853 仙骨と背中

路地裏の整体術 第853号 2015年11月23日
▼ 仙骨と背中

先日来られた50代の女性Sさん。一つの典型的な例のように思えたので、ここで取り上げさせていただきます。どなたかの参考になれば幸いです。

Sさんの主訴は珍しいものではなく腰が痛いというものでしたが、珍しい症状が随伴していました。内臓がのきなみ下垂していると感じる、というのです。

初めお話を伺っている時に感じたのは、症状の推移をこと細かに描写されることです。何年の何月にこんなことがあって、何年前にこうこうでと、ともかく細かい。腰痛程度といったら失礼ですが、腰痛の推移をそんなに詳しく覚えている人は珍しい。特別な場所に特殊な症状がある人なら、そういう例も珍しくもないが、腰痛でそんな人は珍しいと思います。

「それで、いま現在はどうなんですか」 と遮ろうか、と考えたくらいでした。でも聞いている内に、この人は、かなり重篤な症状を抱えているのではないだろうか、と思えてきました。

そこで、お話を伺うのはそこそこにしてさっそく操法にかかりました。例によって木のスツール(イケアで材料を買って、自分で組み立てたもの)に坐ってもらい、背中から観察にかかります。すると、背骨が左へまっすぐ傾いている。これはかなり重篤だなと思いましたし、実際そのようなことを呟いたかもしれません。

背骨が一本の棒のように斜めに傾いている人は多くない。70代の方で、そういう例がありましたけれど、若い元気な人で、そんな人は見かけません。(50代では若くもないかもしれないけれど)

この傾きは放っておくことにしました。骨盤をなんとかすれば、なんとかなるのではないか、と思ったからです。なぜそう思ったのか、うまく説明できませんが、「かん」のようなものですかね。骨盤から背骨に繋がっている辺りの角度をみて、そう思ったようです。

うつ伏せになってもらって、仙骨に触れてみると、仙骨全体が盛り上がり、硬くなっています。尾骨もおかしい。

お尻を打ったことがありますか、と尋ねてみると、こどものころ、体育の時間に跳び箱を跳ぶ自信がなく、跳び箱の上で止まるだろうと思って、跳んだところ、うまく跳び超えてしまって、着地できなかった。そのため、尻餅をついてしまった、というのでした。

跳び箱の事故はよくあるらしく、この前も跳び箱の事故の後遺症を抱えた人を見ています。その人の場合は、跳び箱の最上段が少しズレていたため、跳ぶ瞬間に最上段がさらにズレて落下し、自分もアタマから真っ逆さまに落ちたという。

ついでながら、時々めまいを感じることがあるので、薬をもらっていたが、薬を止めたら、逆にめまいがらくになったという。でも時々ふらふらすることがある。薬の副作用で、逆に症状が強くなるという例は珍しくないように思います。

めまいと仙骨とは密接な関係があります。めまいを起こす人は、たいてい仙骨に異常があります。だから、仙骨がおかしい状態なら、めまいを起こすのも不思議ではありません。

仙骨の左右を押さえて見ますと、左が(床からの高さが)高く、しかも仙骨全体が盛り上がっています。こういう人は、ストレート・バックの傾向があり、常に不調を訴えているはずです。

仙骨が盛り上がっている人は、手の有頭骨を掌側から反動で動かせば改善するはずですが、左が高く回旋しているので、反動を使うとおかしくなるかもしれません。そこで別の方法を採ろうと考えました。

仙骨の共鳴点は手の甲の有頭骨ですが、高くなっている左側は有頭骨をぐっと押え、右側は、出ておいでと言い聞かせるように、撫で撫でするのです。これでしばらく放置しておくと、仙骨の回旋がじわりと取れてきます。不思議なことに、この時、じっとしていなくても構いません。長い時間をかけて、じわじわと変化するらしい。

これで仙骨の回旋が取れ、平らになりましたが、まだ盛り上がったままです。では「反り腰体操」をしてもらいましょう。

私たちが 「反り腰体操」 と呼んでいる体操は、次のようにします。

まず、仰臥する。腕は体側に添わせておく。膝を曲げて両足を揃え、ズリズリとお尻に近づけて行く。足が尻に出来るだけ近づいたところで、両脚を持ち上げ、太ももを床に直角になるまで持ち上げる。次に膝から下を水平より45度斜めに持ち上げて、その位置で5秒保つ。その後、斜めに上げた両足をたらりと膝からたらし、足裏を床にドンとつけます。その後、3呼吸する間は休憩です。これが終わると、両脚をそろそろと伸ばし、元の体勢に戻る。これで終わりです。反り腰の修正がみごとに行っておれば、これだけでおしまいにしてもいいですが、修正が不十分な時は、同じ体操をあと2回ほど繰り返してもよろしい。(これは『一瞬整体』 の本に紹介されている体操を反り腰用に改変したものです)

さて、この体操をSさんにやってもらったところで、伏臥になってもらって仙骨を調べると、見事に整っていました。これなら普通の仙骨です。これほど見事に変るとは、期待以上です。

まるで全身がいっきに変化して、これ以上は何もすることがない。あと、足の趾のしびれがあったので、それの対策をして、終わりです。立ってもらって結果の確認をします。

仙骨が整ったので、もちろん腰痛は消えています。目まいもおそらく出なくなっていると思われます。

何よりも驚いたのは、内臓が下垂している感じが消えていたことです。するとその感じは、仙骨の異常によって生まれていたのでしょう。仙骨が前に倒れていたため骨盤も背中も前傾し、内臓が下垂した感じが出ていたのかもしれません。

急に全身が変化したので、ひょっとすると、今日・明日は、しんどくなったり発熱したりということが起きるかもしれませんが、3日ほどすれば楽になるはずですよと言って終わりました。来週来られた時に、どんな様子に変化しているか、楽しみです。

以上の記事は詳しく読んでいただけると、操法をしている方には、随分と参考になる点があるはずです。