975 腓骨頭

第975号 2017年6月11日
▼ 腓骨頭

両脚の側面にある腓骨の上端にある膨らみを「腓骨頭」(ひこつとう、またはひこっとう)と呼びます。ご自分の膝の少し下、両側の外側面を押さえてみてください。小さな骨のでっぱりがありますね。お灸を据える人なら「足三里」として知っている点の少し外側です。

この腓骨頭が左右バランスを取る上で大切なポイントであると十分に認識されていないように感じますので、それについて書いておきたいと思います。

例えば、「坐骨神経痛」(と呼ばれる症状)の人を考えてみましょう。その人の腓骨頭を触ってみますと、必ず、患側(症状のある側)の脚の腓骨頭が飛び出しています。(両方とも悪いという人もたまにはいますから、そういう場合は、両方が同じように飛び出しているかもしれません)。

仮に左側が飛び出していたとしましょう。その場合、左の腓骨頭が飛び出しているのは、左側の腓骨と脛骨が離れていると考えられます。まとめて言えば、下腿の脛腓間が開いているわけです。

ですから、これを拇指操法で締めることは可能です。ただ、「坐骨神経痛もどき」(「坐骨神経痛」という病名そのものに問題があるので、今後は、この呼び方にします)の人を拇指操法で対処しようとすると、症状が悪化することがあります。ですから、こういう場合には拇指操法は避けた方が賢明です。ではどうすればよいか。

腓骨頭を微圧で、締めたらいいんです。具体的には、片手を腓骨頭の外側に当てがい、もう片方の手を大腿の内側に当てます。そうして微圧を掛け続けます。

こうして腓骨頭が締まってきますと、全身の左右バランスが変ってきます。例えば左の腓骨頭を締めていくと、左右バランスが右に移動します。別の言い方をすれば重心が右に移動します。

操法というものは、色々ありますが、その優劣を問うなら、一つの操法で全身のバランスが整うような操法が優れているといえるでしょう。

これでもか、これでもか、と色々やって初めてバランスが取れる操法より、さっとやるだけで簡単に全身が変化する操法の方が、受け手の身体の負担が少ないことには、だれしも納得されるはずです。操者の手間も少なくて済む。

その意味で、受け手の左右バランスがどちらに偏っているかをよく調べ、それを変化させることができれば、一つの操法で、色々な症状がさっと消えることも十分にありえます。

こんな観点から考えれば、腓骨頭を内に入れる操法は、簡単で効果の高い操法であるということができると考えられます。もちろん自分で(セルフで)やることも可能です。

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901 肘のカンタン自己操法

第901号 2016年6月8日
▼  肘のカンタン自己操法

肘に問題を抱えている人が多いですねえ。というと、私は何ともない、という反論が返って来そうです。

ところが、肘の先の肘鉄(肘頭)の周辺をぐっと押さえられると、あいた、となる人が多い。自分では痛みがないつもりでも、押さえられると痛い。こういう人は肩や膝にも問題を抱えていることが多いものです。

肘鉄の周辺をあちこち押さえてみてください。どこも痛いところはありませんか。

もし痛ければ、どうして治すか。カンタンな方法があって、抜群によく効きますから試してみてください。

まず、痛みがあった肘頭を反対の掌で包む。次に痛くない方の肘頭も痛みのある側の掌で同様にします。つまり腕組みを、肘と掌でするわけです。

後はこのまま数分の間じっとしている。それだけです。

またまた「数分」とは、どれくらいですか、などと初歩的な質問をする人がいるといけないので、言っておきますが、数分というのは目安で、当然、人により、体の状況により、違います。2分で止めて痛みが取れていなければ、もっと続ければいいだけのことです。

あまりカンタンすぎて、信じられない。そうでしょう。でも、やってみればわかります。

肩が悪い人、膝が悪い人にお勧めです。

ただし、この操法をいくら続けても痛みが取れない人は、症状が深刻化しているわけで、そういう人は、ただちに朱鯨亭に駆け込んでください。

「肘のカンタン自己操法」について、その効果を知らせてくれた方が複数あり、ご紹介しておきます。

●大阪府在住のMさん

先日、腰痛で来られた時に、「友人に教えたら、1分もしないうちに効果があったみたいですよ」と。そして、もう一人の人に勧めたら、肘だけでなく、腰まで治ったようです」とのことでした。

●静岡県在住のOさん

丁度良いタイミングで、妻が肩と膝と腰が痛いと言ってきましたので、早速、肘の操法を試してみましたところ、おっ!肩も膝も腰も良くなった! とお褒めの言葉を頂きました。

