879 複合症状【2】

第879号 2016年1月31日
▼ 複合症状【2】

【承前】寝た時に、肩がズキズキ痛むというAさん。尾骨の処理で背骨がまっすぐになったのに、肩が一向によくならない。さて、どうしたらよいか。

肩の高さが違う場合に、まず第一に調べるべきは、腕のうしろにある伸筋の上腕三頭筋です。肩の高さが違う人は、高い側の上腕三頭筋が硬くなっています。

これを、操者の好みの方法で柔らかにしてやれば、肩の高さは揃ってくる。だがAさんは、肩の痛みが強いために、上腕三頭筋が痛いかと尋ねられても、何が何だか分からないらしい。大して痛みを感じるほどではない、ということでしょう。

しきりに「この辺りが痛い」と腕の上の方を押えるだけで、何がどうなっているのかよく分かりません。そうすると、次に調べる候補は肘ですね。肘頭の周辺に圧痛があるかどうか。

ところが、肘も肩の痛みとくらべれば、大したことではないらしく、むにゃむにゃで終わりです。こうなると、こちらとしては打つ手がなくなってくる。操者にとっては苦しい局面。指を調べてみても、何ともない。

どこが痛いのかよく分からない人は難しい。何が難しいかといえば、こちらは症状を手がかりにして、次の一手を考えているからです。「むにゃむにゃ」では一手を考えようがないわけです。

こういう時に、こちらの体勢を立て直すには、どうすればいいか。方向転換。これですね。こういう時は。とりあえず「むにゃむにゃ」というところは置いておく。そうして、新しい方向の探求に向うわけです。そのうちに、さきほどの方も道が開けてくるものです。

すみません。このあたりは完全に操法をする人向けの話になっていますね。自分の症状を自分でなんとかしようと考えている方々には、興味のない話かもしれません。でも、自分でやる場合も、操者と受け手が同一人であるというだけで、実は同じことだと私は思っています。時に自分でやる場合でも方向転換が必要なことがある。

方向転換しても、いずれ道が開けてくるのは、全身がつながっているからですね。

で、この場合、どこに方向転換したか。肩が痛いというだけではなくて、胸の上部が痛いと言っておられたので、そこを見てみようと。胸が痛いというのは、肋骨の変位があるからです。それ以外に、肋骨にひびが入っているケースもありますが、Aさんの場合は、そういう軽い痛みとは違っています。ひびはまず考えなくてよい。

そうすると、ありうるのは、胸肋(きょうろく)関節のズレです。胸の中央に縦に存在している胸骨と、肋骨とのつなぎ目。それが胸肋関節です。ですから、一つではなく、肋骨の数だけあります。

痛みの場所から見当をつけて、3番の肋骨と胸骨との関節をぐっと押さえてみた。すると、「痛い!」と強い反応。ここに間違いありません。ということはAさんの肩の痛みの正体は、腕から来ているものと、胸肋関節のズレから来ている部分とが合しているから、分かりにくく、本人にとっては辛い症状になっていると思われます。

そこで、この胸肋関節の調整にかかります。右腕全体を、当該の胸肋関節の延長上に持ってきます。そしてグッと腕を引く。一度やっても、改善したという声がないので、もう一度ひっぱりました。この日は、これで終わりです。書いてみればこれだけのことで、何だ短いというようなものですが、やっている当人にとっては、長丁場です。

こういう複合症状を持っている人の場合、痛みが消えたかどうか尋ねてみても、よく分からない場合がある。そうすると、これでよくなっただろうという想定のもとに、終わりにしなければなりません。

ところが昔の話になりますが、胸肋関節のずれていた人を調整したら、翌日、激痛になったというケースがありました。ひょっとしてAさんの胸が今ごろさらに痛くなっていて、今晩あたり電話がかかってくるのではないかと、気が気ではない。あんな強い調整法を採るべきではなかったかと反省しきり。(続く)

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878 複合症状【1】

第878号 2016年1月28日
▼ 複合症状【1】

複数の症状を抱えて苦しんでいる人が多いですね。例えば、腰痛があって、首が痛くて、呼吸が浅くて、頭痛がする、という具合です。次第にこのような人たちが増えてきているようにも感じられます。というより、単一の症状だけで朱鯨亭を訪れる人は少数で、大抵の人が複数の症状をかかえて来られる。

