、右手は烏口突起に当て、しばらく愉気をしていると、(ここのところは実際に見てもらわないと分かりにくいし、言葉による説明も十分ではないので、関心のある方は教室などにお越しください)

まず上部胸椎がまっすぐになってきました。そこで腕を上げてもらうと、なんと肩が痛くないというのです。肩が痛いという人で、上部胸椎の歪みが原因の一端をなしているケースを確認できたことになります。

例えば四十肩・五十肩の人で、上部胸椎に問題がある人が確かにいて上部胸椎を処置すると、楽になるケースがあります。ですから、肩と上部胸椎とは密接な関係にあるといえる。

というわけで、上部胸椎は、その裏にある胸骨と表裏一体の関係にあることを操者はわきまえている必要があるということになります。

身体の前面でいえば、胸骨・肋骨・鎖骨・肩は連動していることが分かります。さらに付け加えると、腕や手もこれらと連動しています。そして身体の後面にある、上部胸椎・肋骨・肩甲骨・腕が連動しているということになるでしょう。

1050 体軸操法 2.0

第1050号  ’18年8月26日
▼ 体軸操法 2.0

以前に体軸操法というものをご紹介しました。基本は変わらないながら、そのバージョン・アップ版を。つまり、体軸操法のバージョン 2.0。

最近、なんとか2.0というのが増えていますから、それをやってみようという魂胆でもあります。

簡単に肩こり操法と呼んでもいいと思います。肩こりより深い「首こり」と呼ぶのが適当な、厄介な肩こりが増えていると感じています。おそらく PC やスマホの作業が増えているからなのでしょう。

肩こりというより、首こりといった方がよい。常に首が調子が悪いと嘆いているあなた。そう、誰か他人の話ではなく、あなたのことです。電車に乗ったら、直ちにスマホを開いてタップしたり、スライドしたりしているのではありませんか。

おそらくそれが原因なのではないか、と思われるコリを肩や首のあたりに溜めている人が増えている感じがしています。誰か他人の話ではなく、あなたの話です。かく言う私も、スマホ・デビューしてしまいまして、しまった止めとけばよかったと後悔している次第。

すると自分の凝りに対応せざるを得なくなりました。首が凝っているのは、実に気分の悪いもので、すぐになんとかしたいと感じます。とはいえ、首の骨をいじりまわるのは怖いし。どうすべえ、と思っていたのですが、何とかなりそうな見通しが立ったので、ご紹介しようと。

まず、体軸操法 1.0 は、どんなものか。→ https://shugeitei.wordpress.com/2017/02/07/inbox-shugeiteigmail-com/ ここには詳しく書いていないので、かいつまんでまとめてみましょう。

頸の左右どちらかが痛いとしましょう。特に首を左右に回旋しようとすると、痛くて回らない、などの症状があるとしましょう。例えば左側が痛い、とします。

仰向けに寝ます。両脚は大股開きにする。左側が痛い場合、左脚を内側へ息を吸いながら捻じります。ある程度捻じったところで、パッと息を吐いて、足を緩める。これを3回繰り返す。今度は、両脚を少し狭めた状態で、同じことをやる。最後にさらに狭めて、同じことを3回。

それで首の回旋をしてみると、楽になっています。痛かった右より楽になっていることもあります。

ところで、体軸操法 2.0 とはなにか。上にまとめたものをもっと簡単にしたものです。

この場合の脚の開きとはなにか。脚の開きが大きいと下の方に効きます。開きが小さいと上の方に効きます。なぜかといえば、両脚のラインを上の方へ延長して考えると、開きが大きいときは、2本のラインの交点が上の方に来ますね。その交点のあたりに効果が出るわけです。

というわけで、首に効かそうとすれば、開きの角度を小さくすればよい。

ですから、2.0では、開きの角度を変えて何度もやらなくても、小さい角度で3回ほど繰り返せば効果がでます。

例えば、電車の中でスマホをやっていて、首が痛くなってきた。さあ、えらいことになって来た。と思えば、両脚の開きの角度を小さくして、痛みのある方だけ、3回繰り返すと、痛みが消える、というわけです。

簡単でしょう。

頸が痛いのではなく、胸椎のあたりが痛いのなら、もう少し開き加減でやればよい。

痛みのある側だけやると、反対側が却って痛くなったりすることがあります。それを避けようとすれば、両脚を同時に、痛い側だけ少し大きめにやればよい。

ただし、あまり何度も繰り返さないこと。何度もやると、変なところを傷めますから、要注意。なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとし。

以上ですが、これでは少しわかりにくいという方は、朱鯨亭の教室に出かけてください。詳しく実演してみせますから。

1047 肘痛・腕と鎖骨の関係

第1047号  ’18年7月22日
▼ 肘痛・腕と鎖骨の関係

肘の痛みは、簡単に見えますが、複雑な場合もあるという例。

このメールマガジンに登場いただくのは、何度目か、珍しい症状が現れている場合が多いので、過去にも何度かご登場願ったことのある50代の男性Sさん。

機械の操作をして居られるので、普通にはない複雑な症状で、いつも頭をひねることになります。

痛みがある時、その原因が周辺の筋肉の緊張にあると考えて取り組むと、どうもうまく行かないという場合は往々にしてあるものです。

原因の一部は遠く離れたところにあることが多い、と考えた方がいい。

肘が痛むという訴え。前回もそう言って来られて、一か月後に改善していないということです。

肘といえども侮れないですね。

腕の異常の出発点として、前腕から始めるのは定石通り。

確かに、前腕が緩んでくると、腕全体が楽になります。しかし、まだ完全にはとれていないらしい。

次の定石は何か。

手に異常があるとき、胸鎖関節に異常がある場合が多い、ということです。

例えば、指が動かなくなっている人で、胸鎖関節を調整すると、ただちに動くようになった例がありました。そんな困難な症例でなくとも、指の動きが悪い人は、胸鎖関節を調整すればよい。

