1019 第2関節操法

第1019号  2018年2月26日
▼ 第2関節操法

大抵の人の足の第2関節(PIP関節)は硬くなっています。これが柔らかいのは赤ちゃんだけではないかと思うほど。

第2関節が硬くなると、ハンマー・トウであったり、浮き指であったり、と趾の変形に繋がってきます。

これは恐らく、靴が合わない・靴の履き方が悪い・スリッパ状のものを履いている、などの原因によるものでしょう。

今日は、靴の履き方の話ではなく、硬くなっている第2関節をどうすればいいか、という話。

といっても第2関節のところをじっとつまんでいるだけです。

(そういう姿勢が苦しくてできない人には、また別の問題がありますが、それは別の機会に)

これを続けると、やがて第2関節が柔らかくなってくる。そうすると、体のあちこちが楽になってくる。

手の指では、共鳴法の対応関係で考えると、第2関節は、膝・肘・胸椎1番または頸椎7番、と対応しますから、もちろん、そういうところも柔らかくなってきます。

しかし、それよりもここの関節が柔らかになることで、体の捻れがとれていきます。そういう点からすれば手の第2関節も重要ですが、それに関しては、すでに触れています。

ここのところ私の課題としているところは、体の捻れはどうすれば解決するか、という点です。体の捻れに最も関係しているのは、足ではないか、というのが結論です。

あなたが仰臥した時、両足の角度が揃っていますか。左右で角度が大きく違っている人は、捻れがきついと思われます。だからゴルフのようなスポーツには問題があります。

普段、人の体に触れている方なら、足が捻れに関わっているという話に同感されることでしょう。今回は、短い文章で終わりますが、内容の重要性は格別です。

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1017 蝶形骨のゆがみ

第1017号  2018年2月10日
▼ 蝶形骨のゆがみ

「ゆがみ」って、どういうことですか、というご質問を時々いただきます。具体的に説明してみたいと思います。

Yさんという女性。年齢不詳(ということにしておきます)。症状は色々あったのですが、特に注目に値するのは、目の周りが痛いという珍しい症状です。

初めにお断りしておかなければならないのは、人の体に絶対的な座標などないことです。高校数学の空間座標なら、X軸・Y軸・Z軸という座標があって、そこからの変位を「ゆがみ」ということができますが、そんなものは人体にはありません。

あえて座標を設定するなら、正中線が基準になるかと思われますが、人体は精密に言えば左右対称ではありませんから、おおよその基準として、左右対称を基準にするしかありません。前後については、個人差が大きく、相対的に考えるしかないでしょう。

さて、目の周りが痛いという症状。目の周りには、多くのツボがあって、そのポイントは誰でも若干の痛みがあるでしょう。ですが、そういうツボが痛いというのではなく、非対称にある痛みでした。

右の眉の上が痛い、左のこめかみが痛い、このこめかみで気づいたのです。こめかみに痛みがあると、たいてい舟状骨(*1)がゆがんでいます。つまり舟状骨が通常より盛り上がっている。

「ゆがみ」とは何か、と難しいことを言わなくても、ゆがんでいると、そこに痛みが出るわけです。この舟状骨にかぎらず、どこかに痛み(圧痛)があると、そこいらの骨にゆがみがある。

例えば、手の指が痛いという人をよく見掛けますが、そういう人は、手の指の関節がゆがんでいることが多い。関節のあるべき位置に骨がきっちり嵌っていない。こういうのが典型的なゆがみと言っていいでしょう。

ですから、目の周りが痛いという症状があるなら、その辺りに何かのゆがみがあることになります。目頭の上あたりですと、鼻の上にある篩骨(*注2)という骨がゆがんでいる場合がありますが、Yさんの場合は篩骨に痛みはなく、どこか別のところのようです。

そこで舟状骨を触ってみると、「痛い」という。すれば、舟状骨と密接な関係にある蝶形骨(*注3)がゆがんでいるのだろう、と思ってこめかみを触ってみると、盛り上がり感があり、しかも押えると違和感があるという。

そこで、舟状骨を正常な位置(*注4)に戻してやると、こめかみの違和感が消え、もりあがりもなくなりました。

それだけではなく、目の周りの痛みも消失したというわけです。

ところで、まだおまけがあります。この女性Yさんには、他にも違和感のある場所があった。それは左足の第3趾の中足骨(*注5)です。ここに違和感があれば、顎関節症が疑われます。「顎はおかしくないですか」と尋ねてみると、「おかしいです」という返事。