もちろん、こんな人たちにマニュアル的な方法は通用しません。一つ一つの症状がばらばらに存在しているのではなく、全体として関連しあっているからです。

昨日のお客様、かりにAさん(70歳代、女性)としておきましょう。Aさんが訴えて来られたのは、右の膝痛、右腕の痛み、右肩の痛みでした。腰もすこし痛いとおっしゃっていたように思います。

中でも、胸の痛みが腕の痛みと合わさって、肩の周辺が夜ねている時にズキズキする。十分に眠れない。ということですから、不眠の症状もあることになります。

肩が痛くて眠れないという症状そのものは、珍しいことではありません。例えば五十肩の人には、そういう人が多い。でも腕を動かしてもらうと、腕が上がるのは確かで、五十肩の症状ではない。

まず背もたれのない椅子に坐ってもらって、後ろから観察します。背骨が直線でなく弯曲し、左肩が高く、右肩が低くなっています。あくまで一般論ですが、尾骨に問題がある人が、この種の背骨の人には多い。

尾骨の先端がどちらかへ曲がっているんです。曲がっているだけでなく、先端が硬く丸まって、周辺が硬く変形していることが多い。これが曲者です。この尾骨のために、そちら側が背中にかけて硬くなり、下から引っ張っています。

ために背骨がそちらの方へ弯曲する結果になっているわけです。骨盤も傾いていることが多いけれど、それよりも背骨全体が傾いていることの方が、あちこちに大きな影響を与えています。

「お尻を打ったことがあるでしょう」と言いながら、尾骨を調べてみます。このセリフは、これからあなたのお尻を触りますよ、という合図にもなっています。事実、Aさんの尾骨を触ってみると、確かに硬く固まって右に曲がっていました。

この尾骨をどう処理するか。それは一つの眼目でもありますが、ここのところにコツがあって、ここでは手の加減などがうまく伝えられないので、興味のある人は「からだほぐし教室」または「復習講座」に参加してください。この春の講座(関東を含めて)でも、この方法を詳しく取り上げることになると思います。

さて、尾骨をうまく処理できれば、背骨は黙っていても、ほぼ真直ぐになってくれます。それは我ながらほれぼれするほど。背骨の調整など簡単、と鼻唄の一つも出てきそうな勢い。

ところがAさんの症状には変化がありません。尾骨は確かに全身に大きく影響していることが確かめられたけれど、肩の痛みは相変わらずというわけです。
(この項、つづく)

846 スマホの影響で肩が・・

路地裏の整体術 第846号 2015年10月19日
▼ スマホの影響? で肩が・・

近頃、首がおかしい肩がおかしいと言って来られる方が多い。昨日もそんな方々が続きました。

こんな場合、手と腕を調べるのが常道ですから、手を触ると決まったように常に感じることがあります。

共通しているのは、環指(かんし、くすり指)と示指(じし、ひとさし指)の中手骨(ちゅうしゅこつ)、つまり指の付け根から手前に続いている細長い骨ですが、これらの甲側が硬くなっている人が多いことです。

環指・示指は、手と全身との対応関係でいうと、腕に相当します。その中手骨は、肩甲骨に対応しますので、腕から肩甲骨に至るラインが硬くなっているという現象を示していると感じられます。

ここがなぜ硬くなるのか。色々なことが考えられますが、一番はスマホやタブレットの影響ではないでしょうか。スマホにせよ、タブレットにせよ、かなり重さがあります。操作する時は、それを同じ位置でじっと支えているわけですから、手に大きな影響があって不思議ではありません。

もちろん、どんな持ち方をすれば、どこに影響が出るかを追求することになると、色々と比較研究が必要になるでしょうが、ここでは、その重みが手の骨に影響しているのではないか、という仮説を立ててみたいと思います。

中手骨の状態と並んで、感じるのは、下橈尺関節が硬くなっている人が多いという事実です。これは、手首を動かさずにジッと固定していることを示していないでしょうか。

以上のことを逆に言えば、中手骨や下橈尺関節(かとうしゃくかんせつ)の動きが回復すれば、肩がよくなる可能性がある、ということです。操法については、過去のメルマガやHPをご参照ください。

842 浮き指(4)頸こりと食いしばり

路地裏の整体術 第841号 2015年10月1日
▼ 浮き指(4)頸こりと食いしばり

前回の 「浮き指専門サイト」 の説明では、親指を甲側に曲げて、直角を超えて曲がるようであれば 「浮き指」 であるとなっていましたが、このように概念を決めると、ほとんどの人が 「浮き指」 であることになってしまうようです。見かけ上、指が浮いていると見えない人も、曲げてみると直角に曲がる。