どうするのか。難しいことは何もなく、胸鎖関節の飛び出しを三本の指でつまんで、じっとしているだけでいいのです。

これで肘の痛みが少し軽くなった。

次は何をすればよいか。胸鎖関節が硬くなっているのですから、その一端に連なる鎖骨を緩めればよい。

つまりは地獄の整体、失礼、極楽の整体ですね。そう言われれば、朱鯨亭の講座を受けた人なら、ご存知、極楽整体をしてあげればよい、と考えました。

これは鎖骨の後ろに指を差し入れて、腕を大きく回す方法です。非常に痛がる人が多いので、俗称、地獄の整体、しかしその後の解放感を思えば、極楽の整体というべきです。

これで、ほとんど肘の痛みが消えたようです。

というわけで、手指の動きが悪い場合、肘の痛みが簡単に消えない場合など、腕の不調があると、原因の一端は鎖骨周辺にあることが多い。リュウマチのような場合でも、鎖骨で指の動きが少し軽快することも、今日、別の方で確認しました。

1043 春風体操

第1043号  ’18年6月27日
▼ 春風体操

「春風体操」というものを考えました。もちろん、こんな名前でネットを検索しても、何も出てきません。以前に「春風操法」というものを考案しましたが、その体操バージョンとでもいうべきものです。

では「春風操法」というのは何か。これは数年前にからだほぐし教室で行ったもので、その時、気持ちの良い春風が吹いていたので、そう呼んでみたというだけです。

この「春風操法」も一部に含んでいますが、一応は別物。それでは説明して参ります。

注意:首は回さないこと。

まず仰臥。一番の体操。踵を支点にして足首を左右に動かし(回旋)します。10回。(左1回、右1回と数えて、以下同様)

次、二番の体操。踵を少し手前に引いて、膝を立て、足首を左右に動かし(回旋)します。10回。

三番。膝を高く上げ、左右に倒します。無理に床に付けなくて結構です。10回。

四番。膝を立て、脚を十分引いて左右に倒す。10回。

五番。膝抱えをして、腰を左右に動かす。10回。痛みの出る人については、後述。

六番。以下、正坐して行う。腰骨のところに手を当てて、腰を左右に回転させる。10回。

七番。以下、正坐で行うのは同じ。手の位置を少しずつ上げて行きます。まずは肋骨の下辺あたり。

八番~十番。手の位置を肋骨の真ん中、胸のあたり、上胸部、とすすめる。

十一番。手の平を脇の前に当てて、同様に回転。

以上で体操は終わり。次に春風操法に移る。手の平の両外側、小指の先から始め、手首のところまでなでおろす。

このまま上向きに仰臥。十一分間静臥する。正中線がまっすぐ通るように注意。

これでおしまい。終わったら立位前屈をしてみると、かなり改善していることが分かる。

(五番で痛みの出る人は、骨盤が真ん中にない、またはこれまでしばしば横すわりをしてきた、などの人ですから、横すわりや脚組を止めれば痛みがでなくなるはずです)。教室に来ていただければ、その他の対策をお知らせします。

  * *

文章だけでは分かりにくいという人は、朱鯨亭に来てください。からだほぐし教室、セルフ整体教室など、皆で一緒にやります。

立位前屈だけでなく、その他の動きも、それぞれ改善しているでしょう。例えば首の動き。

要するに背中の動き、硬さの改善体操です。十一分静臥するのが大切。これによって、体操の結果が安定する。背中の硬さ、肩のこりなど感じている人は、整体院・マッサージなどに通う必要がなくなります。全部やっても20分程度で終わるでしょう。どこかへ行く手間も省ける。お金も一切かかりません。

不眠の方は、これをした後、そのまま寝てしまってもよろしい。よく眠れるようになっているはずです。血圧も少しずつ下がって行くことでしょう。

今後は、これでは解決しない人だけ朱鯨亭に通ってください。普段からこれをやって下されば、そのほかの問題も解決しやすくなると思います。

1008 バスタオル枕

第1008号  2017年12月15日
▼ バスタオル枕

どんな枕がいいかと迷っている人が多いように見受けられます。デパートや寝具専門店で枕を探すと、高値がついていて買うのを躊躇する人が多いかもしれません。私もその一人でした。

私自身はこれまで枕をしないのがいいと考えて、それを実践してきましたけれど、枕で困っている人を見るにつけ、そうも言っておれなくなってきました。

どんな枕がいいか、これが決定版という提案はありませんが、私自身が試してみて、これなら「まずまず」というものをご紹介しようと思います。

ただし、これは万人向きの枕というわけではないので、お間違えのないように願います。仰向け寝がよいという人向きです。

ちかごろ、「最高の枕」などと宣伝するものを何種か、見掛けました。それらに共通するのは何か。中心部が凹んでいることです。

つまり、中心部では仰向けに寝る。両側の盛り上がり部分では、横向けに寝る、という機能分化が考えられています。

これを試してみようと考えたわけです。といっても、高い材料を使って高いお金がかかるものは避けたい。収入の格差が議論される時代ですから、誰でも使えるものにしたい。

そこで、次のようにしてみました。

バスタオルを1枚用意してください。材料はこれだけです。

まずバスタオルを縦に(縦方向の中心線に沿って)二つ折りにします。細長い帯状のものになりますね。

次に、その両端を中心部に向かってクルクルと巻いて行く。中心部は巻かないでそのままにしておきます。

これを裏返しにすると、両側の渦巻き状の部分と、中央の帯で繋がった部分から成る左右対称の形になります。これを裏返すと出来上がりです。

この中心部分に自分の頭を載せると枕になります。タオルそのものですから、汚れればすぐに洗濯できます。こんな便利な枕は他にありません。

ただし、これは仰向け寝の人専用ですから、横向きでないと寝れないという人には向きません。

寝返りが打てないわけではありませんが、仰向けが主になるのは間違いないので、寝返りを打たないと身体に悪いと信じている人は使わないように。

私は横向けで寝るのが苦手で、横向けになると、何だか苦しくてたまりません。ですから、この枕がぴったりというわけ。これは何々の体癖だという詮索は好きな人に任せておきます。

