911 中足骨の捻れ

30代の女性Nさん。はじめは腰が痛いという話だったのですが、、、

他に痛いところはありませんか、と聞くと、顎が悪いんだそうです。ついでに不整脈まであるという。

顎が悪いという人、多いですね。口がうまく開かないとか、顎関節が痛い、顎ががくがく鳴る、などという話をよく聞きます。

そういう人に共通してみられるのは、足の中指(第3趾)の付け根に痛みがあることです。そのあたりをぐっとつかむと、人によっては激しい痛みがあるかもしれません。

で、中指の付け根を持ってじっとしていると、顎の様子が変わってきます。普通なら、それだけでOKなのですが、Nさんの場合は少し違っていました。

何が違うのか。中指の付け根だけでなく、中指の中足骨まで痛いと言われる。中足骨(ちゅうそくこつ)とは、趾(あしゆび)と足根部(そっこんぶ)をつないでいる比較的長い骨です。

で、中指の中足骨(第3中足骨)の内側(親指側)を強めに押してみるとかなり痛いらしい。どういう現象かといえば、中足骨が内側へ捻れているわけです。

「捻れ」という言葉を使いましたが、それは「捻れ」でなく「回旋」でしょう、などと突っ込みをいれたくなる人がいても困るので、お断りをしておきますが、骨が回旋しています。しかしそれだけではなく、周辺の組織が捻れています。ですから、ここでは「捻れ」という言葉を使いたい。周辺の組織が捻れることによって中足骨の横に痛みが出ている。

さて、こういった中足骨の捻れは、そこに誇張法に従ってそっと手を当てていると、やがて緩んでくるものですが、Nさんの場合は、簡単に緩みません。やっているうちに「いやな痛みが出て来た」とおっしゃる。

そこで、何か足を踏み抜いた事故はなかったか、と尋ねると、「中学生の時に陸上をしていました、走り幅跳びです」という話です。それなら、着地点に小石でも落ちていて、踏み抜いたことは十分考えられます。

なるほど、と頷いて、さらに続けました。大分痛みが収まってきたようすです。顎を動かしてもらうと、大分調子がよいとのことです。指3本が口に入ります。

この場合、顎が悪いという訴えから、別の箇所に操法していたら、こういう結果にならなかったかもしれません。つくづく足は重要だと思わせられた例でした。

というわけで、中足骨は重要なので、一昨日お知らせした秋の講座などでその扱いについて積極的にとりあげたいと考えています。



907 足首が痛い(2)

第907号 2016年7月18日
足首が痛い(2)

前号で書いた、リスフラン関節の操法は、自分でやれないこともないけれど、少しやりづらいかもしれません。もっとカンタンな操法はないのか。

ひょっとすると、効果が限定的かもしれないものの、別の方法があります。

足と同側の手の小指を見てください。小指の爪の下、第1関節とのあいだを横一文字にさっと撫でる。これだけです。外から内でも、内から外でも、お好きな方向で結構です。

別にリスフラン関節が痛いわけではない、という方は、リスフラン関節のあたりを甲側からきつめに押さえてみてください。きっとどこかに痛みを感じるでしょう。そうなった時は、さっそく上の操法をやってみてください。痛みが消えるはずですから。

歩いている時に、足(首)が痛くなったら、即、横一文字にさっと撫でてください。それで消えないような痛みについては、別の方法が必要になります。

ついでながら、この操法は、足首が痛い人に使えるだけでなく、膝が痛い人にも使えます。膝が悪い人は、足首、とりわけリスフラン関節のあたりに異常のある人が多いからです。

906 足首が痛い

第906号 2016年7月14日
▼ 足首が痛い 

バレエをやっているという女性Mさん。左足首が痛む、病院・治療院など数軒を回ったけれど、治らないという訴えです。はるばる広島県からのご来訪でした。

さて、足首のどこが痛いのですか、と見せていただくと、痛みは、足首の折れる当たり、とのことです。

ちなみに「足首が痛い」という訴えの多くは、足首そのものよりも、甲の当たり、つまりリスフラン関節の周辺に異常がある場合が多い。あるいは下腿の開き過ぎもあります。つまり、足首が痛いといっても、足首そのものに原因があるわけではなく、その両側に問題がある。

そこで、よく見てみると、ご本人も言われるとおり偏平足で、甲の盛上がりがほとんどない。

そこで、これはリスフラン関節が全体に下がっているからであろう、と思いました。通常は、この関節に問題があるという場合、甲が高くなって、関節が上に上がっていることが多いのですが、Mさんの場合は、甲が高くない。
それで関節が上に上がって痛みが出ている可能性はほとんどない、と判断しました。

