976 ネムの花咲く頃

第976号 2017年6月22日
▼ ネムの花の咲く頃

我が家の近くのネムの花が今まっ盛りです。ナツツバキ(沙羅)も美しい。ネム(合歓)の花というと、芭蕉の句が有名ですね。

象潟や 雨に西施がねぶの花 芭蕉

というわけで、ネムの花が咲く時期は、雨が似合いますが、関西では昨日久方ぶりの雨が降ただけで、空気が梅雨の時期にしてはまことにさわやかです。クチナシ(梔子)の花も香っていますね。

花がどうのこうのと、整体と何の関係があるんだ、などと言うなかれ。

この前、沖縄の宮古島でセミナーを開きました。そこで見掛けたのは、仏桑華(ハイビスカス)が主でした。花は少ないものの、熱帯性(または亜熱帯性)の植物が多く、空き地を少し放置しておくと、たちまち熱帯林に変化するのではないか、と感じられました。熱帯林と熱帯林の隙間に農地を開いて、サトウキビやパイナップルを植えている様子だったというのが正確だと思います。

つまり人々は、熱帯林の隙間に住んでいる。どうも、これが人々の健康状態と密接に繋がっているのではないかと感じられます。

なぜかといいますと、操法の対象になっていただいた方々に、身体からの毒出しを試みたのですが、一向に効果がない。ほとんど空振りになってしまうのでした。つまり宮古島の方々は、体内にエネルギーの滞り(毒)をほとんど持っておられないように感じたわけです。

植物(特に樹木)が身の回りに豊富にあるかどうか、これが人の身体に深い影響を与えているのではないでしょうか。都市では、身の回りがコンクリートばかりですが、そこに植物(特に樹木)を植え込むのは、決して飾りではない。

植物のエネルギーを分けていただくのは、昔からの知恵ではなかったか。そう思います。私は今朝も5時に起き出して、ケヤキ(欅)の樹に会いにいきました。操法の後に皆様もどうぞ。

974 樹功

第974号 2017年5月24日
▼樹功

「樹功」(じゅこう)という言葉は、ありそうでないようです。ネットで検索しても出てきません。でも、私は毎日これをやっているので、私の中で概念として持っています。

早朝、というか明け方、日が昇る前に起き出して、近くの欅(ケヤキ)の林に行きます。私は公団(UR)のマンションに住んでいまして、その敷地内に大きな欅が十数本茂っている公園があります。戦後間もなくの頃にすでにあったという話しですから、樹齢70年以上。少なくとも私より年寄りです。直径50-60センチほど。かなりの太さ。

この時間帯ですと、誰もいません。広い空間を独り占め状態です。向こうには、高円(たかまど)山が黒黒と見えます。

その内の一本に背中をもたせかけて、しばらくじっと立っています。そして天のかなたから息を吸い、足元の大地に吐きだすという呼吸をします。すると、背骨が暖かく感られるようになってきます。

足元の良さなどから、いつも寄りかかる樹は決まっていまして、近づく時に「おはよう」と声をかけます。

以前は樹に抱きつくというのをやっていましたが、これはどうも見られると照れくさいというか、見ている人のことが気になるのが本当のところで、もたれるスタイルならそういう問題もありません。

左手の平を幹に付けて立つというスタイルもありえます。樹の表面にも樹には樹のオーラがあって、手を付ければ、自分のオーラと共有できるわけです。なぜ左手か、というのは試して見られたらお分かりになるでしょう。

今朝は目を閉じていると、緑の中に黄色い花がたくさん咲いているイメージが浮かんできました。目を閉じた時に誰しも何かのイメージが浮かぶことでしょうが、それが目でみるよりもくっきりと美しい。

こういうのが見えるのは、幻想なんでしょうか。幻想なのかもしれませんが、そんな詮索はどちらでも結構。実にきれいです。もちろん時により浮かぶイメージは違います。

十数分もそうしてから、おしまいにします。自宅に戻ると新鮮なエネルギーを頂いたという感じになります。ひぐらし一日操法をしていますと、一日の終りには、疲れというか、エネルギーが不足してきたなという感じになりますから、新鮮に次の一日を始めるのに、この樹功がぴったりです。操法家の方々だけでなく、エネルギーの不足を感じている人はお試しください。

[追加]    冬の間は、ケヤキのような木は葉っぱを落として休眠状態になりますから、カシ、クスのような常緑樹を選ぶのがいいでしょう。(18年2月)

 

973 食いしばりと重心

第973号 2017年5月16日
▼ 食いしばりと重心

食いしばりのきつい人がいます。強く噛み過ぎて、虫歯が出来たのかと思うほど、歯の根元が痛む人もいるようです。なぜ食いしばるのか、という疑問は措くとして、食いしばりによって歯の根本が傷む。歯茎がぐらぐらになって来ます。とすれば食いしばりは避けられるものなら、避けたいですね。

歯の寿命は、通常そのご当人の寿命よりかなり短く、70歳を過ぎれば歯の賞味期限は切れてしまうそうです。歯の賞味期限というのもおかしいですが、、 http://www.dentallife.info/ に70歳の人に平均何本の歯が残っているか、その答えがあります。

というわけで、食いしばりは感心できません。できれば避けたい。では食いしばりを改善する方法があるか。

先日の集中初級講座の席上、「食いしばりで困っている人はいますか」という私の問いかけに対し、Tさんが名乗りを上げられた。そこで登場したTさんに対し、手の小指を使って重心を変更する操法を行いました。(この操法については、過去の号で紹介したはず)

(後日、初級で、こういうことまでやってしまうのは、サービスが良すぎる、と言われましたが・・・。朱鯨亭はいつもサービス満点が身上です。)

そして、

── どうですか。と聞くと、

── うん、噛めなくなりました。という答え。

これで、重心を変更すると、食いしばりが改善することがわかります。

つまり、こういうことです。下顎は、耳のところの関節で上からぶら下がっています。ですから、下顎は重心の位置がどこにあるかを正確に察知しているわけです。こんなところにも感覚器官があったとは驚きですが、そうとしか考えられません。下顎は身体の重心をしっかりと感じている。

そして、その重心は小指で距骨を動かしただけなんですから、身体の精妙さにつくづく感じ入ってしまいます。

972 鼻の周りの腫れ物

972号 2017年5月15日 鼻の周りの腫れ物

鼻の周りというか、鼻の穴の周りというか、ともかくその辺りに化膿を起こして、押すと痛むという人がいます。このあたりは脂肪を分泌しやすい場所なので、その脂肪がうまく分泌されずに溜まって、化膿するのでしょう。