横向けになると、夜中に腕や肩が痛くて、という人にも使っていただけるはずです。

枕はある程度の高さがないと物足りない、という人は、大判のバスタオルを使うなり、4ツ折から始めるなり、3ツ折りから始めるなり、自分に合ったものを工夫してください。

何しろ、バスタオルを折り曲げただけのものですから、どんな形にでもできます。お好みに合わせて、あなたの枕を作ってみてください。

枕で困っている人が多いので、考えてみた次第です。別にこれが枕の決定版と主張するつもりはありませんので、念のため。

試してみられた方は、この枕は良かった、とか、この枕はアカンとか、何か感想をいただけると幸いです。

1001 首こりからの逃走

第1001号 2017年11月16日
▼ 首こりからの逃走

[第997号] で書いたように、首こり状態の人が大幅に増えています。

色々な要因があると想像できますが、何が原因でそうなっているかはともかく、それから逃走する簡単な方法を書いておかないと、苦しむ人が増えてくることでしょう。

大方の人がPCやタブレットなどに一日向かっているような異常状態の中では、今後も増え続けると考えて置かなければ、なりません。

あなたの首の右側が凝っていると仮定しましょう。

あなたの右手の中指を見てください。これはあなたの首の右側と対応しています。そこで、右手中指の第2関節の外側(薬指側)をさっと指先方向に撫でます。1センチほどの長さでOK。

さて、首を回してみてください。右をみると、いままであった、痛みや違和感が大幅に軽減しているはずです。

(首を回すというと、首を色んな方向にランダムに回す人が多いですが、そうではなく、痛みや違和感のある側へ水平に回す、あるいは反対側へ水平に回すという意味)です。

これなら、PC作業中に痛くなってきたような時にも、自分でさっと対応できるでしょう。もちろん、これは「根本療法」ではなく、「対症療法」に過ぎませんが、とりあえず、膏薬をはるようなことをするよりは、ずっとマシでしょう。

この程度では満足できないという向きは、朱鯨亭にお越しください。他にも色々な方法がありますので、お教えします。

1000 胸肋関節

第1000号 2017年11月5日
▼ 胸肋関節

本号は第1000号。我ながら呆(あき)れるほどのしつこさというか、よくもこれだけという感じです。第0号は、2006年1月でした。

そこで1000号記念に、今回は出血大サービス。この操法で助かる人がずいぶんいるはずです。

胸骨という骨は説明が必要でしょうか。胸の真ん中にある骨。両側に肋骨がくっついています。ここも骨のつなぎ目であるかぎり、やはり関節で、胸肋(きょうろく)関節と呼ばれます。

で、この関節に不具合のある人が、実は多いらしい。特に猫背傾向になっている人、四十肩の人、五十肩の人ではここんところに不具合を持っている人が多いように思われます。

もちろん六十肩とか、七十肩という人(そういう人がいるとして)も同じことです。先日は、私は八十肩だ、といばっていた人がいました。

肋骨は複数ありますから、胸肋関節は一つだけではありません。肋骨は詳しく見れば12本ありますので、胸肋関節も12あるのか、といえば、そうではなく、下の方の肋骨はまとめて癒合していますので、実際は6つ~7つほど。

区別する必要があれば、右1番の胸肋関節、左3番の胸肋関節、などと呼べばよろしい。あるいは右第1胸肋関節、左第3胸肋関節などと呼べばいいでしょう。

ちなみに、第1番は鎖骨のすぐ下にありますので、間違えないように。

で不具合があると、どのような症状が出るか。胸肋関節のところに圧痛が発生するわけです。ご自分で押さえてみれば分かります。

肋骨という骨は、鳥かごのように胸郭を取り巻いていますから、前にずれがあれば、当然うしろにもずれがあるはずで、背骨の胸椎にも異常があって、それが猫背を形成しています。

このような圧痛が出ている場合、どうすれば解消できるのか。カンタンです。

まず、あなたの掌(てのひら)をみてください。その真中、やや凹んでいるあたり。左手の掌心(てのひらの中央)に右手の人差し指の指先をおいて、中指の付け根に向けてサッとまっすぐに撫でてください。それだけです。1度でダメなら、何度か繰り返せばよろしい。

両手とも同様にやってください。うまく行けば胸肋関節の圧痛がすべて解消するはずです。なぜか。ここが胸骨の共鳴点だからです。

うまく行かなかった場合は、どうするか。別の方法がありますが、強くやると別の問題が出る場合がありますので、うまく行かない人は、朱鯨亭まで足をお運びください。

さて、五十肩で苦しんでいるあなた。今日から、これで少し楽になるはずです。完全に楽になるには、どうすればいいか、とお尋ねでしょうか。

五十肩という症状は全身症状ですから、一箇所を変化させれば解決するというほど単純ではありません。例えば足からも引っ張られています。もちろん腕からも。それを一つ一つ解決して行くことが必要です。

ただ一発解法もありそうです。そのアイデアは今あたためているところですので、いずれ2000号記念くらいで発表することにいたしましょうか。1000号まで12年かかっていますから、あと12年待っていただくことが必要かもしれません。

997 首が凝る、あるいは首こり

第997号 2017年10月26日
▼ 首が凝る、あるいは首こり

ちかごろ「肩が凝る」といわず、「首が凝る」と表現する人が増えているように、私は感じています。

肩が凝るというより、首のきわが凝っていて、首を左右に回旋させようとしたり、首を横に傾けようとすると、突っ張るという症状を「首が凝る」と表現しているのでしょう。

これも肩こりの一種には違いないが、わざわざ首が凝ると表現するには、それなりの理由もありそうです。このことを少し考え、解決法を提示してみたいと思います。

原因の主なものは、やはりPCとスマホでしょう。私自身も少し首凝りの気味があって、PCの作業を続けていると、症状が強く出ます。

このような症状を福富章さんという方が「パソコン・スマホ症候群」と呼んでいます。

福富章 『指ではじくだけで肩の痛みが治る!』
自由国民社、2015年、1300円+税

この本は、筋肉の筋腹(太いところ)ではなく、腱(*注1)の重要性を強調している点で、参考になる内容を備えていますが、論点が十分に整理されておらず分かりにくい点があるのが残念。