ということは、第3趾→舟状骨→蝶形骨というつながりがあったと考えられます。言い換えると、ここの線上に歪みの連鎖があったわけです。こういう線を無視すると、改善できないゆがみが残るということになります。

この線状の連鎖は経絡とは異なりますし、筋膜トレインなどというものとも違います。こういう線が身体のあちこちに巡っているのではないか。そういうものに注目していたのは、ひょっとするとチベット医学ではないかと今は思っています。

*注1 舟状骨 ここでは足の付け根あたりにある横長の骨。間違って「せんじょうこつ」と読む人があるが、「舟」は「せん」ではなく、「しゅう」がただしい。手にも同名の骨があるので、区別する時は、「足の舟状骨」、「手の舟状骨」といわなければ、混乱する。

*注2 篩骨 鼻の付け根あたりに存在する複雑な形状の骨。詳しくは画像検索をかけて、調べてみてほしい。

*注3 蝶形骨 左右のこめかみを貫いて、目の奥に存在している。これも複雑な形状なので、詳しくは画像検索で。これがゆがむと、目の周りに痛みが出るばかりでなく、こめかみにも違和感が出る。脳とも関係の深い位置にあるため、全身への影響も無視できない。

*注4 舟状骨を正常に戻す これについては 『共鳴法教本』 に詳しく書いてあるので、そちらを参照。

*注5 中足骨 足の指の手前にある長い骨。ここは、足の捻れと関係し、複雑な捻れ方をするので、放置すると全身に影響がある。逆にいえば、ここで全身のゆがみを直すこともできるかもしれない。

1006 踵は最大の着眼点

第1006号  2017年12月5日
▼ 踵は最大の着眼点

よくどこを観察すればいいのかが分からないという声を実習生の方々から聞きます。皆さんが分からなくて悩んでいるのは、その点なのですね。先日も「鎖骨」という着眼点を取り上げました。今回は踵(かかと)を取り上げます。

「かかと」というポイントは、おそらく人体の中でも最重要のポイントの一つです。なぜそんなところが、と首をかしげる人もいらっしゃるでしょうか。

考えてみてください。踵に全身の体重がかかります。いわば人間の土台。

特に踵に左右差があると、両脚の長さが違っていなくても、まっすぐに立てず、どちらかに重心が偏るために、色々な問題が発生します。

「かかと」を見て、どうすればいいのか、というお尋ねでしょうか。踵の後ろを見るんです。見るというより、触ってみるのがいいかもしれません。

踵に問題が潜んでいる人は、どこがどうなっているかといえば、踵の上にある距骨が後ろに出ています。後ろに出るという意味がわかりにくければ、踵骨が前にずれて、逆に距骨が後ろにずれている、といえばわかりやすいでしょう。

アキレス腱の前に距骨がありますから、距骨に後ろから触れようとすると、アキレス腱の横から距骨を触ってみればよいでしょう。その辺りに圧痛があれば、距骨が後ろに出ていることが分かります。

この辺りに圧痛があれば、距骨が後ろに出ている、逆にいえば踵骨が前にすべっている。こういう状態になっていれば、重心が後ろに寄ってしまっているわけです。

そのため、靴に踵(ヒール)をつけざるを得なくなる。男性の靴でもヒールがあるのは、そのためでしょう。

というわけで、何かよく原因の分からない症状がある場合、踵に問題があると考えてみると問題が解決する可能性があるというわけです。例えば坐骨神経痛もどき、正坐できない人、などがこれに相当するのではないか、と考えています。

その瞬間、あなたの取り組んでいる相手の人生が一変する可能性があると言っておきましょう。【かかとが変わると全身が変わる】といっても過言ではない。

距骨の位置を変えるには、踵に愉気する方法も考えられるでしょうし、距骨と踵骨を誇張法で処理するのも一方法です。ですが、こういう言い方では非常に分かりにくいかもしれません。難しく考えず、距骨を前へ押すのも一つの方法です。

踵が重要と書きましたが、正確に言えば足首にある「距骨」(*注)が重要ということです。ほんのわずか距骨がズレていると全身の不調を呼ぶということになります。靴の重要性も、これで納得していただけるでしょうか。