そう言われるとなるほど、そういうこともある、と頷く人もいるに違いありません。

そんな時にどうするか。耳鼻咽喉科あたりに駆け込みますか。慌てなくても、簡単に楽になる方法があります。

まず、よく手を石鹸をつけてよく洗って。どの指でもよいから、指先を圧痛のあるところに当てます。当てるだけで押してはダメです。指先で愉気をするだけです。これで2~3分も愉気すれば、しばらくしてから押してみて、痛みが消えているはずです。

この原理は、鼻の周りだけでなく、顔面の色々な腫れ物にも応用できますから、試してみてください。

「めばちこ」(ものもらい)に愉気がよく効くことは、周知の事実だと思います。ただし、この場合は直接手を当てず、離して掌をかざすだけでOKです。

「にきび」にも効くかもしれません。私自身には、もう「にきび」がないので、試してみるわけに行きませんが。ともかく簡単に痛みがとれるのは不思議です。

口の周りや顎にできる腫れ物にも試してみてください。

971 不整脈に井形ムドラー

2017年5月14日  不整脈に井形ムドラー

仏像好きの方は、仏の手が結ぶ印にも関心をお持ちでしょう。色々な形があり、この形をムドラーと呼びます。仏像といえば奈良・興福寺の阿修羅像が超有名で、人気がありますが、三面六臂の手の形が(左右はほぼ対称のようですが)少しずつ違っていることにお気づきでしょうか。

もちろん仏像でなくても、生きた人間がやってもいいわけで、かつてスリー・チャクラバルティというインドの女性ヒーラーの本 『永遠の旅路』 を紹介したことがありました。そこに各種のムドラーが載っていて、たいへん役に立つことを指摘しました。

そこで、私も一つムドラーを追加してみようというわけでもありませんが、こういうのもムドラーと呼んでもよかろうと思うので、一つ付け加えておくことにします。

最近、動悸がするとか、不整脈がある、という訴えをよく聞きます。西洋医学的に言えば、心臓の洞房結節というところから発する電気信号が乱れている状態です。骨格の面から言えば、胸椎3番(とその周辺)の異常があるものと思われます。

もちろんここだけが異常だというのではなく、仙骨の歪み、尾骨の歪みに始まって、腰椎・胸椎下部のあちこちにも歪みがあるわけですから、背骨全体を整える必要があります。そのためには、「体幹操法」 が有効です。(これについて知りたい方は教室にお越しください)

共鳴法からいうと、胸椎3番は、中指の基節骨の中ほど甲側に相応します。そこで、そこを左右両手の指で互いに愉気すればどうか、と考えたわけです。

まず左手中指の基節骨の甲側まん中へんに、右手の示指の先を当てます。次に左手の示指の先を右手中指の基節骨の甲側まん中へんに当てます。

下から順にどの指かを書きますと、まず左手中指、次に右手示指、次に左手示指、という順で、右手の中指が右手示指と並んでいます。

全体の形をおおまかに言えば、右手の示指と中指の二本を並べて、左手の中指と示指とで下と上から挟んでいるということになるでしょうか。上から見れば、左右の二本ずつの指で 「井」 の字が出来ているでしょう。大阪風に言えば、四ツ橋の形になっているというところかもしれません。

それで、この形を 「井形ムドラー」 と呼んでおくことにします。井形ムドラーをすると、不整脈が改善する可能性がある、と言っておきたいと思います。永久に改善するというわけではありませんが、ともかく、一時的であっても不整脈が改善する。

ひょっとすると、汗の異常がある人がやってみてもよい。汗の異常も改善する可能性があります。

不整脈がある人は、いつ起こるか、と不安な気持ちを抱えているもので、一時的にでも改善する方法があれば、不安が消えて楽になるかもしれません。不安ほど体に悪いものはありませんので、このムドラーで助かる人が多いのではないかと考えます。どうぞ、お試しください。

959 胃下垂と浅指屈筋

第959号 2017年3月2日
▼ 胃下垂と浅指屈筋

前回、心臓と肝臓の下垂について調べました。今回は、胃下垂についてです。

といっても、内臓の下垂は繋がっているらしく、胃だけ下垂しているわけはなく、隣接する内臓も同時に下垂していると考えた方がよさそうです。

これに気づいたのは、肝臓の下垂を調べている時でした。肝臓が下垂しているというようなことが有りうるのであれば、それに隣あった膵臓とか十二指腸とかも下垂しているのではないか、いや、そういう意味では胃も下垂しているのではないか、と思ったわけでした。

どこで、前回、圧痛の有無を調べた右手の金星丘の隣はどうか。と思って周辺を調べると、
金星丘の上に示指につながる浅指屈筋(せんしくっきん)の腱があります。金星丘から上に辿って行くと、つっぱったスジが触るでしょう。(浅指屈筋については、筋肉の解剖図などで確認してください)

ここに少し圧痛を感じました。そこで、これは胃下垂ではないか、と考えました。

そこで、胃と、その下の下腹部を両手で押さえ、少しばかり上に押し上げるようにしていると、確かに浅指屈筋の腱が緩んできました。

ですから、肝臓や心臓だけでなく、胃など、その外の内臓も調べるようにしようと考えました。ですから、短指屈筋の腱を調べて、その圧痛を除去すると、胃下垂だけでなく、その周辺の下垂を修正できるのではないだろうか、というのが結論です。

特に女性の場合には子宮や卵巣を切除している人がかなりいます。そういう方々は、あるべきところにあるものがないのですから、下垂し易いことでしょう。

もう一つの教訓は、掌は内臓と深い関係があること。高麗手指鍼でも掌に内臓のツボが多く確認されています。

さて、以上の操法から引き出せるもう一つの教訓は、ある操法を施した後で、その周辺にも似たものがないかどうかよく考えてみるということ。これは私がものを考える時に、よく使っている一般原則の一つです。【類縁の原則】とでも名付けておきましょうか。

959 心臓の下垂

2017年2月27日

── くっきりした素晴らしい運命線ですね。

操法の最中にお客様の掌が上向きになっている時、手相をちらっと見てそんな風にいうと、嫌な顔をする人はいません。手相の話は皆さん関心が高いと見えて、しっかり聞いてくださいます。

