1052 肩と上部胸椎の密接な関係

第1052号  ’18年9月24日
▼ 肩と上部胸椎の密接な関係

上部胸椎とは、胸椎のうちでも、肋骨の反対側が胸骨に繋がっている部分、つまり肩甲骨の間に背骨が存在している部分です。胸椎上部といっても同じことです。

ちかごろ、この辺りが硬くなっている人が多い。先日、肩が痛いといってこられた男性Aさんもそうでした。肩が痛いというケースは腕を緩めることから始めるのが常道ですが、この方の場合、腕を緩めてみても、効果がない。

こういう場合はどこかに方向転換しなければならないわけですが、肩というのは、色々な要素が絡んできて、どこを選ぶかが必ずしも簡単ではありません。時には、足が絡んでいたりしますから。

さて、 Aさんの場合は、初めに背中を観察していたので、上部胸椎が気になっていました。
そこで、上部胸椎に左手の親指の側面を添え木のように当てがって、右手は烏口突起に当て、しばらく愉気をしていると、(ここのところは実際に見てもらわないと分かりにくいし、言葉による説明も十分ではないので、関心のある方は教室などにお越しください)

まず上部胸椎がまっすぐになってきました。そこで腕を上げてもらうと、なんと肩が痛くないというのです。肩が痛いという人で、上部胸椎の歪みが原因の一端をなしているケースを確認できたことになります。

例えば四十肩・五十肩の人で、上部胸椎に問題がある人が確かにいて上部胸椎を処置すると、楽になるケースがあります。ですから、肩と上部胸椎とは密接な関係にあるといえる。

というわけで、上部胸椎は、その裏にある胸骨と表裏一体の関係にあることを操者はわきまえている必要があるということになります。

身体の前面でいえば、胸骨・肋骨・鎖骨・肩は連動していることが分かります。さらに付け加えると、腕や手もこれらと連動しています。そして身体の後面にある、上部胸椎・肋骨・肩甲骨・腕が連動しているということになるでしょう。

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1047 肘痛・腕と鎖骨の関係

第1047号  ’18年7月22日
▼ 肘痛・腕と鎖骨の関係

肘の痛みは、簡単に見えますが、複雑な場合もあるという例。

このメールマガジンに登場いただくのは、何度目か、珍しい症状が現れている場合が多いので、過去にも何度かご登場願ったことのある50代の男性Sさん。

機械の操作をして居られるので、普通にはない複雑な症状で、いつも頭をひねることになります。

痛みがある時、その原因が周辺の筋肉の緊張にあると考えて取り組むと、どうもうまく行かないという場合は往々にしてあるものです。

原因の一部は遠く離れたところにあることが多い、と考えた方がいい。

肘が痛むという訴え。前回もそう言って来られて、一か月後に改善していないということです。

肘といえども侮れないですね。

腕の異常の出発点として、前腕から始めるのは定石通り。

確かに、前腕が緩んでくると、腕全体が楽になります。しかし、まだ完全にはとれていないらしい。

次の定石は何か。

手に異常があるとき、胸鎖関節に異常がある場合が多い、ということです。

例えば、指が動かなくなっている人で、胸鎖関節を調整すると、ただちに動くようになった例がありました。そんな困難な症例でなくとも、指の動きが悪い人は、胸鎖関節を調整すればよい。

どうするのか。難しいことは何もなく、胸鎖関節の飛び出しを三本の指でつまんで、じっとしているだけでいいのです。

これで肘の痛みが少し軽くなった。

次は何をすればよいか。胸鎖関節が硬くなっているのですから、その一端に連なる鎖骨を緩めればよい。

つまりは地獄の整体、失礼、極楽の整体ですね。そう言われれば、朱鯨亭の講座を受けた人なら、ご存知、極楽整体をしてあげればよい、と考えました。

これは鎖骨の後ろに指を差し入れて、腕を大きく回す方法です。非常に痛がる人が多いので、俗称、地獄の整体、しかしその後の解放感を思えば、極楽の整体というべきです。

これで、ほとんど肘の痛みが消えたようです。

というわけで、手指の動きが悪い場合、肘の痛みが簡単に消えない場合など、腕の不調があると、原因の一端は鎖骨周辺にあることが多い。リュウマチのような場合でも、鎖骨で指の動きが少し軽快することも、今日、別の方で確認しました。

1034 足の指が痛む

第1034号  ’18年5月14日
▼ 足の指が痛む

60歳代の男性、フローリングのところを靴下で歩いたところ、強い痛みが第2趾(あしゆび)に走ったと言われます。何か落ちているのかと探ってみても、何もなかった。

さっそく拝見しました。第2趾というのですから、わかりやすく言えば足の人差し指ということですね。触ってみると、特別に腫れているなどの症状はありません。私の指先の感覚では何も異常なし。