操法を受けに来られる方々をみていると、ほとんどの人が足首の調整を必要としています。履物がどれだけ身体に影響を与えているかを毎日、実感しています。

靴(履物)をけちったら医療費がかかるから、履物にお金をかけるのが得ということです。変な健康サプリや健康グッズにお金を掛けるらいなら、履物にお金をかけよう。

それとともに、かかりつけのいい靴屋さんを探そう。病院ショッピングをする前に、靴屋ショッピングを。

*注 「距骨」──スネの骨(脛骨)の下、踵の骨(踵骨)の上にある独立した小さい骨。これの位置のわずかの変位で、人は体のバラスをとっている。もちろん、バランスに関係した骨は他にもあって、距骨だけではないが。

990 踵の重要性と間接法

第990号 2017年9月23日
▼ 踵の重要性と間接法

膝痛で通って来られている70代の女性が、急に痛くなったのでみてほしい、と言って来られました。

さっそく来られたので、どこが痛いのか、と尋ねてみますと、膝の裏側が突っ張る感じがするというお答えでした。

通常、こういう症状であれば、まず疑うのは、脛骨の前方転位(前にズレている)です。ところが、どうもそうではないらしい。

膝裏(膕、ひかがみ)からふくらはぎの方向に引っ張られる感じだという。となれば、私は踵を疑います。「末端に原因あり」という原則どおりです。

距踵関節(かかととその上にある距骨のつなぎ目あたり)の後ろを押さえて見ると、痛みが出ると言われる。

こういう場合、踵骨の方に痛みが出るよりも、むしろ距骨側に痛みが出ます。ということは、距骨が後ろにズレていることになります。

しかし距骨という骨は、筋肉の繋がらないベアリングの役割を持っている骨なので、これが後ろにズレているとなると、重心が後ろに寄っていることを示していると考えられます。

この場合、どうやって修正したらよいか。色々方法は考えられます。いままでこういうことをしたことがないとして、の話しですが、もちろん。

操法の時に、これまでやったことのない方法を採用しなければならないという場面に遭遇することは珍しくありません。その時に即興で案出しなければならない。

「即興で案出」などというと、不安を覚える人がいるかもしれませんが、操法というものは、本質的にそういうものだと思っておかなければなりません。出来合いの方法があって、それを適用すれば問題が解決するというほど甘くはない。

むしろ、相手の身体の状況は無限に変化のあるものですから、対応も当然、無限のバリエーションがあって当然です。一言でいえば、「諸行無常」。

というより、正確に言えば「諸法無我」でしょうか。世界のどんなものにも実体がない。どんなものにも「実体がない」というのは、操法の上でも重要な原則の一つだと思います。

で、どんな方法を採用するのか。

直接法(微圧法)なら、踵骨を動かないように固定しておいて、距骨を少しずつ前に押す方法が考えられます。

間接法(操体法)なら、距骨を後ろに引っ張っておいて、そっと離す方法でしょうか。

同じく間接法(共鳴法)なら、小指の第1関節掌側のところから、少し爪先方向に擦る方法。

こういう場面でどれを選択するか、という時に、その操者のセンスが問われます。つまり直接法が好きな人、間接法が好きな人、という違いがあるように思います。

ここで、「直接法」というのは、いわば車体のへっこみを叩いて直すような方法です。これは発想法としては一番わかりやすいでしょうが、安易にすぎ、事故を起こしやすい。特に力を直接歪みの箇所にかけてゴリっとやる方法。

「間接法」とは、へっこみを叩いて直すのではなく、へっこんでいるところを裏から余計にへこませる方法にそっと押すと、身体が反発して次第に直ってくる方法です。

こちらは事故の可能性が低いだけでなく、身体の自然性に従っていますから戻りにくい。同じく間接法でも共鳴法なら、患部に触ることもありませんから、もっとも安全性が高い。いわばリモート・コントロールですから。

さて話がもとに戻りまして、この時は、この女性の踵を正常にするのに共鳴法を使って行いました。これはテキストにも載せていませんし、講座でも話していません。いわば、即興で案出した方法ですが、それが奏功したことになります。

このようにして距骨の位置が改善しますと、膝の裏側のつっぱりが消失しました。ひざ痛を
踵で直したということになります。こういう場合もあるという例として、取り上げてみました。こういう意味でも、このような操法は「間接法」になっています。

つまり「間接法」という名称は、患部を直接さわらない、という意味と、患部とは別の場所に根本原因を発見して離れた場所から攻める方法、という意味も持っています。もちろん、さきほど書いたように、反対側から少し歪ませると直るという意味も含まれています。