手相というと、生命線だとか感情線だとか、「線」が関心の中心になることが多いけれど、周りにある「丘」にも重要な意味があるようです。

親指の付け根の「金星丘」、薬指の付け根の「太陽丘」、その他いろいろ名前が付けられていますから、興味のある方は、こちらでどうぞ。http://syunneta.com/fuusuieki/2tesou/

さて、その「金星丘」のお話です。親指の付け根のふっくらとした丘。ここを押さえてみると、という話は以前に書きましたね。右手の金星丘を押さえて痛みを感じる時は、肝臓が下垂しているという話を書きました。[928号] です。

では左手の金星丘が痛い時は、どうなのか、という疑問が出て当然ですが、実際にメールで尋ねて来られたのは、お一人だけでした。

答えは「心臓の下垂」です。こういう話は聞いたことがないという人が大部分で、大抵の方が怪訝な表情をされるのですが、内臓下垂は珍しいことではなく、重力の自然法則から言っても、当然ありうることのようです。

心臓が下垂すると、どうなるか。不整脈が出ることが多いように感じます。逆にいうと、不整脈で困っている人は、左手の金星丘を押さえて圧痛を感じるかどうか試してみるのがよい、ということです。

不整脈と言われてもピンと来ないなら、動悸を時々感じるということです。時々、何もしていないのに心臓がドキドキするという人がいますが、そういう人は不整脈を起こしているわけです。(不整脈にもいろいろ種類がある、というような医学的な話は、いまは割愛します)。

左手の金星丘を押さえて圧痛があった人は、自分の心臓に掌を当てて、少し上向きに押し上げるつもりで、じっとしていてください。時間にして数分。心臓の位置は、左寄りと思われていますが、押さえるのは胸の中央でよろしい。

その後で、左手の金星丘を押さえてみる。見事に圧痛が消えていることでしょう。まだ残っているようであれば、もうしばらく同じことを続けてみればよい。

これで動悸がおさまる人もいるのではないか、と思います。

右手の金星丘に圧痛がある人は、肝臓に問題がある可能性がある、と言うのは [928号] に書いたことです。

じゃあ、胃下垂はどうなのか、という質問が出ても不思議ではありません。私にもそういう疑問が浮かびました。

以上の心臓と肝臓の件は教えてもらったことでしたが、ここから先は私が見つけたことです。
(次号につづく)

940 靴はからだに悪い

第940号 2016年12月27日
▼ 靴はからだに悪い

愛知県刈谷市から来られた 50 代の男性 K さん。前回単独でこられた奥様にひっぱられての来訪。

まず、奥様が来られて効果を感じ、続いてご主人が来られるというのは、よくあること。逆は少ない。こういうところにも、女性の積極性が伺えます。

聞いてみると、右手の親指から前腕にかけてひっかかりを感じ、痛むという。触ってみると、手首のあたりが妙に硬い。

硬いというより、ほとんど動いていない感じです。このごろ流行りの表現を使えば、ほぼほぼ動かない。

まずは定石どおり親指から始めます。親指の MP 関節(付け根の関節)が硬く固まっている。ただ、それだけではなく、IP 関節(指先側の関節)も硬く、そのあいだ・指節間の甲側も固まっています。

これはずいぶんひどいことになっているな、と思いながらとりかかります。

と言っても、硬いところをじっと持っているだけですが。これが最近の私の操法スタイル。ごちゃごちゃと色々やらず、じっと持っているだけの方が簡単だし効果もよい、と感じられます。

そうやって数分たち親指は少し緩んで来たものの、動きがあまりない。これ以上続けても、効果はたかが知れています。方向を変えて、手首にかかるとしよう。

手首の操法の対象は下橈尺関節です。つまり、手首の橈側・尺側にある二つのグリグリ、言ってみれば手のくるぶし二つ。茎状突起と呼ばれる二つのグリグリを両手で軽く押さえて、掌側・甲側に動かしてみる。

柔らかな手首であれば、どちらにも動くものですが、固くなっていると一方には動きません。そこで、動く方向に軽く動かして、持続するというのが普通のスタイル、つまり誇張法です。

ところがKさんの手首はまったくどちらにも動かない。重い症状です。動かないものを無理に動かすのは賢くないので、二つのグリグリを軽く持って、そのまま持続することにしました。こんなことはしたことがありません。しかし、この場合やむをえない。

── ずいぶん硬くなっていますが、どうされたんですか。

── 犬と遊んでいる時に引っ張られて。

── ああ、なるほど。

二つの茎状突起を押さえて、じっとしていると、やがて手首がカクッと内側へ捻れて来ました。何度もそういう現象が続きます。何十秒かに一度カクッ、カクッと動く。これは手首が外へ捻れていたのが内へ戻ってくるわけでしょう。

というと、腕はもともと内へ捻れているんじゃないのか。逆ではないのか、と考える人もいるに違いない。からだの関節は、どちら向きに捻れるのか、という問題は難しい点を含んでいます。

機械的に原則通りで何でも考える人は。よく言われるように、この関節はこちら向き、その関節はあちら向きと、原則どおりでいいのかもしれないが、私は、そういう原則どおりに考えることのできない人間で、一から自分で納得できる考え方をしないと満足できません。

そこで、この点の確認は、今後の課題として残しておきたい。私の脳の中の整理箱には、この種の課題がおもちゃ箱のように雑多に詰まっていまして、その中からいつも何かの課題を引き出して考えています。

K さんの手首に話しを戻します。次にどうするかを考えなければなりません。足首にこれと似た現象を見ることはありますが、普通は、このような動きをみることは手首ではありません。K さんの手首には前腕を捻るような力がどこからか働いているに違いない。

どこにそんな力が働いているのか。考えられるのは、足でしょう。足から捻れが腕にまで昇って来ているとは考えられないだろうか。足首、特に距骨周辺には、全身を支配する何かがある。

── 足首がおかしいのではありませんか。

── はい、右足首は、若い時に捻ったことがありました。ハンドボールをしていて、足首を踏みつけられ、足首が直角に回ってしまったんです。直後には、切断しなくてはならないかもしれない、と言われたこともありました。