この本の表現を使えば、「等尺性収縮」(*注2)が問題だということになります。

ここでは、この福富さんの方法ではない別の方法で、首こりを解決してみたい。

首こりの症状をかかえている人を観察してみると、左右の腕が硬くなって、頚椎7番(*注3)、胸椎1番あたりが左右どちらかに引っ張られていることが多い。このあたりの椎骨は、左右の腕からの張力のバランスの上に成り立っているからです。

左右両腕のバランスが崩れていると、このあたりの骨がどちらかにずれてしまうわけで、野口晴哉のような名人さえ、自分の背骨もこの辺りが崩れているとどこかに書いています。

たいていの人は、左右どちらかの腕を逆側より頻繁に使いますから、頻繁に使う方の腕が硬くなっているとしても不思議ではありません。

ということは、左右両腕のバランスを回復させたら、頚椎7番あたりのバランスが回復して、この辺りの違和感が消失するのではないか。そう考えると、解決策が見えてくるでしょう。

腕の張力(*注4)でおそらく一番強いのは、前腕部の二本の骨(橈骨と尺骨)(*注5)の開きのために生まれている張力です。ですから、この前腕の開きを締めさせたら、左右バランスが回復するのではないだろうか。

そこで、よく使う方の腕を前に突き出して、寝床体操の5番(*注6)をすればよいことになります。

事実、やってみますと、確かに楽になる。よく使う方だけでなく、反対側もやってみると、更に楽になりますね。

(*注1)腱 筋肉の両端は骨に付着しているが、そのため両端は細くなっている。この細くなった両端のやや硬い部分を「腱(けん)」と呼ぶ。

(*注2)等尺性緊張 関節を動かさず、筋肉の長さを変えずに筋肉の張力を高めるような収縮。マウスを持って同じ角度を保持している時のような筋肉の働き。

(*注3)頚椎7番 第7頚椎と呼んでもよい。7個ある頚椎(首の骨)の一番下の骨。このすぐ下に「大椎(だいつい)」というツボがある。その下の椎骨が胸椎1番。

(*注4)張力 人間の身体には、重力が働いている。腕には腕の重みが掛かっているし、
脚には脚の重みが掛かっている。従って、何か痛みなどがある時、その原因は、こうした下からの重みが一役かっているのではないか、と考えるのが筋道である。しかしこのようなことを指摘している人は少ないようである。人体の状態を観察する時の要点の一つは、この原則を考えること。

(*注5)橈骨と尺骨 ひじから手首までの前腕部には、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という二本の骨がある。この二本の骨は前腕部の作業が続くと、次第にその間隔を開いて行く。その結果、この部分が硬くなっている人が多い。これも張力の一つの原因となっている。

(*注6)寝床体操の5番 goo.gl/9N8Mgr にやり方の説明がある。

983 末端に注目(2)

第983号 2017年7月29日
▼ 末端に注目(2)

「末端に注目」の第2回です。症状のある場所そのものをいくら触ってみても、うまく行かない時、その末端にあたるところに注目すればうまく行くことがある、という原則です。

ご承知の通り、私は夏休みでいま操法を休んでおりますので、記憶を頼りに書きます。細部は少し実際と違っているかもしれません。中年の女性を仮にAさんとしておきます。

Aさんは、肩に痛みがあると、来られた方です。肩こりをとおり越して、肩が痛いという方も実に多いですね。ひどくなると、腕が動かないということになります。

肩に何か問題があるのかと尋ねてみると、レントゲンを撮ってもらったが、骨はなんともないそうです、といった答えが返ってきます。肩を打って骨折をしているなら、夜間もシクシク痛むという理由が分かりますが、そうではありません。

そうなると、肩にシクシク痛む箇所があるのは確かですが、なぜ痛みが出るのか、その原因が分からないわけです。

こんな時、私は「末端に注目」します。肩から見て末端とはどこか。いうまでもないと思いますが、手指が末端です。時に途中の肘や手首に原因が潜んでいることがないとは言いませんが、大抵は手指に問題があります。

Aさんに尋ねてみました。

── お若い頃、中学生、高校生の時代に指を傷めたことはありませんか?
── あります。あります。突き指を何度もしていました。
── そうですか。バレーボール、バスケット?
── ソフトボールです。
── なるほど。それで分かりました。

といいながら、Aさんの手指を見ると、第2関節がどれもこれも節くれだっています。突き指はどういうわけか第2関節に多いものです。

手指を曲げてみると、第2関節がもっともよく曲がるはずです。第1関節・第3関節はさほどではない。ということは、ここがダメージを受けやすいということになりますね。

ですから、突き指を調べる時は第2関節を調べるといい、と思います。第2関節を握ってみて、かなり硬く節くれだっている感じを受けたら、まず突き指と考えて間違っていません。

いまは、そこに異常を感じていないかもしれません。しかし、そこに突き指の痕跡が残っていることが多い。体の他の部分ですと、打撲痕が問題になりますが、指の関節は曲がる構造ですから、突き指の痕跡を残していることが多いわけです。

実際に硬くなっている関節を解剖してみたわけではないので、推測ですが、第2関節の周辺の組織にカルシウムなどが沈着して硬くなっているのだろうと思います。指節間の靭帯などが硬化して、関節と関節のあいだに圧痛を感じる場合もあります。

さて突き指の直し方ですが、誇張法が最適です。突き指になったら、すぐひっぱれ、などと言われますが、そんなことをしたら、よくなるものも、逆に悪くしてしまいます。人間の体は、外力に抵抗する習性があって、引っ張ると、縮もうとする。押し縮めようとすると、逆に伸びようとするわけです。

ですから、突き指があれば、(仮に数十年前の故障であっても)その関節を軽く押し縮める方向でじっと押さえて(といっても愉気の感覚でよろしい、強く押すと失敗します)いればよい。すると、関節がもとに戻ろうとします。