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986 しゃがめない人

第986号 2017年9月1日
▼ しゃがめない人

絶対にしゃがめない、という人がいます。このごろは和式トイレが減ったからいいようなものの、用を足すのに行くのに困りますね。

そういう人は今少しでしゃがめるのだけれど、と言いつつ、両腕を前に出して、しゃがもうと頑張りますね。あれは、どうしてなのか、というところから、考えていくことにします。

両腕を前に出して、何をしているのか。何をしているわけでもない。腕を前に出さないと、後ろに倒れるから、腕を前に出しているわけです。つまり、こういう人は、重心が後ろに偏っていることが分かりますね。腕を前に出すと、わずかでも、重心が前に寄りますから、ひっくり返らずに済む

そうやって頑張っているわけです。ちなみに、おれはしゃがめるぞ、とか、私は簡単にしゃがめるわよ、と威張っている人でも、腕を後ろで組んでしゃがんでみてください。

そうすると、隠れ「しゃがめない人」が結構いることが分かるかもしれません。

しゃがめる、と言っても、踵がピタっとお尻についている、くらいでなくては、本当にしゃがめるとは、いえませんので、念のため。

「クソッ」と悔しがっても、しゃがめないものはしゃがめない。

踵がお尻につくというのは無理でも、せめてふくらはぎとふとももの後ろが密着しているのでなければ、ねえ。

982 末端に注目(1)

第982号 2017年7月23日
▼ 末端に注目(1)

70代女性Hさん。膝の状態がよくないと来られました。ところが、その症状が普通の膝痛とは違っています。膝が痛いというと、膝の内側とか、お皿の下とかが痛いと言われることが多い。

Hさんは、膝の裏がつっぱって痛いという。特に、椅子に坐った状態から立ち上がる時に膝の裏が突っ張って痛いのだそうです。

裏が痛いという場合は、脛骨が大腿骨に大して前に出ていることが多いものですが、Hさんの膝を調べて見ても、脛骨が前に出ている様子はありません。

どんな症状でも、このように標準的なパターンからずれている場合は、原因の解明が難しいものです。私の場合、最初に徹底的に原因を究明する作業をします。そうでないと、無闇に「症状を追いかけ」て、結果がでないという情けないことになってしまうからです。

「徹底的に原因を究明する」といっても、いつもうまくいくとは限りません。最後の最後まで、何が原因か分からずじまいということもあります。こういう時に、「症状だけを追いかけて」みてもうまく行きません。

よくどこかの整体へ行って具合が悪くなった、どこそこの整骨院へ行ったけれど、よくならなかった、と言って来られる人がいらっしゃいますが、施術の様子を聞いてみると、大抵は「症状だけを追いかけ」て失敗していることがわかります。

ということは、施術者にとって、「症状を追いかける」誘惑から逃れるのが難しいということを意味しているでしょう。この人の症状は、どこがどうなっているのか難しいという場合、つい症状を追いかけたら何とかなると思ってしまうのですね。

「症状を追いかける」といえば、操法のプロは、どういうことか経験があるので、よく分かると思いますが、施術経験のない人には想像するのが難しいかもしれません。

そこで少し説明しておきましょう。例えば腰が痛いという。

これは仙腸関節が緩んでいるのだろうと見当をつけて、骨法などで仙腸関節を締めてみます。ところがまだ真ん中のこの辺りが痛いという。そうすると仙骨が歪んでいるのか、と考えて仙骨の歪みを正そうとしてみる。すると、真ん中の痛みは引いてきたけれど、今度は腰骨の右上が痛いという。・・・

という具合で、その時その時で、痛みのあるところを次々施術して行く。これが「症状を追いかける」と私がいう意味です。

こうなると、とどのつまりあちこち触りまくって、どうにもならない。これでもか、これでもか、という最悪のパターンに嵌ってしまうわけです。

さて、話を戻して。Hさんの膝のことでした。おっと、今は夏休みで操法はしていないはずじゃないんですか。と訊いて来られた方がいたので、釈明しておきますが、原則は夏休みなんです。けれど、腰が痛くて動けません、どんな時間でも行きますので、何とか、などと言って来られる人があるので、そうも言っておられません。時々開けています。

でHさんの膝。いつもの膝痛のパターンに従って最初やっていたのですが、どうも感覚的に違う感じがする。これではダメだ。じゃあどうする。一つの定石は「末端に注目」。これです。うまく行かないときは定石に戻るというのは、碁や将棋だけではありません。

