933 基本を守る 16/12/9

Sさんは40歳代男性、茶畑で働いておられ、以前から月に一度くらい健康管理の意味で通って来てくださっています。

そのSさんが珍しい症状を昨日、訴えて来られました。左肘のすぐ下あたりが痛く、これが手首から来ているような感じ。それだけではなく、そのスジが上腕にも伸びており、左腕全体がだる重い感じで、非常に不快である、と言われます。

こういう症状は決して珍しいものではなく、よく見かけるものですが、Sさんとしては珍しい。そこで、尋ねてみました。

── 何か左手をよく使うような作業をされているんですか。と私。

── いやあ、別に通常どおりですけど。

── 通常どおりというと、今は普通の事務仕事が中心ですか。

── まあ、そうですね。

といったやりとりの後、取り掛かります。腕の場合の手順がありますので、それを順にやって行きます。

1) 前腕の親指がわにある橈骨を上げる。

2) 寝床体操の5番、つまり前腕の二本の骨を締める操作をする。

3) 下橈尺関節の引っかかりを改善する。

4) 肘の内側、内側上顆と肘頭のあいだの窪みを押してみる。

5) そこに少し痛みがあるので、外側から愉気をする。

6) 小菱形骨のところを愉気して、肩の前を緩める。

7) 腕全体を引っ張りつつ、左側から前に回転させ、肩の前部の脱出を修正する。

・・・というような操法の手順で、少しはよくなったようですが、決定的ではない。何かが足りないようです。

── 左手で何をされたんですか。

── 別に何も・・・。

── 何もせずに、こんな風になるわけないですよ。

── うーん。

ひょっとして左手の親指が硬いのではないか、と考えて、Sさんの親指を触ってみますと、IP関節(親指の先の方の関節)とMP関節(親指の付け根の関節)の間が、どうも硬い。

そうか。これか。さっそくそこをじっと握って愉気をします。異常に硬いというほどではないものの、通常の状態ではない。これを見落としたのがいけなかった。

腕の問題がある時は、親指をよく調べるのは、「基本のキ」であったはずだ。しばらく愉気を続け、これでどうですか、と尋ねると、

── あ、よくなりました、という答え。

── これは、必ず親指を使っていますよ。

── あーそうか。お茶を刈る機械があってね、その機械を動作させるレバーを親指でじっと押さえていたんです。

── なるほど。それですね。

── それが、かなり強い力で押える必要があるんです。

── 腕が悪い時は、親指を調べるのが基本なんですが、それを抜かしていました。

── いつもやっていることなんで、あれが悪かったとは、思いませんでした。

というやりとりの後、その機械の写真をみせてもらうと、かなり大掛かりな機械です。 Sさんが操作されていたのと同じ機械かどうか、定かではありませんが、例えば、次の写真

http://www.kawasaki-kiko.co.jp/chaen/pdf/KJ2.pdf

機械の運転台の横についているレバーを押し続けると、お茶の木を刈って行くことができるそうで、「茶刈機」というそうです。

ここまで来て、私の反省点は、基本に忠実ということ。私自身も時々操法テキストを読んで勉強しています。「いいことが書いてあるなあ」と自画自賛で感心しながら。

この場合は、「腕を見る時は、まず親指から」──これです。

これを忘れて遠回りをしてしまいました。でも、これはテキストに書いてなかったな。

筋肉が収縮するのに、「等尺性収縮」というのがあり、これは筋肉の長さが変わらず、力だけがかかるタイプの収縮です。

レバーを同じ位置で押し続けるような動作が、これに当たります。スマホをじっと持っているのも同じことで、筋肉の長さが変化する「等張性収縮」に較べて疲労が少ないわけではないようです。

スマホやタブレットをジッと持っていると腕が疲れてきませんか。どこの筋肉を使っているか、感じてみてください。スマホの場合は、親指を使って文字を打つという動作が加わりますから、さらに疲れがひどいかもしれません。

腕がだるい、腕が痛い、というような症状が出た時は、親指に注意です。筋肉が硬くなっている場所を探して、そこに愉気(反対側の手指を当てて)をしてください。

 