比較的新しい突き指であれば、そのようにじっとしていると、骨が勝手に動いたと感じる瞬間がやってきます。(それは操者も受け手も同じように感じます)それでOKです。それ以上、押える必要はありません。古い突き指では、そう行かない時もあります。直ったと感じる瞬間がない時もあります。

Aさんの場合は古すぎて、いずれも動く感じがありませんでした。そこで、このくらいの感じかな、とカンで終わったのですが、第2関節を動かしてもらうと、何れも動きが改善していました。

すると、肩の痛みがずいぶん軽くなったようです。かなり自由に腕を動かせるように変化していました。

というわけで、肩の問題が突き指を直すことで解決したわけです。突き指かどうかを判断するカンタンな方法があるのか。と尋ねられると、当該の関節を突く方向に動かしてみることです。突く方向と、ひっぱる方向に軽く動かしてみて、突く方向が行きやすければ、突き指の可能性が高いことになります。

そんな面倒なことを一つ一つやってられないと感じるならば、ともかく第2関節を拇指と示指とで挟んでみて、硬い節くれだった、盛り上がった感じがするかどうか調べてみてください。そうすると、ほぼ突き指かどうか判別できることでしょう。

足の指についても同様な方法が使えることがあります。

前回は膝の痛みの原因が踵にあった、という話でしたが、今回は肩の痛みの原因が手指にあった、という話で、いずれにせよ、「末端に注目」という原則がそこに潜んでいました。

977 ツボをきつく押されすぎて

第977号 2017年6月23日
▼ ツボをきつく押されすぎて

からだほぐし教室の常連のひとりMさん。左の肩が異常に痛いという。肩が痛いだけでなく、上腕にも痛みや違和感が広がっているらしい。

教室が始まる前に、色々やってみたものの、いまいちよくならない。そこで教室終了後に空き枠があったので、そこに入ってもらいました。

心当たる原因について話合っている内に、次のような話が出てきました。

先日、某足ツボの講座に参加したそうです。そこまではよかったが、その指導者にツボを必要以上に強く押されたという。それも足のツボではなく、手のツボ、拇指と示指(人差し指)の谷間にある、よく知られたツボ、「合谷」(ごうこく)を思い切り押されたらしい。

痛いのを通り越して、思い切りしびれるほど押された。それも一度でなく、何度も強圧されたという話です。それ以来、肩の調子が悪いように感じるという。

もちろん、こんな話を聞けば、誰でも何かおかしいと思うことでしょう。ツボを押すという方法は、確かにありますが、そんなに思い切りしびれるほど押すなどという激しい方法は聞いたことがない。どんな方法を使うにせよ、まずは気持ちがいい程度というのが原則です。

押されたことも原因の一つかもしれないと考えて、指を触ってみると、示指の基節骨や中手骨が異常に硬くなっています。この辺りが硬くなっていることはよくあることで、珍しくありませんが、それにしても、ここだけ異常に硬い。

「合谷」というツボは、普通、拇指と示指の谷間というふうに説明されていることが多いものですが、ツボの専門書の記述をみると、示指側の中手骨の付け根くらいの位置で、どちらかといえば、示指寄りの位置です。

だからこの指導者が合谷の位置を正確に採っていることは間違いない、としても、あまりに強い押さえ方をしてしまうと、打撲を受けたのと同じことになってしまう。何か硬いもので叩かれたほどの損傷を受けていると感じられます。ひどいことをやったものです。

このように拇指・示指のあたりに損傷を受けている場合、以前にメルマガでも取り上げた「小菱形骨点」(拇指の付け根にあたる金星丘のねもと)が一つのポイントになります。

肩の状態から考えて、掌側だけでなく、甲側にも問題があるように感じられたので、「小菱形骨点」と、その裏側にあたる点(大菱形骨の裏側、皇帝の嗅ぎタバコ入れの辺り)を軽く押さえて愉気しました。

いつも「小菱形骨点」を愉気すると感じるのは、ここがよく気の通るポイントであるということです。鍼灸のツボとしては登録されていない点ですが、そういうツボの一つに入れてほしいくらいよく効く。

手の拇指側から、肩まで続く拘縮の繋がり(普通スジと呼ばれるもの)が解消するとよいのですが、それがなかなか簡単には行かない。肘の捻れがあるからです。

この問題については、永くなるので稿を改めて書くとして、肘の捻れが解消すると、肩がよくなってきました。

というわけで、押されて青タンができるほど押すようなところは避けることです。そこに拘縮ができて、打撲を受けたのと同じ結果になります。あな恐ろしや、強いツボ押し。

934 小菱形骨点 16/12/12 

前号で小菱形骨(しょうりょうけいこつ)について書いたところ、そんな話は聞いたことがない、というお便りをいただきました。

確かに、小菱形骨にいついて本誌上で書いたことはなかったと思います。自分で書いたように思い込んでいたのでしょう。

そこで、今回は小菱形骨点について。

小菱形骨という骨はどこにあるか。手の付け根、つまり手根部です。詳しく言うと、示指(じし、人差し指)の付け根。「手の骨」で画像検索してご覧ください。

「ペンフィールドの図」というものをご覧になったことがあるでしょう。ペンフィールドというカナダの神経学者が描いた図で、例えば次のところにあります。変な形の小人を使って表示することから、「ホムンクルスの図」と呼ばれることもあります。ホムンクルスとは小人の名前です。

http://www.gokkuncho.sakura.ne.jp/sector06/20051223.html

これを見ると、拇指(親指)と示指とが神経の働きとしては大きいことがわかります。実際によく使うのも拇指と示指ですね。よく使う指が緊張しやすいというのも理解しやすいことで、拇指と示指の付け根は緊張しやすいところであるようです。

逆に言えば、示指の付け根にある小菱形骨の周辺はコリの発生しやすいところです。ここのコリが肩の緊張とつながっていることに気づいたので、小菱形骨の付け根の手の平側のポイントを【小菱形骨点】と名付けました。