── なるほど、そんなことがありましたか。それが手首に影響を与えているような気がします。足から引っ張られて上部がおかしくなっていることは、よくあるんですよ。

足首をみると、そんな酷い事故があったことを伺わせる痕跡は残っていませんでした。普通より少し硬い程度。しかし足指を触ってみると、かなり浮き指です。

── 靴に問題がありそうに思いますが、いつもどんな靴を履いていらっしゃいますか。

── 紐のないタイプ、スポッと履ける靴です。

やはり靴に問題がありそうです。そのことを告げると、K さんも、うすうす靴が問題だと感じていたのでしょう。すぐに靴を変えます。とおっしゃる。

というわけで、手首を対象にやっていたのに、足の問題に変ってしまいました。手と足が繋がっているというのは、私が直感的に感じたことですが、K さんも密かに感じておられたらしい。

K さんの例は、かなり珍しい例ですが、一般論として拡大できるかもしれません。つまり、手首の捻れがある人は、足にも問題があり、靴を再検討する必要がある、と。あるいは、もっと拡大して、【からだのどこかに問題のある人は、足にも問題があり、履物を再検討する必要がある】。

私たちは、手首を傷めると、手の使い方に問題があったと考え、膝を傷めると、足や歩き方に問題があると考えるのに慣れていますが、ひょっとすると、そうではなく、すべて靴に問題があるのかもしれません。

しばらく趾(あしゆび)の一つ一つに愉気をしてみました。すると、手首の動きが出なくなりました。やはり足から何らかの力が働いていたと思われます。

それほど靴の問題は大きい。「靴はからだに悪い」という名言もあります。せめてぐすぐすの靴は止め、紐をしっかり結ぶ努力くらいはしたいものです。

938 靴の履き方と学校

2016年12月20日
靴の履き方と学校

読者のSさん(大阪府在住)から、靴の履き方に問題があることに、学校が一役買っているのではないか、と次のようなお便りをいただきました。

──【靴紐を前の方までいったん緩め、しっかり縛り治すプロセスが必要だ】、

これ、自然にやってました! 前の方が緩いと、フィットしませんから。靴紐をちゃんと締めると、足が軽ーく(自動的にという感じ)前に出てくれて、楽に動けるということはわかりました。

それにしても日本人の靴紐締めがいい加減になるのは、ある程度は学校のせいだと思います。とにかく校舎の中に上履きゾーンと下履きゾーンが混在し、靴を大慌てで脱ぎ履きしなければならない場面が多い。

そのため靴を中途半端な(すぐ脱げるような)状態にしておいて、そのまま走ったり、階段登ったりすることが常態化しているんですね。学校の先生もしています。かかとを踏んだり、クロックス等のつっかけを履いたり。

私は仕事柄、大学に取材に行くことが多いのですが、土足禁止の研究室に行くことがわかっている時は、脱ぎ履きが面倒な靴は履いていけないなと考えます。。。他の人を待たせることになってしまうからです。しかし研究室の上り口に脱ぎ散らかしてある靴たちの有様を見ると、持ち主の歪み/捻れ具合が推し量れてしまい「あーあ」と思います。──

なるほど。これが実情だとすると、ますます意識して靴紐に接しなければなりませんね。Sさん、ご意見ありがとうございました。

937 靴紐についての注記

第937号 2016年12月19日
靴紐についての注記

935号で、靴紐の結び方について書きましたが、その時、これでは何かが足りないな、という思いが付きまとい、発信を躊躇した瞬間もあったのですが、それに関して靴屋のKさんから昨日の復習会の時に口頭で的確なコメントをいただきました。

YouTube にある靴の結びかたは、紐がほどけない結び方ということであって、あれで十分な靴紐の扱いとはいえない。靴紐がほどけなくても、紐の前の方がユルユルであっては、足が靴の中でぐらぐら動くので、何にもならない。

まず、【靴紐を前の方までいったん緩め、しっかり縛り治すプロセスが必要だ】、ということです。

では、どのように紐を結べばいいのか、ですが、YouTube に最善といえる動画がなく、興味のある方は、色々見てご自分で考えていただくことだと思います。

ただ、その中で、これは比較的まともなものをKさんのご意見もお聞きして、ご紹介したいと思います。→https://www.youtube.com/watch?v=Wb44ZKl08so

この動画はランニング・シューズの話になっていますが、他の靴でも同様に考えたらいいでしょう。

935 靴紐を結ばないと体がゆがむ 16/12/16

靴の紐の結び方一つで、からだの状態が非常に変化することをご存知ですか。

靴というか履物の歴史はずいぶん長いらしく、人類とともに履物があるといってもいいそうです。

そのためかどうか、履物を軽視している人が多いように思えます。ク◯ックスなどというサンダル形式のものを外でも履いている人がいますが、庭をうろうろする程度ならいざしらず、外出時にあれで歩くのは感心できません。

サンダル形式のものに限らず、【踵が固定していない履物】(下駄や草履はまったく別の範疇に属します)は足指を傷めるだけでなく、【からだ全体をゆがめる】結果になっているように思われます。

このメルマガでも一度とりあげたことがある話題として、「浮き指」がありました。

実際、趾(あしゆび)を見せてもらうと、ほとんどの人が「浮き指」になっていると言っても過言ではないでしょう。

第3関節が上方へ曲がり、第2関節が床から浮いてしまっている形の人が非常に多い。

その原因の一つは、つっかけ形式の靴を履いている人が多いこと。それから、重要なのは、靴紐をしっかり縛っていないことです。つっかけ形式とは、長靴(ブーツを含む)、スリッパ、上履き類などです。

例えヒモ靴を履いていても、靴を脱ぐ時に紐はそのままの人が多い。つまり紐を飾りとみなしている人が多い。

靴紐をしっかり結んでいないと、どうなるか。

大抵の靴は踵が高く作ってありますから、足先が靴の奥まで突っ込まれることになる。

すると、指先が奥に当たって押し返される。これが歩いているあいだ中ずっと続きますから、どうしても指先が曲がってしまうことになります。つっかけ形式の履物も同様です。スリッパとか、ブーツとかも同じことでしょう。

ところで、先日のセルフ整体教室でのこと。教室ご参加者の皆さんに、毎回、自己紹介+近況報告をしていただいております。これは参加者の顔ぶれが毎回変化することもありますが、少しずつでも、皆さんに向けて何かのメッセージを出して、互いに情報交換をしてもらいたいということもあります。

その時、参加者の一人Nさんが、整体を受けた時に教わった靴紐の結び方を子どもたちに教えたところ、縄跳びが上手になりました、という話をされたんです。

なるほど、と納得したわけです。やってみると分かりますが、紐の結び方ひとつで、歩き易さが変化します。縄跳びの技が向上したとしても不思議ではありません。

この靴紐の結び方は、YouTube でも見られます。「イアン・ノット」で検索すると、色々出てきますから、どれでもいいでしょう。ただ、この方法は、ちょっと見た目には、難しそうだな、と思った人は次の方法へ。