というわけで、この操法(具体的には、前号を参照してください)は、膝や腰にも効果があるようです。

肘を治すと膝が治るのは、昔から言い習わされていることで、特に珍しくありません。ですから、膝が痛くて困っている人は、この操法を繰り返し行なって肘周辺の痛みを治しておくと、膝にもよい効果があるに違いありません。

ですが、腰が治るのは、どのような理由からでしょうか。肘を治すと、肩の動きが改善します。ということは、肩から背中にかけての影響も変化するということです。背中の状態が変われば腰が変わるというのは、操法をしている人なら、いつも経験している現象でしょう。

こんなふうに、肘が変わると腰も変わります。人体には、このような連動性があちこちに観察できますから、連動制の体系をとらえることは、操法に取り組む人の大きな課題であると思います。

880 複合症状【3】

第880号 2016年2月1日
▼ 複合症状【3】

【承前】一週間後、Aさんが来られた。「痛くなった」と言われるのではないか、
とこちらはひやひやものですが、開口一番が、こうだった。

──夜中にうずいて眠れないということはなくなりました。

ということは、胸肋関節のズレが解決したということです。

やれやれ。「ホッと胸をなでおろす」というのは、こんな時。ひどい肩の痛みは、肘関節と胸肋関節の二原因による複合症状だったわけです。

こういうことがあるから操法は難しい。ここでも、「なぜ」という質問に答えるのはさらに難しい。なぜ、こんなことになっているのか。二原因のあいだに必然的なつながりがあるのかどうか。これはAさんの生活を詳細に検討してみなければ判明しないでしょう。

でも、なぜ過去の例のように激痛が出ることはなかったのか。おそらく、その人の感受性による違いです。同じ操法であっても、人により時期により、その反応は違います。

一般論として言えば、「正體術」の高橋迪雄が書いているように、比較的柔らかな女性や子どもでは、強い操法を避けなければならない。それに対して頑健な男性や身体の硬い成人では少々強い操法でも大丈夫なことがある。そういうことでしょう。

という次第で、Aさんの場合は強い操法が正解であった、ということになります。しかしこれは事後に言えることで、やはり普通は強い操法を避け、緩やかな操法を採用した方が危険が少ない。

よく整骨院などで、グッと力をかけて押されたので、おかしくなったと言って来る人があります。そういうことは、くれぐれも避けなければなりません。Aさんの場合、いわば結果オーライといえますが、Aさんの身体は頑健なものだったのでしょう。

さて、Aさんの症状はまだすべて解決してはいません。肘と膝が残っています。この先、どうなるか、お知らせするに足る情報が含まれていれば、続きを書いてみたいと思っています。

879 複合症状【2】

第879号 2016年1月31日
▼ 複合症状【2】

【承前】寝た時に、肩がズキズキ痛むというAさん。尾骨の処理で背骨がまっすぐになったのに、肩が一向によくならない。さて、どうしたらよいか。

肩の高さが違う場合に、まず第一に調べるべきは、腕のうしろにある伸筋の上腕三頭筋です。肩の高さが違う人は、高い側の上腕三頭筋が硬くなっています。

これを、操者の好みの方法で柔らかにしてやれば、肩の高さは揃ってくる。だがAさんは、肩の痛みが強いために、上腕三頭筋が痛いかと尋ねられても、何が何だか分からないらしい。大して痛みを感じるほどではない、ということでしょう。

しきりに「この辺りが痛い」と腕の上の方を押えるだけで、何がどうなっているのかよく分かりません。そうすると、次に調べる候補は肘ですね。肘頭の周辺に圧痛があるかどうか。

ところが、肘も肩の痛みとくらべれば、大したことではないらしく、むにゃむにゃで終わりです。こうなると、こちらとしては打つ手がなくなってくる。操者にとっては苦しい局面。指を調べてみても、何ともない。

どこが痛いのかよく分からない人は難しい。何が難しいかといえば、こちらは症状を手がかりにして、次の一手を考えているからです。「むにゃむにゃ」では一手を考えようがないわけです。

こういう時に、こちらの体勢を立て直すには、どうすればいいか。方向転換。これですね。こういう時は。とりあえず「むにゃむにゃ」というところは置いておく。そうして、新しい方向の探求に向うわけです。そのうちに、さきほどの方も道が開けてくるものです。