ここは、大抵の人が圧痛を感じる点なので、解りやすい点だろうと思います。示指のラインを手前に伸ばして、手首のラインと交差するあたりの少し上です。拇指の付け根のふくらみ=金星丘の下端あたりといえばいいでしょうか。

肩の前が、前に飛び出している人が多いですね。その飛び出している箇所を押さえてみてください。硬くて、前に飛び出していることがわかります。

これを【前肩点】と呼んでおきます。そこの感触をつかんでおいて、次に【小菱形骨点】に反対手の指を当てて、しばらくジッと愉気をしてください。

すると、さきほど調べた前肩点が緩んでいることが分かるでしょう。これは薬指の付け根(第3関節)のポイントを使っても同じようにできますけれど、薬指の第3関節より、【小菱形骨点】を使った方が効率的に緩みます。

これは、示指や拇指の付け根が肩と密接に結びついていることを示しているわけで、肩の問題を抱えている人は、示指や拇指を緩めることに利点があることを示しています。

【肩の問題を抱えている人は、示指や拇指を緩めるとよい】。

一昨日のセルフ整体教室でも、むかし中指を傷めた経験のある人の中指をジッと握っていると、肩が緩んできました。つまり難しいことをしないでも、示指や拇指を握ってジッとしていると、それだけで肩が緩んでくる可能性があるということです。

そうした中でも特に【小菱形骨点】はよく効果があがる点だと言っておきましょう。

 

933 基本を守る 16/12/9

Sさんは40歳代男性、茶畑で働いておられ、以前から月に一度くらい健康管理の意味で通って来てくださっています。

そのSさんが珍しい症状を昨日、訴えて来られました。左肘のすぐ下あたりが痛く、これが手首から来ているような感じ。それだけではなく、そのスジが上腕にも伸びており、左腕全体がだる重い感じで、非常に不快である、と言われます。

こういう症状は決して珍しいものではなく、よく見かけるものですが、Sさんとしては珍しい。そこで、尋ねてみました。

── 何か左手をよく使うような作業をされているんですか。と私。

── いやあ、別に通常どおりですけど。

── 通常どおりというと、今は普通の事務仕事が中心ですか。

── まあ、そうですね。

といったやりとりの後、取り掛かります。腕の場合の手順がありますので、それを順にやって行きます。

1) 前腕の親指がわにある橈骨を上げる。

2) 寝床体操の5番、つまり前腕の二本の骨を締める操作をする。

3) 下橈尺関節の引っかかりを改善する。

4) 肘の内側、内側上顆と肘頭のあいだの窪みを押してみる。

5) そこに少し痛みがあるので、外側から愉気をする。

6) 小菱形骨のところを愉気して、肩の前を緩める。

7) 腕全体を引っ張りつつ、左側から前に回転させ、肩の前部の脱出を修正する。

・・・というような操法の手順で、少しはよくなったようですが、決定的ではない。何かが足りないようです。

── 左手で何をされたんですか。

── 別に何も・・・。

── 何もせずに、こんな風になるわけないですよ。

── うーん。

ひょっとして左手の親指が硬いのではないか、と考えて、Sさんの親指を触ってみますと、IP関節(親指の先の方の関節)とMP関節(親指の付け根の関節)の間が、どうも硬い。

そうか。これか。さっそくそこをじっと握って愉気をします。異常に硬いというほどではないものの、通常の状態ではない。これを見落としたのがいけなかった。

腕の問題がある時は、親指をよく調べるのは、「基本のキ」であったはずだ。しばらく愉気を続け、これでどうですか、と尋ねると、

── あ、よくなりました、という答え。

── これは、必ず親指を使っていますよ。

── あーそうか。お茶を刈る機械があってね、その機械を動作させるレバーを親指でじっと押さえていたんです。

── なるほど。それですね。

── それが、かなり強い力で押える必要があるんです。

── 腕が悪い時は、親指を調べるのが基本なんですが、それを抜かしていました。

── いつもやっていることなんで、あれが悪かったとは、思いませんでした。

というやりとりの後、その機械の写真をみせてもらうと、かなり大掛かりな機械です。 Sさんが操作されていたのと同じ機械かどうか、定かではありませんが、例えば、次の写真

http://www.kawasaki-kiko.co.jp/chaen/pdf/KJ2.pdf

機械の運転台の横についているレバーを押し続けると、お茶の木を刈って行くことができるそうで、「茶刈機」というそうです。

ここまで来て、私の反省点は、基本に忠実ということ。私自身も時々操法テキストを読んで勉強しています。「いいことが書いてあるなあ」と自画自賛で感心しながら。

この場合は、「腕を見る時は、まず親指から」──これです。

これを忘れて遠回りをしてしまいました。でも、これはテキストに書いてなかったな。

筋肉が収縮するのに、「等尺性収縮」というのがあり、これは筋肉の長さが変わらず、力だけがかかるタイプの収縮です。

レバーを同じ位置で押し続けるような動作が、これに当たります。スマホをじっと持っているのも同じことで、筋肉の長さが変化する「等張性収縮」に較べて疲労が少ないわけではないようです。

スマホやタブレットをジッと持っていると腕が疲れてきませんか。どこの筋肉を使っているか、感じてみてください。スマホの場合は、親指を使って文字を打つという動作が加わりますから、さらに疲れがひどいかもしれません。

腕がだるい、腕が痛い、というような症状が出た時は、親指に注意です。筋肉が硬くなっている場所を探して、そこに愉気(反対側の手指を当てて)をしてください。

 

908 肩痛のカンタン操法

2016年8月1日

肩を傷めている人が多い。寝ている間に疼くので、眠れない、というような訴えをよく聞きます。そこで。

もちろん、来ていただいて、すべて解決すれば、それに越したことはないが、なかなかそうも行かない場合、慢性化している場合がありますから、そんな時は、自己操法をしていただくことになります。