広告

908 肩痛のカンタン操法

2016年8月1日

肩を傷めている人が多い。寝ている間に疼くので、眠れない、というような訴えをよく聞きます。そこで。

もちろん、来ていただいて、すべて解決すれば、それに越したことはないが、なかなかそうも行かない場合、慢性化している場合がありますから、そんな時は、自己操法をしていただくことになります。

とはいえ、複雑な操法をお教えしても、覚えていただけないことが多い。そこで、カンタンで効果の高い方法を案出しなければなりません。

考えたのは、肘のカンタン操法の肩バージョンを作ればどうか、ということです。

つまり、こういう方法です。

まず右手で左の肩をつかむ(左利きの人は左右逆)。肩と言っても、肩先よりも、その下(三角筋のあたりでよい)をつかむ。次に、左手で右の肩をつかむ(左利きの人は左右逆)。そのまま数分のあいだ、じっとしている。以上です。

なぜ右手で左肩をつかむ方を先にするのか。それは右利きの人は、右肩が前に来ている人が多く、それを修正するのに、左肩が前に来る方が望ましいからです。

ですから、この操法をしばらく続けると、胸椎上部の捻れがとれてくる可能性もあります。そのためには、テレビでも見ながら、じっと十分でも、する方が効果が高いかもしれません。お試しください。

ただし、坐り方が悪いと、かえって逆効果ですから、横坐り状態などでは、決してしないように願います。正坐か椅子坐がよろしい。脚を組んではいけません。

お断りしておきますが、これですべての肩痛が解決すると、大げさなことを言うつもりはありません。肩痛を解決するためには、いつも申している通り、手の捻れなどを解決する必要があることを申し添えます。

905 枕は是か非か

第905号 2016年7月12日
▼ 枕は是か非か

50歳代の男性Tさん。大阪市内にお住まいだそうです。その方の訴えは

──自分は昔から枕なしで寝ていた。それでまったく問題がなかった。ところが先日、目まいを起こした。調べてみると 「良性発作性頭位目まい症」 という種類らしい。ネットで色々と調べてみると、枕をした方がいいという記事をみつけた。

そこで、しばらく低めの枕をして寝ていたが、朝起きるときに、頸椎や胸椎がボキっと鳴って、不気味な感じがする。まして 『首や腰をボキボキ鳴らすと早死にします』 という本を読んで、いっそう怖くなった。何とかならないか。

厄介な話です。私自身も常に枕なしで寝ていて、たまに枕をすると、同じようなことがあるので、他人事だと思えません。そこで、枕を使わずに横になってもらい、十数分ほど寝ていただきました。その間に春風操法をしましたので、その効果があったかもしれませんが、いずれにしても、起き上がってもらうと、ボキボキという音がしませんでした。目まいも起きなかった。

[春風操法とは、寝る前に両手の外側(小指側)を小指の先端から始めて、手首まで、撫でおろす。そうして仰臥する。11分ほど寝てもらうという方法。こうして寝ているだけで全身がかなり整う場合があります]

これをどう考えたらいいのか。枕をすると、顎を引いた状態で寝るので、のどが詰まることがない、というのが枕必要論の論拠になっています。しかし、いつもそうだとは限りません。私自身は、枕なしで寝たからといって、呼吸が苦しくなるようなことはありませんし、軽い呼吸音を立てているようですが、ひどい鼾をかくこともありません。

むしろ、枕をすると、枕の高さだけ、背中が猫背状態で寝ているわけで、そのことの方が嫌な感じです。毎日、猫背になる練習をして寝ているようで、気持ちがよくありません。

枕をして寝てみて、そのあと起き上がると、猫背になっている背中が無理に引き伸ばされるような感覚があって、その時にボキっと鳴る感じがします。

ただ、横向きに寝るという人にとっては、横向きになったとき枕がないと困るというのはある気がします。だとすれば、首の後ろを支える程度の枕を、タオルで作ればいい。

具体的に書いてみましょう。まず、一枚のタオル。これはバスタオルでなく、普通のタオル、これを下に敷く。これはシーツが汚れるのを防ぐ意味だけです。その上に、バスタオルを縦に長くグルグル巻いたものを置きます。これを首の後ろにあてがう。