爪の裏あたりをぐっと押さえてみても、少し違和感がなくはないが、痛みはないのだそうです。なぜわざわざ来られたのですか、と尋ねてみると、足の指は大切なところだと聞いているので、こんなところに痛みが出るのは変だ、何かあるのか、と思って心配になったと言われます。

普通はこういう時は、ここでおしまいにするのですけれど、この時は何かひっかかるものを感じ、方法がないかと考えてみました。

そうだ。こういう時は「対角線療法」があるではないか。つまり症状のある場所から、対角線上にあたる場所に何かあるのではないか、そこに手当をすれば改善するのではないか、という方法です。

右足の第2趾と対角線にあたるのは、左手の示指(人さし指)なので、そこで、左手の示指の先を持って、ジッと愉気すること、3分。反対側の右手の示指ももって、気のループを作り愉気しました。

それで硬いところを歩いてもらうと、まったく違和感もない、とのこと。第2趾を持って、ぐっと押さえてみても、何も感じません、という返事です。

時間が短かったので、いただいたお金の一部をお返しして、「喫茶店にでも寄って帰ってください」と申し上げました。

足に異常がある時、手を使った方がやりやすいし、簡単です。操者が変な気を受ける心配もない。

趾の(第2関節が膨れている)ブシャール結節がある時も、足そのものに愉気するより、手の第2関節に愉気する方が簡単でいいかもしれません。

1005 動悸に新ムドラー

第1005号  2017年11月30日
▼ 動悸に新ムドラー

以前、[971号](17年5月14日発行)に「不整脈(注*1)に井形ムドラー(注*2)」という記事を書きました。

それはそれでいいのですけれど、形が複雑で理解しがたい難点がありました。そこで、その改訂版を。

動悸・不整脈といっても、どれにもこれにも効くというわけには、もちろん参りませんが、少なくとも「期外収縮」という種類にはよく効くようです。

ところが、この「期外収縮」という種類の不整脈は、病院では相手にしてもらえない。「これは治療の対象外です」などと冷たくスルーされてしまうのです。

私自身も、これが気になって病院に行ってみたことがありましたが、誰でもこの種のものは、出ていますよ、という説明でいなされてしまいました。

普通に脈を打っている時に、突然トーンと強い脈が混じったり、トトーンと脈が跳んだりするのが「期外収縮」です。

言われるように別段心配のないものなのかもしれませんが、本人にとっては気持ちの悪いこと夥しい。何とかならないかと思うのが自然です。

ましてトトーン、トトーン・・・と連続して出たりすると、自分の心臓はどうなっているのかと心配になってくるのは自然のなりゆきでしょう。

ところが現代医学では解決策がない、となると、自分で対応策を考案するしかない。「動悸がする」という人は多いですから、ぜひともカンタンな誰でもできる方法を提案したいと前から思っていました。

分かっていたことは、不整脈は胸椎4番(注*3)と関係があるという事実です。もちろんパートナー・家族に胸椎4番を整えてもらえばいいわけですが、これがカンタンではありません。胸椎4番を具体的にどうするのか、一から順に説明しなければなりませんから。

そこで、どうするか。胸椎4番の代わりに、胸椎4番の対応点に愉気すればいいはずです。胸椎上部の対応箇所は、手の中指の基節骨(注*4)です。

中指を掌側にぐっと折り曲げて、その基節骨のところを親指で押える。したがって、人差し指は上に突き上げるような形になります。この形のまま、不整脈が止まってくるまで続ければいいわけです。

結論は、これだけ。カンタンですから、ときどき動悸がするという人は、お試しください。特に寝ている時に動悸がするなどという人にはお薦めです。

注*1 不整脈──脈が正確に規則正しくリズミカルに打たず、リズムが乱れたり、その波形が乱れたり、速くなったり遅くなったりするものをいう。

注*2 ムドラー ──手で結ぶ印のこと。インド等で、手の印を健康法とする考え方がある。

注*3 胸椎4番──背骨を上から順に、くびの頚椎、むねの胸椎、こしの腰椎などと呼ぶ。胸椎は、首の下後ろから始まり、肋骨の下の端あたりまで。上から順に1番・2番と番号をふる。12番まで。