「操法テキスト」で、リスフラン関節の異常について、次のように書いています。

──★[3-4] リスフラン関節の変位 楔状骨と中足骨の境目がリスフラン(Lisfranc)関節(足骨の図参照)。変位することが多い。楔状骨側の変位も、中足骨側の変位もある。歩く時に痛がる。
【観】 リスフラン関節の位置を中心にして、足先側と足首側とを両手で挟み、上または下方向へわずかに動かしてみて動きがなければ、その方向に関節が硬化している。
【反動・愉骨】 楔状骨の側が変位していれば反動法で改善できるし、 中足骨の側が変位していれば愉骨で対応できる。細かい骨が多い場所なので、どの骨が痛むか、どの骨が変位しているかをよく調べて、正確に操法することが必要。中足骨と楔状骨の両方が変位していることが多いので、中足骨、楔状骨の両方を改善させることが必要。ここを改善させると膝が改善される。逆に、膝の悪い人はこの関節を調べる必要がある。
(操法テキスト明朝版、14~15ページ)

Mさんの場合、歩くときに痛むというより、トウ立ちをするときに痛むらしい。甲側が上がって痛みが出ているのでなく、足底側が下がっているために痛みが出ていると思われます。右足はさっとトウ立ちできるのに、左足は、スムーズに行かず、二段階の動きが必要になったという。

こう言っては何ですが、一般にバレエだとか、ダンスだとかをしている人の要求は厳しいことが多い。細かい注文に応じなければならないので、大変です。過去にもフラダンスの方、フラメンコの方など、いろいろ苦労しました。

しかし今回は、割合うまく行きました。リスフラン関節を両側から押さえて、足裏側へ少し曲げる気持ちで(つまり歪みを誇張する方向へ)、しばらく持続すると、簡単に痛みが消えました。あまりカンタンすぎて拍子抜けです。

リスフラン関節は上向きに曲げていればよい、と機械的に覚えていては、ダメなところでした。「いつもそうだとは限らない、ときには逆のこともある」という格言は、操法に限らず、どんなところでも有効です。

どういうわけか、このMさんの後も、足首の故障を起こした人が続いています。次回以降も、そのご紹介を続けます。

 

896 元気なおばさん

第896号 2016年5月8日
▼  元気なおばさん

昨日は、はるばる兵庫県から来られたNさんという女性。正坐ができません、と言いながら、足を横に出して、私の前に坐られます。

お名前や、ご住所やを伺って、お歳は、とお聞きすると、今年80歳になります。え? どう見たって79には見えません。とまどいながら、80にしておきます。

時々坐骨神経痛が出るらしく、それが出ると、鎮痛剤のロキソニンを飲まないと激痛でのた打ちまわる、とても耐えられない、とのことでした。あと膝痛が少々。

まず、椅子に坐っていただいて背中を拝見します。背骨は曲がっていませんし、骨盤が歪んでいる様子もありません。背中の左右に厚みの差があるということもない。「きれいですね」 と私。「80って、嘘でしょう」 と尋ねると、「嘘を言ってどうなるものでもないですから」 という答え。そりゃあそうですが。

スポーツはなさっていますか、と尋ねると、「テニスを少々」。「ゴルフも」と。しかしテニスをしている人は、たいてい右後ろ、左前の捻れが入っているものですが、それがまったくと言っていいほど、ありません。「うーん」 と唸っているしかない。

たまに、こういう元から丈夫な人がいるんですね。

あちこち調べてみて、坐骨神経痛の原因らしいのは、大転子の位置が左右で違うことくらい。坐骨神経痛のある右側に大転子が少し出ています。

圧痛のない左側から、大転子をぐっと押さえて、反動法で、さっと抜くと、左右差が消失しました。これで、立っていただいて、どうですか。と訊くと、いいえ、普段は何もないのです。時々突然痛くなるだけです。

「それじゃあ、痛くなった時にロキソニンを飲まずに来ていただかないと、分かりませんね」 というと、「ロキソニンを飲まないと、とてもここまで来られたものではありません」 という返事です。

というようなわけで、ともかく膝を整えて、終わりました。膝もお皿がよく動いて、固まっている様子は少しもない。不思議なおばさんです。感嘆している他ない。

確かに皮膚に少し衰えがあるかな、とは思いますが、それ以外どこを調べても、おかしなところがない。テニスとゴルフのせいで元気なのだとすると、テニスはからだに悪いなどと冗談を言うわけにも行きません。

正坐ができないとおっしゃったけれど、これなら座布団を挟めば正坐ができるでしょう。と座布団を差し出すと、坐れます。正坐したのは何年ぶりなんだろう、とひとりごつ。正坐ができないという人は、坐れないんだ、という思い込みで、坐れなくなっていることが多いので、思い込みを打ち破ることがまず第一です。