昔、木枕というものがありました。西式医学というグループが使っていたものです。探してみると、今でも販売されているようです。私自身は試していませんので、お勧めというわけではありませんが、試してみてもいいか、とは思います。(時代劇に出てくる、武士がしているような高い枕とはまったく違うものです)

いずれにしても、Tさんにとって、枕をするかどうかは、死活問題になっていた、枕をすると、目まいが起こらないという、あやふやな情報を信じたがために、困っていたわけですが、枕をしなかったというだけで、解決したということです。

目まいはどうすれば、いいのか。YouTube に 「試してがってん」 の動画がありますので、それを試してみてください。BPPV(良性発作性頭位めまい症)の直し方が見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=qPP_m0_FnpA

さまざまな「健康情報」のあり方について、言いたいこともありますが、それに関しては、いずれまた。

888 鎖骨になぜ左右差があるのか

第888 2016年4月1日
▼ 鎖骨になぜ左右差があるのか

鎖骨は人体の中で、左右対称になっている典型的な場所として、捉えている人が多いのではないでしょうか。確かに水着姿の女性の鎖骨など美しいと感じる人もいるでしょう。

ところが、よく調べてみると、さほどでもないことが分かります。見かけ上、左右が対称であるように見えても、胸鎖関節を押さえてみると、圧痛を訴える人が多い。

さらに鎖骨の部分をはだけて、よくよくみると、胸鎖関節の位置が左右で違っていることも多い。

【胸鎖関節とは、喉の下にグリグリが二つありますね。それです。胸の中央にある胸骨と、鎖骨のつなぎ目なので、胸鎖関節と呼ばれている】

先日、私自身の胸鎖関節が左右でえらく違って来ていることに気づきました。触って見なくても、関節のところに違和感があります。

同時に、背中の胸椎のどこかが痛む。えらいことになって来たと思って、どうしようどうしようと少し焦りぎみになった。胸椎を通常の方法で整えてみても、痛みが変わりません。

その前日のこと。『共鳴法教本』を使って講義をしていたので、そこに胸鎖関節の直し方が書いてあったのを思い出しました。書いた本人が自分で読んで役に立つこともある。

【『共鳴法教本』についてはHP参照。→http://shugeitei.com/stext.html

鎖骨と対応する場所は普通に考えれば中指の付け根、手のひら側ということになります。確かにそのあたりでも効果が出る場合もありますが、そこより中指の第二関節の横紋のところ(つまり手の平側)、をクルッと撫でると良い。

なぜ、こんな場所が鎖骨と対応しているのか。それは頚椎、胸椎の関係から考えれば、ここの場所が頚椎・胸椎のつなぎ目の裏側にあたるからでしょう。

で、この操法をやってみました。すると、驚いたことに、鎖骨が正常になっただけでなく、背中の痛みも消えてしまった。今に至るまで痛みが出ていません。

共鳴法の操法には強い効果の出るものが色々ありますが、これほどの操法は私の記憶の限りでは初めてです。

以上の経験を総括してみると、鎖骨の左右差は、胸椎の歪みと連結していることが分かる。つまり胸椎のどこかがゆがんで、それに伴って鎖骨の左右差が出てくるわけです。考えてみれば、当然のことですが、当然のことも経験してみないと、なかなか分からないものです。

言い換えると、あなたの左右の胸鎖関節のどちらかに圧痛があれば、あなたの胸椎のどこかが歪んでいるといえる。それが中指の横紋をクルクルっと撫でただけで解決するといえるわけです。

からだほぐし教室で、この操法をやってみた時に、Fさんが、クルクルと撫でた瞬間、頭にピキッと来た、とおっしゃっていました。

これは想像ですが、鎖骨のような横長の骨は互いに連動することがあるらしい。横長の骨とは何か。足の舟状骨、膝の半月板、鎖骨、そして頭の中の蝶形骨です。これらは連動することがあるらしい。