注*4 基節骨──指の骨には、指先から順に、末節骨・中節骨・基節骨となづける。基節骨は、したがって指の付け根の骨という意味。ここでいう場合は、中指の基節骨。

996 ブシャール結節

第996号 2017年10月24日
▼ ブシャール結節

昨日の「ヘバーデン結節」をネットで調べているうち、「ブシャール結節」というものもある、ということが分かりましたので、お知らせしておきます。

ブシャール結節は指の第二関節に発症するもので、第一関節に発症するヘバーデン結節と混同することはありません。

シャルル・ジャック・ブシャール Charles Jacques Bouchard (1837-1915) というフランスの病理学者が報告したので、この名前がついています。

しかし第二関節だと、リュウマチと間違えそうです。ブシャール結節とリュウマチとの違いについて、こちらに詳しい記事があります。
→ http://kansetutuu-sinkeituu.com/bouchard

要するに、第二関節周辺に「骨棘」(こつきょく、骨のとげ)ができているかどうか、が大きな差のようです。リュウマチの場合は、骨棘ではなく、レントゲンで関節そのものの破壊が観察される、ということになっています。

第二関節の異常は、非常によく見かけるものです。大抵の人が第二関節のところが大きく膨れていることが多いもので、それは突き指だろうと勝手に想像していたのですが、そうではなく、このブシャール結節なのかもしれません。

いずれにしても、これは私自身の今後の研究課題でもあります。おそらくこのブシャール結節であろうと思われる例を、先日見ています。触った時の感じはリュウマチとは違い、触っただけでも、慣れれば区別できるのではないかと思います。

指の使いすぎが関わっているように思われます。外国の文献をあたってみると、ヘバーデン結節と同じく趾(あしゆび)にも発症するようです。

私としては、リュウマチとの区別より、突き指との区別の方が気になるところです。足の第二関節が膨れている人など、珍しくもありませんから。

983 末端に注目(2)

第983号 2017年7月29日
▼ 末端に注目(2)

「末端に注目」の第2回です。症状のある場所そのものをいくら触ってみても、うまく行かない時、その末端にあたるところに注目すればうまく行くことがある、という原則です。

ご承知の通り、私は夏休みでいま操法を休んでおりますので、記憶を頼りに書きます。細部は少し実際と違っているかもしれません。中年の女性を仮にAさんとしておきます。

Aさんは、肩に痛みがあると、来られた方です。肩こりをとおり越して、肩が痛いという方も実に多いですね。ひどくなると、腕が動かないということになります。

肩に何か問題があるのかと尋ねてみると、レントゲンを撮ってもらったが、骨はなんともないそうです、といった答えが返ってきます。肩を打って骨折をしているなら、夜間もシクシク痛むという理由が分かりますが、そうではありません。

そうなると、肩にシクシク痛む箇所があるのは確かですが、なぜ痛みが出るのか、その原因が分からないわけです。

こんな時、私は「末端に注目」します。肩から見て末端とはどこか。いうまでもないと思いますが、手指が末端です。時に途中の肘や手首に原因が潜んでいることがないとは言いませんが、大抵は手指に問題があります。

Aさんに尋ねてみました。

── お若い頃、中学生、高校生の時代に指を傷めたことはありませんか?
── あります。あります。突き指を何度もしていました。
── そうですか。バレーボール、バスケット?
── ソフトボールです。
── なるほど。それで分かりました。

といいながら、Aさんの手指を見ると、第2関節がどれもこれも節くれだっています。突き指はどういうわけか第2関節に多いものです。

手指を曲げてみると、第2関節がもっともよく曲がるはずです。第1関節・第3関節はさほどではない。ということは、ここがダメージを受けやすいということになりますね。

ですから、突き指を調べる時は第2関節を調べるといい、と思います。第2関節を握ってみて、かなり硬く節くれだっている感じを受けたら、まず突き指と考えて間違っていません。

いまは、そこに異常を感じていないかもしれません。しかし、そこに突き指の痕跡が残っていることが多い。体の他の部分ですと、打撲痕が問題になりますが、指の関節は曲がる構造ですから、突き指の痕跡を残していることが多いわけです。

実際に硬くなっている関節を解剖してみたわけではないので、推測ですが、第2関節の周辺の組織にカルシウムなどが沈着して硬くなっているのだろうと思います。指節間の靭帯などが硬化して、関節と関節のあいだに圧痛を感じる場合もあります。

さて突き指の直し方ですが、誇張法が最適です。突き指になったら、すぐひっぱれ、などと言われますが、そんなことをしたら、よくなるものも、逆に悪くしてしまいます。人間の体は、外力に抵抗する習性があって、引っ張ると、縮もうとする。押し縮めようとすると、逆に伸びようとするわけです。

ですから、突き指があれば、(仮に数十年前の故障であっても)その関節を軽く押し縮める方向でじっと押さえて(といっても愉気の感覚でよろしい、強く押すと失敗します)いればよい。すると、関節がもとに戻ろうとします。