とはいえ、複雑な操法をお教えしても、覚えていただけないことが多い。そこで、カンタンで効果の高い方法を案出しなければなりません。

考えたのは、肘のカンタン操法の肩バージョンを作ればどうか、ということです。

つまり、こういう方法です。

まず右手で左の肩をつかむ(左利きの人は左右逆)。肩と言っても、肩先よりも、その下(三角筋のあたりでよい)をつかむ。次に、左手で右の肩をつかむ(左利きの人は左右逆)。そのまま数分のあいだ、じっとしている。以上です。

なぜ右手で左肩をつかむ方を先にするのか。それは右利きの人は、右肩が前に来ている人が多く、それを修正するのに、左肩が前に来る方が望ましいからです。

ですから、この操法をしばらく続けると、胸椎上部の捻れがとれてくる可能性もあります。そのためには、テレビでも見ながら、じっと十分でも、する方が効果が高いかもしれません。お試しください。

ただし、坐り方が悪いと、かえって逆効果ですから、横坐り状態などでは、決してしないように願います。正坐か椅子坐がよろしい。脚を組んではいけません。

お断りしておきますが、これですべての肩痛が解決すると、大げさなことを言うつもりはありません。肩痛を解決するためには、いつも申している通り、手の捻れなどを解決する必要があることを申し添えます。

905 枕は是か非か

第905号 2016年7月12日
▼ 枕は是か非か

50歳代の男性Tさん。大阪市内にお住まいだそうです。その方の訴えは

──自分は昔から枕なしで寝ていた。それでまったく問題がなかった。ところが先日、目まいを起こした。調べてみると 「良性発作性頭位目まい症」 という種類らしい。ネットで色々と調べてみると、枕をした方がいいという記事をみつけた。

そこで、しばらく低めの枕をして寝ていたが、朝起きるときに、頸椎や胸椎がボキっと鳴って、不気味な感じがする。まして 『首や腰をボキボキ鳴らすと早死にします』 という本を読んで、いっそう怖くなった。何とかならないか。

厄介な話です。私自身も常に枕なしで寝ていて、たまに枕をすると、同じようなことがあるので、他人事だと思えません。そこで、枕を使わずに横になってもらい、十数分ほど寝ていただきました。その間に春風操法をしましたので、その効果があったかもしれませんが、いずれにしても、起き上がってもらうと、ボキボキという音がしませんでした。目まいも起きなかった。

[春風操法とは、寝る前に両手の外側(小指側)を小指の先端から始めて、手首まで、撫でおろす。そうして仰臥する。11分ほど寝てもらうという方法。こうして寝ているだけで全身がかなり整う場合があります]

これをどう考えたらいいのか。枕をすると、顎を引いた状態で寝るので、のどが詰まることがない、というのが枕必要論の論拠になっています。しかし、いつもそうだとは限りません。私自身は、枕なしで寝たからといって、呼吸が苦しくなるようなことはありませんし、軽い呼吸音を立てているようですが、ひどい鼾をかくこともありません。

むしろ、枕をすると、枕の高さだけ、背中が猫背状態で寝ているわけで、そのことの方が嫌な感じです。毎日、猫背になる練習をして寝ているようで、気持ちがよくありません。

枕をして寝てみて、そのあと起き上がると、猫背になっている背中が無理に引き伸ばされるような感覚があって、その時にボキっと鳴る感じがします。

ただ、横向きに寝るという人にとっては、横向きになったとき枕がないと困るというのはある気がします。だとすれば、首の後ろを支える程度の枕を、タオルで作ればいい。

具体的に書いてみましょう。まず、一枚のタオル。これはバスタオルでなく、普通のタオル、これを下に敷く。これはシーツが汚れるのを防ぐ意味だけです。その上に、バスタオルを縦に長くグルグル巻いたものを置きます。これを首の後ろにあてがう。

昔、木枕というものがありました。西式医学というグループが使っていたものです。探してみると、今でも販売されているようです。私自身は試していませんので、お勧めというわけではありませんが、試してみてもいいか、とは思います。(時代劇に出てくる、武士がしているような高い枕とはまったく違うものです)

いずれにしても、Tさんにとって、枕をするかどうかは、死活問題になっていた、枕をすると、目まいが起こらないという、あやふやな情報を信じたがために、困っていたわけですが、枕をしなかったというだけで、解決したということです。

目まいはどうすれば、いいのか。YouTube に 「試してがってん」 の動画がありますので、それを試してみてください。BPPV(良性発作性頭位めまい症)の直し方が見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=qPP_m0_FnpA

さまざまな「健康情報」のあり方について、言いたいこともありますが、それに関しては、いずれまた。

888 鎖骨になぜ左右差があるのか

第888 2016年4月1日
▼ 鎖骨になぜ左右差があるのか

鎖骨は人体の中で、左右対称になっている典型的な場所として、捉えている人が多いのではないでしょうか。確かに水着姿の女性の鎖骨など美しいと感じる人もいるでしょう。

ところが、よく調べてみると、さほどでもないことが分かります。見かけ上、左右が対称であるように見えても、胸鎖関節を押さえてみると、圧痛を訴える人が多い。

さらに鎖骨の部分をはだけて、よくよくみると、胸鎖関節の位置が左右で違っていることも多い。

【胸鎖関節とは、喉の下にグリグリが二つありますね。それです。胸の中央にある胸骨と、鎖骨のつなぎ目なので、胸鎖関節と呼ばれている】

先日、私自身の胸鎖関節が左右でえらく違って来ていることに気づきました。触って見なくても、関節のところに違和感があります。

同時に、背中の胸椎のどこかが痛む。えらいことになって来たと思って、どうしようどうしようと少し焦りぎみになった。胸椎を通常の方法で整えてみても、痛みが変わりません。

その前日のこと。『共鳴法教本』を使って講義をしていたので、そこに胸鎖関節の直し方が書いてあったのを思い出しました。書いた本人が自分で読んで役に立つこともある。

【『共鳴法教本』についてはHP参照。→http://shugeitei.com/stext.html

鎖骨と対応する場所は普通に考えれば中指の付け根、手のひら側ということになります。確かにそのあたりでも効果が出る場合もありますが、そこより中指の第二関節の横紋のところ(つまり手の平側)、をクルッと撫でると良い。