このサイトの笠原さんは、こういう 「浮き指」 概念が正しいとしています。概念は現実の認識に従って人間が決めるものですから、これはこれでいいので、別に文句をいう必要はない。しかし、次のような概念規定をしている人もいることを知っておいた方がいいでしょう。

──親指の下に名刺のような小さな紙片を置いて親指でグッと押えつけるようにしながら、手で引っ張ってみるだけだ。
このテストをして、紙が簡単に抜けるようならば、親指が十分に機能していないことになる。つまり浮き指である。
松藤文男『「足の指」まっすぐ健康法』(KAWADE夢新書、2009年)

となると、どちらが概念として適当かは各人が研究して決めればよい。私は、松藤説を採りたい。笠原説では、あまりに対象が広がり過ぎて、何でもかでも悪いことになってしまうと考えます。

松藤さんは別に「足の健康度を知る簡単テスト」も提案していて、「台の上に足をのせて、親指をこぶしで叩いてみる」。軽く叩いただけでも痛みを感じる人は、「間違いなく親指が傷んでいる」と書いています。(原文は「痛んでいる」となっていますが、意味の上から「傷んでいる」が正しいでしょう)

笠原説に関して、次のようなメールも頂戴しました。

──でも、それ[笠原さんのいう治療]を続けているうちに本当の意味での治療がなされるかというと、個人的には懐疑的です。
変形の順序としては確かに足や足指からスタートしているのかもしれませんが、足首、膝、股関節、骨盤・・・と捻じれなどのアンバランスが全身を浸蝕してしまっている状態では、足のみの観察、施術では効果はさほど期待できない気がしています。

さて、どちらの説が正しいかはさて措いて、浮き指にどう対処すればよいかという観点からみれば、別の見方もできることが分かってきます。

浮き指になっていると、趾(あしゆび)の付け根に圧痛が出ることが多いです。趾の付け根を押えるなり、強くつまんだりすると痛む人が多いのではないでしょうか。ここで付け根というのは、必ずしも第3関節のことではなく、基節骨(趾の付け根の骨)の周辺というほどの意味です。その辺りに圧痛が出ないかどうか、試してみてください。すると、指によって圧痛に多少の差があることが分かってきます。

笠原説でも、松藤説でも、親指のテストだけで「浮き指」の判断をしていますけれど、趾の付け根の圧痛を調べる方法ですと、一本ずつ「浮き指」かどうかの判断ができます。こうやって調べてみると、中指の「浮き指」が一番多いということが分かってきます。中指はたいていの人が「痛い」といいますから。

こんな時、圧痛の出る趾の中指の付け根を揉んでみる。中指の付け根を揉んでやると、次第に付け根の痛みが弱くなって、消えてゆきます。揉むのが嫌な人は、付け根をじっとつかんで、愉気をしてやるのでもよい。

不思議なことに、この操作によって下顎がまともになる。逆に言えば、下顎に歪みがあれば趾の中指を操法してやればよい。

面白いことに下顎が整うと、頸の痛みが消えることもあります。事実を確認したければ、頸が痛いと言っている人の、痛みと同側の足中指の付け根を揉んでやればよい。頸の痛みが消えて行くはずです。

こういうことが事実として成り立つのは、下顎の緊張が頸を引っ張っているという現象が起きているからでしょう。「頸凝り」という症状は、顎にも原因がある。まとめると、趾→下顎→頸という凝りの連鎖がある、ということです。

だから頸が凝っているからと言って、頸を揉んでやってもダメで、根本にある趾の凝りを解決すれば、頸が正常になるわけです。頸の凝りがさまざまな病気の原因になっていると主張している人がいますが、それが正しいとすると、趾に凝りがあるというところまで遡らないと根本解決にならないと思います。

付け加えると、「喰いしばり」とか「歯ぎしり」と呼ぶ現象も、趾と関係しています。こういった現象が下顎の状態と関係があるからで、「頸凝り」だけでなく、こういった現象も、足の中指の付け根を揉んでやると、改善する可能性があります。心当たりのある方は左右の中指の付け根を試しに操法してみて下さい。