Nさんが元気いっぱいなのは、意識が明晰であることじゃないかな、というのが終わってからの私の感想です。ともかく、しゃべり方がはっきりしていて、どこにも淀みがありません。耳が少し遠いらしく、時々聞き直される他は、とても80歳の声ではない。

人は、声から老化が始まるという仮説を立ててみたい方でした。

895 斜頸とは何か

第895号 2016年5月7日
▼  斜頸とは何か

首がいつも左に傾いている。心配だというメールをいただきました。7歳の女子です。仮にRさんとしておきます。

こういう症状には 「斜頸」 という病名が付けられるのでしょうが、でもちょっと待ってもらいたい。本当にこれは 「斜頸」 という病気なのかどうか。

このメールを頂戴した時に、それは背骨が曲がっているだけでしょう、という意味の返信をしました。

そして操法の当日。Rさんが入室して来られたのを見ると、なるほど首が左に傾いています。お母さんとしては、大丈夫なのかと心配なのは無理もありません。まして整形外科で、将来 「顔が歪んできます」 と言われたとなれば、なおさら。

これは背骨が曲がっているに違いないと目星をつけていましたから、さっそく椅子に坐ってもらうと、案の定、腰椎が左に曲がっています。胸椎の歪みはほとんどない様子なので、整形外科では 「側弯」 とは言われなかったらしい。

うつぶせになってもらいました。「うつぶせ」 というと今は 「死語」 になっているのか、「あおむけ」 と 「うつぶせ」 が、どちらがどちらかと迷う人が多い。でもいじわるなので、私は常にこの言葉を使い続けています。ところがRさんは、即座に 「うつぶせ」 に寝てくれました。うんうん、あなたは頭のいい子だ。

まず、背骨の弯曲があれば、尾骨の歪みがあると見ていいでしょう。ですから尾骨を触って歪みを確認し、「お尻を打ったことはありませんか」 とお母さんに訊いてみるのですが、記憶にない、とのことでした。

(いま中学生の時から側弯を修正するのに通ってくれている高校生女子がいますが、その人の場合は、はっきりと尾骨を打つ事故に会っています。側弯のきつい例では尾骨の異常があると睨んだ方がよさそうに思えます。)

尾骨に対しては黒川操法(尾骨の歪んでいない方を3回、3呼吸間隔でなで上げる操法)を使いました。これで、背骨全体の緊張が少し緩んだはずです。

その次は仙骨、腰椎、胸椎と背骨全体の歪みを少しずつ修正して行きました。それから、両腕。数日前のことで、いまとなっては、どのような順序で操法したか、正確には覚えていませんが、足首にも問題があり、右足首、特に距骨を触りました。

そうして椅子に坐ってもらうと、心なしか首の傾きが改善しているように見えます。「どうですか。少しまっすぐになって来たのではありませんか」 というと、付き添って来られていたおばあちゃんが、「そうですね。少し傾きがましになっていますね」 と言われる。

こう言われたことの暗示効果もあったと思いますが、Rさんは首の動きがよくなっているのを感じたのでしょう。さらに一層、首がまっすぐになってきました。

大人の斜頸の場合は、こう簡単に行かないでしょうが、Rさんの場合は背骨の硬化が進んでいなかったと思われます。

腰椎が左に弯曲する理由は、骨盤が右向きに傾いていることです。お母さんは、なぜこんなことになったのか、その原因を尋ねられたが、Rさんが小さい頃から横すわりの癖があったのではないでしょうか。1回横すわりしたからといって、腰椎が弯曲してくるというわけではありませんが、横すわりの癖が何度も続くとやがて背骨の周辺組織が硬くなって、弯曲を起こします。これは子ども限らず大人でも同じことです。

ですから横すわりの癖が強い人、つまり、右横座りと、左横座りとで、座りやすさが異なる人は、腰椎が歪んでしまっています。腰椎が弯曲を起こしている側に首を傾ける癖があることでしょう。いつも傾けているわけでなければ、斜頸とは言われないので、本人も気づきませんし、周囲の人たちも気づきません。

というわけで、斜頸という病気、異状な状態があるわけではなく、骨盤の傾き、腰椎の弯曲が首の傾きという状態を生んでいるだけのことです。

病名を与えられると不安になってしまう。という心理が確かにありますから、病名を付けるというのは、罪作りなのではないでしょうか。まして 「将来顔が歪んできます」 などと言われるのは。

このケースも、腰椎が歪んでいるだけだから、姿勢をよくすれば簡単に治りますよ、と言ってもらえれば不安になることもなかったでしょうね。

寝床体操の1番をするといいですよ、とお話して帰っていただきました。ずっと表情の硬かったRさんが、帰りには 「ニコっ」 と笑ってくれたのがうれしい。

894 連動という対応関係

第894号 2016年4月29日
▼  連動という対応関係

全身と手とが相応(対応)関係にあることは、このメルマガの読者の皆さんには、基本的なことがらであると思います。例えば足首は小指の第1関節と相応する。要するに手は全身の縮図になっています。