なぜ、こんな場所が鎖骨と対応しているのか。それは頚椎、胸椎の関係から考えれば、ここの場所が頚椎・胸椎のつなぎ目の裏側にあたるからでしょう。

で、この操法をやってみました。すると、驚いたことに、鎖骨が正常になっただけでなく、背中の痛みも消えてしまった。今に至るまで痛みが出ていません。

共鳴法の操法には強い効果の出るものが色々ありますが、これほどの操法は私の記憶の限りでは初めてです。

以上の経験を総括してみると、鎖骨の左右差は、胸椎の歪みと連結していることが分かる。つまり胸椎のどこかがゆがんで、それに伴って鎖骨の左右差が出てくるわけです。考えてみれば、当然のことですが、当然のことも経験してみないと、なかなか分からないものです。

言い換えると、あなたの左右の胸鎖関節のどちらかに圧痛があれば、あなたの胸椎のどこかが歪んでいるといえる。それが中指の横紋をクルクルっと撫でただけで解決するといえるわけです。

からだほぐし教室で、この操法をやってみた時に、Fさんが、クルクルと撫でた瞬間、頭にピキッと来た、とおっしゃっていました。

これは想像ですが、鎖骨のような横長の骨は互いに連動することがあるらしい。横長の骨とは何か。足の舟状骨、膝の半月板、鎖骨、そして頭の中の蝶形骨です。これらは連動することがあるらしい。

ですから、中指の横紋をクルクルっと撫でる操法で、実は蝶形骨も整ってしまう可能性があるだろうと思います。

昨日、緑内障の方の足首を整えたところ、目が楽になったとおっしゃっていましたが、これは舟状骨が整ったために、蝶形骨が動いた結果かもしれません。

横長の骨が互いにどのように連なっているかは、興味深い研究課題です。と同時に、足を整えることによる効果が、どこまであるか、これも深い研究課題だと思っています。【これについては、いずれまた書きたいですね】

人体の不思議は尽きることがありません。

883 首こりをとる方法

第883号 2016年2月21日
▼ 首こりを取る方法

メルマガ [第799号]  で 「マップの効用」 というテーマを取り上げています。首の横にある筋肉 「斜角筋群」 について、その緩め方を取り上げたものです。

斜角筋群と総称される筋肉 「前斜角筋」 「中斜角筋」 「後斜角筋」 は、いずれも頚椎の横突起に始まり、肋骨に終わっています。ですから、ここに異常が出ると、頚椎にも異常があるはずです。

先日のお客様(70代女性)は、ここが引っかかった感じで、痛いと言われます。最近、ここが痛いという人が多いと感じています。多分スマホやPCの影響ではないか、首を前傾したまま、ずっと作業を続けることに原因の一つがあるのではないか、と考えられます。もっともこの女性がスマホにうつつを抜かしているとは考えにくいですけれど。

古い言い方なら 「肩こり」 というところですが、古典的な 「肩こり」 とは少しばかり違う感じです。「首こり」 という言い方もできそうですね。

で、799号で書いた方法は、手の中指の第2関節の手の平側の両サイドを指先へ向けて、「斜角筋、緩め」 と思いながら、さっと撫でるという方法でした。

この方法でもいいのですが、ここでは別の方法を試してみましょう。

(ところが図がないと説明しにくいので、『共鳴法教本』 の35ページの図を見ながら試してみてください。お持ちでない方は注文していただく他ありません。注文については、http://shugeitei.com/stext.html からどうぞ。)

図の頚椎6番から2番の各骨について、各ポイントを手首方向へツメサキで弾くようにすると、それぞれの頚椎が整って、斜角筋も楽になります。特にポイントで痛みがあるような場合は、よく効きます。お試しください。

いままで左右に回りにくかった首がスッとうまく回るようになって、気分がよくなること請け合いです。

ただ、余計な注釈をつけておけば、以上の操法は、いわば対症療法です。根本から痛みの原因を取り除いたことにはなりません。根本から頚椎の歪みを解消しようとすれば、背骨を尾骨から順に上に向けて整えて行くことになります。

880 複合症状【3】

第880号 2016年2月1日
▼ 複合症状【3】

【承前】一週間後、Aさんが来られた。「痛くなった」と言われるのではないか、
とこちらはひやひやものですが、開口一番が、こうだった。

──夜中にうずいて眠れないということはなくなりました。

ということは、胸肋関節のズレが解決したということです。

やれやれ。「ホッと胸をなでおろす」というのは、こんな時。ひどい肩の痛みは、肘関節と胸肋関節の二原因による複合症状だったわけです。

こういうことがあるから操法は難しい。ここでも、「なぜ」という質問に答えるのはさらに難しい。なぜ、こんなことになっているのか。二原因のあいだに必然的なつながりがあるのかどうか。これはAさんの生活を詳細に検討してみなければ判明しないでしょう。

でも、なぜ過去の例のように激痛が出ることはなかったのか。おそらく、その人の感受性による違いです。同じ操法であっても、人により時期により、その反応は違います。

一般論として言えば、「正體術」の高橋迪雄が書いているように、比較的柔らかな女性や子どもでは、強い操法を避けなければならない。それに対して頑健な男性や身体の硬い成人では少々強い操法でも大丈夫なことがある。そういうことでしょう。

という次第で、Aさんの場合は強い操法が正解であった、ということになります。しかしこれは事後に言えることで、やはり普通は強い操法を避け、緩やかな操法を採用した方が危険が少ない。

よく整骨院などで、グッと力をかけて押されたので、おかしくなったと言って来る人があります。そういうことは、くれぐれも避けなければなりません。Aさんの場合、いわば結果オーライといえますが、Aさんの身体は頑健なものだったのでしょう。

さて、Aさんの症状はまだすべて解決してはいません。肘と膝が残っています。この先、どうなるか、お知らせするに足る情報が含まれていれば、続きを書いてみたいと思っています。