比較的新しい突き指であれば、そのようにじっとしていると、骨が勝手に動いたと感じる瞬間がやってきます。(それは操者も受け手も同じように感じます)それでOKです。それ以上、押える必要はありません。古い突き指では、そう行かない時もあります。直ったと感じる瞬間がない時もあります。

Aさんの場合は古すぎて、いずれも動く感じがありませんでした。そこで、このくらいの感じかな、とカンで終わったのですが、第2関節を動かしてもらうと、何れも動きが改善していました。

すると、肩の痛みがずいぶん軽くなったようです。かなり自由に腕を動かせるように変化していました。

というわけで、肩の問題が突き指を直すことで解決したわけです。突き指かどうかを判断するカンタンな方法があるのか。と尋ねられると、当該の関節を突く方向に動かしてみることです。突く方向と、ひっぱる方向に軽く動かしてみて、突く方向が行きやすければ、突き指の可能性が高いことになります。

そんな面倒なことを一つ一つやってられないと感じるならば、ともかく第2関節を拇指と示指とで挟んでみて、硬い節くれだった、盛り上がった感じがするかどうか調べてみてください。そうすると、ほぼ突き指かどうか判別できることでしょう。

足の指についても同様な方法が使えることがあります。

前回は膝の痛みの原因が踵にあった、という話でしたが、今回は肩の痛みの原因が手指にあった、という話で、いずれにせよ、「末端に注目」という原則がそこに潜んでいました。

977 ツボをきつく押されすぎて

第977号 2017年6月23日
▼ ツボをきつく押されすぎて

からだほぐし教室の常連のひとりMさん。左の肩が異常に痛いという。肩が痛いだけでなく、上腕にも痛みや違和感が広がっているらしい。

教室が始まる前に、色々やってみたものの、いまいちよくならない。そこで教室終了後に空き枠があったので、そこに入ってもらいました。

心当たる原因について話合っている内に、次のような話が出てきました。

先日、某足ツボの講座に参加したそうです。そこまではよかったが、その指導者にツボを必要以上に強く押されたという。それも足のツボではなく、手のツボ、拇指と示指(人差し指)の谷間にある、よく知られたツボ、「合谷」(ごうこく)を思い切り押されたらしい。

痛いのを通り越して、思い切りしびれるほど押された。それも一度でなく、何度も強圧されたという話です。それ以来、肩の調子が悪いように感じるという。

もちろん、こんな話を聞けば、誰でも何かおかしいと思うことでしょう。ツボを押すという方法は、確かにありますが、そんなに思い切りしびれるほど押すなどという激しい方法は聞いたことがない。どんな方法を使うにせよ、まずは気持ちがいい程度というのが原則です。

押されたことも原因の一つかもしれないと考えて、指を触ってみると、示指の基節骨や中手骨が異常に硬くなっています。この辺りが硬くなっていることはよくあることで、珍しくありませんが、それにしても、ここだけ異常に硬い。

「合谷」というツボは、普通、拇指と示指の谷間というふうに説明されていることが多いものですが、ツボの専門書の記述をみると、示指側の中手骨の付け根くらいの位置で、どちらかといえば、示指寄りの位置です。

だからこの指導者が合谷の位置を正確に採っていることは間違いない、としても、あまりに強い押さえ方をしてしまうと、打撲を受けたのと同じことになってしまう。何か硬いもので叩かれたほどの損傷を受けていると感じられます。ひどいことをやったものです。

このように拇指・示指のあたりに損傷を受けている場合、以前にメルマガでも取り上げた「小菱形骨点」(拇指の付け根にあたる金星丘のねもと)が一つのポイントになります。

肩の状態から考えて、掌側だけでなく、甲側にも問題があるように感じられたので、「小菱形骨点」と、その裏側にあたる点(大菱形骨の裏側、皇帝の嗅ぎタバコ入れの辺り)を軽く押さえて愉気しました。

いつも「小菱形骨点」を愉気すると感じるのは、ここがよく気の通るポイントであるということです。鍼灸のツボとしては登録されていない点ですが、そういうツボの一つに入れてほしいくらいよく効く。

手の拇指側から、肩まで続く拘縮の繋がり(普通スジと呼ばれるもの)が解消するとよいのですが、それがなかなか簡単には行かない。肘の捻れがあるからです。

この問題については、永くなるので稿を改めて書くとして、肘の捻れが解消すると、肩がよくなってきました。

というわけで、押されて青タンができるほど押すようなところは避けることです。そこに拘縮ができて、打撲を受けたのと同じ結果になります。あな恐ろしや、強いツボ押し。