これとは少し違った結びです。しっかりと結ばれて、決してほどけません。Nさんにお教えしたのは、この方法でした。→

https://www.youtube.com/watch?v=BN4ss4OpXF0

整体を受けに来られて、帰宅してすぐに痛くなったと電話をして来られる人がいますが、こういう人は靴の紐に問題があると思います。

【靴紐の結び方ひとつでからだの状態がころっと変わる】のですから、心したいものです。

靴の影響がこれほど大きいことが意外に知られていないのは残念です。そのため、私は、整体を受けに来る人ごとに靴の履き方を指南しないと行けないという状態に陥っています。次回来られるときまで、おかしな靴で歩いてもらっては操者も困りますし、ご本人もせっかく整体を受けたのに、いつまでも何だかおかしい、というのも具合の悪いものです。

最高の健康法は、靴の結び方だ、と言っても言い過ぎにならないと思います。逆に靴紐を結びっぱなしにしていると、いくら立派な健康法を行っても無駄になるかもしれません。

 

932 健康不安についてのご意見 16/12/8

前号で「健康不安」について触れたところ、いくつかご意見をいただきました。それらをご紹介するとともに、私の意見(▼)も書いておきたいと思います。

◎1 Kさん(奈良県在住、口頭で伺ったご意見) 「健康不安がないのが健康だ」というのは、その通りだと思うが、ただ、前提条件がいる。

タバコをじゃんじゃん吸い、酒をがぶがぶ飲むなど、メチャクチャなことをしていて、健康不安がないというのは、どうだろうか。

▼ 確かにもっともなご意見です。私もそう思いますが、少し注釈を付け加えたい気がします。健康に悪いことをしない、というのも、健康不安を呼ぶのではないか、と思うからです。

例えば、〇〇はからだに悪い、などという話は色々あります。〇〇はからだに悪いという意見を目にすると、そういうことに意識が先鋭に向いて、健康不安をつのらせている人がいるのではないか、と思うのですが、どうでしょうか。

つまり現代人は自分の身体にかかわることを本能的に、あるいは直感的に判断できなくなっている。頭でしか判断できなくなっている人が多いし、そういう社会になってしまっているということだと思います。いずれにしても、私達の暮らす社会は対応の難しい複雑怪奇な社会になってしまいました。

【〇〇にはいる具体的な名詞についてご意見を色々いただいても、私には対応しきれませんので、念のため】

◎2 Kさん(東京都在住、メール) 私 [Kさん] の院に来た時はすでに慢性膵炎と診断されたあとだったのですが、診断されるまでの経緯がすごかったです。というのは・・

初めは、その方の旦那さんがテレビの健康番組で自分が膵炎かもと思ったらしく、ネットで調べ始めました。よこで見ていたら自分もそんな気がして来た・・というのが事の始まりです。

そのあと医療機関に十数軒行って、さいごの病院で慢性膵炎だね~、と診断されました。本当は膵炎じゃなかったんでしょうけど、自ら病気を作ってしまった・・そんな気がしました。

▼ やっぱり、という感じですかね。「健康不安」というより、なんと言えばいいのか、「病名願望」とでも言えばいいのか、「病名」が付くと安心するという心理。この根底にあるのは、医学信仰なのでしょう。

◎3 Tさん(長野県在住、メール) 西洋医学の検査は、身体を診る上で一つの指標になるとは思いますが、必要があって上がっている数値もあるわけでしょうから、結果に左右され過ぎないよう、自分自身が出来る限りの知識と自信を持てるようにしたいものです。

整体させてもらう時は、どうしたらこの人が自分の身体に対して無くしている自信を取り戻してもらえるか、という事を念頭に置いています。

「健康不安がない状態こそ、健康なのではないか」とのお話、 言い得て妙ですね。思わず手を叩いてしまいました。

不安、言いかえれば恐怖が強い方は、野口整体の感情活点がなんかヒンヤリしていたり、(本などに時々出ている)右肩甲骨内側の違和感などを感じる様な気がします。

▼「感情活点」とは、左側の肋骨の下辺、みぞおちから左側あたりのことですね。「ヒンヤリ」とありますが、このあたりが硬くなっている人も同じでしょう。

 

932 健康不安ということ

「健康不安」 とでも呼ぶより仕方のない事例を最近いくつか経験しましたので、それについて。ただし特定の個人の事例を対象にしたものではなく、私が日頃から感じていることを書いたものです。

『不安な心の癒し方──あなたの悩みを解消する7つの認知療法』 (ロバート・リーヒ著、アスペクト) という本があり、それから引用します。(この本を推薦したいわけではなく、実例の一つとして取り上げるだけです)

シルビアという女性の例が取り上げられています。

──三週間ごとに医師の診察を受けているが、どこも悪いところが見つからない。インターネットで医学関係のサイトをあちこち見ては、あらゆるタイプの癌や、まれな病気について調べているという。

そこに書いてある、吐き気、めまいなどの症状が自分の体の不調と同じなので、癌や脳腫瘍といった恐ろしい病気の徴候だと彼女は思っているのだ。

内科、婦人科をはじめ、さまざまな専門医のところに定期的に通い、おびただしい数の検査を受けたが、いずれも結果は異常なしだった。

それでもシルビアは納得しようとしない。家に帰ると、見落としたことがあるかもしれないと思い、「もしも間違いだったらどうしよう。先生はすべての検査をしたわけじゃないし、見つけられたはずの癌を見落としていたらどうしよう」と、あれこれ考えた。─(395ページ)

これは極端な事例でしょうが、似たような事例がこのシルビア以外にも増えているように感じられます。つまり、当人は、自分には 「体に異常があって困っている」 と思っているのに、操法をする立場から見れば、「異常があるという不安にさいなまれている」だけなのではないか、と思われるケースです。

初めは、背中が痛いとか、脚がしびれるとかの症状があった。そういった症状が長く続くと、これは何か重大な病気の兆候なのではないか、という思いがつのってくる。診察や検査を受けても、異常ありませんと取り合ってもらえない。

そのうちに、何もなくても手がしびれてきたり、どこかが痛くなるといった症状が出始める。こうなると、もういけません。体に痛みや痺れの根拠があれば、操法でそれを解決することが可能ですが、不安によって生まれている症状は、いくら操法をしたところで解決しません。それどころか、体にとって必要のない操作を加えているわけですから、却ってますますひどくなることもある。