ですから、中指の横紋をクルクルっと撫でる操法で、実は蝶形骨も整ってしまう可能性があるだろうと思います。

昨日、緑内障の方の足首を整えたところ、目が楽になったとおっしゃっていましたが、これは舟状骨が整ったために、蝶形骨が動いた結果かもしれません。

横長の骨が互いにどのように連なっているかは、興味深い研究課題です。と同時に、足を整えることによる効果が、どこまであるか、これも深い研究課題だと思っています。【これについては、いずれまた書きたいですね】

人体の不思議は尽きることがありません。

883 首こりをとる方法

第883号 2016年2月21日
▼ 首こりを取る方法

メルマガ [第799号]  で 「マップの効用」 というテーマを取り上げています。首の横にある筋肉 「斜角筋群」 について、その緩め方を取り上げたものです。

斜角筋群と総称される筋肉 「前斜角筋」 「中斜角筋」 「後斜角筋」 は、いずれも頚椎の横突起に始まり、肋骨に終わっています。ですから、ここに異常が出ると、頚椎にも異常があるはずです。

先日のお客様(70代女性)は、ここが引っかかった感じで、痛いと言われます。最近、ここが痛いという人が多いと感じています。多分スマホやPCの影響ではないか、首を前傾したまま、ずっと作業を続けることに原因の一つがあるのではないか、と考えられます。もっともこの女性がスマホにうつつを抜かしているとは考えにくいですけれど。

古い言い方なら 「肩こり」 というところですが、古典的な 「肩こり」 とは少しばかり違う感じです。「首こり」 という言い方もできそうですね。

で、799号で書いた方法は、手の中指の第2関節の手の平側の両サイドを指先へ向けて、「斜角筋、緩め」 と思いながら、さっと撫でるという方法でした。

この方法でもいいのですが、ここでは別の方法を試してみましょう。

(ところが図がないと説明しにくいので、『共鳴法教本』 の35ページの図を見ながら試してみてください。お持ちでない方は注文していただく他ありません。注文については、http://shugeitei.com/stext.html からどうぞ。)

図の頚椎6番から2番の各骨について、各ポイントを手首方向へツメサキで弾くようにすると、それぞれの頚椎が整って、斜角筋も楽になります。特にポイントで痛みがあるような場合は、よく効きます。お試しください。

いままで左右に回りにくかった首がスッとうまく回るようになって、気分がよくなること請け合いです。

ただ、余計な注釈をつけておけば、以上の操法は、いわば対症療法です。根本から痛みの原因を取り除いたことにはなりません。根本から頚椎の歪みを解消しようとすれば、背骨を尾骨から順に上に向けて整えて行くことになります。

880 複合症状【3】

第880号 2016年2月1日
▼ 複合症状【3】

【承前】一週間後、Aさんが来られた。「痛くなった」と言われるのではないか、
とこちらはひやひやものですが、開口一番が、こうだった。

──夜中にうずいて眠れないということはなくなりました。

ということは、胸肋関節のズレが解決したということです。

やれやれ。「ホッと胸をなでおろす」というのは、こんな時。ひどい肩の痛みは、肘関節と胸肋関節の二原因による複合症状だったわけです。

こういうことがあるから操法は難しい。ここでも、「なぜ」という質問に答えるのはさらに難しい。なぜ、こんなことになっているのか。二原因のあいだに必然的なつながりがあるのかどうか。これはAさんの生活を詳細に検討してみなければ判明しないでしょう。

でも、なぜ過去の例のように激痛が出ることはなかったのか。おそらく、その人の感受性による違いです。同じ操法であっても、人により時期により、その反応は違います。

一般論として言えば、「正體術」の高橋迪雄が書いているように、比較的柔らかな女性や子どもでは、強い操法を避けなければならない。それに対して頑健な男性や身体の硬い成人では少々強い操法でも大丈夫なことがある。そういうことでしょう。

という次第で、Aさんの場合は強い操法が正解であった、ということになります。しかしこれは事後に言えることで、やはり普通は強い操法を避け、緩やかな操法を採用した方が危険が少ない。

よく整骨院などで、グッと力をかけて押されたので、おかしくなったと言って来る人があります。そういうことは、くれぐれも避けなければなりません。Aさんの場合、いわば結果オーライといえますが、Aさんの身体は頑健なものだったのでしょう。