すみません。このあたりは完全に操法をする人向けの話になっていますね。自分の症状を自分でなんとかしようと考えている方々には、興味のない話かもしれません。でも、自分でやる場合も、操者と受け手が同一人であるというだけで、実は同じことだと私は思っています。時に自分でやる場合でも方向転換が必要なことがある。

方向転換しても、いずれ道が開けてくるのは、全身がつながっているからですね。

で、この場合、どこに方向転換したか。肩が痛いというだけではなくて、胸の上部が痛いと言っておられたので、そこを見てみようと。胸が痛いというのは、肋骨の変位があるからです。それ以外に、肋骨にひびが入っているケースもありますが、Aさんの場合は、そういう軽い痛みとは違っています。ひびはまず考えなくてよい。

そうすると、ありうるのは、胸肋(きょうろく)関節のズレです。胸の中央に縦に存在している胸骨と、肋骨とのつなぎ目。それが胸肋関節です。ですから、一つではなく、肋骨の数だけあります。

痛みの場所から見当をつけて、3番の肋骨と胸骨との関節をぐっと押さえてみた。すると、「痛い!」と強い反応。ここに間違いありません。ということはAさんの肩の痛みの正体は、腕から来ているものと、胸肋関節のズレから来ている部分とが合しているから、分かりにくく、本人にとっては辛い症状になっていると思われます。

そこで、この胸肋関節の調整にかかります。右腕全体を、当該の胸肋関節の延長上に持ってきます。そしてグッと腕を引く。一度やっても、改善したという声がないので、もう一度ひっぱりました。この日は、これで終わりです。書いてみればこれだけのことで、何だ短いというようなものですが、やっている当人にとっては、長丁場です。

こういう複合症状を持っている人の場合、痛みが消えたかどうか尋ねてみても、よく分からない場合がある。そうすると、これでよくなっただろうという想定のもとに、終わりにしなければなりません。

ところが昔の話になりますが、胸肋関節のずれていた人を調整したら、翌日、激痛になったというケースがありました。ひょっとしてAさんの胸が今ごろさらに痛くなっていて、今晩あたり電話がかかってくるのではないかと、気が気ではない。あんな強い調整法を採るべきではなかったかと反省しきり。(続く)

878 複合症状【1】

第878号 2016年1月28日
▼ 複合症状【1】

複数の症状を抱えて苦しんでいる人が多いですね。例えば、腰痛があって、首が痛くて、呼吸が浅くて、頭痛がする、という具合です。次第にこのような人たちが増えてきているようにも感じられます。というより、単一の症状だけで朱鯨亭を訪れる人は少数で、大抵の人が複数の症状をかかえて来られる。

もちろん、こんな人たちにマニュアル的な方法は通用しません。一つ一つの症状がばらばらに存在しているのではなく、全体として関連しあっているからです。

昨日のお客様、かりにAさん(70歳代、女性)としておきましょう。Aさんが訴えて来られたのは、右の膝痛、右腕の痛み、右肩の痛みでした。腰もすこし痛いとおっしゃっていたように思います。

中でも、胸の痛みが腕の痛みと合わさって、肩の周辺が夜ねている時にズキズキする。十分に眠れない。ということですから、不眠の症状もあることになります。

肩が痛くて眠れないという症状そのものは、珍しいことではありません。例えば五十肩の人には、そういう人が多い。でも腕を動かしてもらうと、腕が上がるのは確かで、五十肩の症状ではない。

まず背もたれのない椅子に坐ってもらって、後ろから観察します。背骨が直線でなく弯曲し、左肩が高く、右肩が低くなっています。あくまで一般論ですが、尾骨に問題がある人が、この種の背骨の人には多い。

尾骨の先端がどちらかへ曲がっているんです。曲がっているだけでなく、先端が硬く丸まって、周辺が硬く変形していることが多い。これが曲者です。この尾骨のために、そちら側が背中にかけて硬くなり、下から引っ張っています。

ために背骨がそちらの方へ弯曲する結果になっているわけです。骨盤も傾いていることが多いけれど、それよりも背骨全体が傾いていることの方が、あちこちに大きな影響を与えています。

「お尻を打ったことがあるでしょう」と言いながら、尾骨を調べてみます。このセリフは、これからあなたのお尻を触りますよ、という合図にもなっています。事実、Aさんの尾骨を触ってみると、確かに硬く固まって右に曲がっていました。