膝が痛い、しかも裏が突っ張るという場合、末端はどこか。脚の裏側の末端で問題を起こしやすいのは、どこかを考えればいいわけです。答えは踵。

踵の骨つまり踵骨はよくズレを起こしやすい場所で、起きた時に踵が痛いという症状を経験している人は多いでしょう。踵のところの踵骨と、その上に乗っかっている距骨との関節、つまり距踵関節(距骨下関節)が前後にズレている人は多い。踵骨が後ろにズレ、距骨が前にズレている状態になっています。

この状態になると、踵の後ろを押すと痛い。場所を詳しくいうと、アキレス腱の下(付着部)です。この辺りが痛む。Hさんのこの場所をぐっと押してみますと、予想通り、「痛い」そうです。

この状態を改善する方法について。仰臥してもらい、操者は受け手の足首を上からぐっと押さえ、足の中足骨の辺りをつかんで、足首を前後に動かす。すると、上から押さえているので、床からの力が踵骨を上に押し返す格好になっています。

この状態で足首を前後に動かすと、踵骨は下から押し返されて正しい位置に戻っていく。直接法ですが、これが威力を発揮します。しばらくゴキゴキという動きを続けて、先ほどの痛みがどうなっているかを確かめますと、かなり痛みがとれたという。そこで、もう少し同じことを続けて、痛みが完全になくなるようにします。

そうして朱鯨亭の傾いた階段(階段は傾いているのが当たり前だ、などと余計な半畳を入れないでもらいたい。朱鯨亭の階段はおんぼろで横に傾いているんですから)をそろそろ上がり降りしてもらった。「痛くない」。よし。

というわけで、くどい説明に付き合っていただいて、ありがとうございました。これで一件落着ですな。少し解説を付け加えると、Hさんの踵が少しズレていた。そのため、踵周辺に筋肉や靱帯の拘縮が起きて、それが下腿の後ろを経て、膝の裏(ひかがみ)の辺りを引っ張っていたわけです。これが立ち上がる時に痛みを出していた。

という次第で、「末端に注目」という定石が役に立った例でした。次回も、この定石にあたる例をご紹介しようと思っています。お楽しみに。

975 腓骨頭

第975号 2017年6月11日
▼ 腓骨頭

両脚の側面にある腓骨の上端にある膨らみを「腓骨頭」(ひこつとう、またはひこっとう)と呼びます。ご自分の膝の少し下、両側の外側面を押さえてみてください。小さな骨のでっぱりがありますね。お灸を据える人なら「足三里」として知っている点の少し外側です。

この腓骨頭が左右バランスを取る上で大切なポイントであると十分に認識されていないように感じますので、それについて書いておきたいと思います。

例えば、「坐骨神経痛」(と呼ばれる症状)の人を考えてみましょう。その人の腓骨頭を触ってみますと、必ず、患側(症状のある側)の脚の腓骨頭が飛び出しています。(両方とも悪いという人もたまにはいますから、そういう場合は、両方が同じように飛び出しているかもしれません)。

仮に左側が飛び出していたとしましょう。その場合、左の腓骨頭が飛び出しているのは、左側の腓骨と脛骨が離れていると考えられます。まとめて言えば、下腿の脛腓間が開いているわけです。

ですから、これを拇指操法で締めることは可能です。ただ、「坐骨神経痛もどき」(「坐骨神経痛」という病名そのものに問題があるので、今後は、この呼び方にします)の人を拇指操法で対処しようとすると、症状が悪化することがあります。ですから、こういう場合には拇指操法は避けた方が賢明です。ではどうすればよいか。

腓骨頭を微圧で、締めたらいいんです。具体的には、片手を腓骨頭の外側に当てがい、もう片方の手を大腿の内側に当てます。そうして微圧を掛け続けます。

こうして腓骨頭が締まってきますと、全身の左右バランスが変ってきます。例えば左の腓骨頭を締めていくと、左右バランスが右に移動します。別の言い方をすれば重心が右に移動します。

操法というものは、色々ありますが、その優劣を問うなら、一つの操法で全身のバランスが整うような操法が優れているといえるでしょう。

これでもか、これでもか、と色々やって初めてバランスが取れる操法より、さっとやるだけで簡単に全身が変化する操法の方が、受け手の身体の負担が少ないことには、だれしも納得されるはずです。操者の手間も少なくて済む。

その意味で、受け手の左右バランスがどちらに偏っているかをよく調べ、それを変化させることができれば、一つの操法で、色々な症状がさっと消えることも十分にありえます。

こんな観点から考えれば、腓骨頭を内に入れる操法は、簡単で効果の高い操法であるということができると考えられます。もちろん自分で(セルフで)やることも可能です。