最近、こんな症状(?)の人が増えている感じをもっています。どうしたらよいのか。「健康不安」ともいうべき不安が解消されればいいわけですけれど、社会全体に「健康不安」をあおる雰囲気があります。

健康雑誌は、どうすれば健康になるか、としつこく呼びかけていますし、テレビはサプリの広告に余念がない。健康の話題はテレビ番組や新聞の中心的な話題の一つになっています。

健康、健康と世の中全体が叫び声を上げていることが、健康不安を煽る結果になっていないでしょうか。

健康に関心のある人は、ますます不安に取り憑かれる、という悪循環になっているように思われます。しかも、はっきりとした不安としてあるというより、雰囲気としての不安になっていますから、どうしても不安として自覚されにくい。

そういう人が増えているように思われます。血液検査を受けて、どの項目かにH(高い)やL(低い)の記号がついていると、気になって仕方がない。

あるいは、殆どゆがみのない体なのに、私は歪んでいるように思うと訴えてくる人が多い。

最近、このような傾向が増えているように思っています。

「健康」というのは、血液検査の数値がすべて基準を満たしているとか、体に歪みがないとかではなく、本人が健康などということを考える必要がない、いいかえれば「健康不安」がない状態こそ、健康なのではないか、と私などは考えるのですが。

 

939 早起きは三文の得 2016/12/23

メルマガをいつ書いているのか、という質問を受けることがあります。別に秘密の方法があるわけではなく、ごく当たり前のことをしているだけです。

私の睡眠時間は、現在の常識からすると、おそらく異例なものでしょう。午後9時にねて、午前4時に起きます。全体としての時間数は7時間ですから、寝不足の状態ではありません。

午前4時に起きて何をしているか。(時には午前3時に起きていることもある)まず、起きだして着替えたら、湯を沸かして、トゥルシーを淹れます。(カミサンはまだ寝ています)

トゥルシーはインド原産のハーブで、これがなかなか美味しい。これを飲んでいるお蔭で、以前は悩まされていた前立腺の肥大の症状がすっかり改善しています。つまり、おしっこが出にくかったり、夜中にトイレに行くといった症状がなくなった。

以前にスギナ茶をご紹介しましたが、「いつまでもスギナ茶を飲み続けないといけないのか」、という声があり、トゥルシーに切り替えてみました。でも前立腺肥大の症状がまったく出ない状況です。

事実、トゥルシーに関する文献を読んでみると、前立腺に効くと書かれています。因みにトゥルシーはアーユルヴェーダの薬草で、不老長寿の薬と呼ばれています。詳しくはウィキペディアで「カミメボウキ」の項目をご覧ください。「カミメボウキ」とはトゥルシーの和名です。

トゥルシーを飲んでみたいという人は、トゥルシーで検索すると、いろいろ出て来ます。香りが一番いいのは、「野良農園」という宮崎県で作られているトゥルシーです。この強い芳香に慣れるとクセになる人もいるでしょう。強い香りが苦手という人は、インド産のものを飲めばいいと思います。

熱いトゥルシーをたっぷり飲んだあと、少し瞑想をします。ただ瞑想といっても、ちゃんと正式の姿勢(そんなものがあると仮定して)をとってするわけではなく、椅子に坐っている時も寝転がっている時もあります。(難しいことをいう人は、寝転がって瞑想してはいけないとか何とかいうでしょうが、気にしません)

やってみて瞑想の時間は朝が一番という感じがあるので、朝にやっています。この時、天から素晴らしい発想が降りてくることがあります。その次はメルマガを書くか、あるいは「漢方体操」をします。

「漢方体操」については、あまり記事がないでしょうが、ネットで探してみてください。これで私の体調はふしぎなほど劇的に変わりました。操法の面でも、そのことが色々役立っています。

その後、起き出して来たカミサンが整えてくれる朝食を採ります。(カミサンは私と違って朝ヨガをやっています)朝食廃止という思想もありますが、私の場合、朝食を取らないと具合が悪い。ナッツ、カミサン調製のヨーグルト、目玉焼きといったメニューです。ここに果物が入ったり、パンが入ったり、その時々で色んなものを食べます。

テレビはないので見ません。コーヒーや紅茶、緑茶、ウーロン茶といったカフェイン類は口にしません。朝であっても、睡眠に影響が出るからです。朝に一杯のコーヒーを飲んでも夜に眠れなくなる。その他、心臓にも影響を感じて、気持ちが良くない。

ですから思想としてカフェインを飲まないのではなく、飲むと調子が悪くなるので、飲まないということです。

さて、ここまで来ても、朱鯨亭に出かけるまでまだたっぷり時間がありますから、音楽を聞いて過ごします。最近、気に入っているのはブレーメンの音楽隊の演奏、東洋人も何人か参加している様子です。そんなものが本当にあるのか、って。あるんですね。ブレーメン・バロック管弦楽団の演奏によるテレマンの曲「トラヴェルソとリコーダーのための協奏曲、ホ短調」。https://www.youtube.com/watch?v=2D-y2kJU0lg

テレマンという人は後半生をハンブルクで活躍しましたから(ハンブルクとブレーメンは100キロほどの距離)、地元の演奏といっていいでしょう。ここに聴くレコーダー(縦笛)やトラヴェルソ(横笛)を中心として演奏する人たちの生き生きとした表情を御覧ください。

その後、8時になれば靴の紐をしっかり縛りなおして朱鯨亭に出勤です。奈良町の中を歩いて、約35分。朝日を浴びて世界遺産の横を通って行きます。東の大和高原から昇る太陽がまぶしい。というわけで、早起きは三文の得を実践しています。みなさまも、よろしければどうぞ。朝早く起きると、「三文どころではなく」こころとからだがずいぶん得をしますから。

909 『ねじれとゆがみ』 2016/8/2

 『ねじれとゆがみ――毎日すっきりセルフ整体教室』

出版社:晶文社、定価:1800+税、ソフトカバー。

このメルマガと同じく、アマチュアだけれど、自分でやれることをやって見たいという人、いま整体など関連の技術を勉強中で、今後の進め方の参考にしたい人を対象にしています。