この尾骨をどう処理するか。それは一つの眼目でもありますが、ここのところにコツがあって、ここでは手の加減などがうまく伝えられないので、興味のある人は「からだほぐし教室」または「復習講座」に参加してください。この春の講座(関東を含めて)でも、この方法を詳しく取り上げることになると思います。

さて、尾骨をうまく処理できれば、背骨は黙っていても、ほぼ真直ぐになってくれます。それは我ながらほれぼれするほど。背骨の調整など簡単、と鼻唄の一つも出てきそうな勢い。

ところがAさんの症状には変化がありません。尾骨は確かに全身に大きく影響していることが確かめられたけれど、肩の痛みは相変わらずというわけです。
(この項、つづく)

876 肘の異常

第876号 2016年1月25日
▼ 肘の異常

肘(ひじ)の異常は、膝(ひざ)の異常と違って、体重がかからないためかあまり重要視されていないように思われます。膝の異常があると、正坐ができないとか、歩けないとか、その人にとって重大な状況になるので、深刻に感じられ、肘の方は、さほどでもないと感じられているのでしょう。

ところがEさんの場合は、両者のあいだに興味深い関連が観察されましたので、報告しておきたいと思います。

Eさんの訴えは、左の膝の内側に捻れたような感覚がある、というものです。

普通なら、さっそく膝の改善にとりかかるところですが、Eさんの場合は左肩が痛いという症状もあります。肘と膝とが関連していることは、よくあることで、膝の問題に対応したければ肘を直せ、という操法を唱えている操法家が昔からいます。ひょっとして左の肘が改善したら、膝もよくなるのではないかと考えました。

肘の異常は、実は膝よりも複雑かもしれません。でもその解決法は簡単です。

まず異常の有無を調べる。掌を向こうに向ける。つまり手の甲を肩に近づける。肘に異常があると、手の指の甲側を肩につけることができません。肘なんか、痛くもなんともないよ、とおっしゃる人でも、この検査をしてみると、意外につかない人が多い。つかなければ少しでもどこかに異常があります。その異常が直接痛みを生み出していなくても、どこかに影響を与えている。肩が痛いか、肩の動きが悪いとか、何かあります。

そんな時は、次の方法を試してみてください。いま手の甲側が肩に付くように努力しているわけですが、肘のあいだに反対側の手を挟み込みます。そうして、手の甲が肩に近づくように努力して、じっとしている。何分間と決まっているわけではないが、数分のあいだそうしている。そして終わったら、肘を調べてみます。動きがよくなっているはずです。まだ満足できなければ、同じことを何度も繰り返せばいい。

さて、これでEさんの肘は動きがよくなり、甲が肩にさきほどよりよく近づくようになりました。肘の周辺を押さえてみても、どこにも痛みや違和感はない。

それで 「膝はどうですか」 と尋ねると、痛みがありません、という答えでした。もちろん、すべての膝痛がこれでよくなるわけではありません。特に膝の周辺が硬くなっている場合は、それを何とかする方法が必要になります。念のため。

847 もやもや血管

路地裏の整体術 第847号 2015年10月23日
▼ もやもや血管

膝などの痛みは「もやもや血管」が原因であるとする理論が出ています。詳細は次の本を御覧下さい。

奥野祐次 『長引く痛みの原因は、血管が9割』 (ワニ、PLUS新書)

「もやもや血管」という名前は、もともと脳の「もやもや病」の原因として指摘されたもののようですが、それが脳だけではなく、膝や肘、腰など痛くなりやすいところにも出来ていることが見つかったということのようです。上記の新書は、理論中心で、具体的な対処法は専門的な方法しか紹介されていないのですけれど、今回、次の雑誌に具体的な対処法が紹介されています。

「夢21」 11月号 奥野裕次 「ひざ痛が今度こそよくなる!」 55ページ以下

私はこの種の健康雑誌は(読んでも役にたたないから)ほとんど読まないのですが、たまたま書店で見つけて、読んでみて興味を持ちました。それは初めに上げた新書を読んでいたからです。そうしてやってみました。これは見ごとに効果がありました。

肘などについても、同様に使えるようです。

膝痛で困っている方々は、ぜひ試して見られたらいかがでしょう。ただし高齢で膝そのものがカチカチになっている方の場合は難しいかもしれません。そういった場合は、これ以外にも、色々な方法を使って膝を柔らかにして行くことが必要なようです。

具体的な方法を教えてほしいとおっしゃるのですか。書店に出かけるくらいの労力はかけてください。あと、からだほぐし教室にお越しになれば、お教えします。すでに教室で取り上げました。