836 肩と頸の関係

路地裏の整体術 第836号 2015年9月14日
▼ 肩と頸の関係

今朝は頸を直したら、肩もよくなったという報告です。

先日のNHK「試してガッテン」に「ハンガー療法」というのが取り上げられたと聞きました。その詳細は「ハンガー療法」で検索すると、数多く出てきます。

針金ハンガーを少し歪めて、窪みを作り、この窪みをこめかみに当てると、脳の誤作動が正常化して、頸の回旋が楽にできるようになるというものですが、それならハンガーなどとややこしいものを使わなくても、指をこめかみに当てれば、同じ効果が出るのではないだろうか──。

そう考えてやってみると、思惑どおり、頸の回旋が正常になりました。

さて、昨日のお客様はフラメンコをやっているという50歳くらいの女性Oさんです。すでに何回か、腕が痛くて内旋できない、という訴えで来ておられます。

腕を内旋させて、肘を曲げ、外に開こうとすると、肩の前がつぱって痛いという話しです。こういう動作は皆がする動きではないでしょうが、Oさんは踊りの時に、こういう動きをされるようです。

例によって、肩が痛いという人は、必ず手か腕に問題がありますから、手と腕を操法して、かなり改善して来たのですが、まだ決定打が出ない状態でした。

この日は中指の第一関節が時々おかしいという。触ってみると確かに硬くなっています。ヘバーデン結節かな、と思って、「コーヒーはお好きですか」と聞いてみますと、ミント入りの紅茶がお好きのようで、一日に何度か、それを飲まれるそうです。カフェインの作用もあるのかもしれませんが、関節に触ってみると、ズレがある感じを受けたので、関節の操法(誇張法)をしてみました。ズレのある方向へ、少しばかり気持ちだけ動かした感じにしてじっとしているわけです。

そうすると、やがて第一関節が少し柔らかな感じに変ってきました。これでよし、として、肩を動かしてもらうと、少しましになったと。まだ症状は残っています。肩がおかしい人の問題は、指のつぎは、手首関節の異常が多いですから、下橈尺関節を調整します。すると「さらによくなりました」。

ということは、まだ何か残っているわけです。この辺りで止めると、残っている歪みが核になって症状が再発してしまいます。

頸が少しおかしいとおっしゃっていたので、今度は頸をやってみよう。そこで、ハンガー療法を思い出して、指でやってみたわけです。右肩がおかしいので、右のこめかみに指先を当てて、数分。頸を回してもらうと、左右の回旋が揃っていました。

肩はどうですか、と試してもらうと、「なくなりました」と。肩が頸から引っ張られていたのでしょう。通常とは逆の順序ですが、こういうこともあるわけです。Oさんは、一か月後の予約を求めて帰られました。

こめかみに指を当てていると、首が正常化するメカニズムは分かりません。番組での解説にあるように、脳の誤作動が治ったのでしょうか。なぜ、これで誤作動が正常化するのか、私には分かりません。

825 肩ムドラー

路地裏の整体術 第825号 2015年8月1日
▼ 肩ムドラー

以前に何度か「ムドラー」というものをご紹介しました。
http://shugeitei.com/mudra.html

伝統的に伝えられたムドラーが色々あるのでしょうが、一つ付け加えてみたい。こんなことをいうと、ヨーガをする人たちから伝統の破壊だとたしなめられるかもしれませんが。新しい時代の新しいカタチがあってもいいのではないか。

共鳴法でいえば、薬指の付け根というか、第3関節は「肩関節」に当たります。第3関節の掌側です。つまり、薬指の付け根から少し下がったところの関節の部分。これが肩関節の前に当たります。

この部分を反対手の指でジッと押さえていると、肩が楽になってきます。でも、このやり方だと、両手がふさがりますから、他のことができません。そこで、一計を案じて、例えば右の肩が痛ければ、右手の親指の先を右手薬指の付け根にジッと当てていれば、それでいいのではなかろうか。先にも書いたとおり、付け根というのは第3関節の骨を感じるところです。

すると、親指を折って、「一」と数えたカタチになるでしょう。しばらく続けると、痛かった肩が楽になってきたり、動かない肩が動くようになったり、色んな効果が実感できるはずです。

もちろん、痛む側だけすればいいわけだけれど、左右のバランスを取るためには両手でやっても問題ありません。これをやりながら歩くというのもいい。だったら、新種のムドラーとして、これを挙げてもいいのではないか。「肩ムドラー」と呼んでおきます。

肩に問題がある人は、この「肩ムドラー」をしながら道を歩いてみてください。おそらく30分とか、45分とか長くやらなくても、しばらくやっただけで即効があると思います。テレビを見ながらでもかまいません。

これで、また整体のお客様が減ってしまうかもしれません。そうなれば、めでたいことです。