さて、Aさんの症状はまだすべて解決してはいません。肘と膝が残っています。この先、どうなるか、お知らせするに足る情報が含まれていれば、続きを書いてみたいと思っています。

879 複合症状【2】

第879号 2016年1月31日
▼ 複合症状【2】

【承前】寝た時に、肩がズキズキ痛むというAさん。尾骨の処理で背骨がまっすぐになったのに、肩が一向によくならない。さて、どうしたらよいか。

肩の高さが違う場合に、まず第一に調べるべきは、腕のうしろにある伸筋の上腕三頭筋です。肩の高さが違う人は、高い側の上腕三頭筋が硬くなっています。

これを、操者の好みの方法で柔らかにしてやれば、肩の高さは揃ってくる。だがAさんは、肩の痛みが強いために、上腕三頭筋が痛いかと尋ねられても、何が何だか分からないらしい。大して痛みを感じるほどではない、ということでしょう。

しきりに「この辺りが痛い」と腕の上の方を押えるだけで、何がどうなっているのかよく分かりません。そうすると、次に調べる候補は肘ですね。肘頭の周辺に圧痛があるかどうか。

ところが、肘も肩の痛みとくらべれば、大したことではないらしく、むにゃむにゃで終わりです。こうなると、こちらとしては打つ手がなくなってくる。操者にとっては苦しい局面。指を調べてみても、何ともない。

どこが痛いのかよく分からない人は難しい。何が難しいかといえば、こちらは症状を手がかりにして、次の一手を考えているからです。「むにゃむにゃ」では一手を考えようがないわけです。

こういう時に、こちらの体勢を立て直すには、どうすればいいか。方向転換。これですね。こういう時は。とりあえず「むにゃむにゃ」というところは置いておく。そうして、新しい方向の探求に向うわけです。そのうちに、さきほどの方も道が開けてくるものです。

すみません。このあたりは完全に操法をする人向けの話になっていますね。自分の症状を自分でなんとかしようと考えている方々には、興味のない話かもしれません。でも、自分でやる場合も、操者と受け手が同一人であるというだけで、実は同じことだと私は思っています。時に自分でやる場合でも方向転換が必要なことがある。

方向転換しても、いずれ道が開けてくるのは、全身がつながっているからですね。

で、この場合、どこに方向転換したか。肩が痛いというだけではなくて、胸の上部が痛いと言っておられたので、そこを見てみようと。胸が痛いというのは、肋骨の変位があるからです。それ以外に、肋骨にひびが入っているケースもありますが、Aさんの場合は、そういう軽い痛みとは違っています。ひびはまず考えなくてよい。

そうすると、ありうるのは、胸肋(きょうろく)関節のズレです。胸の中央に縦に存在している胸骨と、肋骨とのつなぎ目。それが胸肋関節です。ですから、一つではなく、肋骨の数だけあります。

痛みの場所から見当をつけて、3番の肋骨と胸骨との関節をぐっと押さえてみた。すると、「痛い!」と強い反応。ここに間違いありません。ということはAさんの肩の痛みの正体は、腕から来ているものと、胸肋関節のズレから来ている部分とが合しているから、分かりにくく、本人にとっては辛い症状になっていると思われます。

そこで、この胸肋関節の調整にかかります。右腕全体を、当該の胸肋関節の延長上に持ってきます。そしてグッと腕を引く。一度やっても、改善したという声がないので、もう一度ひっぱりました。この日は、これで終わりです。書いてみればこれだけのことで、何だ短いというようなものですが、やっている当人にとっては、長丁場です。

こういう複合症状を持っている人の場合、痛みが消えたかどうか尋ねてみても、よく分からない場合がある。そうすると、これでよくなっただろうという想定のもとに、終わりにしなければなりません。

ところが昔の話になりますが、胸肋関節のずれていた人を調整したら、翌日、激痛になったというケースがありました。ひょっとしてAさんの胸が今ごろさらに痛くなっていて、今晩あたり電話がかかってくるのではないかと、気が気ではない。あんな強い調整法を採るべきではなかったかと反省しきり。(続く)