そこで、整体の考え方・からだの見方を中心に据えて、その流れの中で、役立つ操法を紹介していくという構成です。

言葉遣いは、私が講座でしゃべっているような雰囲気が出るように工夫してみました。HPの記事がもとになっているので、皆さんおなじみの部分が登場するかもしれません。

従って遠隔地の方で、奈良まで行くのは無理という方でも、講座を受けているような感じで読み進めていただけると思います。

すでに操法テキストをお読みの方は、操法は、よくわかったが、全身のつながりが分かりにくいと感じていらっしゃる方もあるでしょう。そのあたりの記事が大きな部分をなしています。

練達のイラストレーターが分かりやすい図を描いてくださったので、たいへん充実したものに仕上がりました。

晶文社のサイトには、内容紹介もあります。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4036

アマゾンでもすでに表示されています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4794969325/

ここで先行予約が可能ですので、よろしければどうぞ。

905 枕は是か非か

第905号 2016年7月12日
▼ 枕は是か非か

50歳代の男性Tさん。大阪市内にお住まいだそうです。その方の訴えは

──自分は昔から枕なしで寝ていた。それでまったく問題がなかった。ところが先日、目まいを起こした。調べてみると 「良性発作性頭位目まい症」 という種類らしい。ネットで色々と調べてみると、枕をした方がいいという記事をみつけた。

そこで、しばらく低めの枕をして寝ていたが、朝起きるときに、頸椎や胸椎がボキっと鳴って、不気味な感じがする。まして 『首や腰をボキボキ鳴らすと早死にします』 という本を読んで、いっそう怖くなった。何とかならないか。

厄介な話です。私自身も常に枕なしで寝ていて、たまに枕をすると、同じようなことがあるので、他人事だと思えません。そこで、枕を使わずに横になってもらい、十数分ほど寝ていただきました。その間に春風操法をしましたので、その効果があったかもしれませんが、いずれにしても、起き上がってもらうと、ボキボキという音がしませんでした。目まいも起きなかった。

[春風操法とは、寝る前に両手の外側(小指側)を小指の先端から始めて、手首まで、撫でおろす。そうして仰臥する。11分ほど寝てもらうという方法。こうして寝ているだけで全身がかなり整う場合があります]

これをどう考えたらいいのか。枕をすると、顎を引いた状態で寝るので、のどが詰まることがない、というのが枕必要論の論拠になっています。しかし、いつもそうだとは限りません。私自身は、枕なしで寝たからといって、呼吸が苦しくなるようなことはありませんし、軽い呼吸音を立てているようですが、ひどい鼾をかくこともありません。

むしろ、枕をすると、枕の高さだけ、背中が猫背状態で寝ているわけで、そのことの方が嫌な感じです。毎日、猫背になる練習をして寝ているようで、気持ちがよくありません。

枕をして寝てみて、そのあと起き上がると、猫背になっている背中が無理に引き伸ばされるような感覚があって、その時にボキっと鳴る感じがします。

ただ、横向きに寝るという人にとっては、横向きになったとき枕がないと困るというのはある気がします。だとすれば、首の後ろを支える程度の枕を、タオルで作ればいい。

具体的に書いてみましょう。まず、一枚のタオル。これはバスタオルでなく、普通のタオル、これを下に敷く。これはシーツが汚れるのを防ぐ意味だけです。その上に、バスタオルを縦に長くグルグル巻いたものを置きます。これを首の後ろにあてがう。

昔、木枕というものがありました。西式医学というグループが使っていたものです。探してみると、今でも販売されているようです。私自身は試していませんので、お勧めというわけではありませんが、試してみてもいいか、とは思います。(時代劇に出てくる、武士がしているような高い枕とはまったく違うものです)

いずれにしても、Tさんにとって、枕をするかどうかは、死活問題になっていた、枕をすると、目まいが起こらないという、あやふやな情報を信じたがために、困っていたわけですが、枕をしなかったというだけで、解決したということです。

目まいはどうすれば、いいのか。YouTube に 「試してがってん」 の動画がありますので、それを試してみてください。BPPV(良性発作性頭位めまい症)の直し方が見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=qPP_m0_FnpA

さまざまな「健康情報」のあり方について、言いたいこともありますが、それに関しては、いずれまた。

904 不整脈といびきの関係

第904号 2016年7月1日
▼ 不整脈といびきの関係

友人のMさんは、60代の男性。動脈瘤が数か所あって、先日手術を受けたばかりです。現状報告のメールをもらったので、次のような返信を書きました。

(以下、引用)
重篤なことにならずに済んで、よかった。ひとつ、気がつきにくい情報を。

梶本修身(大阪市大教授)
『すべての疲労は脳が原因』
集英社新書 (2016/4)

この本に睡眠時無呼吸症候群(SAS)についての記事があり、次のように書かれている。

──アメリカで22年にわたって行われた大規模研究の「ウィスコンシン睡眠コホート研究」では、SASがあると高血圧の発症リスクがおよそ1.4倍から2.9倍になることがわかりました。(中略)
不整脈の一種「心房細動」の発生率は、SASを合併している場合は、そうでない場合に比べて2倍以上も高く、特に夜間の「心房細動」が起こる頻度はSASを合併していると4倍以上も高くなると報告されています。そして重度のSASを合併していると、脳卒中のリスクはそうでない人の3.3倍に達するのです。(101ページ)

ということで、夜間に「いびき」をかいていないかどうか。それが目安になる。野口整体系の次の本に「いびき」の直し方が書いてあり、参考になり、事実、効果がある。要点は、胸椎上部に硬いところがあり、4番・5番あたりにかるく掌を当てて愉気をすると、数回繰り返すだけで「いびき」が消えるという。時間にして一回数分。

うえだまゆみ
『体にやさしい整体術』
(PARCO出版、1600円+税)

(以上、私のメールから引用)

このような症状の人は多いと思われます。高血圧、不整脈、いびきなどの症状がある人は、試してみるのがいいと思います。何しろカンタンですから。

904 古い療法、自然療法

第904号 2016年6月29日
▼ 古い療法、自然療法
●Mさん(長野県)
【仙人草】
──扁桃腺が腫れて高熱が出た人に長野県では 仙人草 の汁を腕に少量塗る方法があります。毒草で火ぶくれができますが、熱が下がり、その後扁桃腺炎なりにくくなります。方法はネットに出ています。

私は子供の時にこの療法をしています。その後扁桃腺が腫れたことはありません。知人などに話しても知らない人がほとんどなので、忘れられているようです。植物図鑑の記述も、昔の本にはこの療法が記載されていましたが、今発行されている本には見当たりません。

