982 末端に注目(1)

第982号 2017年7月23日
▼ 末端に注目(1)

70代女性Hさん。膝の状態がよくないと来られました。ところが、その症状が普通の膝痛とは違っています。膝が痛いというと、膝の内側とか、お皿の下とかが痛いと言われることが多い。

Hさんは、膝の裏がつっぱって痛いという。特に、椅子に坐った状態から立ち上がる時に膝の裏が突っ張って痛いのだそうです。

裏が痛いという場合は、脛骨が大腿骨に大して前に出ていることが多いものですが、Hさんの膝を調べて見ても、脛骨が前に出ている様子はありません。

どんな症状でも、このように標準的なパターンからずれている場合は、原因の解明が難しいものです。私の場合、最初に徹底的に原因を究明する作業をします。そうでないと、無闇に「症状を追いかけ」て、結果がでないという情けないことになってしまうからです。

「徹底的に原因を究明する」といっても、いつもうまくいくとは限りません。最後の最後まで、何が原因か分からずじまいということもあります。こういう時に、「症状だけを追いかけて」みてもうまく行きません。

よくどこかの整体へ行って具合が悪くなった、どこそこの整骨院へ行ったけれど、よくならなかった、と言って来られる人がいらっしゃいますが、施術の様子を聞いてみると、大抵は「症状だけを追いかけ」て失敗していることがわかります。

ということは、施術者にとって、「症状を追いかける」誘惑から逃れるのが難しいということを意味しているでしょう。この人の症状は、どこがどうなっているのか難しいという場合、つい症状を追いかけたら何とかなると思ってしまうのですね。

「症状を追いかける」といえば、操法のプロは、どういうことか経験があるので、よく分かると思いますが、施術経験のない人には想像するのが難しいかもしれません。

そこで少し説明しておきましょう。例えば腰が痛いという。

これは仙腸関節が緩んでいるのだろうと見当をつけて、骨法などで仙腸関節を締めてみます。ところがまだ真ん中のこの辺りが痛いという。そうすると仙骨が歪んでいるのか、と考えて仙骨の歪みを正そうとしてみる。すると、真ん中の痛みは引いてきたけれど、今度は腰骨の右上が痛いという。・・・

という具合で、その時その時で、痛みのあるところを次々施術して行く。これが「症状を追いかける」と私がいう意味です。

こうなると、とどのつまりあちこち触りまくって、どうにもならない。これでもか、これでもか、という最悪のパターンに嵌ってしまうわけです。

さて、話を戻して。Hさんの膝のことでした。おっと、今は夏休みで操法はしていないはずじゃないんですか。と訊いて来られた方がいたので、釈明しておきますが、原則は夏休みなんです。けれど、腰が痛くて動けません、どんな時間でも行きますので、何とか、などと言って来られる人があるので、そうも言っておられません。時々開けています。

でHさんの膝。いつもの膝痛のパターンに従って最初やっていたのですが、どうも感覚的に違う感じがする。これではダメだ。じゃあどうする。一つの定石は「末端に注目」。これです。うまく行かないときは定石に戻るというのは、碁や将棋だけではありません。

膝が痛い、しかも裏が突っ張るという場合、末端はどこか。脚の裏側の末端で問題を起こしやすいのは、どこかを考えればいいわけです。答えは踵。

踵の骨つまり踵骨はよくズレを起こしやすい場所で、起きた時に踵が痛いという症状を経験している人は多いでしょう。踵のところの踵骨と、その上に乗っかっている距骨との関節、つまり距踵関節(距骨下関節)が前後にズレている人は多い。踵骨が後ろにズレ、距骨が前にズレている状態になっています。

この状態になると、踵の後ろを押すと痛い。場所を詳しくいうと、アキレス腱の下(付着部)です。この辺りが痛む。Hさんのこの場所をぐっと押してみますと、予想通り、「痛い」そうです。

この状態を改善する方法について。仰臥してもらい、操者は受け手の足首を上からぐっと押さえ、足の中足骨の辺りをつかんで、足首を前後に動かす。すると、上から押さえているので、床からの力が踵骨を上に押し返す格好になっています。

この状態で足首を前後に動かすと、踵骨は下から押し返されて正しい位置に戻っていく。直接法ですが、これが威力を発揮します。しばらくゴキゴキという動きを続けて、先ほどの痛みがどうなっているかを確かめますと、かなり痛みがとれたという。そこで、もう少し同じことを続けて、痛みが完全になくなるようにします。

そうして朱鯨亭の傾いた階段(階段は傾いているのが当たり前だ、などと余計な半畳を入れないでもらいたい。朱鯨亭の階段はおんぼろで横に傾いているんですから)をそろそろ上がり降りしてもらった。「痛くない」。よし。

というわけで、くどい説明に付き合っていただいて、ありがとうございました。これで一件落着ですな。少し解説を付け加えると、Hさんの踵が少しズレていた。そのため、踵周辺に筋肉や靱帯の拘縮が起きて、それが下腿の後ろを経て、膝の裏(ひかがみ)の辺りを引っ張っていたわけです。これが立ち上がる時に痛みを出していた。

という次第で、「末端に注目」という定石が役に立った例でした。次回も、この定石にあたる例をご紹介しようと思っています。お楽しみに。

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