ところで、手の変化と全身の変化とは、どちらが先に起きるのか。たとえば、先日の実例。股関節が痛むという方でした。

股関節の痛みは、『共鳴法教本』 では薬指と小指のそれぞれの中手骨の間の溝の部分に手を当てていればよい、となっています。

ですから、その基本通りにそこに手を当ててみたのですが、何だか掌側の触り心地が落ち着かない。ごつごつして骨が飛び出しているような感触です。

おそらくは、薬指の中手骨が掌側へ転位して(ズレて)いるに違いない。そこでそこをわざとグッと強めに押さえてみると、「あ、そこは痛いですね」 という反応。

そこで、掌を敷物の上に押し付けてもらって、甲側から手でぐっと押え、パッと放すという反動法をやってみると、ズレが解消しました。そこで、股関節はどうか、と尋ねてみると、痛みが取れているようでした。

そうなると、股関節に異常があるから、手の相応箇所に異常が出たのか、それとも手に異常があるから、股関節に異常が出たのか、どちらともいえそうな状況です。

こういう場合は、一方が他方の 【原因】 であると捉えるよりも、手と股関節が 【連動】 していると捉えるほうが事実に近いのではなかろうか、と思いました。

つまり相応関係とは、他方が一方を映し出しているという関係であると捉えるより、互いに連動する関係と捉えるほうがいいのかな、とも考えられます。

そう考えてみれば、からだの各所に連動関係がありますから、各所にさまざまの相応関係が観察できるとしても不思議ではありません。「足つぼ」 なども連動関係なのかもしれませんね。

893 かかと呼吸

第893号 2016年4月22日
▼  かかと呼吸

中国の古典中の古典 『莊子』(そうじ) の中に次のようなくだりがあります。

「真人の息は踵を以ってし、衆人の息は喉を以ってす。」
(福永光司・他訳、ちくま学芸文庫「内編」・大宗師編第六)

現代語訳の部分には、どう書いてあるか。「真人の呼吸は踵の底でするが、普通の人の呼吸は喉でする」 とあります。「踵の底でする」 とは、どうするのか、もちろん、そんなところから呼吸ができるわけはありません。「真人」 とは何か。これも現代語訳を読んでみると、「天の営みを知り、天とともに自然に生きる人」 というくらいの意味らしいと思われます。

そこで、どうするのか、やってみました。踵の底で呼吸をする気持ちで息をする、ということでいいのではないか。つまりある種の気功法を表しているのではないか、と考えたわけです。

歩きながら、やってみました。ゆっくり歩きながら二歩進む時に息を吸います。次に四歩進む時に息を吐きます。この時、踵の底から息を吐くつもりで吐く。これをしばらくやっていると、足がぽかぽかと暖かくなります。足の気のめぐりがよくなったのでしょう。冷え性の人は、試してみる価値があると思います。

なぜ二歩と四歩なのか。まず奇数にすると、左右が混乱して歩きにくい、という理由があります。そして、二歩と四歩は、吸う息は短く、吐く息は長くという原則に合っています。

なお、念のために付け加えておきたいこと。歩き初めの一歩は、自分の重心側と反対側でやるのが望ましい。歩いている時には、自然に重心側に意識が行っているもので、例えば私は左側に重心があって、左に左にと行きやすい。そこで、意識的に左右を逆にするのは難しくありません。

すると、吸う息の二歩の最初の一歩は重心とは反対側を出していることになりますし、吐く息の四歩も最初の一歩は重心と反対側を出しています。

このようにして歩くと、自然に無意識の世界を書き改めることができるように感じられます。どちらの足から先に出すか、というのは無意識の世界でどちらかに偏っているもので、そういう無意識はなかなか変更しにくいと考えられていますが、そうでもありません。かかと呼吸をしながら歩くと、自然に無意識が変更される。

そして、ここが重要なところですが、かかと呼吸を続けながら、私の場合ですと、朱鯨亭まで30分あまりを歩いて行くと、自然にからだ全体がぽかぽかとしてきます。気功法をしていることにもなる。一石二鳥にも一石三鳥にもなる。

手が冷たくて悩んでいる人は、かかとでなく、手先呼吸をしてください。手がぽかぽかと暖かになってくるでしょう。

これであなたも 「真人」 になれるかもしれません。そういえば、私の玄祖父(おじいさんのおじいさん)は、「真人」 という名前だったらしい。「まこと」 でも 「まさと」 でもなく 「しんじん」 だったそうですから、名付け親は 『莊子』 を読んでいたのでしょう。ちなみに 『莊子』 を書いた人は、「そうじ」 ではなく、「そうし」 という名前でした。