●Kさん(兵庫県)
【豆腐パスタ】
痴呆の祖母が額を指さして(「パスタ貼って」の意味)してほしがるほど気持ち良かったらしいです。母の発熱のとき、母が「お婆ちゃんがしてほしがったはずやわ。」というほど熱を吸い取ってくれる感じで、気持ち良いそうです。豆腐と小麦粉、ショウガで作ります。これは、脳出血のとき頭に貼ると、血を吸収して予後がいいそうです。(これは本に書いてありました。)
http://matome.naver.jp/odai/2140472721406330401

【芋パスタ】
祖母は当初「風邪」と言われ、止まらない咳に苦しんでいました。芋パスタを貼るとピタッと止まりました。てきめんでした。
しかし乾いてくると、また咳き込み、貼ると治まるの繰り返しでした。結局誤診で肺がんの末期、水もたまっていたのです。抗がん剤を投与せず、水を抜いてからは結構元気になり、玄米クリームと青汁等、足湯で、9か月ほどはもちました。芋パスタ恐るべしの即効性がありました。里芋、小麦粉、ショウガで作ります。手間ひまが半端なくかかりますが、価値はあると思います。
http://home.att.ne.jp/banana/soutetsu/treatments/teate/satoimopasta.html

【ショウガシップ】
私が尿閉(腎不全だった?)で、むくみや倦怠感、汗が尿臭い、目がかすむ等(尿毒症状?)時、発汗のためいろいろしましたが、一番気持ち良かったのはショウガシップでした。身体が喜んでる~と実感しました。ぬくもりが、身体の中にぐいぐい浸透してくる感じでした。
http://www.musofood.co.jp/chie_syoga.html

【卵醤】
その時、漢方のお医者さんが水を飲むな、塩を取れとおっしゃり、「卵醤」というのを教えてくださりました。有精卵を割って、その半分の殻に醤油をナミナミと注ぎ、醤油を卵の上にかけて、卵御飯にして食べるものです。これを食べた瞬間に身体が変わったように感じました。生き返ったというか、まさに生気が満ちたというか・・・・。今思うと、あれが分岐点だったように
感じます。

903 熱いタオルを当てる

路地裏の整体術 第903号 2016年6月25日
▼ 熱いタオルを当てる

前号の「熱中症」に関連して、非常に興味深いご意見をいただきましたので、ご紹介です。時々思い出したように興味津々のご意見を下さるOさんからです。

(以下、引用)
──このお話を拝見して20年ほど前に北京を旅行した時のことを思い出しました。私は北京郊外の、確か北京外語大学ーーの向かいにある小さな宿に友人と滞在していた時、突然40度近い高熱が出たのです。

薬もなく、途方に暮れながら寝ていたら、宿で働く客室係の女の子が、私が熱にうなされていると知り、一粒の黄色い薬を持ってきてくれたうえ、一晩のうち何度も見舞って看病してくれました。

その際、冷たいタオルを額にのせていたら、それではダメだ!と言って、急いでタライに熱い湯を張って持ってきてくれ、火傷しそうなほど熱い湯からタオルを絞りあげて額にのせてくれたのです。

これは驚きましたがなんとも気持ちがよく、悪寒も頭の痛みも治まっていったのを覚えています。冷たいのは気持ちいいいですが、どことなく寒気がしますでしょう。あれがありませんでした。

黄色い錠剤がなんだったのかわかりませんが、これもやけに効き、翌日には普通に起きられ、旅程をこなしました。勿論、早く治ったのは熱いタオルだけの功績ではないでしょうけれど。

以来、熱が出たら熱いタオルを額に載せることにしています。近年、ヒートショックプロテインという療法もありますし、温める方が結果が良いのには、訳があるのかもしれませんね。
(引用ここまで)

額に熱いタオルを載せるという方法は、知りませんでした。後頭部に蒸しタオルを当てる方法については、過去に読むか聞くかしたことがありましたが。昔から色々なところで、人々は独特の工夫をしてきたことが偲ばれます。

そういうものが今に伝わらず、途絶えてしまっていることが残念です。何か、このような古い療法をご存知の方がありましたら、教えていただけると、さいわいです。

902 熱中症

路地裏の整体術 第902号 2016年6月22日
▼  熱中症熱中症は、梅雨の頃に多いそうですね。湿度が高くて、身体の熱が発散しにくいからだそうです。

とはいえ、なってしまったら、どうすればよいか。特に若くても汗をかきにくい人や老人は注意が必要です。

次の本に簡単な「熱中症」対策が載っていたので、ご紹介しておきます。

うえだまゆみ
『体にやさしい整体術』
(PARCO出版、1600円+税)

タオルを体温くらいのぬるま湯につけて、軽くしぼる。これを頭の上に載せて、じっとしている。頭の熱でタオルが熱くなってきたら、タオルを裏返す。これをしばらく繰り返す。時々体温計で体温を測って、下がってきたらOK。

私自身が熱中症になったわけではありませんが、頭に熱がこもる感じになったので、この方法を試してみたという次第。なぜ「冷水」ではなく「ぬるま湯」なのか、というところが分かりにくいところかもしれません。

じっさい冷水でやってみると、その時は気持ちがいいでしょうが、終わった後、また温度が上昇してきます。反動が起きるのでしょう。だからぬるま湯がいい。ぬるま湯でやってみると、体温が下がり始めると、そのまま下がっていきます。

私も、まもなく70歳ですから、立派な老人です。汗をかきにくく、体温調節が下手になってきているのでしょう。この時期は、頭に熱がこもって気分がいいとはいえません。

体温を測るというのは、この本には書かれていません。しかし、目安を知るために体温を測るのは有効です。またタオルを裏返すのでなく、新たにタオルをぬるま湯につけて絞るように書かれていますが、実際にやってみると、面倒です。頭の熱が抜けて、タオルの温度が上がって来るので、裏返すだけで十分だというのが私のやった方法。

熱中症だけでなく、頭がかっかとして寝苦しいような時にも試してみられたらいかがでしょうか。ただし、高熱が続いて危険を感じるような場合は医療機関へどうぞ。

なお、この本には「いびき」の改善法も書かれています。「いびき」は無呼吸にもつながりますから、「いびき」くらいと軽くみるのはよくありません。これもカンタンな方法で改善するようですから、「いびき」でお困りの方は試してみる価値がありそうです。

著者は野口整体系の方。いろいろと自分で治す方法が満載でお勧めです。